読書ノート 世界で愛されるムーミン 誕生に秘められたソ連侵攻

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

◆「世界で愛されるムーミン 誕生に秘められたソ連侵攻」 2022.04.09「産経ニュース」

愛媛県美術館で開催中の「ムーミンコミックス展」(名古屋市博物館など、全国11館を巡回中)を紹介する「産経ニュース」は、下記のとおり「トーベ・ヤンソンは戦争に嫌気がさし、小説『小さなトロールと大きな洪水』を描き始めた」と書くだけでなく、ソ連がフィンランドに侵攻した「冬戦争」についても書いています。

〈(略)作者のトーベ・ヤンソン(1914~2001年)はフィンランドに生まれ、第二次世界大戦を経験。戦争に嫌気がさし、描き始めたのがムーミンの物語だった。(略)第二次世界大戦が勃発したのは1939年。(略)ソ連は同11月末にはフィンランドにも侵攻を開始した。これは「冬戦争」と呼ばれ、ソ連は国際連盟を除名された。翌年3月に講和条約により停戦。フィンランドは工業地帯を中心に国土の10%をソ連に奪われたものの、独立を守り抜いた。トーベは戦争の嫌な雰囲気の気晴らしとして、ムーミンの物語を作り始めたという(略)〉(引用終り)

*記事のURL:世界で愛されるムーミン 誕生に秘められたソ連侵攻 – 産経ニュース (sankei.com)

◆昨年秋の名古屋市博物館「ムーミンコミックス展」では(今の状況との違い)

「ムーミンコミックス展」は、1954年からイヴニング・ニュース紙で連載が始まった「ムーミンコミックス」を紹介する展覧会です。戦後の話ですから、私の知る限り、名古屋市博物館の展覧会チラシ、博物館のホームページ、新聞記事、協力会ミニツアーの解説で第二次世界大戦にまで踏み込んだものはありませんでした。

「産経ニュース」が、上記の記事で「冬戦争」についても書いたのは、「ウクライナ侵攻」の影響によるのでしょうね。

◆池上彰も「冬戦争」について書く  2022.04.14「週刊文春」「池上彰のそこからですか!?」連載520

 「週刊文春」連載の「池上彰のそこからですか!?」も下記のとおり、ウクライナ侵攻について解説するなかで「冬戦争」に触れています。

〈1939年11月、当時のソ連軍はフィンランドに侵攻しましたが、この時もソ連はフィンランドを「小国」と見下し、簡単に勝利すると思っていたところ、地元の地理に詳しいフィンランド軍の創意工夫を凝らした抵抗に翻弄され、苦戦を強いられました(略)〉(引用終り)

◆「フィンランド独立100周年 フィンランド・デザイン展」でフィンランド史を知る

私は、2017年に愛知県美術館で開催された「フィンランド独立100周年 フィンランド・デザイン展」で、初めてフィンランド史を知りました。展覧会では、世界的建築家アルヴァ・アアルトがデザインした椅子(41 アームチェア パイミオ、スツール60)、マリメッコ社のデザイナー=マイヤ・イソラの《ウニッコ(ケシの花)》をプリントした巨大な垂れ幕と並んで、フィンランド史年表の大きなパネルに目を引かれました。

フィンランドは「冬戦争」停戦後、失地回復をめざして1941年6月に「継続戦争」を開始。一時はソ連領を占領しましたが固着状態に陥り、ソ連軍の大攻勢を受けて1944年9月に休戦。休戦後、ソ連の占領は免れたものの国土の10分の1を失い、3億ドルの賠償をソ連に支払い、「継続戦争」に関係した政府要人の被告全員が有罪禁固刑の判決を受けたことは、展示された年表を読むまで知りませんでした。

Ron.

読書ノート 「週刊文春」(2022年4月14日号)ほか

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

◆「週刊文春」 その他の世界(31) 

ミロを見ろ「ミロ展―日本を夢みて」 木下直之 

 Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「ミロ展」の展覧会評です。

 ミロの《焼けた森の中の人物たちによる構成》(1931)(ミロ展の公式サイトによれば、日本で最初に展示された記念すべきミロ作品)を図版に掲げ、詩人滝口修造が1940年に出版した『ミロ』が、ミロについて書かれた世界初の本だったこと、ミロが画家となる道を歩んでいた1910年代には、既に日本に目を向けていたこと、日本の書や俳句が、絵と文字、絵画と詩が渾然一体となる世界を求めていたミロを刺激するイメージの源泉となったことなど、ミロと日本とのつながりを、主に書いています。最後の一節が面白かったので、ご紹介します。

〈ミロは(略)典型的な日本文化ではなく、国や民族を超えて存在する民衆の芸術に触れたことを大切にしたようだ。会場に展示された変哲もない亀の子タワシや刷毛がそれを物語っている。二度目の来日時には、タワシや刷毛で即興的に絵を描いた。ひと抱えのタワシを提げて帰国するミロに、滝口は「見付けましたね」と声をかけたという。まさしく日本を「見るミロを見る」展覧会となっている。〉(引用終り)

