展覧会見てある記 一宮市三岸節子記念美術館「河鍋暁翠展」

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協力会から「河鍋暁翠展」(以下「本展」)鑑賞ミニツアーの案内が届きました。早速、一宮市三岸節子記念美術館(以下「美術館」)のホームページ(以下「HP」。URL=一宮市三岸節子記念美術館 (s-migishi.com))を開くと、次のような紹介文がありました。

〈これまで父・暁斎の名に隠れがちであった暁翠ですが、最近では、暁翠の活躍を描いた歴史小説『星落ちて、なお』(澤田瞳子著、2021年、文藝春秋)が第165回直木賞を受賞したことで注目が集まっています。本展は、父の画技を受け継ぎながらひとりの日本画家として名を残した暁翠の作品を一堂に並べ、その画業の全貌を紹介する初の展覧会です〉(チラシも、同じ文章を掲載)

とても興味をそそられました。HPは、パンフレット(チラシ)、作品リスト、プレス・リリースも掲載。展示替えのため、ミニツアー当日には鑑賞できない作品があると分かり、急いで美術館に行ってきました。

◆第1章「暁翠と暁斎-父のてほどき」

 受付で千円を支払って2階に向かうと、右手の第一展示室(小振りの部屋)に「入口」の表示。第1章の作品を展示していました。ただし、最初の3点は、河鍋暁翠(1868-1935:以下「暁翠」)ではなく、父・河鍋暁斎(1831-1889:以下「暁斎」)の作品。《極楽太夫図》(1879以降)と《文読む美人》(1888頃)、《柿に鳩の図》(1872頃:チラシ裏面に掲載)です。そのうち、《柿に鳩の図》の解説には「暁翠が数え5歳の頃に、父から手渡された絵手本」と書いてありました。暁翠は、数え5歳の頃から「父のてほどき」受けていたのですね。

暁翠の作品は、チラシ表面に掲載の《猫と遊ぶ二美人》(制作年不詳)から始まります。その隣には、暁斎の描いた下絵(1878)が並び、解説には「下絵の遊女から良家の子女へ、身分を変更」と書いてありました。《寛永時代美人図》(1916:チラシ裏面に掲載)の隣にも暁斎の下絵(制作年不詳)。こちらの解説は「下絵の猫を狆に変更」というもの。HP掲載の文章のとおり、暁翠は「父の画技を受け継ぎながら、ひとりの日本画家として名を残した」のですね。チラシ裏面に掲載の《霊山群仙図》(1861~1892)の隣には、暁翠による《霊山群仙図由来書》(1917)を展示。「暁斎が描き始め、その死後に暁翠が完成させた作品」だと分かりました。

◆第2章「土佐・住吉派に学ぶ」

第2章からは第二展示室に展示。最初の2点は、暁翠が入門した土佐・住吉派の日本画家・山名貫義(1836-1902)の「やまと絵」でした。暁翠の作品で面白かったのは、「ベルベット・スキンソープ」宣伝用の《七福神入浴図ポスター》(制作年不詳)です。美術館でもらった本展広告に掲載されていた澤田瞳子さんへのインタビューには、このポスターを「私の一番好きな作品(略)洒落っ気のある所が気に入って、本の表紙にとも考えた」と書いています。肉筆画だけでなく、色鮮やかな三枚続きの大判錦絵も展示。そのうち、《毘沙門天虎狩之図》(1889)はチラシ裏面に掲載。解説によれば、暁翠は暁斎の死後、錦絵の仕事も引き継いだとのことでした。

◆第3章「教育者として」

面白かったのは「絵手本」。チラシ裏面に掲載の《美人の顔 第三段 絵手本》(制作年不詳)は完成図ですが、第一段・第二段という二つの下絵と合わせて完成までの手順を示しており、学ぶ人に親切な絵手本だと思いました。なお、《美人の顔》は前期の展示(~11/13)で、後期(11/15~12/4)には《翁面》が展示されます。

◆第4章「受け継がれた伝統」

この章では、双幅の《松風・羽衣》(制作年不詳)と「お多福」がいっぱい描かれた《百福図》(1916)がチラシ裏面に掲載の作品です。暁斎は大勢の人物が登場する、にぎやかな作品を描いていますが、暁翠も大勢が登場する絵を得意としていたようで、《百福図》の外にも《布袋と唐子》(制作年不詳)、《百猩々》(制作年不詳)、《百福の宴》(制作年不詳)を展示しています。戯画も面白く、大津絵に題材を取った《美人と鬼の相合傘》(制作年不詳)、ひな人形が動き出す《美人を驚かす内裏雛》(制作年不詳)には、思わずクスッとしました。

