「顕神の夢―幻視の表現者」食事会とミニツアー 2024.02.17 PM0:00~03:00 

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

2月17日(土)に名古屋市美術館協力会主催の食事会とミニツアーが開催され、名鉄碧南駅前の大濱旬彩大正館(以下「大正館」)と碧南市藤井達吉現代美術館(以下「美術館」)に行ってきました。美術館で開催中の展覧会は「顕神の夢-幻視の表現者」(以下、「本展」)でした。以下は、そのレポートです。

◆食事会(正午~午後1時)

大正館での食事会は2回目。前回は2018年8月26日、「長谷川利行展」ミニツアーに併せて開催されました。前回の参加者は26名、今回の参加者は11名。参加者は少し減りましたが、コロナ禍により自粛を強いられて来た食事会が再開。ようやく華やかな雰囲気が戻って来たと感じました。

通されたのは、掘り炬燵式の落ち着いたお座敷「仲の間」。ほぼ定刻の正午過ぎに全員が揃い「花弁当」が配られました。正方形のお弁当箱を四つに仕切って、天ぷら、刺身、煮物、フルーツが並び、茶碗蒸し、一人前のミニすき焼き(トマト入り)、ご飯、赤だしがついて1,800円というリーズナブルなお値段。「碧南まで来てよかった」という歓声が上がりました。トマトの入ったすき焼きもおいしかったです。おしゃべりを交えながらの食事会が終わり、参加者が大正館を後にしたのは、午後1時過ぎでした。10分ほど歩くと美術館に到着。ミニツアー開始の午後2時までは時間の余裕があります。ミニツアー前に本展を鑑賞する人、美術館の西にあるレストラン・カフェK庵(九重味淋株式会社内)や隣の「石川八郎治商店」に向かう人、清澤満之記念館(きよざわ・まんし・きねんかん:清澤満之は真宗大学(現大谷大学)初代学長を務めた宗教哲学者。清澤満之が暮らした西方寺(さいほうじ)に併設(金・土・日・祝日開館、観覧料300円))を見学する人に分かれ、ミニツアー開始を待つこととなりました。

(補足)大正館のURLは右のとおり:https://taishokan1914.com/

◆「顕神の夢―幻視の表現者」ミニツアー(午後2時~3時)

ミニツアーの参加者は14名。午後2時少し前でしたが、集合場所の美術館2階ロビーに参加者全員が揃ったので、美術館の大長悠子学芸員(以下「大長さん」)の解説によるミニツアーが始まりました。

◎2階ロビーでの解説

大長さんからは、本展は「見えない世界を敏感に感じ取る芸術家の作品を展示したもので『顕神』は造語。51人の作家の作品を紹介する展覧会で、昨年4月に川崎市岡本太郎美術館から巡回が始まり、本展は5館目。最後の巡回です」と解説がありました。

◎見神者たち(2階展示室1)

「宗教家の作品を展示しているコーナー」とのこと。大本教の教祖・出口なお《お筆先》については「出口なおは文盲でしたが、うしとら(艮)のこんじん(金神)が降りてきて、『うしとらのこんじん』の命ずるまま、20万枚以上の紙に『うしとらのこんじん』などの文字を書いた」との解説があり、出口なおと並ぶ「もう一人の教祖」出口王仁三郎の墨書、観音像、陶器については「出口王仁三郎は芸術は宗教の母と言っていた」との解説がありました。岡本天明《三神像》についての解説は、「30分で出来てしまった作品」で、左は「つくよみ=月の神:三日月が描かれている」、中央は「スサノオ=地球の神:赤子を抱いている」、右は「天照大神=太陽の神:太陽を描いている」というものでした。

◎越境者たち(2階展示室1)

「異次元と行き来する芸術家の作品を展示しているコーナー」とのこと。「宮沢賢治の水彩画は、複製画。岡本太郎の作品は1960年代の芸術=呪術という考えにより描かれたもので、《千手》の画面上部に描かれているのは大きな手。そこからに周りにエネルギーが噴出している」との解説がありました。

