「黄金のアデーレ」 名画の帰還 (Woman in Gold)

カテゴリ:アート・ホット情報 投稿者:editor

 以前から気になっていた映画を観に行きました。
クリムトの「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」(通称:「黄金のアデーレ」)にまつわる映画で、冬休みということもあり、映画館はかなり混み合っていました。

 どなたでも、名古屋市美の展覧会に限らず、展示会場のキャプションに「個人蔵」と書かれた作品を観た覚えがあると思います。そして、どんな人が、どんな部屋にこれを飾っているのだろう、と思ったことがあると思います。そもそも作品は誰のために制作されるのでしょう。そんなことを考えさせられた映画でした。

 この映画は、ウィーンの美術館が所蔵する名画(「黄金のアデーレ」)と、ある家族の所有権にまつわる事実に基づいた物語です。ネタバレするので詳細は伏せますが、観る前に結末だけは知っていました。その上で観ても、やはりその結末には驚かされます。単なるハッピーエンドでは済ませられない、複雑なものを強く感じました。作品とモデルとその家族について。家族が暮らす社会やその歴史について。美術館に作品があるといことについて・・・。

 しばらくは、美術館で作品を見るたびにこの映画のことを思い出しそうです。
「この作品のモデルはどんな性格の人だろう」とか、「この作品はどんな国で描かれたのだろう」とか、「この作品は何処からきて、何処へ行くのだろう」とか。展覧会の図録などで見知った著名な作品でも、歴史というフィルタを通すとその印象が一変するという好例でした。
杉山 博之

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