4月29日から7月3日まで愛知県美術館に巡回。ミロと日本とのつながりに興味を引かれます。「亀の子タワシや刷毛も展示」というのも楽しみです。

◆「新美の巨人たち」 ジュアン・ミロと日本×林家たい平

 (TV愛知  2022.03.12(土)22:00~22:30 放送) 

 TV愛知「新美の巨人たち」も「ミロ展」を取り上げていました。Art Travelerは「ミロが大好き!」と語る落語家・林家たい平(武蔵野美術大学造形学部卒)。「今日の一枚」は《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》(1945)。解説は、愛知県美術館主任学芸員の副田一穂さんでした。

番組の半ばで、「これは何?」と謎かけ。「亀の子タワシ」が登場しました。

「種明かし」で、二度目の来日となった大阪万博の時にミロが亀の子タワシを使い、陶板壁画の制作を依頼されたガスパビリオンの白い壁に、即興で絵を描く様子が放映されました。このとき描いた《無垢の笑い》が大阪の国立国際美術館の吹き抜けに飾られていることも紹介。亀の子タワシは、ミロのお気に入りグッズでした。

また、もう一つの「今日の一枚」は、初来日後に制作した、現代書道のような《絵画》(1966)でした。(番組バックナンバーのURLは、以下のとおりです)

ジュアン・ミロと日本×林家たい平 |バックナンバー|新美の巨人たち:テレビ東京 (tv-tokyo.co.jp)

 Ron.

展覧会見てある記 サンセット/サンライズ 豊田市美術館

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

協力会のホームページに「サンセット/サンライズ展のミニツアーは中止」と書かれていたので、ミニツアーへの参加はあきらめて、一人で豊田市美術館(以下「豊田市美」)に出かけました。中学生くらいの子どもを始め、若い人が目立ちます。入り口で [ギャラリーガイド] をもらって、展覧会を鑑賞しました。

サンセット/サンライズ とは( [ギャラリーガイド] による)

[ギャラリーガイド] は次のように書いています。〈「サンセット(日没、夕暮れ)」と「サンライズ(日の出、夜明け)」(略)「サンセット/サンライズ」の豊かさは、眠りと目覚め、終わりと始まり、死と生、闇と光など、さまざまな象徴や解釈の可能性を差し出してくれるところにあります。こうした、生きる人間の儚さと強さ、相反する価値観やそのあわいなどをも表す意味の広がりは、まさしく芸術家たちの創造の問いかけと重なりあうものです。(略)本展は、こうした「サンセット/サンライズ」から派生する多様なイメージを手がかりに、豊田市美術館のコレクションを紹介する試みです。さらに招待作家として、愛知県にゆかりのある小林孝亘氏を迎え、静けさと強い存在感をもつその数々の作品を案内役に展覧会を構成します。〉(引用終り)

「愛知県にゆかりのある小林孝亘氏」と言われても、全く知識がなかったので、家に帰って「小林孝亘(たかのぶ)オフィシャルウェブサイト」を開くと、次のような略歴を掲載していました。

1960年 東京生まれ、1986年 愛知県立芸術大学美術学部油画科卒業、1999年 バンコクにアトリエを移す、2002年 東京にもアトリエを設ける、2011年までバンコクと東京を行き来しながら制作を続ける、2012年からは神奈川県在住(注:中日新聞の記事によると「逗子市」のようです)

展示室5では〈小林考亘 新作展「真昼」〉も開催していました。ガラスケースには豊田市美の所蔵作品も展示。新作展について小林考亘氏は [ギャラリーガイド] に、こう書いています。〈海の近くで暮らすようになって10年になる。(略)「真昼」は「サンセット/サンライズ」の章立てを引き継ぎ、夜が明けて朝になり、そして昼になるというあたりまえの時間の流れと、新作が昼間の海岸の風景ということで付けている。(略)選んだ所蔵作品は基本的に好きな作家の作品だが、アレギエロ・ボエッティノの揺らぎや変化、城戸保の鮮やかな光、徳岡神泉のたおやかさ、ペーター・ベーレンスのグラスの輝きと脆さ、荒木経惟の死生観など、少なからず展覧会のテーマを含んでいると感じている。〉(引用終り)展示された豊田市美の所蔵作品は、小林考亘氏が選んだのですね。

1F:展示室8

展示室に入って正面の作品は、コンスタンティン・ブランクーシ《眠る幼児》(1907年 1960/62年鋳造)。頭部だけのブロンズ像です。[ギャラリーガイド] によると「眠り/目覚め」の章の作品です。わざわざ「サンセット/サンライズ」(以下「本展」)の最初に展示するのは、何か意味があるのでしょうね。本展では、他に二つの「頭部だけの像」を出品しています。

