ボギー的、美術鑑賞法 その1

カテゴリ:アート見てある記,ボギー鈴木 投稿者:editor

 ボギー的、美術鑑賞法とは、私、ボギー鈴木が、日ごろ美術鑑賞をするに当たり、実践していること、考えていることを紹介するものである。特に目新しさはないが、もしかしたら、皆さんの参考になるかもしれません。

 1回目はテレビ番組活用法である。お目当ての展覧会に行く場合、私は事前に美術館のHP等で情報を仕入れていくが、そんな時に役立つのが、美術関連のテレビ番組だ。私が現在、視聴しているのは、日曜美術館(NHK Eテレ)、美の巨人たち(テレビ愛知)、ぶらぶら美術博物館(BS日テレ)、世界の名画~素晴らしき美術紀行~(BS朝日)の4番組である。日曜美術館は、毎週日曜朝、9時~9時45分の放送で9時45分~10時はアートシーンという各地の展覧会の情報を紹介している。日曜美術館の本編自体も、最近話題の展覧会を紹介することも多いので、事前のレクチャーとして、私もよく活用する。翌週夜8時から再放送するので、見逃した時には、その時に観ればよい。なお、アートシーンは午前に放送したものを、その日の夜8時45分~9時に放送するので、注意を要する。番組構成は、司会の俳優の井浦新さんと、伊藤敏恵アナウンサーがスタジオにゲストを迎え、VTRを交えて、対談するのが基本パターン。NHKらしい、お堅い感じの番組だが、個人的には司会が井浦氏になって良かったと思っている。

 美の巨人たちは毎週土曜の夜10時~10時30分の放送で、事実上の再放送としてBSジャパンで毎週水曜夜10時54分~11時24分に、数週遅れで同じ番組を放送している。毎週一つの作品を取り上げ、ドラマ仕立てで掘り下げて行くところが楽しい。なにより俳優の小林薫さんのナレーションが素晴らしい。この番組も最近の展覧会を取り上げることがあるので、日曜美術館と見比べても面白いかもしれません。以上2番組は地上波の番組なので、普通に視聴できると思います。

その2に続く

ボギー鈴木(Bogie-suzuki)

名古屋市美術館協力会 「挑戦する日本画展」ギャラリートーク

カテゴリ:協力会ギャラリートーク 投稿者:editor

7月6日(日)は、名古屋市美術館協力会総会に引き続いて、現在開催中の「挑戦する日本画展」のギャラリートークに参加しました。今回のギャラリートーク参加者は64名。大勢でしたね。

山田学芸係長のお話、とてもわかりやすい!

山田学芸係長のお話、とてもわかりやすい!

展示室に行く前に、名古屋市美術館の山田学芸係長から「この展覧会で紹介するのは、戦後登場した「日本画滅亡論」という逆風のなかで「日本画の革新」に取り組んだ作家たちです。その挑戦ぶりを見てほしい。」という話があり、大いに期待して展示室に向かいました。
展示室に入って、最初に目に飛び込んできたのは金色の棺に安置されたミイラを描いた大きな絵。顔の上では蝶が舞っています。これは、川端龍子「夢」で、中尊寺でミイラが発見されたというニュースに触発されて描いたもの。その左隣には白っぽい抽象画のような作品。福田平八郎「新雪」で、写実画との解説でしたが、写実画でも切り取り方によっては抽象画に見えるのですね。左手の壁には、赤ちゃんを抱いた農婦の絵。秋田の農村風景ですが、何か変。解説によれば、福田豊四郎「秋田のマリア」で、聖母子像とのこと。確かに、どの絵も「挑戦する日本画」です。
今回展示されているのは「よく集めたなあ」と感心するほど粒ぞろいで、大型の作品ばかりでしたが、中でも印象に残ったのは2階の展示室で最初に目にした、中村正義「妓女」と横山操「高速四号」。どちらもチラシに出ていますが、やはり、実物は違いますね。加山又造「黒い薔薇の裸婦」には、目が釘付けになりました。
地下1階の企画展示室3には、桑山忠明「無題」と李禹煥「点より」が展示されています。「これが日本画?」と疑問を持ちましたが、どちらも日本画を学んだ作家で「日本画に挑戦した結果、この表現に至った」とのことでした。
名古屋市美術館所蔵の作品も、いくつか展示されています。なかでも、堀尾実「冬の構図」は日本画による抽象表現であり、興味を惹かれました。
山田学芸係長のトークにも熱がこもっており、とても時間が短く感じられましたが、ギャラリートークが終了したのは予定を15分超過の午後6時45分。しかし、参加した人たちからは「これなら、午後10時までも聞いていたかった。」という声が多数。みんな、満足して美術館を後にしました。
最後に、川端龍子「夢」、福田豊四郎「秋田のマリア」、加山又造「黒い薔薇の裸婦」は、いずれも前期(8月3日まで)のみの出品です。後期(8月5日~24日)のみ出品の作品もありますので、前期・後期どちらもご覧ください。それから、常設展は「挑戦する日本画展」に合わせた展示をしています。常設展もお忘れなく。
Ron.