O JUN(オージュン)については「非日常の世界を描く作家で、《XMAZ(クリスマス)》は新潟の少女監禁事件被害者の少女が窓から見ていた世界を描いたもの」との解説でした。中園孔二については「海で溺れた夭折の画家。手の中に目(に映った風景?)があるように見える《無題》は、本展チケットのデザインに使われています」との解説がありました。

◎幻視の画家たち(2階展示室1)

「神から与えられたビジョンを描いた作品を展示しているコーナー」とのこと。「村山槐多《尿する僧》は狂気を描いたものですが、自画像とも言われており、尿は生命の象徴でもあります。隣の作品は《バラと少女》、二つの作品が並ぶと、恋人にオシッコをかけているように見える」との解説があり、関根正二《三星》については「オリオン星座の三星で、左が姉、中央が本人、右が恋人。本人が包帯をしているのは、手術跡ともゴッホを意識した姿とも言われている」との解説でした。

萬鉄五郎《雲のある自画像》は良く知られた作品ですが、隣の《目のない自画像》については「目だけでなく口も無い不思議な作品」とのことで、河野通勢《自画像》については、「耳が特徴的で、向かって左にも耳が見えます。河野は神の声が聞こえる、光がみえる、という文も書いています」との解説がありました。

◎幻視の画家たち(2階展示室2)

庄司朝美の作品については「アクリル板の裏から彩色したもの。本人は、何かに描かされているという感覚で描いている」との解説があり、藤山ハン《南島神獣-四つのパーツからなる光景》については「頭に皿と石を載せた幻獣ケンムンを描いた作品。ケンムンは奄美大島の自然の番人ですが、今、ケンムンの棲む処はない」との解説。八島正明《給食当番》については「木綿針で画面を引っ掻きながら描いた作品。彼は、広島記念館で原爆の光線で人の影だけが残された石を見て画家を目指し、《給食当番》は2歳で亡くなった妹を追悼する作品」との解説。真島直子のオブジェ《妖精》については「頭蓋骨の上に脳が載っており、鉛筆画の《妖精》にも頭蓋骨と脳が描かれている」との解説でした。

◎内的光を求めて(2階多目的室)

「何れも、カラフルな作品で,形のない光を描いている」との解説がありました。

◎神・仏・魔を描く(1階展示室3)

最初の展示は、円空の《十一面観音菩薩立像》です。「三宅一樹《スサノオ》は霊木を彫刻したもので、平野杏子《善財南へ行く》は、善財童子という求道者が善知識を訪ね歩く物語を描いた作品。牧島如鳩《魚籃観音像》は、大漁祈願のために小名浜(福島県いわき市)の漁業組合に飾られていた作品。仏像だけではなく、画面上には聖母マリア、画面右にはイスラム風の女性。小名浜の海岸も描かれ、実際の風景と宗教の風景を描いた」との解説がありました。

◎大長さんへのQ&A

Q:本展は、どのように企画されたのですか?

A:足利美術館が中心になり、本展が巡回する5館のスタッフが協議して企画。一般財団法人地域創造の助成を受けているので「公立美術館の所蔵品を活用する」ことを重視。本展では、久留米市美術館の所蔵品・高島野十郎《蝋燭》など、公立美術館の収蔵品を積極的に展示。(補足)図録には[企画・監修 江尻潔(足利美術館次長)、土方明司(川崎市岡本太郎美術館館長)]と記されていました。

Q:来年度は、どのような展覧会を企画されていますか?

A:巡回展の「春陽会誕生100年 それぞれの戦い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ」は、5.25~7.7に予定。「没後百年 富岡鉄斎」は「開催する」ことは確かですが、それ以上は、まだ話せない状況。

◆自由観覧(午後 3時~)

ギャラリートークの終了は午後3時頃で、その後は自由観覧・自由解散となりました。令和2年度から5年度までの間は、コロナ禍で協力会の活動が制限されてきましたが、令和6年度からは、コロナ禍以前の活動ができるようになることを願うばかりです。

                            Ron.