・マジックアワー

[ギャラリーガイド] は〈マジックアワーとは撮影用語で、日没と日の出の前後に現れる薄明の神秘的な時間帯を指すものです。(略)この章では、まさに夢を見ているかのような謎めいた瞬間を浮かび上がらせた作品を紹介します〉と、書いています。

この章は小林考亘《Home》(2022)から始まります。日が暮れたばかりの風景で、大木の前に建っている小屋の窓から漏れる暖かそうな光が、周りを照らしています。久門剛史《crossfades#4 air》(2020)は、同じ図柄の色違いの3点で構成された作品。左から「夕焼け」「夜の月」「朝日」と変化しているように見えます。丸山直文《path4》(2005)は、畦道?を走るランナーを描いた作品。豊田市美のホームページに掲載され、チラシにも使われています。燕を描いた村瀬恭子《Swallows 2》(2009) と《Swallows 3》(2009)は、黒い背景の(2)と青空を背景にした(3)が並んでいます。

反対側の壁に展示の小林考亘《Corpse Candle》(2015)は、ズバリ「人魂」。しかし、青白い光ではなくオレンジ色に光っているので、恐怖心は少し和らぎます。隣の杉本博司《AEGEAN SEA, PILION》(1990)は、「海景シリーズ」の1点で、山本糾《暗い水-白山Ⅳ》(1993)は、2枚の写真をつなげた大画面の作品です。白い空の下に、黒い地面と水面が写っています。夕方なのか、夜明けなのか迷いましたが、「海景シリーズ」と並んでいますから、たぶん、明け方の景色なのでしょうね。沈む軍艦の艦橋に亡霊が出現している浜田知明の版画《よみがえる亡霊》(1956)は戦争の記憶を描いたのでしょう。マジックアワーは亡霊が出没する時間でもあります。

・眠り/目覚め

頭の上に耳のある白い顔。イケムラケイコ《きつねヘッド》(2010) は頭部だけの彫刻です。入口にあった、ブランクーシ《眠る幼児》を連想しました。両手のこぶしに顎をのせ、まどろんでいる女性を描いた小林考亘《Portrait – resting cheeks in hands》(2010)は、豊田市美のホームページにも掲載されています。眠る女性の上を飛ぶ虫を描いた村瀬恭子《Guru – guru》(2002) 《Nap(L)》(2003)は悪夢を描いたのかもしれませんね。

次のコーナーに展示の奈良美智の作品はローソクが印象的です。《Romantic Catastrophe》(1988)は右手がローソク。《Dream Time》(1988)は右手でつかんだ棒の先がローソクになっています。イケムラケイコ《黒に浮かぶ》(1998-99)は、空中に浮かぶ胎児のように見えます。また、《黒の中に横臥して》(1998-99)は、ハイハイする幼児に見えました。

・死/生

展覧会の看板に使われている小林考亘《Pillow》(2021)は、ベッドと枕だけを描いた作品。「死/生」という章に展示されているので、「故人が使っていた枕?」と考えてしまいました。川内倫子《Untitledシリーズ「SEMEAR」より》(2007)は、足の骨と皮だけになった動物の写真。胴体の骨・筋肉・内臓を抜き取られた「抜け殻」が写っています。最初見たときは何を写したのか分からず、二度見してしまいました。小林考亘《Sleeping bag》(2010)は、そのものズバリのタイトルですが、イモムシの死体にも見えました。

フロアに展示の福永恵美《greenhide》(2005-06)は真っ白い造花で、花びらは蝋細工。茎は細い木材で、白く脱色した菊の葉が張り付いています。とても奇麗なのですが「白い造花」なので「お葬式」を連想してしまいました。向こうの壁には河原温の「Todayシリーズ」が7点。「死と生」を同時に見た感じです。

次のコーナーでは、親子3人を描いた加藤泉《無題》(2006)と福田美蘭《涅槃図》(2012)を展示。《無題》は不気味。《涅槃図》には金太郎や桃太郎、三匹の子ブタなど、昔話の登場人物が描かれています。クリスチャン・ボルタンスキー《聖遺物箱(プリーム祭)》(1990)の前では、たくさんの人が立ち止まっていました。マックス・クリンガー《ミューズの頭部》(1890年以前)は、「眠り/目覚め」の章の作品ですが、何故かボルタンスキーの作品の近くに展示されていました。これが、三つ目の「頭部だけの彫刻」です。

・見えない/見える

展示室8では最後の章。ソフィ・カル《盲目の人々》(1986)と小林考亘《Hard Shell》(1992)の二作品を展示しています。《盲目の人々》では、目の見えない人が「海」などをどのように捉えているかをインタビューしたときの回答と、回答した人の写真、インタビューのテーマとした「海の写真」などを展示していました。

