お知らせ

2025年9月11日

2025年協力会イベント情報

現在、下記のイベントの申し込みを受け付けています。

1.近代名古屋の日本画界(常設企画展) 協力会向け解説会 名古屋市美術館 令和7年1026

2.国際芸術祭あいち2025 鑑賞ミニツアー 愛知県陶磁美術館 令和7年11月15日(土)14:00~)

参加希望の会員の方は、ファックスか電話でお申し込みください。ホームページからの申し込みも可能です。

令和7年度秋の旅行、行先決定しました!

令和7年度の協力会秋の旅行の行先は、京都方面。ニトリホールディングス所有の對龍山荘を見学し、昼食をとり、午後は泉屋博古館にて鹿子木孟郎の展覧会等を観覧します。会員の皆さまには参加者募集の案内をお送りします。詳しくは、そちらをご覧ください。

最新の情報につきましては随時ホームページにアップしますので、ご確認ください。また、くれぐれも体調にはご留意ください。

これまでに制作された協力会オリジナルカレンダーのまとめページを作りました。右側サイドメニューの「オリジナルカレンダー」からご覧ください。

事務局

2020オリジナルカレンダーのお知らせ 吉本作次氏

カテゴリ:オリジナルカレンダー 投稿者:members

2020年の協力会オリジナルカレンダーの作家は吉本作次氏に決定しました。

吉本作次氏は岐阜県出身で、名古屋芸術大学美術学部絵画科を卒業。1980年代よりニューヨークで個展を開催するなど活躍されています。今回は、協力会のために油彩、水彩、雲母、アクリルを使用したカレンダーを作成してくれました。以下は、本カレンダーに寄せられた作家の言葉です。

「樹の下で酒を飲み、琴を奏でる、この作品の主題は古い琴の蒔絵から来ていますが、ぼくは遊興図というものが好きで、争いや主張など無い世界で、日常がそのまま桃源郷となるところが魅力的です」

≪樹下奏飲図≫

名古屋市美術館協力会では、毎年、地元作家によるオリジナルカレンダーを配布しております。そのほかにも特典がいっぱいです。まだ会員でない方は、是非、この機会にご入会ください。

お問い合わせは、名古屋市美術館協力会、中村(052-212-0001)まで。

展覧会見てある記 愛知県美術館「地球★爆」など

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

 「史上最大級(200m超)絵画出現!」というキャッチコピーに惹かれて愛知県美術館で開催中の「地球★爆 Earth Attack 10人の画家による大共作展」(以下「本展」)を見てきました。

◆「地球★爆」とは何?

中日新聞の記事(2019.11.15付「Culture」欄)によると、プロジェクトを主導したのは岡本信治郎氏で、143点の作品すべてをつなぐと全長240メートル。きっかけは2001年の米中枢同時多発テロ。岡本氏はこの衝撃を東京大空襲に重ね合わせ、知人作家らに共作を呼び掛け、18年かけて完成したとのこと。つまり、「完成したばかり」の作品を展示しているのです。

◆展示室の様子は?

通常は展示室1にある入口が、本展では展示室2にあります。作品数が多いため、作品リストはタブロイド版8ページというボリュームです。「地球★爆 第1番」から「地球★爆 第11番」までの作品番号とタイトルだけでなく、図版、作品解説、会場マップまでも印刷されています。会場マップでは展示室1、2が10の小部屋に区切られ、基本的な順路は、小部屋の壁に沿って右から左へと見るよう動き、小部屋を一周すると次の小部屋に移動。全ての作品を見終わったら、プロジェクトに参加した作家個人の作品を展示している展示室3に移動するというものです。確かに、全長240メートルもの作品を一直線に展示することは不可能ですよね。作品リストには「お好きな順にご覧いただいても差し支えありません」との記述もありました。

◆描かれていたものは?

2001年の同時多発テロに触発されたプロジェクトですが、空襲などによる破壊をストレートに描いた作品はありません。原爆をテーマにしたと思われる「地球★爆 第3番」の3-01《ダブルパラドクスⅠ》は広島に投下された”Little Boy”を時限爆弾に見立てた作品で、3-10《ダブルパラドクスⅡ》は長崎に投下された”Fat Man”とアメリカ国防総省「ペンタゴン」を組み合わせた作品。3-07《植物的要素=ピカドン図》は、花火と桜吹雪を組み合わせたような作品でした。また、東京大空襲をテーマにしたと思われる「地球★爆 第10番」10-2、10-3《大時計・上野地下鉄ストア》については「大時計とパチンコをダブらせる。パチンコ玉をめぐらせる渦巻き状の大音響を類推したのだ。(略)描きたかったのは、東京のブリキ玩具化。ミニチュアとしての不在都市だ」との解説がついていました。「描かれたものから類推されるイメージを、頭の中で様々に組み合わせる」というのがこの大作の鑑賞法のようです。知的で綺麗な作品群でした。

