展覧会見てある記 豊橋市美術博物館「2021コレクション展 第1期」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

豊橋市美術博物館のコレクション展(2階 常設展示室 第1期)を見てきました。考古、歴史、美術、民俗の4分野にまたがる展示でしたが、考古(考古資料から探るトヨハシの歴史)を除く3分野について、簡単にレポートします。

◆歴史・床の間動物園Ⅰ(2階 テーマ展示コーナー、第2展示室)


《松に鷹図》

 2階・通路沿いの「テーマ展示コーナー」には、4枚組の杉戸絵が2点。原田圭岳《松に鷹図》(1881)と《鶴図》(1875)、大迫力です。第2展示室には同じ作者の杉戸絵《松に鶴図》(3枚組)もあります。いずれも豊橋市・石巻地区の宮司・佐藤為継が自宅を飾るために描かせたもの、とのことです。今回は、全5点のうち3点を見ることが出来ました。


《鶴図》

床の間動物園Ⅰでは、江戸時代から昭和までに制作された、鳥を描いた掛け軸、屏風、杉戸絵を展示しており、渡辺崋山が25歳のときに描いた写生帖や、崋山の次男・渡辺小崋が描いた墨画や彩色画(いずれも明治時代)もあります。

◆美術・書を愉しむ(2階 第3展示室)

 いずれも昭和・平成に制作された書で、墨の濃淡や造形表現を味わう作品が並んでいました。

◆美術・从(ひとひと)会の作家たち(2階 第4展示室)

 从(ひとひと)会は、中村正義・星野眞吾らが1974年に創立した美術グループです。展示されているのは17点ですが、うち8点が第1回从展「黒い太陽・七人の画家 从展」の出品作品でした。第4回从展出品の田島征二《ぼくたちの踊る踊り》(1977)は、男女4人の顔と鶏の顔が合体し、左足は鶏の脚という不思議な作品です。そのほかの作品も、不穏な空気が漂っていました。

◆民俗・電話+カメラ=?(2階 第5展示室)

 名古屋市美術館「写真の都」物語を見た後なので、乾板式ハンドカメラと写真乾板、フォールディングカメラのフジミナールW,二眼レフのアイレスフレックスY3型などに目が止まりました。


乾板式ハンドカメラ

フジミナールW

アイレスフレックスY3型

◆展覧会情報

 「豊橋市美術博物館 令和3年度スケジュール」によると2階・常設展示室のコレクション展は、第1期が3.13~5.23,第2期が5.29~8.29,第3期が9.4~11.23,第4期が11.30~2022.2.13です。一方、1階・特別展示室「郷土ゆかりの美術」は、第1期が4.3~7.11「Happy Yellow」、第2期が11.30~12.26「星野眞吾と高畑郁子」、第3期が2022.1.4~3.27「Face to Face」です。いずれも、観覧無料。

企画展は、7.17~8.29「三沢厚彦 ANNIMALS IN TOYOHASHI」、10.9~11.23「芳年 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」、11.30~12.26「全国公募 第8回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展~明日の日本画を求めて~」、2022.2.19~3.27「2021年度 美術コレクション展」等です。

◆おまけ・碧南市藤井達吉現代美術館の特別開館事業

「Nagoya art news 2021 4-5」によると、碧南市藤井達吉現代美術館 特別開館事業「いのちの移ろい展」が、4.29~6.20の会期で開催されるようです。「人や自然の間を結ぶ大きな『いのち』の表現を、現代作家10名の作品と所蔵品を通して辿ります」とのことなので、楽しみですね。

Ron.

展覧会見てある記 「アートとめぐるはるの旅」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

開催が延び延びになっていた「アートとめぐるなつの旅」が、「アートとめぐるはるの旅」に改名。ようやく開幕しました。名古屋市美術館の地下1階で受付を済ませると、正面に見えるのは宇宙に浮かぶ色とりどりの星。山田光春《星の誕生》でした。壁に書かれた「ことば」を道しるべに、アートとめぐる旅を始めます。

◆たびのはじまり(白い壁)

常設展示室1に入って振り返ると、壁には「たびのはじまり」の文字。地図らしき作品が展示されています。右にはアンゼルム・キーファー《シベリアの女王》。進行方向に向き直ると、目の前には真っ暗な空間。

◆やみをぬけて(白い壁)

くらやみが無限に続いている感じの不思議な作品は、アニッシュ・カプーア《極空No.3》でした。右の壁にある山田光春《夜の生物》や染谷亜里可《Decolor – moon》では、くらやみの中に蛾や月が浮かんでいます。

◆そらのうえ(白い壁)

衝立の横を回り込むと、また衝立です。衝立に掛けられた絵の左には、粘土の塊が置かれています。今村哲《宇宙飛行士最後の夢》という作品で、絵と粘土の塊がセットになっているようです。振り返るとマルク・シャガールのエッチングが4点。バリー・フラナガン《三日月と釣鐘の上を跳ぶ野ウサギ》も展示されています。

◆うみのそこ(赤い壁)

赤い壁の部屋に向かうと竜宮城の絵が見えます。近寄ると作者は山田秋衛、1927年制作の作品でした。その左には海底レストランを描いた、坂本夏子《Octopus Restaurant》。浅野弥衛のエッチング4点もあります。作品名は「海の城」など、全て「海」に関するものでした。

◆だいちをながめて(赤い壁)

反対側の展示ケースには、田渕俊夫《大地悠久、洛陽黄河》と平松礼二《路 ― みち》。上陸したようです。

◆おわりとはじまり(赤い壁~白い壁)

赤い壁の展示室、残る2作品は山田光春《送列》とフリーダ・カーロ《死の仮面を被った少女》。たぶん、これは「おわり」。「はじまり」はコンスタンティン・ブランクーシ《うぶごえ》かな。内藤礼の作品も2点。

◆かぜのなか(白い壁)

目を引くのは、壁一面を占領する李兎煥《風とともに》。右の壁に展示された嶋谷自然《砂丘と海》からは、浜松市・中田島砂丘の潮風が感じられます。外にも2点の作品があります。

◆うみをこえて(緑色の壁)

子どもの絵に惹き寄せられて緑の壁の部屋に入ると、フランスやハンガリー、スペイン、メキシコの風景が並んでいます。アマディオ・モディリアーニ《おさげ髪の少女》も、この部屋にあります。

◆じかんときおく(緑色の壁)

河原温のtodayシリーズ《14.JUL.1986》の前で暫しの間、瞑想。

◆ここはどこ(うす茶色の壁)

うす茶色の部屋に進むと、お城や虎の檻、堀川、登り窯などの絵が並んでいます。「ここはどこ」と問いかけられたので、作品を見ながら答えを探していました。

◆おかえりなさい(灰色の壁)

ロビーを横切って、常設展示室3へ。部屋いっぱいに広がった白い浮遊物が目に入ります。庄司達(さとる)の《Navigation Flight(空間の誘導・飛行 》でした。大きいので、なかなかお目にかかれない作品ですね。

最後の作品はトニー・クラッグ《住処のある静かな場所》。ようやく、我が家に戻ることが出来ました。

◆最後に

展覧会を企画した人たちと会話する気持ちで鑑賞し、展覧会を楽しむことが出来ました。なお、《死の仮面を被った少女》は、Youtube動画(2002年制作の映画「フリーダ」予告編)でも鑑賞できます(51秒頃登場)。

Ron.