2F:展示室1 「黒/白」

大きな空間なので、村上友晴《無題》(1989-90)、李禹煥《風と共に》(1987)、小林考亘《Water Fountain》(1994)、草間彌生《No. AB.》(1959)などの大作が並んでいます。なかでも目を引いたのは、画面に無数の釘を打ち込んだ、ギュンター・ユッカー《変動する白の場》(1965)です。ユッカーは、ゲルハルト・リヒターをモデルにした映画「ある画家の数奇な運命」に登場していました。

3F:展示室2 「黒/白」(つづき)

森村泰昌の映像作品《なにものかへのレクイエム(創造の劇場/動くウォーホル》(20210)を上映していました。画面は2つで、向かって左の画面には黒ずくめのウォーホルに扮した森村が、右の画面では白いシャツを着たモデルが写っています。もちろん、モデルも森村が扮しています。 映像はウォーホルがモデルを2回撮影する様子を撮ったものです。森村の扮したウォーホルが使用した撮影機材は、最初がストロボ付きのコンパクトカメラ、2回目がSonar Focusが付いたPOLAROID SX-70 LAND CAMERAでした。

3F:通路・展示室3 「黒/白」(つづき)

通路には小林考亘のリトグラフと横山奈美《ラブと私のメモリーズ》(2019)を展示。展示室3には高さ2.4m・幅18mの大作、篠原有司男(うしお)《ボクシングペインティング》(2007)を展示しています。展示室いっぱいに広がった《ボクシングペインティング》の大きさには、びっくりしました。

3F:展示室4 「終わり/始まり」

クリムト、エゴン・シーレ、フランシス・ベーコン等と並んで、小林考亘の作品も展示していました。

2F:展示室5 小林考亘 新作展「真昼」

湘南海岸と思われる浜辺をテーマにした作品をはじめとする新作を展示しています。小林考亘が言及していた荒木経惟の写真は3点。新婚旅行を撮影した「センチメンタルな旅」と妻・陽子さんの死を主題にした「冬の旅」が並んでいるので、私も「荒木経惟の死生観」を感じました。

最後に

美術館全部を使った展覧会なので見ごたえがあります。観覧料は700円。会期は5月8日まで。

Ron.

協力会のホームページに「サンセット/サンライズ展のミニツアーは中止」と書かれていたので、ミニツアーへの参加はあきらめて、一人で豊田市美術館(以下「豊田市美」)に出かけました。中学生くらいの子どもを始め、若い人が目立ちます。入り口で [ギャラリーガイド] をもらって、展覧会を鑑賞しました。

サンセット/サンライズ とは( [ギャラリーガイド] による)

[ギャラリーガイド] は次のように書いています。〈「サンセット(日没、夕暮れ)」と「サンライズ(日の出、夜明け)」(略)「サンセット/サンライズ」の豊かさは、眠りと目覚め、終わりと始まり、死と生、闇と光など、さまざまな象徴や解釈の可能性を差し出してくれるところにあります。こうした、生きる人間の儚さと強さ、相反する価値観やそのあわいなどをも表す意味の広がりは、まさしく芸術家たちの創造の問いかけと重なりあうものです。(略)本展は、こうした「サンセット/サンライズ」から派生する多様なイメージを手がかりに、豊田市美術館のコレクションを紹介する試みです。さらに招待作家として、愛知県にゆかりのある小林孝亘氏を迎え、静けさと強い存在感をもつその数々の作品を案内役に展覧会を構成します。〉(引用終り)

「愛知県にゆかりのある小林孝亘氏」と言われても、全く知識がなかったので、家に帰って「小林孝亘(たかのぶ)オフィシャルウェブサイト」を開くと、次のような略歴を掲載していました。

1960年 東京生まれ、1986年 愛知県立芸術大学美術学部油画科卒業、1999年 バンコクにアトリエを移す、2002年 東京にもアトリエを設ける、2011年までバンコクと東京を行き来しながら制作を続ける、2012年からは神奈川県在住(注:中日新聞の記事によると「逗子市」のようです)

展示室5では〈小林考亘 新作展「真昼」〉も開催していました。ガラスケースには豊田市美の所蔵作品も展示。新作展について小林考亘氏は [ギャラリーガイド] に、こう書いています。〈海の近くで暮らすようになって10年になる。(略)「真昼」は「サンセット/サンライズ」の章立てを引き継ぎ、夜が明けて朝になり、そして昼になるというあたりまえの時間の流れと、新作が昼間の海岸の風景ということで付けている。(略)選んだ所蔵作品は基本的に好きな作家の作品だが、アレギエロ・ボエッティノの揺らぎや変化、城戸保の鮮やかな光、徳岡神泉のたおやかさ、ペーター・ベーレンスのグラスの輝きと脆さ、荒木経惟の死生観など、少なからず展覧会のテーマを含んでいると感じている。〉(引用終り)展示された豊田市美の所蔵作品は、小林考亘氏が選んだのですね。