展覧会見てある記 豊田市美術館「未完の始まり」ほか  

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

 2024.02.12 投稿

豊田市美術館(以下「豊田市美」)で開催中の「未完の始まり―未来のヴンダーカンマー」(以下「本展」)に行ってきました。当日は「第3期 コレクション展」(以下「コレクション展」)も同時開催していました。

原稿を書こうとしたら、「美術館ナビ」に本展の写真入りレビュー(2024.2.11 ライター・岩田なおみ。URLは次ページ末)が掲載されていることを知りました。なので、図版・解説はそちらに譲り、以下は簡単なレボート・感想とします。

◆本展(1階・展示室8)

 本展の作品リストによれば、「ヴンダーカンマー(驚異の部屋)」は15世紀に始まった「ミュージアム」の原型で、「世界中からあらゆる美しいもの、珍しいものが集められた」部屋とのことです。豊田市美の入口に豊田市博物館のパンフレット(URLは次ページ末)が多数積まれていました。本展は本年4月予定の豊田市博物館の開館を盛り上げるための企画かもしれませんね。

さて、本展に展示されているのは、5人の作家による現代アートの作品です。うち、4人の作品は1階・展示室8に、残る1人の作品は2階・展示室1に展示されています。

展示室の入口に展示室内の作品配置図や出品作家・出品作の紹介を掲載した作品リストが置かれていたので、鑑賞の助けになりました。余裕があれば、お守り代わりに作品リスト(URLは次ページ末)をダウンロードして、予習しておくことをお勧めします。

〇リウ・チュアン(Liu Chuang:メキシコ生まれ)

展示室に入ると、ウサギの剥製を使った作品、さらに進むとシカの剥製を使った作品を展示。先住民の伝統的な手法で刺繍した作品もあります。どれもマイルドで、なじみやすい作品だと思いました。

〇タウス・マハチェヴァ(Taus Makhacheva:旧ソビエト連邦生まれ)

立体作品の《リングロード》、装身具とその解説文書による《セレンデピティの採掘》の外、写真・動画と、多彩な作品を展示しています。2つの動画は、どちらも1時間近い作品だったので、パスしてしまいました。

〇田村友一郎リウ・チュアン(日本生まれ)

作品リストには《TIOS》と記載されていますが、樹脂製バンカー・、スマートフォン用ガラスの砂・チタン製ゴルフドライバーというインスタレーション、数多くのスマートフォンで作った照明器具、チタン製の骨、チタン製の骨とスマートフォンのレントゲン写真などの総称です。

「物を並べる」という点は、コレクション展(展示室3)に多数展示されているヨーゼフ・ボイスの作品と共通していると思いました。

〇リウ・チュアン(Liu Chuang:中国生まれ)

出品しているのは《リチウムの湖とポリフォニーの島Ⅱ》という1時間近い映像作品のみ。長いので「パスしようか」と一瞬思いましたが、思い直して鑑賞。映写機4台を使った超ワイド画面は迫力があります。座る場所もあって、疲れません。この動画を見なかったら展覧会の内容の2割を捨て去ることになっていたので、鑑賞してよかったと思います。

動画の始まりは、SF映画のようでした。「リチウムの湖」というのは南米の塩湖のことです。湖の塩水を濃縮してリチウムを採取する動画は初めて見るもの。あまりの規模の大きさに「怖ろしい」とさえ感じました。このほか、東南アジアの少数民族の映像や絵巻物に描かれた中国風の動物のアニメーションもあります。

◆本展(2階・展示室1)

〇ヤン・ヴォー(Danh Vo:ヴェトナム生まれ)

大きな木製の枠に吊り下げた、額入りの植物写真の数々と、レタリング、脚の彫像を展示しています。作品の詳細は「美術館ナビ」のレビューをご覧ください。

◆コレクション展(2階・展示室2~3)

本展に来たら「コレクション展を見ない」という手は、ありません。

展示室2は、山口啓介のエッチング。展示室3で、最初に目に飛び込んできたのはヨーゼフ・ボイスの作品ですが、折りたたみ式のクラシックカメラを板に貼り付けた、アルマン《Click-Clack Flub》、イケムラケイコ《大きいライオンの家》、塩田千春《トラウマ/日常―赤い靴》、奈良美智《Girl on the Boat》、河井寛次郎《象嵌草花扁壺》《碧釉扁壺》、黒田辰秋の漆器2点などが目を引きました。

◆コレクション展(3階・展示室4)

2020年制作の奈良美智《Though the Break in the Rain》が一番印象的でした。白髪一雄、堂本尚郎の作品を見た時は、岡崎市美術博物館「レアリスムの視線」を思い出しました。

◆コレクション展(2階・展示室5)

藤田嗣治《自画像》が印象的でした。岡崎市美術博物館「レアリスムの視線」でも《少女》《ラ・フォンテーヌ頌》を展示していましたね。

◆最後に

 昨年秋の「フランク・ロイド・ライト展」の余韻でしょうか。私が豊田市美に行った時は、若い人たちが多数来館していました。会期は長く、5月6日(月・祝)まであります。

Ron.

