展覧会見てある記 愛知大学・豊橋キャンパス「第4回 平松礼二展」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

新聞記事(2022.11.13 中日新聞)で「第4回 平松礼二展」(以下「本展」)のことを知り、愛知大学・豊橋キャンパスまで出かけてきました。ネットで調べると、会場は愛知大学記念館(以下「大学記念館」)。1908(明治41)年に陸軍第15師団司令部として建てられ、文化庁の登録有形文化財に指定された建物とのことです。

当日は、JR豊橋駅で下車。新豊橋駅で豊橋鉄道渥美線に乗り、愛知大学前駅で下車してホームから出ると、すぐ目の前に豊橋キャンパスの正門。正門を入り右に進むと、大学本部の南に大学記念館がありました。左右対称の二階建で、中央に玄関。階段室の壁には、平松礼二作品のタペストリー。2階に上がると正面に受付、入場無料でした。16ページもあるパンフレットを受け取り、そのまま、建物西側エリアの展示室に向かいました。

◆第1展示室 モネが歩いた路

 パンフレットを見ると、本展の正式名称は「フランス芸術文化勲章シュヴァリエ受勲記念 愛知大学名誉博士第4回 平松礼二展 ~アイチ、モネ、そして世界へ!」。ネットで調べると、第3回の開催は令和元年11月ですから「3年ぶりの開催」ということになります。第1展示室には平松礼二がモネの睡蓮に出会った原点、ジベルニー村の風景を描いた作品等を展示していました。

◆第2展示室 睡蓮の間

 本展で一番大きな展示室です。パンフレットの表紙やチラシに使われている、本展のメイン・ヴィジュアル、六曲一隻の屏風《空へ向かう睡蓮》(2016)が目を引きました。左側には水面に映る雲とその上で羽ばたく蝶。中央右寄りに、S字を書くように睡蓮とカエデの葉、桜の花が浮かんでいます。上半分は秋の景色で、枯れ始めた睡蓮の葉と紅いカエデの葉、下半分は春の景色で、睡蓮の花と桜の花びら。春と秋の境目に浮かぶカエデの葉は青紅葉から黄色、深紅へと色が変わります。現代の琳派ともいうべき、色鮮やかで、装飾的な作品でした。この外にも、春夏秋冬、四季折々の睡蓮の絵が展示され、見入ってしまいました。

◆第3展示室 ジャポニスム~フランス紀行

 エトルタの断崖やポピーの花など、モネが取り上げたモチーフを日本画に描いた作品が並びます。夕焼けを描いたと思われる《流れる》(1998)を眺めていて、2018年に名古屋市美術館「モネ、それからの100年」で見たモネの《睡蓮の池》(1907)を思い出しました。ポピーを描いた《フランス屏風・春の曲》(1998)は、題名通り「フランス風の日本画」でした。

◆第4展示室 『文藝春秋』表紙絵

 2000年1月から2010年12月までの11年間、『文藝春秋』の表紙を飾った作品のうち、18点を展示しています。このなかで、印象的だったのは、「南無阿弥陀仏」と名号を唱え、口から小さな阿弥陀立像が六体現れる様子を表した「空也上人(京都)」2005年6月号の表紙でした。

 なお、展示されている原画の説明すべてに「フレスコグラフ」と書かれていました。「フレスコ」というのは、漆喰を壁やキャンバスなどの下地に塗り、乾かないうちに顔料などで上に直接絵を描く手法ですが、それとは少し違うようです。ネットで調べると「フレスコグラフ」は、「山口県産の高品質な石灰を原料とした“新鮮な漆喰”をシート状にすることにより、伝統的なフレスコを現代に生まれ変わらせた」技術とのことです。

◆第5展示室 木祖路~美の源流

 この部屋での見どころは、同じ場所の四季を描いた連作の屏風《路-木祖谷 春の奏》(1986)、《路-木祖谷 夏の奏》(1986)、《路-木祖谷 秋の奏》(1986)、《路-木祖谷 冬の奏》(1986)の4点です。

◆第6展示室 韓国~美の源流

 韓国の風景を描き、1977年に「第4回創画会賞」を受賞した《路-初冬》(1977)の外、1988年に描いた「北京故宮博物館~留学スケッチ」や海津千本松や常滑、瀬戸などを大学生時代に描いた「ふるさと紀行スケッチ」を展示しています。