◆プロジェクトに参加した作家個人の作品もあります

展示室3に入ると、天井から無数の黒い紐が垂れ下がっており、気味悪い思いをして通り抜けました。作品リストを見ると、大坪美穂《黒い雨》。「黒い雨は、核兵器の炸裂や原子炉事故等の核爆発で生じた、放射性物質と煤などが強い上昇気流に乗って上空に達した後、雨となって落下したもの」という解説がついていました。道理で気味が悪かったわけです。

◆同時開催のコレクション展・「戦争の手触り」(展示室4~5)について

展示作品の中では、オットー・ディックスの『戦争』が強烈でした。第一次世界大戦の従軍体験を描いた、生々しい版画の連作です。彼の作品はナチスの迫害で「1937年の頽廃芸術展に展示。1938年には260点もの作品が公的コレクションから押収された」という解説がついていました。

◆小企画 岸本清子 メッセンジャー(展示室7)も見もの

岸本清子(きしもとさやこ)の作品は、名古屋市美術館の常設企画展「没後40年記念 中村正義をめぐる画家たち」(2017.10.7~12.3)と同美術館のコレクション展Ⅰ「名古屋のパフォーマンス-追悼 岩田信市と岸本清子」(2018.4.25~7.10)に続き、3年連続で出会うことができました。今回は、絵画だけでなくパフォーマンスの動画も出品されていました。

Ron.

岐阜県美術館リニューアル展を見て

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

岐阜県美術館がリニューアルオープンしました。

リニューアルの大きな変更点は、①南門が広くなった、②コンシェルジュコーナーができた、③展示室の導線を見直し、3つの企画展を同時に開催できるようになった、④アートコミュニケーターの活動が始まる、という点です。

 初日は、日比野館長や出展作家のトークなどがあり、とても賑わっていました。今回のリニューアル展で一番驚いたのは、入館料が年内無料になることです。これなら、図書館で本を借りて、ついでに美術館で展覧会を見ることが気軽にできそうです。

 開催中の展覧会は、「ETERNAL IDOL」、「セカンド・フラッシュ」、「イメージする力、生きる力」の3本です。岐阜県美術館の所蔵作品を中心に構成されており、オディロン・ルドンや山本芳翠なども出展されています。

思わず、ハイタッチしたくなるような作品もあります。(作品に触るのはNG)

 休憩コーナーも広くなりました。奥にはドリンクコーナーもあります。(有料)

 繰り返しになりますが、年内は入館料が無料なので、ぜひ気軽に岐阜県美術館を訪れていただきたいと思います。

杉山 博之

宮下規久朗先生 講演会&囲む会

カテゴリ:作家を囲む会 投稿者:editor

宮下先生です。ちょっと強面ですが、とてもお優しく素敵な先生です💛

宮下先生はカラヴァッジョ研究の第一人者で著作も多数あります。 学生時代、私は先生の本が欲しくて堪らずご飯を我慢してお金を貯めました。 結局、貧血で倒れ頭を3針も縫い、治療費でお金はすべてなくなってしまいました、、、。 ようやく手にした時は本当に嬉しくて、朝から晩まで読んでいたなぁ。私の青春です。

前置きが長くなりましたが、宮下先生の講演会&囲む会がありました。 講演会は定員人数を遥かに超え、拝聴できない人続出! 内容は「カラヴァッジョと斬首」で、斬首がテーマの作品の解説がメインでした。 もちろん、今回の目玉作品「ダヴィデとゴリアテ」の解説もありましたよ。

剣に刻まれた文字「HASOS」の謎から、斬首された顔を自画像として描いたのは「カラヴァッジョのオリジナルか」といった話まで。 会場は何度も沸いて、みなさん前のめりで聴いていました。 どうしてこんなに宮下先生の講演会は人気があるのか?それはもう一度聴いてみて下さいとしか言いようがありません。 とにかく情報量が多い、それでいてすべてを破綻なくまとめるのです。 今回もカラヴァッジョだけではなく、1700年前から凝固しない「聖ヤヌアリウスの血」のお話(下の写真がまさにその血です)、

死体解剖室に忍び込んで生首と記念撮影した芸術家ダミアン・ハーストのお話、 自家製(?)生首のお話。なんと自分の血液少しづつ採取して、シリコン型でとった自分の頭に流し込み、冷凍させて作ったのだとか、、、。(現代アーティスト、マーク・クインの作品) これだけの内容を90分でまとめるなんて!神わざです!