1F:展示室8

展示室に入って正面の作品は、コンスタンティン・ブランクーシ《眠る幼児》(1907年 1960/62年鋳造)。頭部だけのブロンズ像です。[ギャラリーガイド] によると「眠り/目覚め」の章の作品です。わざわざ「サンセット/サンライズ」(以下「本展」)の最初に展示するのは、何か意味があるのでしょうね。本展では、他に二つの「頭部だけの像」を出品しています。

・マジックアワー

[ギャラリーガイド] は〈マジックアワーとは撮影用語で、日没と日の出の前後に現れる薄明の神秘的な時間帯を指すものです。(略)この章では、まさに夢を見ているかのような謎めいた瞬間を浮かび上がらせた作品を紹介します〉と、書いています。

この章は小林考亘《Home》(2022)から始まります。日が暮れたばかりの風景で、大木の前に建っている小屋の窓から漏れる暖かそうな光が、周りを照らしています。久門剛史《crossfades#4 air》(2020)は、同じ図柄の色違いの3点で構成された作品。左から「夕焼け」「夜の月」「朝日」と変化しているように見えます。丸山直文《path4》(2005)は、畦道?を走るランナーを描いた作品。豊田市美のホームページに掲載され、チラシにも使われています。燕を描いた村瀬恭子《Swallows 2》(2009) と《Swallows 3》(2009)は、黒い背景の(2)と青空を背景にした(3)が並んでいます。

反対側の壁に展示の小林考亘《Corpse Candle》(2015)は、ズバリ「人魂」。しかし、青白い光ではなくオレンジ色に光っているので、恐怖心は少し和らぎます。隣の杉本博司《AEGEAN SEA, PILION》(1990)は、「海景シリーズ」の1点で、山本糾《暗い水-白山Ⅳ》(1993)は、2枚の写真をつなげた大画面の作品です。白い空の下に、黒い地面と水面が写っています。夕方なのか、夜明けなのか迷いましたが、「海景シリーズ」と並んでいますから、たぶん、明け方の景色なのでしょうね。沈む軍艦の艦橋に亡霊が出現している浜田知明の版画《よみがえる亡霊》(1956)は戦争の記憶を描いたのでしょう。マジックアワーは亡霊が出没する時間でもあります。

・眠り/目覚め

頭の上に耳のある白い顔。イケムラケイコ《きつねヘッド》(2010) は頭部だけの彫刻です。入口にあった、ブランクーシ《眠る幼児》を連想しました。両手のこぶしに顎をのせ、まどろんでいる女性を描いた小林考亘《Portrait – resting cheeks in hands》(2010)は、豊田市美のホームページにも掲載されています。眠る女性の上を飛ぶ虫を描いた村瀬恭子《Guru – guru》(2002) 《Nap(L)》(2003)は悪夢を描いたのかもしれませんね。

次のコーナーに展示の奈良美智の作品はローソクが印象的です。《Romantic Catastrophe》(1988)は右手がローソク。《Dream Time》(1988)は右手でつかんだ棒の先がローソクになっています。イケムラケイコ《黒に浮かぶ》(1998-99)は、空中に浮かぶ胎児のように見えます。また、《黒の中に横臥して》(1998-99)は、ハイハイする幼児に見えました。

・死/生

展覧会の看板に使われている小林考亘《Pillow》(2021)は、ベッドと枕だけを描いた作品。「死/生」という章に展示されているので、「故人が使っていた枕?」と考えてしまいました。川内倫子《Untitledシリーズ「SEMEAR」より》(2007)は、足の骨と皮だけになった動物の写真。胴体の骨・筋肉・内臓を抜き取られた「抜け殻」が写っています。最初見たときは何を写したのか分からず、二度見してしまいました。小林考亘《Sleeping bag》(2010)は、そのものズバリのタイトルですが、イモムシの死体にも見えました。

フロアに展示の福永恵美《greenhide》(2005-06)は真っ白い造花で、花びらは蝋細工。茎は細い木材で、白く脱色した菊の葉が張り付いています。とても奇麗なのですが「白い造花」なので「お葬式」を連想してしまいました。向こうの壁には河原温の「Todayシリーズ」が7点。「死と生」を同時に見た感じです。

次のコーナーでは、親子3人を描いた加藤泉《無題》(2006)と福田美蘭《涅槃図》(2012)を展示。《無題》は不気味。《涅槃図》には金太郎や桃太郎、三匹の子ブタなど、昔話の登場人物が描かれています。クリスチャン・ボルタンスキー《聖遺物箱(プリーム祭)》(1990)の前では、たくさんの人が立ち止まっていました。マックス・クリンガー《ミューズの頭部》(1890年以前)は、「眠り/目覚め」の章の作品ですが、何故かボルタンスキーの作品の近くに展示されていました。これが、三つ目の「頭部だけの彫刻」です。