◆第7展示室 路~日本の山河・草宴

 富士山を描いた作品、ススキやオミナエシなどを描いた作品が並んでいます。なかでも迫力があったのが、巨大な月とススキの丘、オミナエシの丘を描いた六曲一双屏風《路・白い波の彼方へ》(1992)です。麦を描いた《草宴》(1975)にはオミナエシが描かれていたので、麦秋(初夏)ではなく、秋の風景だと分かりました。

◆最後に

 東側エリアの多目的室では、2021年に町立湯河原美術館・平松礼二館で開催した展覧会「開館15周年 睡蓮交響曲」を記録した動画(16:41)を上映していました。展覧会では睡蓮を描いた屏風14点(全長90m)を前期・後期に分けて展示。展覧会開催前には、湯河原町民体育館で内見会を開催し、全14点を公開したようです。動画では、全14点の紹介もありました。動画も、見逃せませんよ。会期は11.19(土)まで。

Ron.

展覧会見てある記 一宮市三岸節子記念美術館「河鍋暁翠展」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

協力会から「河鍋暁翠展」(以下「本展」)鑑賞ミニツアーの案内が届きました。早速、一宮市三岸節子記念美術館(以下「美術館」)のホームページ(以下「HP」。URL=一宮市三岸節子記念美術館 (s-migishi.com))を開くと、次のような紹介文がありました。

〈これまで父・暁斎の名に隠れがちであった暁翠ですが、最近では、暁翠の活躍を描いた歴史小説『星落ちて、なお』(澤田瞳子著、2021年、文藝春秋)が第165回直木賞を受賞したことで注目が集まっています。本展は、父の画技を受け継ぎながらひとりの日本画家として名を残した暁翠の作品を一堂に並べ、その画業の全貌を紹介する初の展覧会です〉(チラシも、同じ文章を掲載)

とても興味をそそられました。HPは、パンフレット(チラシ)、作品リスト、プレス・リリースも掲載。展示替えのため、ミニツアー当日には鑑賞できない作品があると分かり、急いで美術館に行ってきました。

◆第1章「暁翠と暁斎-父のてほどき」

 受付で千円を支払って2階に向かうと、右手の第一展示室(小振りの部屋)に「入口」の表示。第1章の作品を展示していました。ただし、最初の3点は、河鍋暁翠(1868-1935:以下「暁翠」)ではなく、父・河鍋暁斎(1831-1889:以下「暁斎」)の作品。《極楽太夫図》(1879以降)と《文読む美人》(1888頃)、《柿に鳩の図》(1872頃:チラシ裏面に掲載)です。そのうち、《柿に鳩の図》の解説には「暁翠が数え5歳の頃に、父から手渡された絵手本」と書いてありました。暁翠は、数え5歳の頃から「父のてほどき」受けていたのですね。

暁翠の作品は、チラシ表面に掲載の《猫と遊ぶ二美人》(制作年不詳)から始まります。その隣には、暁斎の描いた下絵(1878)が並び、解説には「下絵の遊女から良家の子女へ、身分を変更」と書いてありました。《寛永時代美人図》(1916:チラシ裏面に掲載)の隣にも暁斎の下絵(制作年不詳)。こちらの解説は「下絵の猫を狆に変更」というもの。HP掲載の文章のとおり、暁翠は「父の画技を受け継ぎながら、ひとりの日本画家として名を残した」のですね。チラシ裏面に掲載の《霊山群仙図》(1861~1892)の隣には、暁翠による《霊山群仙図由来書》(1917)を展示。「暁斎が描き始め、その死後に暁翠が完成させた作品」だと分かりました。

◆第2章「土佐・住吉派に学ぶ」

第2章からは第二展示室に展示。最初の2点は、暁翠が入門した土佐・住吉派の日本画家・山名貫義(1836-1902)の「やまと絵」でした。暁翠の作品で面白かったのは、「ベルベット・スキンソープ」宣伝用の《七福神入浴図ポスター》(制作年不詳)です。美術館でもらった本展広告に掲載されていた澤田瞳子さんへのインタビューには、このポスターを「私の一番好きな作品(略)洒落っ気のある所が気に入って、本の表紙にとも考えた」と書いています。肉筆画だけでなく、色鮮やかな三枚続きの大判錦絵も展示。そのうち、《毘沙門天虎狩之図》(1889)はチラシ裏面に掲載。解説によれば、暁翠は暁斎の死後、錦絵の仕事も引き継いだとのことでした。