参考資料(本展関係のURL)

豊田市美術館

「未完の始まり」ホームページURL: Toyota Municipal Museum of Art 豊田市美術館

作品リスト   URL:wunderkammer-galleryguide-0119-A4.pdf (museum.toyota.aichi.jp)

プレスリリース URL: press-release_wunderkammer231205-5 (city.toyota.aichi.jp)

2023年度 第3期コレクション展 URL: Toyota Municipal Museum of Art 豊田市美術館

作品リスト   URL: HP(\Áê¹È.xlsx (museum.toyota.aichi.jp)

豊田市博物館

ホームページ  URL: どんな博物館? – 豊田市博物館 (city.toyota.aichi.jp)

パンフレット  URL: 01.pdf (city.toyota.aichi.jp)

美術館ナビ

「未完の始まり」レビュー URL: 【レビュー】「未完の始まり―未来のヴンダーカンマー」 豊田市美術館 ~地球規模で情報やモノが行き交う現代の「ミュージアム」のゆくえ – 美術展ナビ (artexhibition.jp) )

展覧会見てある記「レアリスムの視線」岡崎市美術博物館

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

2024.02.09 投稿

岡崎市美術博物館(以下「美術館」)で開催中の「レアリスム視線―戦後具象美術と抽象美術」(以下「本展」)を見てきました。以下は、本展の概要と感想などです。

◆本展紹介Videoの概要

美術館1階の受付で観覧券を購入している時、ドビュッシーの音楽が聞こえてきました。振り返ると、音楽の出所は、ロビーのモニター。モニターに映っていたのは、本展の紹介Videoでした。食い入るように画面を見ている人がいたので、その後ろに座り、モニターを眺めることにしました。

Videoによれば、本展の場合の「レアリスム」は、日本語訳の「写実主義」よりも広く「具象表現だけではなく、現実を追求して内側の芸術性を追求していく抽象表現も含む」というのです。

〇第1章 戦後具象美術画壇と時代の証人者たち

具象表現では、主にベルナール・ビュッフェと彼が参加した「オム・テモワン(時代の証人者)」に焦点を当て、同時代に開催された「時代の証人画家」展に参加したピカソや藤田嗣治なども紹介する、との解説でした。ベルナール・ビュッフェの作品は2022年に寄贈を受けたもので、「本展がお披露目」とのことです。また、アルベルト・ジャコメッティ《鼻》(図版:本展チラシに記載)についての解説もあり、異常なまでに長く伸びた鼻が目を引きますが、作者にとっては「見えるまま」の表現、とのことでした。

〇第2章 アンフォルメル美術

抽象美術では「アンフォルメル」と、この運動と関係した「具体美術協会」を取り上げています。抽象美術には、モンドリアンに代表される「冷たい抽象」と「熱い抽象」の2つの潮流があり、「アンフォルメル」「具体美術協会」は「熱い抽象」。堂本尚郎《絵画》(図版:美術館ホーページに記載)については「手術後、麻酔から覚めるときに体験した“ホワイトアウト”の感覚を表現」との解説がありました。

〇第3章 シュルレアリスム運動

「シュルレアリスム」については、「無意識を表面化」したもの。2024年は、アンドレ・ブルトンが『シュルレアリスム宣言』を発表してから100周年のメモリアル・イヤーと紹介。クルト・セリグマン《メムノンと蝶》(図版:美術館ホーページに記載)について「メムノンはギリシア神話に出てくる英雄の名前。すべてが捻じれているが、現実に向きあい、現実を表現したもの」との解説がありました。「蝶はどこ?」と思ったのですが、種明かしはありません。ひょっとしたら、蝶は成虫ではなく蛹なのかな?

