2014年
4月16日
アーモンドの花咲く頃
アーモンドは日本の気候でも屋外栽培が可能で、植物園に行くと観られることも多い。まとまって植えられている場所も、私が知っている限りでも二ヶ所ある。両方とも神戸市東灘区の埋め立て地で、ひとつは東洋ナッツ本社工場の庭、もうひとつは神戸市の下水処理場東灘処理場の北側だ。東洋ナッツでは、1980年頃から栽培されていて、毎年3月20日頃一週間ほど一般開放されている。東灘処理場の方は、淡路神戸地震の震災から復興した記念に、アーモンド並木が作られたものだ。こちらはいつでも観られるが、花が咲くのは3月末頃。先ごろ4月8日に訪れてみたら、まだ花を着けている木もあった。ソメイヨシノのようにクローンではないから、一斉に咲いて一斉に散ることはないし、遅咲きの種類ということもあって、運良く間に合った。灘の酒蔵が建ち並ぶ地域の南側、小磯良平美術館からもそれほど遠くない場所だ。ちなみに、シチリアでは1月末から2月頃に咲く。アーモンドナッツの生産が最も盛んなのはアメリカのカリフォルニア州だ。
UN VAGABOND
フィンセント・ファン・ゴッホが描いたアーモンドの花の作品一覧
・「グラスに入れた花咲くアーモンドの枝」、アルル、1888年3月、ゴッホ美術館蔵
・「グラスに入れた花咲くアーモンドの枝と本」、アルル、1888年3月、個人蔵(日本)
・「花咲くアーモンドの木」、アルル、1888年4月、ゴッホ美術館蔵
・「花咲くアーモンドの枝」、サン・レミ、1890年2月、ゴッホ美術館蔵
2014年
4月15日
「マインドフルネス!」展覧会ギャラリートーク
4月11日(日)は、名古屋市美術館協力会の「マインドフルネス! 高橋コレクション 決定版2014」の展覧会ギャラリートークに参加しました。
当日は、ひとまず美術館2階の講堂に集合。美術館閉館後の午後5時10分に企画展示室入口に移動して、草間彌生≪ハーイ!コンイチハ≫のヤヨイちゃんとポチの前で再び集合。なお、この作品はチラシやポスターにも使われており、この展覧会では「特別に撮影してもよい」ということなので、記念撮影する人が続出しました。
名古屋市美術館の笠木日南子学芸員によれば、今回の展覧会は精神科医で現代美術コレクターの高橋龍太郎氏のコレクションから40作家の119点を選りすぐったもの。展覧会タイトルの「マインドフルネス」という言葉の意味は、先入観にとらわれず「現実をあるがままに受け入れる、気づき」だそうです。高橋龍太郎氏は図録に「マインドフルネス」を「パーリ語のサティ(見出す)に由来する言葉」と書いており、うつ病の認知行動療法に関係し、禅の影響もあるようです。
さて、展示作品ですが、美術館の広い空間でないと十分に鑑賞できないような大型の作品が多かったのが印象的でした。また、「現実をあるがままに受け入れる」という言葉どおり、先入観を排除して作品に向き会えば胸がドキドキするものばかりです。コレクターが感じた衝撃を追体験している感じですね。個人コレクションの面白さを十分に楽しむことができる展覧会です。
チラシに印刷されていた草間彌生、加藤美佳、奈良美智、村上隆、鴻池朋子、会田誠、山口晃、名和聡子の作品はどれも、実物でなければ味わえない迫力に満ちていました。
なかでも会田誠は、チラシの作品以外に無数のゼロ戦が空爆でニューヨークを火の海にする「紐育空爆之図」と大勢の若い女性が粉々にされる「ジューサーミキサー」というショッキングな作品も展示されています。「えっ」と思わず息をのみますが「マインドフルネス」「あるがままに」と唱えていると、不思議なことに凄惨さ以外の面も見えてくるような気がしました。
名和聡子「幸福と絶望」は展示室の壁一面を覆う大きさで、美術館でなければ鑑賞できません。鴻池朋子はチラシのものだけでなく、立体の「惑星はしばらく雪に覆われる」と映像の「mini-Odyssey」も展示されています。特に、立体作品は表面が鏡に覆われた6本足のオオカミで、鏡に反射した光が展示室の四方八方に散らばり、キレイでした。
以上のほか、池田学「興亡史」は超細密でありながら巨大な絵で「どこまで描くんだ?」と、見飽きません。松井えり菜「食物連鎖」は宇宙空間を背景に作家自身がマンモスやクジラ、人間などを飲み込む絵で、左端にはウーパールーパーが泳いでおり、不思議な魅力があります。そういえば、開会式には作家本人がウーパールーパーの被り物をかぶって並んでいたそうです。
塩保朋子「cutting insights」は美術館の1階と2階をつなぐ吹き抜けに吊るされています。長さ650cm×幅356cmの紙に刃物で切り込みを入れて模様を描いた、巨大な伊勢型紙のようなもので、壁に映ったシルエットがキレイでした。ただ、光源の関係で影が二重になってボヤけていたのが残念です。小田ナオキ「undead Family」はユーモラスな中の少し悲しげな表情が気になり、染谷亜里可「Decolor-level5」はベルベットの色を抜いて制作したと聞いてびっくりしました。どの作品も理屈抜きで楽しめるものばかりです。お勧めですよ。開催は6月8日(日)まで。
Ron.