西行の有名な歌「願はくは 花の下にて春死なむ その如月の望月の頃」を画題にした、暁斎・暁翠・真野暁亭の三福対《西行雪月花》(制作年不詳)や《鐘馗図》(制作年不詳)にも目を引かれました。

◆最後に

 『星落ちて、なお』は、日本画の流行とは一線を画し時代に取り残されながらも、やまと絵や狩野派の伝統を守るため精一杯生きる暁翠を描いていますが、本展を見ていて、小説に描かれた暁翠の「清々しさ」を感じました。後期展示の作品も見たいので、11月27日(日)午後2時開始のミニツアーが楽しみです。

Ron.

展覧会見てある記 豊田市美術館「ゲルハルト・リヒター」展

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スマホに、豊田市美術館(以下「豊田市美」)で開催中の「ゲルハルト・リヒター」展(以下「本展」)のニュースが二つ飛び込んできました。ひとつは、WEB版の「芸術手帖」(2022.10.15付、URL=https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/26164)で、もうひとつは「号外NET豊田市」(2022.10.18付、URL =https://toyota.goguynet.jp/2022/10/18/toyotasibijutukann-geruhaito-rihita/)です。どちらのニュースにも画像が掲載されていますが、「号外NET」は展示室内の内覧会出席者と学芸員を写した写真を掲載。それを見ていたら、じっとしてはいられなくなり、豊田市美に行ってきました。

◆本展の顔は赤ちゃん・4つの展示室を使う大規模なもの

 豊田市美に向かう坂を登っていくと「ゲルハルト・リヒター」の文字と赤ちゃんの絵が見えます。玄関を抜け、長い廊下を進むと、1階・展示室8の入り口に「ゲルハルト・リヒター」と書かれていました。

 受付を済ませ、16ページもある作品リストを手にすると、実に優れものでした。作品リストだけでなく、展示作品の概要が付記された会場マップと、4ページにわたる「リヒター作品を読み解くためのキーワード」(以下「キーワード」)までも載っています。会場マップによると、本展は1階・展示室8に加え、2階・展示室1、3階・展示室2-3の、計4室を使った大規模な展覧会でした。

◆1階・展示室8

・第1エリア

 1階・展示室8は、大きく4つのエリアで構成されています。

第1エリアは細長い部屋で、最初の作品は《モーターボート(第1ヴァージョン》1965、広告写真を拡大した油彩画=「フォト・ペインティング」です。キーワードの解説には「リヒターは写真に隷属するように絵画を描くことから画家としてのキャリアをやり直したのでした。しかしそういう迂回を経ることによって、逆説的に描くべき対象をどのように選ぶかが重要になっていくのです」と書いてありました。

この「写真に隷属するように絵画を描く」ことについて、日本経済新聞(2022.6.25)の展覧会評は「画家自身の意図や癖をできる限り排除した手法」と表現していました。

 2番目の《グレイの縞模様》1968は抽象画。3番目の《8人の女性見習看護師(写真ヴァージョン)》1966/1972は、殺人事件の報道写真を元にしたフォト・ペインティングの複製写真を写真作品として制作したもの。「フォト・エディション」というようです。キーワードの解説には「絵画の代替という役割もありながら、その多くは寸法、トリミング、色彩、額装方法など、さまざまな仕方でオリジナルとことなっています」と書いてありました。一見すると何の変哲もない作品ですが、「殺人事件の報道写真」と聞くと、インパクトがあります。フォト・ペインティングの解説後半の「描くべき対象をどのように選ぶかが重要になっていく」というのは、このことだと思いました。

 入口の近くには赤色の鏡《鏡、血のような赤》1991も展示。「ガラスと鏡」というキーワードの解説には「置かれた場所やその時々によってあらゆるイメージを映し出す」と書いてありました。確かに、展示室に置かれた鏡に映りこんだものを見ていると、「これも作品だ」と思うようになります。

 第1エリアの一番奥では14分32秒の映像作品を上映。その手前に展示の《アブストラクト・ペインティング》1992は、アルミニウムの上に描かれた作品でした。所々にアルミニウムの地金が見えます。アルミニウムと油絵具の相性について家に帰って調べたら「塗装は困難。表面処理が必要。地金が温度変化で伸び縮みするので絵の具に亀裂が生じることがある」等、おそろしいことが書かれていました。