〇第4章 日本の様相

名古屋の前衛芸術を志向する「匹亞会(ひつあかい)」を紹介。「匹亞」とは、「次代を担うもの」という造語とのことでした。また、堀尾実《フォトモンタージュ》(図版:本展チラシに記載)ついての解説がありましたが、名古屋市美術館所蔵なのに、これまで見たことがなかったので、とても興味深く聴くことができました。解説で取り上げたのは6点組のうち仏像の写真。写真をいくつかのパーツに切り離し、隙間を空けて台紙に貼り付けた作品です。作品の鑑賞者は解体されたパーツの隙間を埋めて、頭の中で元のイメージを作り上げようとします。そして、そこから生まれる違和感こそが「作者の狙い」のようです。

〇バック・グラウンド・ミュージック

Videoは約15分間。本展の概要を分かりやすくまとめているので、鑑賞の助けになりました。Videoの最後に音楽の曲名が紹介され、ドビュッシー作曲の「アラベスク第1番」と「夢」だと分かりました。

◆第1章 戦後具象美術画壇と時代の証人者たち

最初に展示されているのは、ベルナール・ビュフェのドライポイントの数々。作品リストに記載されているのは版画集の名前のようで、「声」というタイトルでは、旧型の受話器・犬とマッチ箱・リボルバー拳銃・声を聞く人の4枚が展示されていました。直線的な固い描線、デフォルメされた顔、寂しさを漂わせる画面で、ビュッフェらしい作品ばかりです。「日本への旅」「サントロペ」は、カラーリトグラフ。「日本への旅」は1981年制作で、6枚が展示されていました。表紙、芸者、富士山、東大寺、力士の外、東京タワーと首都高速道路を描いた現代の風景もあります。《東京の高速道路》という1980年制作の油絵も展示されていました。この外、《花と道化師》は、本展のチラシに記載されています。

「時代の証人画家」展に参加した作家の作品としては、ラウル・デュフィ《電気の精(10枚組のうち2点)》、藤田嗣治《少女》《ラ・フォンテーヌ頌》、パブロ・ピカソ《老いたる王》《フットボール》、フランシス・ベーコン《スフィンクス》、アルベルト・ジャコメッティ《鼻》(図版:本展チラシに記載)《ディエゴの肖像》、ジョルジュ・ルオーの版画などが展示されており、見ごたえがありました。

◆第2章 アンフォルメル美術

「アンフォルメル」の画家としては、サムフランシス《MAN BORN》《春》、ピエール・スーラージュ《絵画1969年5月26日》、堂本尚郎《絵画》を展示。具体美術協会の画家としては、フット・ペインティングの白髪一雄《無題》、元定定正《作品2》、田中敦子《作品》(図版:本展チラシに記載)《作品》《作品》、今井俊満《東方の光》始め4点を展示。なかでも白髪一雄《無題》は、身体を使って描いたという感じが、画面から伝わってきました。

◆第3章 シュルレアリスム運動

「シュルレアリスム」はその名の通り、写実主義を超えていると思われますが、「目前に広がる『現実』そのものにある『真の現実』を追求した」ということから本展では「レアリスム」に入れています。この視点は碧南市藤井達吉現代美術館で開催中の「顕神の夢-幻視の表現者」と共通したものを感じました。

クルト・セリグマン《メムノンと蝶》(図版:美術館ホーページに記載)の外、サルバドール・ダリ《ダリの太陽》、マックス・エルンスト《貝の花》《森》、ヴィクトル・ブローネル《誕生の球体》などが展示されており、岡崎市美術博物館のシュルレアリスムのコレクションを堪能することができました。

◆第4章 日本の様相

堀尾実「フォトコラージュ」の6点(うち、1点の図版は本展チラシに記載)の外、美術館所蔵の堀尾作品を4点展示。名古屋市美術館所蔵の作品では竹田大助《自在天》《弔鐘》の2点も展示しています。何れも初めてみる作品でした。この外、北川民次《平和な闘争》は1964年の東京オリンピックをテーマにした作品でした。

◆最後に

美術館のリニューアル・オープン後、初めて来た展覧会ですが、大いに楽しむことができました。特に、名古屋市美術館所蔵の作品は初めて見るものばかり。協力会の会員さんには「お勧めの展覧会」だと思います。

なお、名鉄バスを利用する場合、東岡崎と岡崎市美術博物館を結ぶ系統は、1時間に1本のバスしかありません。あらかじめ時刻表をご確認くださいますよう、お願い申し上げます。

Ron.