2014年
4月9日
「大浮世絵展」ミニツアー
今年度の協力会ミニツアーは、名古屋市博物館で開催中の国際浮世絵学会創立50周年記念「大浮世絵展」で幕開け。4月6日(日)午前9時30分集合でしたが、9時過ぎから人が集まり始めました。ミニツアー参加者は40数名。開場と同時に1階の展示説明室に移動し、副館長の神谷浩さんからレクチャーを受けました。神谷副館長の話によれば、今回の展覧会は「浮世絵の教科書をめざして、みたことのある絵を世界中から集めた」夢のような企画です。しかし、浮世絵は展示期間が制限されるので、国内3会場で巡回するという展覧会を実現するのは、至難の連続であったようです。それだけに期待が増します。約40分のレクチャー後、展示会場に足を運びました。
「3章 錦絵の誕生」の主役は鈴木晴信。「雪中相合傘」の二人はいずれも中性的で、男の黒い着物と女の白い着物のコントラストが美しく、黒い着物の人物は謎の美女「黒蜥蜴」ではないかと妄想していました。雪の「きめ出し」白い着物の「空ずり」が綺麗です。
磯田湖龍斎「江戸見立六玉川 調布」は鈴木春信とよく似ていて素人には区別ができません。また、あの山東京伝が北尾政演という名で浮世絵を描いていたとは知りませんでした。
「4章 浮世絵の黄金期」の最初は鳥居清長。「大川端夕涼」を始め、どの美人もスーパーモデル並みの小顔・長身で、当時の日本人には無かった体型。でも、ナイスです。「駿河町越後屋正月風景」は、注文主の期待に応えた綺麗な絵でした。
喜多川歌麿も見ごたえのある絵が出ています。「歌撰恋之部 深く忍恋」は、神谷副館長のレクチャーどおり背景のピンクが美しく、心理描写も見事です。重要文化財の「納涼美人図」も収穫でした。「虫籠」は籠の網を透けて虫が見え、「錦織歌麿形新模様 白打掛」は輪郭線がほとんどなく色の面だけで構成され、「「難波屋おきた」は表・裏の両面から鑑賞できるなど、歌麿が様々な工夫を試していたことがわかります。
東洲斎写楽は大英博物館とギメ美術館から大首絵、計4枚が出ていました。重要文化財の「市川鰕蔵」と「大谷鬼次」は後期の展示なので見られません。神谷副館長が言っていた「展覧会の後半になるに従って良いものが出ます」とは、このことだったのですね。
「5章 浮世絵のさらなる展開」では「みたことのある絵」には欠かせない、北斎の「凱風快晴」「山下白雨」「神奈川沖浪裏」がちゃんと出ていました。「神奈川沖浪裏」のもとになったといわれる「おしをくりはとうつうせんのず」も展示されており、二つを比べると面白いと思います。肉筆画の「弘法大師修法図」は大きくて迫力がありました。
歌川広重の東海道五拾三次からは「日本橋 朝之図」「蒲原 夜之雪」「鞠子 名物茶屋」「庄野 白雨」と「みたことのある絵」を押さえています。鞠子の丁子屋は昨年春の協力会ツアーの際に昼食を食べましたが、今でも描かれた当時の面影が残っています。外には、名所江戸百景から「浅草田甫酉の町詣」「浅草金龍山」、切手になった「月に雁」などが展示されていました。
歌川国芳は「猫の当字 かつお」を始めダジャレとサービス精神が面白く、「其まゝ地口猫飼好五十三疋」では、宿場名とダジャレ、猫の絵の三つを一つひとつ見比べていたので、見終わるまでに随分時間がかかってしまいました。
最後「6章 新たなるステージへ」は幕末明治の作品。月岡芳年「奥州安達がはらひとつ家の図」は逆さ釣りの妊婦の姿が印象的。また、新版画に橋口五葉や伊東深水の作品があるとは知りませんでした。最後の展示は川瀬巴水「東京十二景 春のあたご山」満開の桜。楽しく花見ができました。
Ron.
2014年
4月4日
アルベルティーナのモディリアーニ
ウィーンのアルベルティーナ美術館に行ってきました。デユーラーの「野うさぎ」で有名な美術館。その素描は筆舌に言い表せないほどの描写力です。ミケランジェロやルーベンスの素描もありました。
そんななかモディリアーニの絵が一点「Young Woman in a Shirt」1918年制作。ボナールとルオーの絵にはさまれて展示されていました。他にはピカソ、シャガールの絵があり見応え充分でした。セセッションやヴェルベデーレや美術史美術館でクリムトやシーレの作品を数多く見ることができました。しかし特に印象に残ったのはレオポルド美術館です。そこではクリムトの絵が飾ってある部屋にはマーラーの音楽が聞けるヘッドフォンが設置してありクリムトの絵を見ながらマーラーの音楽が聴けました。何という贅沢。シーレの絵が飾ってある部屋で聞ける音楽はシェーンベルク。シェーンベルクをBGMにしてシーレの絵をゆっくり鑑賞します。4泊7日のパリ経由の忙しい旅行のなか静かな落ち着いた時間を過ごすことができました。来館者もそんなに多くないので自分のペースでじっくりと絵を楽しむことができます。
また夜は国立歌劇場、フォルクスオパーでオペラ鑑賞、楽友協会、コンチェルトハウスでクラシック鑑賞。楽友協会で聴いたマーラーの交響曲2番「復活」これはまさに名演。観客のすさまじい拍手で幕を閉じた。若い演奏者が多い楽団なので音がぐいぐいとこちらにせまってくる。当初はウェルザー=メストが指揮する予定が風邪でキャンセル。エストラーダという指揮者。これからが楽しみだ。
谷口 信一