・第2エリア

 第2エリアは二つの区画で構成。最初の作品《黒・赤・金》1999は、左から黒・赤・金という配色。ドイツの国旗(上から黒・赤・金)と同じ色です。作品解説には「ドイツ連邦議会議事堂エントランスホールのモニュメントの習作」と書いてありました。リヒターは国家的作品を任された「大作家」なのですね。

 《黒・赤・金》の左は《アブストラクト・ペインティング》1999で、その左には、豊田市美の玄関で見た赤ちゃんがいました。《モーリッツ》2000/2001/2009という作品で、解説には「1995年に生まれた長男が8カ月の時の写真をもとに2000年に仕上げ、2001年、2009年に加筆」と書いてあります。何を加筆したのか、解説だけではわかりませんが、作品表面の黒い刷毛目は加筆されたものだろうと思われます。

 第2エリア・二番目の区画には、写真に油絵具で彩色した「オイル・オン・フォト」が多数並んでいます。キーワードの解説には「絵画と写真、再現性と抽象性が拮抗しあうという点で、小さいながらもリヒターの創作の核心を端的に示してくれます」と書いてありました。オイル・オン・フォトの中で《1998年2月14日 14.2.98》1998は、本展の紹介記事でよく見た作品です。赤ちゃんを抱く母親を撮った写真なので、目を引くのでしょうか。

・第3エリア

 第3エリアは、部屋の中心に《8枚のガラス》2012が置かれ、その周囲の壁にカラーチャート《4900の色彩》2007と、《ストリップ》2013~2016と《アラジン》2010が展示され、最もカラフルな空間になっています。カラフルな作品に取り囲まれているので、《8枚のガラス》に映り込んだ画像もカラフルです。

 「カラーチャー」について、キーワードの解説には「既製品の色見本の色彩を偶然にしたがって配する」ものと書かれ、「ストリップ」については「ある一枚の《アブストラクト・ペインティング》をスキャンしたデジタル画像」を分割して再構成したものと書かれ、「アラジン」については「一種のガラス絵」と書かれていました。アラジンはガラスの裏から描くので、鮮やかな色彩を楽しめます。

・第4エリア

 第4エリアには本展で一番注目されている作品が並んでいます。第3エリアから見て正面には《ビルケナウ》2014を配置。《ビルケナウ》に向き合うように《ビルケナウ(写真ヴァージョン)》2015~2019を配置しています。

また、《ビルケナウ》に向かって左の壁には《ビルケナウ》の元になった《1944年夏にアウシュヴィッツ強制収容所でゾンダーコマンダー(特別労働班)によって撮影された写真》を配置、右手の壁には《グレイの鏡》2019を配置しています。《グレイの鏡》に向き合うと、他の3つの作品だけでなく、展示室内の来場者も同時に見ることができます。よく練られた作品配置だと感心しました。

 なお、《ビルケナウ》は、フォト・ペインティングの手法で元になった写真を描いていますが、それは塗りつぶされ、見ることはできません。フォト・ペインティングの解説に「描くべき対象をどのように選ぶかが重要になっていくのです」と書いてありましたが、《ビルケナウ》でも重要なことは、「描く対象にアウシュビッツ強制収容所で撮影された写真を選んだ」ということになるのでしょうか。

◆2階・展示室1~3階・展示室2-3

 2階・展示室1ではアブストラクト・ペインティングを展示、3階・展示室2では2021年に制作したドローイングを、展示室3ではアブストラクト・ペインティングに加えて、2022年に制作した水彩絵の具によるドローイングのフォト・エディション《ムード》2022を展示していました。《ムード》は豊田市美だけの特別出品とのことです。

◆コレクション展 反射と反転 (展示室4-5)

 3階・展示室4と2階・展示室5で開催中のコレクション展では、リヒターと同じように鏡を使った作品を展示していました。プリンキー・パレルモ《無題(セロニアス・モンクに捧げる)》1973と、ミケランジェロ・ピストレット《窃視者(M・ピストレットとV・ピサーニ)》1962,72の、2点です。

◆未生(みしょう)の美 ― 技能五輪の技 (1階・ギャラリー)

 1階・ギャラリーでは、技能五輪の出場者が旋盤やフライス盤などで加工した製品や製品の写真などを展示する「未生(みしょう)の美 - 技能五輪の技」も開催しています(11月27日(日)まで)。

◆観覧料について

 本展の当日券は大人1枚1,600円ですが、オンライン・チケットなら1,500円(購入は豊田市美のホームページから)。受付でスマホまたはプリントアウトしたチケット情報を見せれば入場できるようです。思い切って年間パスポート(3,000円)を購入すると、豊田市美で開催される展覧会を1年間、観覧できます。

Ron.