◆追加情報

〇本展は、「展示室内では写真撮影禁止」だったため、図版は掲載できません。ただ、美術館のホープページと本展チラシには図版が掲載されていますので、下記のURLで検索してください。

・岡崎市美術博物館「レアリスムの視線」ホームページのURL

URL:開催中の展覧会 「レアリスムの視線-戦後具象美術と抽象美術」 | 岡崎市美術博物館ホームページ (okazaki.lg.jp)

・本展チラシのURL

URL: réalisme_A4_fix (okazaki.lg.jp)

〇本展は、WEB割引(一般:1,200円→1,100円)があります。下記のURLで検索してください。

岡崎市美術博物館「レアリスムの視線」WEB割引ページのURL

URL:WEB割引 企画展「レアリスムの視線­―戦後具象美術と抽象美術」 | 岡崎市美術博物館ホームページ (okazaki.lg.jp)

読書ノート 「文春美術館」 「週刊文春」2024年2月15日号

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

2024.02.08 投稿

「その他の世界61」猛獣画廊というピンチヒッター 執筆:木下直之

2月8日発売の「週刊文春」が、名古屋市美術館で開催中の「猛獣画廊壁画修復プロジェクト 修復完了報告展」の展覧会評を掲載していたのでお知らせします。

「週刊文春」の「文春美術館」は、「その他の世界」「東洋美術逍遥」「名画レントゲン」という3タイトルが毎週交代して、リレーする連載です。昨年8月には「東洋美術逍遥」が、愛知県美術館「幻の愛知県博物館」を取り上げていました。今回は、木下直之・静岡県立美術館館館長の執筆による展覧会評「その他の世界」が取り上げたものです。

「猛獣画廊壁画」は、第二次世界大戦中の猛獣処分により主(あるじ)が不在となったカバ舎に、せめて絵だけでもと展示されたものです。「その他の世界61」は、わずか1ページという分量ですが、「猛獣画廊壁画」について分かりやすくまとめています。

現在の「週刊文春」には多くの読者がいるので、名古屋市美術館の「猛獣画廊壁画修復プロジェクト」が広く知られるのは、ありがたいばかりです。なお、展覧会の詳細につきましては、名古屋市美術館ホームページの下記URLをご覧ください。

特集 開館35周年事業 猛獣画廊壁画修復プロジェクト 修復完了報告展 | 展覧会 | 名古屋市美術館 (city.nagoya.jp)

「ガウディとサグラダ・ファミリア」展の鑑賞後には、「猛獣画廊壁画修復プロジェクト 修復完了報告展」もご覧くださいますよう、お願い申し上げます。

Ron.

展覧会見てある記「顕神の夢 ―幻視の表現者」碧南市藤井達吉現代美術館

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

2024.01.27 投稿

碧南市藤井達吉現代美術館で開催中の「顕神の夢 ―幻視の表現者― 村山槐多、関根正二から現代まで」(以下「本展」)を見てきました。

1月7日付中日新聞の記事によれば、岡本太郎美術館(川崎市)などと連携した全国巡回展の5カ所目(最終)で「霊性や神性、宗教観をテーマとした企画展」。前期(1/5~1/28)後期(1/30~2/25)で20点程度入れ替わるようで、展示室の写真(岡本太郎と横尾忠則の作品が見えます)も掲載されていました。

本展の入口は2階で、最後の展示「神・仏・魔を描く」は1階・展示室3です。会場入り口に「作品リスト」が置かれ、展示室にも作者の言葉などが掲示されており、鑑賞の助けになります。

◆「見神者たち」・「越境者たち」・「幻視の画家たち」・「神・仏・魔を描く」(2階・展示室1)