・見えない/見える

展示室8では最後の章。ソフィ・カル《盲目の人々》(1986)と小林考亘《Hard Shell》(1992)の二作品を展示しています。《盲目の人々》では、目の見えない人が「海」などをどのように捉えているかをインタビューしたときの回答と、回答した人の写真、インタビューのテーマとした「海の写真」などを展示していました。

2F:展示室1 「黒/白」

大きな空間なので、村上友晴《無題》(1989-90)、李禹煥《風と共に》(1987)、小林考亘《Water Fountain》(1994)、草間彌生《No. AB.》(1959)などの大作が並んでいます。なかでも目を引いたのは、画面に無数の釘を打ち込んだ、ギュンター・ユッカー《変動する白の場》(1965)です。ユッカーは、ゲルハルト・リヒターをモデルにした映画「ある画家の数奇な運命」に登場していました。

3F:展示室2 「黒/白」(つづき)

森村泰昌の映像作品《なにものかへのレクイエム(創造の劇場/動くウォーホル》(20210)を上映していました。画面は2つで、向かって左の画面には黒ずくめのウォーホルに扮した森村が、右の画面では白いシャツを着たモデルが写っています。もちろん、モデルも森村が扮しています。 映像はウォーホルがモデルを2回撮影する様子を撮ったものです。森村の扮したウォーホルが使用した撮影機材は、最初がストロボ付きのコンパクトカメラ、2回目がSonar Focusが付いたPOLAROID SX-70 LAND CAMERAでした。

3F:通路・展示室3 「黒/白」(つづき)

通路には小林考亘のリトグラフと横山奈美《ラブと私のメモリーズ》(2019)を展示。展示室3には高さ2.4m・幅18mの大作、篠原有司男(うしお)《ボクシングペインティング》(2007)を展示しています。展示室いっぱいに広がった《ボクシングペインティング》の大きさには、びっくりしました。

3F:展示室4 「終わり/始まり」

クリムト、エゴン・シーレ、フランシス・ベーコン等と並んで、小林考亘の作品も展示していました。

2F:展示室5 小林考亘 新作展「真昼」

湘南海岸と思われる浜辺をテーマにした作品をはじめとする新作を展示しています。小林考亘が言及していた荒木経惟の写真は3点。新婚旅行を撮影した「センチメンタルな旅」と妻・陽子さんの死を主題にした「冬の旅」が並んでいるので、私も「荒木経惟の死生観」を感じました。

最後に

美術館全部を使った展覧会なので見ごたえがあります。観覧料は700円。会期は5月8日まで。

Ron.

展覧会見てある記 豊橋市美術博物館「絵画コレクション名品展」など

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

現在、豊橋市美術博物館(以下「美術館」)では「プレイバック! 絵画コレクション展」(以下「本展」)を開催しています。本展のチラシには〈当館は2022年6月から翌年9月まで改修整備工事のため休館します。開館後最も長期にわたる休館を前に、当館コレクションの核となる名品の数々をぜひご覧ください〉と書いてあったので「当館コレクションの核となる名品」に興味が沸き、美術館まで出かけてきました。1階でも「第3期特別展示室コレクション展 Face to Face ― 面(つら)つき合わせて」を開催しており、本展は2階常設展示室(全5室)での開催。いずれも会期は3月27日(日)までです。

◆2階 プレイバック! 絵画コレクション展

 2階の受付で観覧料400円を支払い展示室に進むと、通路左側の「テーマ展示コーナー」で、チラシにも使われた、京都市北区・地蔵院の椿を描いた平川敏夫《椿樹》(1970)が出迎えてくれました。紅白の椿を描いた作品ですが、椿の樹が赤と黒で塗り分けられているので「華やかさ」とは違う「力強さ」を感じます。

第1展示室は、幕末から明治期の画人たちの作品を展示。目を引いたのは渡辺小華(1835-1887)の《蔬果図》(1874)と《画帖》(1879)です。解説によれば、渡辺小華は渡辺崋山の次男で、幕末・明治期に田原藩の家老を務め、廃藩置県後は画家として生計を立てたとのことです。

第2展示室は、近代の日本画を展示。和服の若い女性が、おかっぱの女の子が乗った乳母車を押す、高柳淳彦《半蔵御門の朝》(1934)や和服の着付けをしている女性を描いた、遠山唯一《支度》(昭和前期)など、これまでのコレクション展で「これは!」と思った作品がいくつも展示されています。

第3展示室は近代の洋画。岸田劉生《卓上林檎葡萄之図》(1918)、椿貞雄《鶏頭持てる村の婦》(1920)、高須光治《下北沢風景》(1928—35)等を展示しています。解説によれば、椿貞雄・高須光治は岸田劉生の草土社に参加した画家です。

第4展示室は戦後の日本画。中村正義の《花図》(1968)《うしろの人》(1977)を始め、人拓によって描いた星野眞吾《終曲》(1975)、平松礼二《路・波の国から》(1992)など、地元ゆかりの作家の作品が並びます。