◆第3章「教育者として」

面白かったのは「絵手本」。チラシ裏面に掲載の《美人の顔 第三段 絵手本》(制作年不詳)は完成図ですが、第一段・第二段という二つの下絵と合わせて完成までの手順を示しており、学ぶ人に親切な絵手本だと思いました。なお、《美人の顔》は前期の展示(~11/13)で、後期(11/15~12/4)には《翁面》が展示されます。

◆第4章「受け継がれた伝統」

この章では、双幅の《松風・羽衣》(制作年不詳)と「お多福」がいっぱい描かれた《百福図》(1916)がチラシ裏面に掲載の作品です。暁斎は大勢の人物が登場する、にぎやかな作品を描いていますが、暁翠も大勢が登場する絵を得意としていたようで、《百福図》の外にも《布袋と唐子》(制作年不詳)、《百猩々》(制作年不詳)、《百福の宴》(制作年不詳)を展示しています。戯画も面白く、大津絵に題材を取った《美人と鬼の相合傘》(制作年不詳)、ひな人形が動き出す《美人を驚かす内裏雛》(制作年不詳)には、思わずクスッとしました。

西行の有名な歌「願はくは 花の下にて春死なむ その如月の望月の頃」を画題にした、暁斎・暁翠・真野暁亭の三福対《西行雪月花》(制作年不詳)や《鐘馗図》(制作年不詳)にも目を引かれました。

◆最後に

 『星落ちて、なお』は、日本画の流行とは一線を画し時代に取り残されながらも、やまと絵や狩野派の伝統を守るため精一杯生きる暁翠を描いていますが、本展を見ていて、小説に描かれた暁翠の「清々しさ」を感じました。後期展示の作品も見たいので、11月27日(日)午後2時開始のミニツアーが楽しみです。

Ron.

展覧会見てある記 豊田市美術館「ゲルハルト・リヒター」展

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

スマホに、豊田市美術館(以下「豊田市美」)で開催中の「ゲルハルト・リヒター」展(以下「本展」)のニュースが二つ飛び込んできました。ひとつは、WEB版の「芸術手帖」(2022.10.15付、URL=https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/26164)で、もうひとつは「号外NET豊田市」(2022.10.18付、URL =https://toyota.goguynet.jp/2022/10/18/toyotasibijutukann-geruhaito-rihita/)です。どちらのニュースにも画像が掲載されていますが、「号外NET」は展示室内の内覧会出席者と学芸員を写した写真を掲載。それを見ていたら、じっとしてはいられなくなり、豊田市美に行ってきました。

◆本展の顔は赤ちゃん・4つの展示室を使う大規模なもの

 豊田市美に向かう坂を登っていくと「ゲルハルト・リヒター」の文字と赤ちゃんの絵が見えます。玄関を抜け、長い廊下を進むと、1階・展示室8の入り口に「ゲルハルト・リヒター」と書かれていました。

 受付を済ませ、16ページもある作品リストを手にすると、実に優れものでした。作品リストだけでなく、展示作品の概要が付記された会場マップと、4ページにわたる「リヒター作品を読み解くためのキーワード」(以下「キーワード」)までも載っています。会場マップによると、本展は1階・展示室8に加え、2階・展示室1、3階・展示室2-3の、計4室を使った大規模な展覧会でした。

◆1階・展示室8

・第1エリア

 1階・展示室8は、大きく4つのエリアで構成されています。

第1エリアは細長い部屋で、最初の作品は《モーターボート(第1ヴァージョン》1965、広告写真を拡大した油彩画=「フォト・ペインティング」です。キーワードの解説には「リヒターは写真に隷属するように絵画を描くことから画家としてのキャリアをやり直したのでした。しかしそういう迂回を経ることによって、逆説的に描くべき対象をどのように選ぶかが重要になっていくのです」と書いてありました。

この「写真に隷属するように絵画を描く」ことについて、日本経済新聞(2022.6.25)の展覧会評は「画家自身の意図や癖をできる限り排除した手法」と表現していました。