〇「見神者たち」

最初の展示は大本教の教祖(開祖)出口なおの《お筆先》と、もう一人の教祖(聖師)出口王仁三郎(おにさぶろう:開祖の女婿)の仏画《厳上観音》、書《おほもとすめおみかみ(大天主太神)》と茶碗《耀盌(ようわん)》です。出口なおは57歳の時に神がかりして「艮(うしとら)の金神(こんじん)」の命ずるまま「うしとらのこんじん」「のこらずのこんじん」等と自動筆記した20万枚を超える「お筆先」を残したとのことでした。いずれの展示品も現世の向こうからやってきた「何か」を表現しており、「顕神の夢」の冒頭にふさわしいと思います。岡本天明《三貴神像》は、見るからに神道の神の姿を描いたもの。金井南龍《妣(はは)の国》(本展チラシ裏07に図版、以下「裏07」と記載)は、昭和40年代の父と子どもたちが祈る姿だと思ったのですが、実はイザナギと子どものアマテラス、ツクヨミ、スサノオが、黄泉の国のイザナミを慕う姿でした。三輪洸旗《スサノヲ》《雷神》《太子と大師》《神馬》は、いずれも作者が見た「神の波動」を描いたものだと思われます。

〇「越境者たち」

目を引いたのは、馬場まり子《海から見た風景Ⅳ(月は東に日は西に)》です。画面中央に山並みが横たわり、空には大きくて丸いものが二つ並んでいます。山並みに向かって人の影が長く伸びているので、太陽を背にして、東の風景を描いたと思われますが、不思議なことに月と日が二つとも浮かんでいます。この作品の横には、岡本太郎《具現》《千手》(裏03)と横尾忠則《水のある赤い風景》《如何に生きるか》の4点が並んでいます。《水のある赤い風景》は大火事を想起させ、《如何に生きるか》にはY字路とオーロラが描かれています。以上5点はいずれも「この世を越えた向こう側」を描いているようです。

本展のチケットに使われている、中園礼二《無題》も展示されています。展示室1の最後の方には、宮沢賢治の作品の複製画もあり、なかでも人間の姿をした電柱が歩く姿を描いた《無題(月夜のでんしんばしら)》は、とてもシュールで、思わず見入ってしまいました。

〇「幻視の画家たち」

本展の副題は「村山槐多、関根正二から現代まで」。そのうち村山槐多は、《裸婦》(前期のみ)と《バラと少女》の2点を展示していました。後期には《尿する禅僧》が展示されます。一方、関根正二は、《少年》(チラシ表紙)《自画像》《神の祈り》《三星》の4作品を展示。どういうわけか「幻視の画家たち」という表題をつけると、以上の作品は、いずれも「幻」を描いているように思えてしまいます。

頭上に赤い雲が浮かぶ、萬鉄五郎《雲のある自画像》(裏09)を始め、宮沢賢治の童話を描いた、高橋忠彌《水汲み》、ケンムンという謎のイキモノを描いた、藤山ハン《南島神獣―四つのパーツからなる光景》、胴体が蓑虫、羽が枯葉の巨大な蝶を描いた、三輪田俊助《風景》などは「幻視の画家」にふさわしい作品です。

〇「神・仏・魔を描く」

展示室1の最後に展示の橋本平八「猫A」ですが、作品リストでは「神・仏・魔を描く」に入っています。展示スペース等の都合で2階に展示されたと思われますが、他の作品となじんでいました。

◆「幻視の画家たち」・「内的光を求めて」・「神・仏・魔を描く」(2階・展示室2)

〇「幻視の画家たち」

展示室に入ると舟越直木のドローイングとブロンズ像が並んでいます。ブロンズ像には目鼻が無く、ドローイングは人間離れした女性を描いています。草むらを描いた芥川麟太郎《笹藪わたる》には、1945年の横浜空襲の時、母子で逃げた体験が反映されているようです。そう思って作品を見ると、作者の心情が見える気がします。

庄司朝美《21.8.18》(裏08)は透明なアクリル板に絵の具を塗り重ねては拭き取って制作したもの。描いた像が、絵の具の中から見え隠れするように思える不思議な作品で、この世の向こう側から描いたように感じます。矢島正明《給食当番》(裏04)は、原爆資料館で見た、原爆の熱戦を浴びて蒸発した人の黒い影だけが残された石の階段に触発された作品。廊下の黒い影は終戦の二週間後に死んだ妹とのことです。花沢忍《宇宙について》《夢》は、シャガールの幻想的な作品のようでした。