第5展示室は「表現の多様化」と題し、写実画、抽象画を展示。スーパーリアリズムの野田弘志《やませみ》(1971),上田薫《玉子にスプーンA》(1986)などと、ミニマル・コンセプショナルの荒川修作《S.A.方程式》(1962)や飯田善國《LOVE-KOI》(1994)などが並んでいるのは壮観です。

◆1階 第3期特別展示室コレクション展  Face to Face ― 面(つら)つき合わせて

 1階のコレクション展は入場無料。展示されているのは「顔」を描いた作品です。

 展示の最初は、筧忠治の《自画像》6点と《母の像》(1927)。仁王様のような自画像が並ぶ中、1947年制作の《自画像》は、レンブラントのようです。中村正義の作品も多く、《顔》5点とユーモラスな《頭でっかちの自画像》(1961)、テラコッタの《顔》30点を展示しています。

 石黒鏘二《もう語るのをやめた》(1972)は、頭にかぶったスカーフだけを表現したブロンズ像。「顔」の部分が空白なので、最初は何を表現しているのかわかりませんでした。

Ron.

読書ノート「最後の浮世絵師 月岡芳年」神谷浩(監修) 株式会社青幻舎 2021.04.26発行

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

「神谷浩(監修)」という文字に引かれ、近所の図書館で借りてきました。神谷浩さんは2019年3月24日に開催した協力会主催の名古屋市博物館「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」ミニツアーで、展覧会の解説をしてくださいました。当時は名古屋市博物館副館長でしたが、現在は徳川美術館副館長です。

◆本書の成り立ち

「はじめに」と「凡例」によると、本書は〈名古屋テレビ株式会社所蔵の浮世絵コレクションから作品を選定〉したもので〈2021年から開催される「月岡芳年展」の図録を兼ねている〉とのことです。

また、芳年の作品については〈もとの蒐集家の好みを反映してか「英名二十八衆句」などの「血みどろ絵」こそ含まれないものの、重要作品がほぼ網羅されており、芳年コレクションとして質、量ともに手応えのあるものとなっています〉と書かれています。

◆本書の構成など

本書は、「第1章 芳年の壮」武者絵、「第2章 芳年の想」歴史画、「第3章 芳年の壮」横三枚続と竪二枚継の大作、「第4章 芳年の妖と艶」美人画、「第5章 報道」新聞の錦絵、「第6章 月百姿」という構成になっています。「英名二十八衆句」などの「血みどろ絵」はありませんが、妊婦が逆さに吊るされた竪二枚継の「奥州安達がはらひとつ家の図」や、里見八犬伝の一場面を描いた「芳流閣両雄動」などの重要作品が網羅されています。重要作品かどうかは不明ですが、面白いと思ったのは「鎌倉殿の13人」に登場する北条時政が江ノ島に参籠した時に弁才天が姿を現した場面を描いた武者絵「芳年武者无類 遠江守北條時政 明治十六年(1883)」と名古屋の娘を描いた美人画「風俗三十二相 にくらしそう 安政年間名古屋嬢の風俗 明治二十一年(1888)」です。「名古屋嬢の風俗」の説明には「どこが名古屋風なのかは不明だが、着物や髪型は京阪風である」と書かれています。

◆「商業美術家の逆襲」との接点

山下裕二著「商業美術家の逆襲 もうひとつの日本美術史」は、月岡芳年について〈維新後は歴史画を多く手がけていますが、その作品には渡辺省亭の師・菊池容斎が著した『前賢故実』の影響が色濃く見てとれます〉と書いています。第6章「月百姿」の中の「垣間見の月 かほよ 明治十九年(1886)」は、菊池容斎『前賢故実』巻第10「塩谷高貞妻」明治一年(1868)を元にしたことが分かる作品で「かほよ」の容姿がよく似ていますね。作品解説には〈優雅な美女が着替えをしているのを、生垣の隙間から男が好色な目でのぞいている。「かほよ」とは塩谷判官高貞の妻、顔世で、のぞき込むのは顔世に横恋慕した高師直である〉と書かれています。渡辺省亭も塩谷判官の妻を描いた作品を何点も描いていますが、容斎と省亭が描く顔世は右向きで他の登場人物は侍女のみ。一方、芳年が描く顔世は左向きで、草むらに潜む高師直も描いている点が違います。(「渡辺省亭 ―欧米を魅了した花鳥画―」株式会社小学館 2021.3.30発行 参照)

◆名古屋テレビ株式会社所蔵の浮世絵コレクションとは?