 2番目の《グレイの縞模様》1968は抽象画。3番目の《8人の女性見習看護師(写真ヴァージョン)》1966/1972は、殺人事件の報道写真を元にしたフォト・ペインティングの複製写真を写真作品として制作したもの。「フォト・エディション」というようです。キーワードの解説には「絵画の代替という役割もありながら、その多くは寸法、トリミング、色彩、額装方法など、さまざまな仕方でオリジナルとことなっています」と書いてありました。一見すると何の変哲もない作品ですが、「殺人事件の報道写真」と聞くと、インパクトがあります。フォト・ペインティングの解説後半の「描くべき対象をどのように選ぶかが重要になっていく」というのは、このことだと思いました。

 入口の近くには赤色の鏡《鏡、血のような赤》1991も展示。「ガラスと鏡」というキーワードの解説には「置かれた場所やその時々によってあらゆるイメージを映し出す」と書いてありました。確かに、展示室に置かれた鏡に映りこんだものを見ていると、「これも作品だ」と思うようになります。

 第1エリアの一番奥では14分32秒の映像作品を上映。その手前に展示の《アブストラクト・ペインティング》1992は、アルミニウムの上に描かれた作品でした。所々にアルミニウムの地金が見えます。アルミニウムと油絵具の相性について家に帰って調べたら「塗装は困難。表面処理が必要。地金が温度変化で伸び縮みするので絵の具に亀裂が生じることがある」等、おそろしいことが書かれていました。

・第2エリア

 第2エリアは二つの区画で構成。最初の作品《黒・赤・金》1999は、左から黒・赤・金という配色。ドイツの国旗(上から黒・赤・金)と同じ色です。作品解説には「ドイツ連邦議会議事堂エントランスホールのモニュメントの習作」と書いてありました。リヒターは国家的作品を任された「大作家」なのですね。

 《黒・赤・金》の左は《アブストラクト・ペインティング》1999で、その左には、豊田市美の玄関で見た赤ちゃんがいました。《モーリッツ》2000/2001/2009という作品で、解説には「1995年に生まれた長男が8カ月の時の写真をもとに2000年に仕上げ、2001年、2009年に加筆」と書いてあります。何を加筆したのか、解説だけではわかりませんが、作品表面の黒い刷毛目は加筆されたものだろうと思われます。

 第2エリア・二番目の区画には、写真に油絵具で彩色した「オイル・オン・フォト」が多数並んでいます。キーワードの解説には「絵画と写真、再現性と抽象性が拮抗しあうという点で、小さいながらもリヒターの創作の核心を端的に示してくれます」と書いてありました。オイル・オン・フォトの中で《1998年2月14日 14.2.98》1998は、本展の紹介記事でよく見た作品です。赤ちゃんを抱く母親を撮った写真なので、目を引くのでしょうか。

・第3エリア

 第3エリアは、部屋の中心に《8枚のガラス》2012が置かれ、その周囲の壁にカラーチャート《4900の色彩》2007と、《ストリップ》2013~2016と《アラジン》2010が展示され、最もカラフルな空間になっています。カラフルな作品に取り囲まれているので、《8枚のガラス》に映り込んだ画像もカラフルです。

 「カラーチャー」について、キーワードの解説には「既製品の色見本の色彩を偶然にしたがって配する」ものと書かれ、「ストリップ」については「ある一枚の《アブストラクト・ペインティング》をスキャンしたデジタル画像」を分割して再構成したものと書かれ、「アラジン」については「一種のガラス絵」と書かれていました。アラジンはガラスの裏から描くので、鮮やかな色彩を楽しめます。

・第4エリア

 第4エリアには本展で一番注目されている作品が並んでいます。第3エリアから見て正面には《ビルケナウ》2014を配置。《ビルケナウ》に向き合うように《ビルケナウ(写真ヴァージョン)》2015~2019を配置しています。

また、《ビルケナウ》に向かって左の壁には《ビルケナウ》の元になった《1944年夏にアウシュヴィッツ強制収容所でゾンダーコマンダー(特別労働班)によって撮影された写真》を配置、右手の壁には《グレイの鏡》2019を配置しています。《グレイの鏡》に向き合うと、他の3つの作品だけでなく、展示室内の来場者も同時に見ることができます。よく練られた作品配置だと感心しました。

