展覧会見てある記 豊田市美術館「ねこのほそ道」ほか 2023.03.06 投稿

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

豊田市美術館(以下「豊田市美」)で開催中の「ねこのほそ道」(”Cat’s Narrow Road”、以下「本展」)に行ってきました。当日は本展と「徳富満―テーブルの宇宙」「コレクション展 小さきもの―宇宙/猫」も開催。以下、印象を書きます。

◆「ねこのほそ道」1階・展示室8

落合多武   CAT Carving                  

 展示室に入ると目に飛び込んで来るのは、キーボードの上に寝そべった猫。落合多武《CAT Carving(猫彫刻)》(2007/2022)です。2019年に豊橋市美術博物館で開催された「国立国際美術館コレクション:美術のみかた自由自在」でも同じ作家の作品《cat sculpture》(2007)を見ました。ただし、本展は「個人蔵」。キーボード本体の色も黒→灰色、作品名も “cat sculpture” → “CAT Carving” と違っています。とはいえ、のんびりとした猫の表情と、切れ間なく鳴るキーボードの音は変わっていません。

左から、タオル(オレンジ)、バスマット、バスタオル(赤)、タオル(青)
佐々木健 ふきん

次に対面したのは、本展のメイン・ビジュアル=佐々木健《ねこ》(2017)。現代美術展では珍しい具象の作品です。面白いのはキャンバスに描いた油彩画、《タオル(オレンジ)》(2018)、《バスマット》(2018)、《バスタオル(赤)》(2019)、《タオル(青)》(2018)という4つの作品です。タオルやバスマットの肌触りを再現しようと試みた一種の「だまし絵」ですが気の抜けたような雰囲気があり、思わず「クスッ」としました。「ふきん」や「ぞうきん」、「のれん」も描いています。中山英之 + 砂山太一《「きのいし」の建築模型》(2023)は、ミニチュアの岩石やミース・ファン・デル・ローエが設計した椅子のミニチュアを使った作品。近くで見ると、岩石は石材の模様をプリントした合板で組み立てたものでした。

大田黒衣美  springler(左)

次の区画は全て大田黒衣美の作品。《springlet》(2023)は、ホログラムシートにウズラ卵の殻や絵の具で描いたもの。丸くなった猫らしき姿があります。《旅する猫笛小僧》(2013)は題名のとおり、「猫を描いた」とわかります。ポケットティッシュに絵を描いた作品が、たくさん展示されていました。

岸本清子     空飛ぶ猫3(左)

その次の区画は全て岸本清子(さやこ、1939-88)の作品。《空飛ぶ猫》シリーズ、《[アリス]》(1980頃)、《[骰子の自画像]》(1988)、《[赤猫の自画像]》(1988)だけでなく、なんと《政見放送》(1983)まで「アート作品」として展示されています。

泉太郎のインスタレーション《クイーン・メイヴのシステムキッチン(チャクモールにオムファロスを捧げる)》(2023)は、「ゲルハルト・リヒター展」で《カラー・チャート》等を展示していた空間を「そのまま」使ったもの。キャプションも残っています。最初は「え、《カラー・チャート》の展示は無いのに」と驚きましたが、それも作家の茶目っ気。ほほえましい気持ちになりました。

◆「ねこのほそ道」(つづき)2階・展示室1~3階・展示室2

五月女哲平 black,white and others

 2階の展示室1には、巨大な作品が並んでいました。五月女哲平《black, white and others》(2023)は、短冊状の黒い板に白線を描いたり、丸い穴を開けたりして何枚も並べたもの。巨大な写真・大田黒衣美《sun bath》(2020)は、何を撮ったものか分かりませんでしたが、作品リストには「野良ねこのうえに、ガムで象った人形を置いて撮影したもの」と書かれていました。3階に上る階段の近くには巨大な岩(模型)があります。中山英之 + 砂山太一《きのいし かみのいし》(2019/2017)でした。

 展示室2の入口脇には、五月女哲平のカラフルな立体作品《sunset town》(2023)が置かれています。

◆「コレクション 小さきものー宇宙/猫」 3階・展示室4~2階・展示室5

アルベルト・ジャコメッティ  ディエゴの頭部

 3階・展示室3「徳富 満―テーブルの上の宇宙」の展示を見た後、展示室4に入ると佐藤克久のカラフルな作品や岡崎乾二郎の作品がならんでいます。アルベルト・ジャコメッティ《ディエゴの頭部》(1953-54年頃)やジャン・アルプの作品も目を引きます。

ジャン・アルプ ひげー時計、へそ、ひげー帽子、数字の8、泡だて器、へそ-びん、海

 2階・展示室5では、荒木経惟(のぶよし)《冬の旅》(1989-90)などの作品を展示。「陽子夫人の闘病・旅立ちから30年以上の歳月が過ぎたのだな」と思いつつ、《冬の旅》を一枚一枚見返しました。

◆最後に

 3つの展覧会はどれも現代アートなので、好みは分かれるかもしれませんね。会期は長く、5月21日(日)まであります(前期・後期で作品の入れ替えあり)。

Ron.

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