「名古屋テレビ 浮世絵美術館 URL=https://www.nagoyatv.com/ukiyoe/museum 」というサイトには〈もとは朝日新聞社の常務矢島八洲夫氏が長い年月を費やして収集されたものですが、矢島氏がそのコレクションを「こどもの国」協会の基金づくりのために手放すことになり、関係団体に声をかけた結果、当時の名古屋放送代表取締役故川手泰二の判断で名古屋テレビのみが名乗りをあげ、一括購入をして現在に至るものです〉と書かれています。「名古屋テレビ 浮世絵美術館」には作家別の「バーチャルミュージアム」もあり、葛飾北斎、歌川国貞・国芳、歌川広重(その一)、歌川広重(その二)、月岡芳年という5つのコーナーを見ることができます。なお、月岡芳年のコーナーは、美人画ばかり20点を掲載しています。

◆2021年から開催される「月岡芳年展」とは?

ネットで調べると、2021.4.24~5.23の会期で、金沢21世紀美術館市民ギャラリーAを会場に「最後の浮世絵師 月岡芳年」展が開催されていました。途中の巡回先は不明ですが2022.4.8~6.5の会期で、八王子市美術館に巡回する予定です。

 なお、協力会ミニツアーで鑑賞した「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」は2022.2.26~4.10の会期で、京都文化博物館に巡回中。豊橋市美術博物館(会期は2021.10.9~11.23)を最後に巡回が終了した「芳年 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」は、島根県立石見美術館(会期は2016.12.23~2017.2.13)から巡回が始まっています。TV愛知「新美の巨人たち」でも月岡芳年「大日本名将鑑」を取り上げていました(2022.02.12 22:00~22:30放送)。「今、月岡芳年が注目されている」ということですね。

Ron.

マンガ家・つげ義春さんが日本芸術院の新会員に

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

2月23日付けの新聞に、日本芸術院が22日に芸術活動で優れた功績があったとしてマンガ家・つげ義春さんを新会員に選出したという記事が載っていました。概要は、以下のとおりです。

◆新会員選出の経緯

各紙の報道をまとめると、これまで芸術院の新会員は会員のみの推薦と投票で選出していましたが、幅広く人選できるように、今回から文化庁が選んだ有識者が候補の推薦と絞り込みに加わり、投票は会員のみで実施という方式に見直し。対象となる芸術分野も硬直化していたことから、対象分野に「写真・映像」「デザイン」「マンガ」「映画」を追加したとのことです。

その結果、新たに対象となった「写真・映像」「デザイン」「映画」では新会員候補が決まりませんでしたが、「マンガ」では、ちばてつやさんとつげ義春さんが選出されました。

なお、「朝日新聞デジタル」によると〈今回の選考では2人が辞退したが、芸術院は辞退者が特定される可能性があるとして分野は公表していない〉そうです。

◆新会員の業績

中日新聞・日本経済新聞ともに、ちばてつやさんの業績を〈「あしたのジョー」は戦後漫画の金字塔の一つ。後進の育成にも努める。14年文化功労者〉。つげ義春さんの業績を〈文学的な表現で高い評価を得る。20年アングレーム国際漫画祭特別栄誉賞〉と書いています。

さらに、「コミックナタリー」の記事は〈つげの推薦理由では、「その生き方がトータルに注目される唯一無二の存在となっている。今日もなお文庫や全集の形で作品が読まれ続け、海外からも高い評価を得ている、まさに「芸術」としてのマンガ表現において日本を代表する作家である」と述べられた〉と書き、芸術院が発表した推薦理由の全文も掲載していました。

◆「商業美術家の逆襲」では、つげ義春さんを「至高の芸術家」と評する

つげ義春さんといえば、山下裕二さんがNHK出版新書「商業美術家の逆襲」で〈将来的には、マンガの原画が国の重要文化財や国宝に指定される日が来るでしょう。その筆頭候補は、何と言っても「ねじ式」です。文化財候補マンガの中でも、この作品は「絵」として最も素晴らしい。私にとって、つげ義春は至高の芸術家であり、その作品は最高の「ファインアート」です〉と書いています。山下裕二さんだけでなく、日本芸術院もつげ義春さんの功績を認めたということですね。

◆最後に

新聞記事を読んだ後、ネット検索で「芸術新潮」2020年4月号につげ義春さんの記事があると分かり、本棚を探すと「つげ義春、フランスへ行く」という12ページにわたる特集を掲載していました。特集は、アングレーム国際漫画祭特別栄誉賞の授賞式への同行記、長男・正助さんへの取材記事、つげ義春さん・正助さんへのインタビューで構成。アングレーム国際漫画祭は、1982年に手塚治虫も参加した歴史あるイベントで、2000年代に入ってフランスでも本格的に日本のマンガの翻訳出版が始まると、水木しげる、大友克洋、高橋留美子などが受賞しているとのことでした。アングレーム美術館では「つげ義春展」が開催され、英語版・フランス語版のつげ義春全集が出版されていることも、初めて知りました。2年前「芸術新潮」を買ったにもかかわらず、12ページにもわたる特集をスルーしたことに、我ながら呆れてしまいました。一体、何をみていたのでしょうか。

Ron.

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