 なお、《ビルケナウ》は、フォト・ペインティングの手法で元になった写真を描いていますが、それは塗りつぶされ、見ることはできません。フォト・ペインティングの解説に「描くべき対象をどのように選ぶかが重要になっていくのです」と書いてありましたが、《ビルケナウ》でも重要なことは、「描く対象にアウシュビッツ強制収容所で撮影された写真を選んだ」ということになるのでしょうか。

◆2階・展示室1~3階・展示室2-3

 2階・展示室1ではアブストラクト・ペインティングを展示、3階・展示室2では2021年に制作したドローイングを、展示室3ではアブストラクト・ペインティングに加えて、2022年に制作した水彩絵の具によるドローイングのフォト・エディション《ムード》2022を展示していました。《ムード》は豊田市美だけの特別出品とのことです。

◆コレクション展 反射と反転 (展示室4-5)

 3階・展示室4と2階・展示室5で開催中のコレクション展では、リヒターと同じように鏡を使った作品を展示していました。プリンキー・パレルモ《無題(セロニアス・モンクに捧げる)》1973と、ミケランジェロ・ピストレット《窃視者(M・ピストレットとV・ピサーニ)》1962,72の、2点です。

◆未生(みしょう)の美 ― 技能五輪の技 (1階・ギャラリー)

 1階・ギャラリーでは、技能五輪の出場者が旋盤やフライス盤などで加工した製品や製品の写真などを展示する「未生(みしょう)の美 - 技能五輪の技」も開催しています(11月27日(日)まで)。

◆観覧料について

 本展の当日券は大人1枚1,600円ですが、オンライン・チケットなら1,500円(購入は豊田市美のホームページから)。受付でスマホまたはプリントアウトしたチケット情報を見せれば入場できるようです。思い切って年間パスポート(3,000円)を購入すると、豊田市美で開催される展覧会を1年間、観覧できます。

Ron.

国際芸術祭「あいち2022」を見て (その3)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

国際芸術祭「あいち2022」[STILL ALIVE-今、を生き抜くアートの力](以下、「あいち2022」)の常滑、有松会場を見てきたのでレポートします。

 常滑会場は、やきもの散歩道に沿って展示場所が散在しています。常滑駅のインフォメーションで近道を教えてもらい、1番目の旧丸利陶管に向かいます。

会場風景 デルシー・モレロス

 デルシー・モレロスの作品は、まるで和菓子屋さんの作業場のようです。大小さまざまなお饅頭が、床一面に並んでいます。うっすらとクッキーのようなにおいがすると思ったら、シナモンが振りかけられています。おいしそうな匂いですが、作品の材料は土なので、食べることはできません。

旧丸利陶管には、その他に服部文祥+石川竜一、グレンダ・レオン、シアスター・ゲイツなどの作品もあります。

旧丸利陶管を出て、地図で次の会場を探します。順路だと2番目は廻船問屋 瀧田家ですが、旧青木製陶所のほうが近いようなのでそちらへ向かいます。

展示風景 フロレンシア・サディール

 フロレンシア・サディールの作品を見て、玉すだれを連想したのですが、はずれです。こちらは雨の表現です。かなり大粒の雨で、夕立のような激しさを感じます。玉に使われている土の色が様々で、そこにも何かしらの意味が込められているように思います。

常滑から有松へ移動します。

展示風景 ミット・ジャイイン

 旧東海道沿いの趣のある町並み保存地区が会場です。道幅が狭く、車両もかなり通るので、散策する際は後ろにも注意してください。

通りのあちこちで目にするのは、ミット・ジャイインの作品です。風が吹くと揺れる様子が涼しげです。近くで見ると、かなり厚手の布地が使われています。ところどころ、乾いた絵の具が尖っているので、あたると痛いと思います。

ミット・ジャイインの作品は、名古屋市西区の「円頓寺商店街」、「円頓寺本町商店街」でも展示されるそうです。

展示風景 ユキ・キハラ

 ユキ・キハラの作品は、着物のかたちをした絵画です。紙芝居ならぬ着物芝居のようです。キラキラすると思ったら、ビーズやスパンコールなども使われています。

ユーモラスな絵柄ですが、解説映像を見ると、この作品は環境破壊や経済格差などの社会問題を内包していることがわかります。解説映像を見る前と後で、印象がかなり変化しました。

