11月25日に発売された「芸術新潮」12月号の特集「これだけは見ておきたい2023年美術展」に、面白い記事が載っていました。それは「推し展 in 2023」と題する、東京都美術館館長の高橋明也さん(以下「高橋さん」)、マンガ家・コラムニストの辛酸なめ子さん(以下「辛酸さん」)、アートテラーの「とに~」さん(以下「とに~さん」)の鼎談です(p.39~43)。「2023年の推し展を検討する」という内容で、各人が三つずつ「推し展」出し合うのですが、名古屋市美術館で開催予定の展覧会が二つありました。
井口さんによれば、プーさんは、物語「クマのプーさん」(原題:Winnie-the-Pooh、1926)のキャラクター。挿絵を描いたのはE.H.シェパード(Ernest
Howard Shepard。以下「シェパード」)。最初の挿絵は「ペン画」ですが、本展では1950~1960年代にカラーで描き直したものを展示している、とのことでした。
井口さんによれば、原作者はA.A.ミルン(Alan Alexander Milne)。彼は第一次世界大戦に通信将校として参戦。1920年に、長男のクリストファー・ロビンが生まれ、子ども向け詩集を皮切りに4冊の本を発行。プーさんのモデルは、子どもが一歳の時に買い与えたテディ・ベアのぬいぐるみ。灰色のロバのぬいぐるみやコブタのぬいぐるみも子どものためのもの、とのことです。
シェパードは、第一詩集「クリストファー・ロビンのうた」(原題:When We Were
Very Young、1924)にもプーさんの姿を描いています。ただし、プーさんという名前は、まだ付いていません。
A America 本展の原画は、シェパードが1950-60年代にアメリカの出版社E.P.ダットンのために描いたもので、アメリカのエリック・カール絵本美術館の収蔵品
I Ishii Momoko 「プー横丁に建った家」(原題:The House at Pooh Corner、1928)の朗読(注:日本語版は、1942年初版)の声が流れています。カーペットが敷かれており、座ることができます
H Hundred Acre
Wood 百町森のイラスト(チラシにも掲載)を展示。「スペルミス」を探してください
V Four Volume ミルンが書いた4冊の本を展示。英語版は横書きで右開きですが、日本語版は縦書きで左開きになります。そのため、進行方向が自然に見えるよう、左右を逆転したものもあります。
本展とのコラボ企画として、名古屋市の図書館にも「クマのプーさん」コーナーがあるのでご覧ください。
◆自由観覧(16:45~18:00)
本展の会場入口は、2階でした。
〇プーさん A to Z
(2階)
井口さんのお話どおり、予習のための展示でした。印象的だったのは、G Gloomy Place 灰色のロバのぬいぐるみ「イーヨー Eeyore」の家と、J Jars ハチミツの入れ物、N North Pole プーがつかんだ棒でした。二次元の挿絵ではなく、三次元の「物体そのもの」を展示しているので印象が強かったのでしょう。