17時からは宮下先生を囲む会がありました。 何年もあこがれ続けた先生と色々お話できて感激💛初めはずーと足が震えていました。 しかし、日本の宝といっても過言ではない方なのになんて気さく、、、。 「お昼にヨコイのスパゲティ1.5人前食べたよ」なんておっしゃるんですよ。

先生の大好物、ヨコイのミラカンです。「イタリア中のパスタを食べたけれど、これが一番美味しい」とのこと、食べに行かなくちゃ‼

誰に対しても分け隔てなく真摯に対応してくださる姿に参加していた人はみんな感動していました。 今回初めて協力会のイベントに参加させていただいたのですが、みなさんやさしく接してくださりうれしかったです。 今後ともよろしくお願いいたします。

会員 森昌子 

「カラヴァッジョ展」ギャラリートーク

カテゴリ:会員向けギャラリートーク 投稿者:editor

名古屋市美術館で開催中の「カラヴァッジョ展」(以下「本展」)ですが、先日、名古屋市美術館協力会主催のギャラリートークがあったので参加しました。担当は保崎裕徳学芸係長(以下「保崎さん」)。参加者は95人。2階講堂でレクチャーを受講した後、展示室に移動してギャラリートークが始まりました。

◆2階講堂のレクチャー

レクチャーで保崎さんが強調していたのは「カラヴァッジョはイタリアの国民的画家」ということでした。ユーロに通貨が変わるまで流通していたイタリアの紙幣にカラヴァッジョの肖像が使われていたこと、同時代の画家から多くの追随者を生み出し合ことなど、カラヴァッジョの偉大さを紹介しています。本展については、カラヴァッジョの作品が8点、カラヴァッジョの作品と推測されるものが2点、残り30点は同時代および後世にカラヴァッジョの影響を受けた画家たちの作品とのことでした。保崎さんは「カラヴァッジョ以外の画家にも注目してください。日本では知られていませんが、イタリアでは高く評価されている画家も含まれています」と、強調します。レクチャーを聴きながら、ギャラリートークへの期待は高まるばかりでした。

◆ギャラリートーク:Ⅰ 1600年前後のローマにおけるカラヴァッジョと同時代の画家たち

◎カラヴァッジョ(?)の静物画

参加者が集合したのは《花瓶の花、果物および野菜》の前です。作家名は「ハートフォードの画家/ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(?)」。保崎さんは「作者は不明で、ハートフォードの画家とは仮の名前。若き日のカラヴァッジョが描いた作品ではないかと推測する研究者がいます」と解説。花や花瓶、果物、野菜などが、細かなところまで見たとおりに描かれており、高い描写力を身につけている画家の作品であることが分かります。

◎《リュート弾き》と《メドゥーサの盾》

カラヴァッジョの作品は《リュート弾き》と《メドゥーサの盾》。《リュート弾き》について保崎さんは「カラヴァッジョと不仲の画家・バリオーネも、全てが実物さながらであると褒めていた」と、紹介しています。描かれたものが暗い背景の中から飛び出てくるように見える作品でした。《メドゥーサの盾》は「ショッキングな表現で、見る者を惹きつける作品」と紹介されましたが、まさにその通りです。

◎同時代の画家について

同時代の画家としては、グイド・レーニ《ルクレティア》、オラツィオ・ジェンティレスキ《聖母子》、トンマーゾ・サリーニ《羊に乗る子どもと婦人》について解説がありました。なかでもグイド・レーニは、《聖セバスチャンの殉教》(注:本展には出品なし)が「三島由紀夫の愛した作品」として知られているとのことでした。また、《聖トマスの不信》はカラヴァッジョの作品のコピーですが、この作品、分かっているだけで36点のコピーがあるそうです。いずれも初めて名前を聞くような画家の作品ばかりですが、保崎さんの言う通り、どれも見ごたえがあります。