有松では、その他にイワニ・スケース、AKI INOMATAなどの作品も見ることができます。

どちらの会場も、駅からは十分に徒歩圏内です。ただ、移動中に日陰になる部分が少ないので、日傘か帽子、それからスポーツドリンクがあるといいと思います。

杉山博之

国際芸術祭「あいち2022」を見て (その2)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

国際芸術祭「あいち2022」[STILL ALIVE-今、を生き抜くアートの力](以下、「あいち2022」)の一宮会場を見てきたのでレポートします。

 一宮会場は、JR尾張一宮駅の東側の真清田神社周辺と、「墨会館」と「のこぎり2」のある尾西地区に分かれています。真清田神社周辺は徒歩圏内ですが、尾西地区はバスをお勧めします。

会場風景 遠藤薫

 JR尾張一宮駅から南東に10分くらい歩くと豊島記念資料館につきます。ここには、遠藤薫の作品が展示されています。「美術」の中には「羊」がいるそうで、展示作品のテーマは「羊」です。

2階に上がると大きな8角形の布の作品があり、その周辺にも羊の毛皮のようなものがぶら下がっていますが、こちらはフェイクファーのようです。

展示風景 奈良美智

 オリナス一宮には、おなじみの奈良美智の作品が展示されています。

この作品には、ビューポイントが2か所(入口側と奥側)あります。入口のすぐ左手の小窓から眺めるとモデルたちの情感がよく伝わるように思いますが、いかがでしょうか。

展示風景 バリー・マッギー

 オリナス一宮の東側(駐車場の方向)の屋外にバリー・マッギーの作品があります。とある建物をまるまるラッピングしたものですが、建物のサインを見てびっくりしました。

バリー・マッギーの作品は、真清田神社の北側の大宮公園の中にもあります。こちらの作品は、あまりにも周りの風景に溶け込んでいるので、見つけにくいかもしれません。

展示風景 ジャッキー・カルティ

 ジャッキー・カルティの作品は、現代美術展ならではの作品だと思います。つまり、どのように見ればいいのか、見当がつきません。

展示室の奥に、回転するプロペラを映した映像作品があります。夕方になると、ある理由でモニターの映像が変わるそうです。また、夕方のお天気によっても、映像が変わるそうです。

次回は、遅めの時間に行って、プロペラではない映像を見てみたいと思います。

杉山博之

国際芸術祭「あいち2022」を見て

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

国際芸術祭「あいち2022」[STILL ALIVE-今、を生き抜くアートの力](以下、「あいち2022」)を見てきたのでレポートします。

現代美術展は県内4か所、愛知芸術文化センター(名古屋市)、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)で展開されます。上映時間の長い映像作品があること、会場間の移動に時間をとられることから、会場ごとに別の日に行くことをお勧めします。それから、まちなか会場に出かける場合は暑さ対策をお忘れなく。

それでは、愛知芸術文化センターの展示から。

4つの会場の中で最大規模の展示です。いろいろと時間に関係した作品、文字表記を含む作品などが目立ちます。

会場風景 ローマン・オンダック

 木の年輪で歴史年表を表現した作品です。床に並んだ輪切りのパーツを、毎日、一枚ずつ壁にかけていき、10月10日の「あいち2020」最終日に完成形を見ることができます。

それぞれのパーツには、歴史的な出来事(例えば、DNAの発見とか)がひとつずつ言葉で書かれています。

展示風景 ロバート・ブリア

 白い大きな円柱形の作品は、非常にゆっくりとしたスピードで動いています。

ただ動いているだけですが、とてもユーモラスな感じがします。よく見ないとわからないくらいゆっくりと動くので、見落とさないでほしいです。

展示風景 アンドレ・コマツ

 半透明のシートで囲われた空間に新聞をさかさまに張り付けた巨大な柱が出現しています。柱の周りにも、ハンマー、拡声器、方位磁石などが配置されています。いろいろな読み取りのできる作品だと思いますが、まだ感想がまとまりません。

展示風景 ミルク倉庫+ココナッツ

 この作品は、プランターに植えられた植物を配置した巨大な足場で、希望者は足場の中を歩くことができます。説明によれば、人の肺をモデルにした空気の循環に関する装置なのだとか。

他にも、気になる作品は多かったのですが、後は皆さんがご自身で見つけてください。

他会場の作品も近日中にレポートします。

杉山博之

error: Content is protected !!