当日は大盛況!美術愛好家たちが集まりました。

当日は大盛況!美術愛好家たちが集まりました。

上野の美術館巡りの一休み

カテゴリ:旅ジロー 投稿者:editor

 上野で美術館巡りをするとき、皆さんどこでお茶しているだろうか。とても良い店が、改修工事中の黒田記念館にできた。
黒田記念館は来年1月2日に再開する予定だが、喫茶店がひと足先に昨年9月開業した。黒田記念館は黒田清輝の遺言により、作品と遺産が国に寄贈されて昭和3年(1928年)にできたもの。現在は東京国立博物館の所属となっていて、改修工事が進められている。
改修工事が始まるまでは、木曜日と土曜日のみ13:00~16:00の開館、入場は無料だった。場所は東博正門に向かって左、芸大方向に進み京成電鉄旧博物館動物園駅先の信号を渡ったところ。喫茶店は別館になっていて、外にテラス席もあり、二階は和風のとてもお洒落な店だ。
基本的に休みはなく、平日7:30〜20:00 /土日祝8:00〜19:00の営業。もしそこが満員だったら、隣の国際子ども図書館、旧国会図書館上野分館、の中のレストランがお薦め。図書館は入場無料で、入口を真っ直ぐ進めばすぐ分かる。テラス席もあり、そぐそばで新館の工事が進んでいる。どちらの建物もとても美しく、建物を見るだけでも行く価値がある。黒田記念館は岡田信一郎、国際子ども図書館はジョサイア・コンドルの弟子達の設計で明治39年(1906年)に建てられたものだ。
Un Vagabond

名古屋市美術館協力会 「ミレー展」ミニツアー

カテゴリ:Ron.,ミニツアー 投稿者:editor

ミレー展、名古屋ボストンにて

ミレー展、名古屋ボストンにて

 今年はミレーの生誕200年に当たることから、名古屋ボストン美術館で「ミレー展:バルビゾン村とフォンテーヌブローの森から」を開催しています。協力会でも6月29日(日)のミニツアーでミレーとバルビゾン派の絵を見てきました。参加者は21名。10時の開館と同時に5階のレクチャールームで学芸員さんの解説を40分ほど聞いてから、各自のペースで作品を見て回りました。
学芸課長の井口智子さん

学芸課長の井口智子さん

 学芸員さんの話では、ボストン美術館所蔵のミレーの作品は、フランスを除けば世界随一。ミレーが活躍していた時代に熱心に収集した米国人のコレクションがボストン美術館に寄贈・寄託されているとのことです。岩波書店が「種をまく人」をマークにしていることを始め、ミレーは日本人好みの画家ですが、米国人好みの画家でもあったのですね。
今回の展覧会では、20作家64作品が展示されており、そのうちミレーの作品は「種をまく人」「羊飼いの娘」「刈り入れ人たちの休息」の三大作品をはじめ25点とのことでした。
解説を聞いたあと4階の展示室に入ると、大勢の来館者がいました。作品の前でメモを取っている人を何人も見かけます。展示は、Ⅰ巨匠ミレー序章、Ⅱフォンテーヌブローの森、Ⅲバルビゾン村、Ⅳ家庭の情景、Ⅴミレーの遺産の5章で構成され、最初に目にするのは30代半ばのミレーの自画像です。5階の展示室入口に展示してある、仏の写真家ナダルが撮影した有名になった後のミレーにくらべ、痩せて少し不安そうで、「厳しい生活だったろうな」と感じられます。
第1章の展示で目を惹くのが「ソバの収穫」です。晩年の作品なのに、ここに展示してあるのは故郷ノルマンディーの情景だからでしょうね。脱穀やソバの藁?を燃やすところなど、お米の収穫の様子と重なり、日本人にも懐かしさを感じさせる絵です。しばらく見入ってしまいました。
第2章は、コローの「フォンテーヌブローの森」が最初に飾られています。「森」というより「森の入口」の絵ですね。夏の昼でしょうか、空・入道雲と地上の樹・水たまり・牛の対比が心地よく、いかにも「ここからフォンテーヌブローの森が始まりますよ」と告げている感じです。
第2章は、どの絵も暗い森の中に1か所光が指しているという構成で、森の中にいる感じがよく出ています。なかでもペーニャの「森の中の池」は、光の当たっている池がハッキリ・クッキリ描かれています。また、バルビゾン派だけでなく、クールベ「森の小川」とモネ「森のはずれの薪拾い」も展示されています。特に、マネの作品はルソー「フォンテーヌブローの森の薪拾い」と並べてあり、描写の違いがよくわかります。
第3章は今回の展示の中心で、三大作品は全て第3章で展示されていますが、「種をまく人」は4階、あとの2作品は5階の展示です。「種をまく人」はチラシの図版にくらべ、とても暗いのにびっくりしました。日没寸前?(カラスが飛んでいるので)の真っ暗になりかけている斜面で、種をまく人の姿です。暗くて表情はわかりません。夕焼けの淡いピンクがキレイです。
ほかには、5階の入口に展示されているシャントルイユ「日没前の光に照らされるイガマメ畑」の夕焼けに引き付けられました。逆光の描写が美しいですね。あと、ランビネの「農家の森」は庭の木の間から見える陽のあたった農家を描いた小さな絵ですが、ニワトリやネコもいて「日本の農家もこんな感じだ」と感じる、何か懐かしい絵です。
第4章は人物画で、糸紡ぎや編物、縫物、バター作りといった女性が働く姿が印象的です。
第5章のデユプレの作品は「ガチョウに餌をやる子供たち」など3作品ありますが、どれも明るい色でハッキリ・クッキリと描いており、カラー写真を見ているような気がします。「時代が変わった」と感じます。展示室の出口には、ミレー最晩年の「縫物のお稽古」が展示されています。ミレーの死によって未完成に終わった作品ですが、窓の外の風景が印象派を思わせる明るい色彩で描かれており「いつまでもチャレンジしていた人だな」と、思いました。
最後に、夏のツアーは山梨県立美術館の「ミレー展」を予定しています。皆さん、参加してね。
                        Ron.
受付してくださった役員方々。感謝

受付してくださった役員方々。感謝