ジョヴァンニ・バリオーネも同時代の画家

◆Ⅱ カラヴァッジョと17世紀のナポリ画壇

◎ナポリ時代のカラヴァッジョの作品 ― 《法悦のマグダラのマリア》など

カラヴァッジョは1606年に決闘で人を殺し、ナポリへ逃亡。「Ⅱ」では、逃亡時代のカラヴァッジョの作品とナポリで活躍した画家たちの作品を展示しています。カラヴァッジョの作品は4点。そのうち《法悦のマグダラのマリア》について、保崎さんからは「娼婦であった名残の美しさと、過去の罪に対する深い悔悟の念とを、いい塩梅に描いている」「左上の暗闇には茨の冠がかけられた十字架が見えること」などの解説がありました。

◎カラヴァッジョ様式の追随者たち

カラヴァッジョ様式の追随者の作品としては、バッティステッロ・カラッチョロ《キリストの洗礼》《子どもの顔あるいは幼い洗礼者聖ヨハネ》やジュゼッペ・デ・リベーラ《聖ヒエロニムス》《会則を受ける聖ブルーノ》のほか、《スザンナと長老》を描いた女性画家アルテミジア・ジェンティレスキについては、「カラヴァッジョの影響を受けた、冷酷なユディトの絵が有名」という解説もありました。検索すると確かに、勇ましい姿で男の体を押さえつけている《ホロフェルネスの首を斬るユーディット》がヒットしました。

◆Ⅲ カラヴァッジョ様式の拡がり

◎《ゴリアテの首を持つダヴィデ》《洗礼者聖ヨハネ》 保崎さんが力を入れて解説したのは《ゴリアテの首を持つダヴィデ》と《洗礼者聖ヨハネ》。《ゴリアテの首を持つダヴィデ》については「カラヴァッジョの作品のなかでも傑作」」「ゴリアテはカラヴァッジョの自画像」「ダヴィデとゴリアテの心の中を想像しながら鑑賞してください」という解説でした。

◆最後に

正直言ってカラヴァッジョは馴染みの薄い作家でしたが、展示室で出会った40点の作品は素晴らしいものばかりです。見飽きることがありませんでした。保崎さんはレクチャーで「イタリア美術の最高峰であるカラヴァッジョの展覧会を開催できるというのは、信じ難いほど素晴らしいことです」と話していましたが、まさにその通りでした。特に《ゴリアテの首を持つダヴィデ》の展示は、名古屋会場だけです。光に照らされた人物が暗闇から浮かび出る、鮮烈なイメージの数々を「見ない」、という選択肢は無いと思いますよ。                    

解説してくださった保崎学芸係長さん。ありがとうございました!

Ron.

三重県立美術館「ドービニー展」スライド・トークの要約

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

 三重県立美術館(以下「三重県美」)で開催中の「シャルル=フランソワ・ドービニー展 印象派へのかけ橋」鑑賞の名古屋市美術館協力会ミニツアーに参加する前に、三重県美・地下1階の講堂で鈴村学芸員のスライド・トークを聴きました。下記は、その要約です。

◆スライド・トーク・「1870-71 ロンドン」 本日のスライド・トークのタイトルは「1870-71 ロンドン」です。1870年から1871年にかけて起きた事柄に絞ってお話します。シャルル=フランソワ・ドービニー(1817-187)は、フランスの第二帝政期(1852-70)に活躍した風景画家です。ポール・ドラローシュのアトリエで学び、1850年代に風景画家としての評価が高まりました。1870年にはロンドンに滞在し、モネとピサロを画商のポール・デュラン=リュエルに紹介しています。

本日のスライド・トークの主題は「ドービニーがどのようにしてモネとピサロをデュラン=リュエルに紹介したか」です。

1 時代背景

1870/7/19  フランスがプロイセンに宣戦布告

9月   ナポレオン三世がプロイセンの捕虜となり帝政廃止。共和国(臨時国防政府)樹立宣言

9/20~  プロイセンによるパリ包囲開始。深刻な食糧不足

1871/1/28 パリ降伏

2/26  仮条約。50億フランの賠償金、アルザス=ロレーヌの割譲

3/1   国民衛兵中央委員会が結成される

3/18  大砲事件(武装解除に対する市民の抵抗、蜂起) → ヴェルサイユへ政府が移る

3/28   パリ・コミューン宣言

5/21   ヴェルサイユ軍のパリ侵攻、市街戦の開始「血の一週間」 → 政府軍の勝利(5/28)

