「辰野登恵子 オン・ペーパーズ」展

カテゴリ:アート・ホット情報 投稿者:editor

 11月28日付の日本経済新聞文化欄に宮川匡司編集委員による美術展の記事とカラフルな図版2点が掲載されていました。見出しは「多彩で繊細な抽象表現の冒険」、以下は記事の抜粋です。

4年前に64歳で急逝した辰野登恵子は、1980年代以降、豊麗な色彩と力強い形態の抽象表現で、現代絵画のトップランナーとして活躍した画家である。さいたま市の埼玉県立近代美術館で開催中の「辰野登恵子 オン・ペーパーズ」展は、主に紙に描いた作品を数多く集め、代表的な油彩画約30点と合わせて年代順に紹介した回顧展だ。(略)抽象の領域で、画家がいかに多彩で繊細な冒険を積み重ねてきたのか。その道筋を克明に見つめた展示である。2019年1月20日まで。名古屋市美術館に巡回。(注:70年代から2000年代以降までの作品の変遷を記した部分はスペースの関係で省略しました)

埼玉県立近代美術館のホームページを開くと展覧会の概要と出品作品の図版がアップされていました。記事に書かれた「紙に描いた作品」とは版画やドローイングで、約200点が出品されているようです。
名古屋市美術館での会期は2019年2月16日から3月31日まで。今から楽しみですね。
追伸
埼玉県立近代美術館のホームページにアップされていた動画「椅子の美術館」を見たら、アルヴァ・アアルト《パイミオチェア》が出てきました。「アルヴァ・アアルト展」にも縁があるようです。
Ron.

「黄金のアデーレ」 名画の帰還 (Woman in Gold)

カテゴリ:アート・ホット情報 投稿者:editor

 以前から気になっていた映画を観に行きました。
クリムトの「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」(通称:「黄金のアデーレ」)にまつわる映画で、冬休みということもあり、映画館はかなり混み合っていました。

 どなたでも、名古屋市美の展覧会に限らず、展示会場のキャプションに「個人蔵」と書かれた作品を観た覚えがあると思います。そして、どんな人が、どんな部屋にこれを飾っているのだろう、と思ったことがあると思います。そもそも作品は誰のために制作されるのでしょう。そんなことを考えさせられた映画でした。

 この映画は、ウィーンの美術館が所蔵する名画(「黄金のアデーレ」)と、ある家族の所有権にまつわる事実に基づいた物語です。ネタバレするので詳細は伏せますが、観る前に結末だけは知っていました。その上で観ても、やはりその結末には驚かされます。単なるハッピーエンドでは済ませられない、複雑なものを強く感じました。作品とモデルとその家族について。家族が暮らす社会やその歴史について。美術館に作品があるといことについて・・・。

 しばらくは、美術館で作品を見るたびにこの映画のことを思い出しそうです。
「この作品のモデルはどんな性格の人だろう」とか、「この作品はどんな国で描かれたのだろう」とか、「この作品は何処からきて、何処へ行くのだろう」とか。展覧会の図録などで見知った著名な作品でも、歴史というフィルタを通すとその印象が一変するという好例でした。
杉山 博之