「クマのプーさん」展 協力会向け解説会

カテゴリ:会員向けギャラリートーク 投稿者:editor

名古屋市美術館で開幕したばかりの「クマのプーさん」展(以下「本展」)の協力会向け解説会に参加しました。参加者は29名。講師は、井口智子学芸課長(以下「井口さん」)。知っているようで、実はほとんど知らなかった「クマのプーさん」についての解説を2階講堂で聞いた後、自由観覧・自由解散となりました。

◆井口さんの解説の要点(16:00~16:45)

 以下、井口さんの話を、ざっくりと記します。

〇「クマのプーさん」(Winnie-the-Pooh)について

解説会の冒頭、井口さんから二つの質問がありました。一番目の「プーさんを知っている人」という質問には、ほとんどの参加者が挙手。しかし、二番目の「プーさんの本を読んだことがある人」という質問に挙手したのは、ほんの数人。じつは私も、プーさんは「ディズニー・アニメのキャラクター」という認識しかなく、「プーさんの本」どころか、アニメ映画も見たことはありません。プーさんについて知っているようで、実はほとんど知らなかったことを、改めて知りました。

井口さんによれば、プーさんは、物語「クマのプーさん」(原題:Winnie-the-Pooh、1926)のキャラクター。挿絵を描いたのはE.H.シェパード(Ernest Howard Shepard。以下「シェパード」)。最初の挿絵は「ペン画」ですが、本展では1950~1960年代にカラーで描き直したものを展示している、とのことでした。

〇「クマのプーさん」展について

井口さんによれば、本展は東京・立川市のプレイミュージアム(PLAY! MUSEUM)が企画した展覧会で、展示デザイン・コンセプトもPLAY! MUSEUMによるもの、とのこと。展覧会の構成等は下記のとおりです。

① プーさん A to Z

 挿絵原画を鑑賞する予習として、「プーさんの物語」に関するキーワードを整理、解説したもの

② アッシュダウンの森

 映像のインスタレーション。井口さんは「小さな巣箱の中も覗いてみてください」と、付け加えました。なお、吹き抜けでもアッシュダウンの森をドローンで撮影した動画を投影

③ 1950-60年代に描かれた挿絵の原画

 100点ほどの原画を展示。原画は、岩波書店の「プーさん」シリーズの表紙や口絵にも使われているものです

〇「クマのプーさん」の本について

井口さんによれば、原作者はA.A.ミルン(Alan Alexander Milne)。彼は第一次世界大戦に通信将校として参戦。1920年に、長男のクリストファー・ロビンが生まれ、子ども向け詩集を皮切りに4冊の本を発行。プーさんのモデルは、子どもが一歳の時に買い与えたテディ・ベアのぬいぐるみ。灰色のロバのぬいぐるみやコブタのぬいぐるみも子どものためのもの、とのことです。

シェパードは、第一詩集「クリストファー・ロビンのうた」(原題:When We Were Very Young、1924)にもプーさんの姿を描いています。ただし、プーさんという名前は、まだ付いていません。

プーさんの物語の舞台は、百町森(Hundred Acre Wood)。ロンドンの南にあるミルンの田園の家のそばのアッシュダウンの森をモデルにしている、とのことでした。

〇「プーさん A to Z」のみどころ

A America 本展の原画は、シェパードが1950-60年代にアメリカの出版社E.P.ダットンのために描いたもので、アメリカのエリック・カール絵本美術館の収蔵品

I Ishii Momoko 「プー横丁に建った家」(原題:The House at Pooh Corner、1928)の朗読(注:日本語版は、1942年初版)の声が流れています。カーペットが敷かれており、座ることができます

H Hundred Acre Wood 百町森のイラスト(チラシにも掲載)を展示。「スペルミス」を探してください

V Four Volume ミルンが書いた4冊の本を展示。英語版は横書きで右開きですが、日本語版は縦書きで左開きになります。そのため、進行方向が自然に見えるよう、左右を逆転したものもあります。