〇「内的光を求めて」

横尾龍彦《無題》(1/5~1/28のみ)、《枯木龍1吟》《龍との闘い》の3点は、タイトルと作品を見比べながら色々と観察したのですが「龍」の具体的な姿はつかめません。とはいえ、線の勢いや内なる光のようなものは感じることができました。

〇「神・仏・魔を描く」

真島直子の立体作品《妖精》とドローイング《妖精》は、モチーフに髑髏を使っているためか、作品リストでは「神・仏・魔を描く」に入っていました。石野守一《不安》(裏05)も同様に、展示室2で鑑賞することができました。

◆「内的光を求めて」・「神・仏・魔を描く」(2階・多目的室)

〇「内的光を求めて」

黒須信雄《八尺鏡(やたのかがみ)》、上田葉介《支えあう形》、橋本倫《光の壁龕Ⅱ》、石塚雅子《彼方》(以上は前期のみ)と藤白尊《複数の光源》《小さな渦巻》《未明》は、カラフルな現代アートでした。

〇「神・仏・魔を描く」

黒川弘毅のブロンズ像《EROS No.71》《EROS No.72》は、作品リストでは「神・仏・魔を描く」に入っています。

◆「神・仏・魔を描く」(1階・展示室3)

2階・多目的室を後にして1階・展示室3に向かうと、真っ黒な円空《十一面観音立像》が出迎えしてくれました。インパクトがあったのは、佐々木誠の木彫《久延毘古(くえびこ)》で、宝珠のついた竹の笠を被っている「案山子の神」。案山子なので、腰から下は四角柱でした。三宅一樹《スサノオ》は、台風で半倒壊した樹齢600年から彫り出したもの。《root1(上九沢八坂神社御神欅)》は洞(うろ)のある御神木のスケッチ。いずれも印象深いものでした。

秦テルヲ《阿修羅(自画像)》《恵まれしもの》《樹下菩薩像》の3点は、優しくて分かりやすい仏画です。牧島如鳩《魚籃観音図》は大漁祈願のために描いた油絵で、天女や菩薩ばかりかマリアや天使まで描かれている「国籍不明」の作品です。佐藤渓《大天主太神(おおもとすめおおみかみ)と二天使(にかみがみ)》(前期のみ)は、大天主太神の頭に角が生えていますが、大本教の影響が反映された作品とのことでした。

宗教画ではありませんが、本展は、炎を上げて燃えるロウソクを描いた高島野十郎《蝋燭》を2点展示しています。2018年開催の協力会・秋のツアーで福岡県立美術館を見学した時に初めてこの作品を知り、高い精神性を感じた思い出があります。若林奮の作品も同様に、宗教画ではありませんが精神性を感じます。

以上の外、藤井達吉の作品も、《炎》《佛殿図》《土星》《斑鳩の里》の4点を展示しています。また、1階・展示室4では、令和5年度コレクション展 4期「継色紙の世界」を同時開催中です。

◆最後に

本展チラシは「本展は、今までモダニズムの尺度により零(こぼ)れ落ち、十分に評価されなかった作品や、批評の機会を待つ現代の作品に光をあてる一方、すでに評価が定まった近代の作品を、新たな、いわば「霊性の尺度」でもって測りなおすことにより、それらがもつ豊かな力を再発見、再認識する試みです」と書いています。本展は、この言葉どおり、意欲的な展覧会で「一見の価値あり」だと思います。

本展については、先日、協力会から「2月17日(土)午後2時からミニツアー開催」というお知らせが届きました。後期展示の作品を見ることができるので、参加するつもりです。ミニツアーの前に、碧南駅前の大正館で食事会も予定されているようです。今から楽しみですね。

Ron.

◆追加情報

碧南市藤井達吉現代美術館HP(本展チラシ、作品リスト及び主な作品を掲載)のURLは次のとおりです。

URL:顕神の夢 ―幻視の表現者― 村山槐多、関根正二から現代まで/碧南市 (hekinan.lg.jp)

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