2 画家たちと1870-71

1870/7/19 フランスがプロイセンに宣戦布告

9/2   ナポレオン三世がプロイセンの捕虜となる → 9/4  第二帝政廃止

9/8   ポール・デュラン=リュエルがロンドンに向け出発

9/19  エドゥアール・マネ、ジェームズ・ティソはパリに残る

9月終り クロード・モネ ロンドンへ 家族と合流

10月  シャルル=フランソワ・ドービニー ロンドンへ

11月  フレデリック・バジール(1841-1890)がオルレアン近郊で被弾し、戦死

12月  カミーユ・ピサロがロンドンに到着

12/10  デュラン=リュエル、フランス芸術家協会初の展覧会をジャーマン・ギャラリーで開催

12/17  チャリティー・イベントとしてペル・メルで展覧会を開催。ドービニー、モネ出品

1871/1/21 デュラン=リュエルは、ピサロとモネが連絡を取り合えるよう取り計らう   二人はロンドンの美術館で出会う。ターナー、コンスタブルの風景画を鑑賞

5月   モネ、ロンドンを出発、オランダへ。フランスには秋に帰国

5/21  「血の一週間」始まる

5/28   「血の一週間」終結。ギュスターヴ・クールベはスイスに亡命

5月   ドービニーがロンドンを離れる

3 ドービニーの足跡をたどる

1870年10月 ヴィレールヴィル(注:バス・ノルマンディー地方)滞在中にパリ包囲の知らせを受ける。息子のカールは軍隊に、娘セシルと女婿カジミール・ラファン、弟ベルナールと妻、使用人とともにロンドンへ向かう。オテル・ド・レトワールに宿泊。

10/20   ウエスト・ケンジントンに家を借りる

11/2    デュラン=リュエルが画廊をオープン。作品を3点制作

ドービニーは《サリー・サイドから見たセントポール寺院》(1871-73)を描き「信じられないくらいの濃霧」と、ロンドンの濃霧に面食っています。モネも《テムズ川と国会議事堂》(1871)を描いています。現在は、いずれもロンドン・ナショナルギャラリーが所蔵しています。

4 デュラン=リュエルとクロード・モネの出会い

ドービニーは、1870年12月又は1871年1月にモネをデュラン=リュエルに紹介しました。 デュラン=リュエルは、1860年代にバルビゾン派の作品を扱い、1870年代は印象派の作品を扱う画商として画廊での個展を開催し、画家の医療費、絵具代、食費も援助しました。

モネは「デュラン=リュエルのお陰で餓死せずにすんだ」と日記に書いています。 また、ドービニーはデュラン=リュエル経由で、オランダの風景を描いたモネの作品《ザーンダムのザーン川》(1871)を購入しています。

5 モネとドービニー

モネとドービニーは1870年より前から、お互いに知り合っています。モネはブーダンへの手紙に「ドービニーの作品は、私にはとても美しく見えます」と書いています。

ドービニーは印象派の画家たちに極めて好意的でした。1868年のサロンで、モネ、ピサロ、バジールの作品を入選させ、1870年にはモネの入選が叶わず、コローと一緒に審査員を辞任しました。

◎アトリエ船について

 ドービニーは1857年にアトリエ小屋を取り付けた「ボタン号」を購入しました。モネも1873年にアトリエ船を入手。ドービニーは、アトリエ船で写生。移動手段でもありました。モネの場合、アトリエ船は移動手段というよりも絵を描く場所で、船を固定し腰を据えて油絵を制作しています。

◆普仏戦争と関係する柳原義達《犬の唄》の原型を紹介

 スライド・トークの最後に、鈴村学芸員から「当館の柳原義達記念館では、フランスのシャンソンにちなんだ柳原義達の彫刻《犬の唄》の原型を展示していますので、ご覧ください」と案内があり、歌手のテレザを描いたエドガー・ドガ《カフェ・コンセール(犬の歌)》(1876-77)の画像が示されました。(注:ドガの作品は、歌手の仕草が犬のように見えることから「犬の歌」と呼ばれたそうです。また、碧南市藤井達吉現代美術館で開催された「空間に線を引く」にも《犬の唄》というタイトルの作品が出品され、「《犬の唄》は、普仏戦争で敗れたフランス人の心情を歌ったシャンソンの題名です。抵抗する気持ちを持ちながらも、表面上、プロイセンに対しては犬のように従順さを示す、とフランス人の心情を歌ったシャンソンに託して、作家は第二次世界大戦の敗戦で破壊された人間像を表現しました」と解説がありました。なお、当日、柳原義達記念館に展示されていた石膏の原型は「空間に線を引く」に展示されていた作品の原型ではありませんでした)      

Ron.

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