 本展とのコラボ企画として、名古屋市の図書館にも「クマのプーさん」コーナーがあるのでご覧ください。

◆自由観覧(16:45~18:00)

本展の会場入口は、2階でした。

〇プーさん A to Z (2階)

井口さんのお話どおり、予習のための展示でした。印象的だったのは、G Gloomy Place 灰色のロバのぬいぐるみ「イーヨー Eeyore」の家と、J Jars ハチミツの入れ物、N North Pole プーがつかんだ棒でした。二次元の挿絵ではなく、三次元の「物体そのもの」を展示しているので印象が強かったのでしょう。

〇アッシュダウンの森(2階)

 鳥の鳴き声やせせらぎの音などが聞こえてきて、森の中にいるような感じがします。座るところもあります。都会の喧騒から解放される、とても居心地の良い空間でした。

〇1950-60年代に描かれた挿絵の原画(1階)

・展示空間

展示室に円形の壁を設置して、中央に緑、青、黄、赤色の大きな布が垂れています。円形の壁には挿絵の原画が展示され、中央の広場には、①コブタが、ぜんぜん、水にかこまれるお話、②プー横丁にイーヨーの家がたつお話、③プーがあたらしい遊戯を発明して、イーヨーが仲間に入るお話、の原画をケースに入れて展示。ケースには絵本の「おはなし」が書かれているので、絵本を読んでいるような気分です。ケースの周りには、カーブした長い箱。箱の上面には緩やか起伏があります。最初「大人も子どもも座れるように、座面の高さを変えたのかな?」と思ったのですが、「物語の舞台となる百町森(Hundred Acre Wood)の地面の緩やかな起伏を表現したのではないか?」と思い直しました。井口さんによれば、円形の壁、緩やかな起伏など、展覧会の展示デザインは、PLAY! MUSEUMのオリジナル、とのこと。今までに体験したことのない展示空間でした。

・展示作品

展示作品は、シェパードのオリジナル。印刷用の挿絵の原画ですから観賞用の絵画とは違い、「小さな作品」ばかりですが、細かい所まで克明な線で描いているだけでなく、色彩が鮮やかで見ごたえがあります。本展にはあまり期待していなかったのですが、そのような先入観を持って解説会に来たことを反省するばかりです。

◆東京・立川のプレイミュージアム(PLAY! MUSEUM)について

「円形の壁の展示室」が気になり、家に帰ってからPLAY! MUSEUMについて調べてみました。ネット上にある2020年の記事(https://mag.tecture.jp/culture/20200609-988/)によれば、PLAY! MUSEUMは、2020年6月10日、東京・立川駅北側の旧飛行場跡地に誕生した新街区「GREEN SPRINGS(グリーンスプリングス)」の施設の一つです。新街区のコンセプトは「空と大地と人がつながるウェルビーイングタウン」。38,900.20平方メートルの敷地内に、多摩地区では最大規模となるホール、ホテル〈SORANO HOTEL〉、各種ショップ、保育園、複合文化施設〈PLAY!〉などがあります。PLAY! MUSEUMはPLAY!の2階で、その名物は「楕円形の展示室」とのことでした。模型写真を見ると、本展1階展示室を楕円形にしたものです。

そうすると、本展の1階展示室はPLAY! MUSEUMの壁を持ってきたのではなく「PLAY! MUSEUMの壁と同じようなものを名古屋市美術館で一から組み立てた」ということになりますね。本展の内装工事は、相当に大掛かりなものだったと思われます。

なお、PLAY! MUSEUMについては(MUSEUM|PLAY! MUSEUMとPARK (play2020.jp))もご覧ください。

内装設計をした「手塚建築研究所」についても調べると、500人の子どものために作られた外周183mの楕円形の「ふじようちえん」を設計していました(ふじようちえん|教育施設実績|手塚建築研究所 (tezuka-arch.com))。楕円が好きなのですね。「ふじようちえん」の屋上デッキでは、園児が遊ぶこともできます。

◆最後に

 井口さんによれば、「展覧会はスタートから好調」とのこと。挿絵の原画はもちろんですが、美術館1階の展示空間も見ものです。「プーさんA to Z」の展示や「アッシュダウンの森」のインスタレーションも、本展独自のもの。「スタートから好調」というのは、確かに頷けます。お勧めですよ。

ていねいに展示の工夫などにも言及してくださいました。
井口課長さん、ありがとうございました。

Ron

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