2月17日(土)に名古屋市美術館協力会主催の食事会とミニツアーが開催され、名鉄碧南駅前の大濱旬彩大正館(以下「大正館」)と碧南市藤井達吉現代美術館(以下「美術館」)に行ってきました。美術館で開催中の展覧会は「顕神の夢-幻視の表現者」(以下、「本展」)でした。以下は、そのレポートです。
◆食事会(正午~午後1時)
大正館での食事会は2回目。前回は2018年8月26日、「長谷川利行展」ミニツアーに併せて開催されました。前回の参加者は26名、今回の参加者は11名。参加者は少し減りましたが、コロナ禍により自粛を強いられて来た食事会が再開。ようやく華やかな雰囲気が戻って来たと感じました。
通されたのは、掘り炬燵式の落ち着いたお座敷「仲の間」。ほぼ定刻の正午過ぎに全員が揃い「花弁当」が配られました。正方形のお弁当箱を四つに仕切って、天ぷら、刺身、煮物、フルーツが並び、茶碗蒸し、一人前のミニすき焼き(トマト入り)、ご飯、赤だしがついて1,800円というリーズナブルなお値段。「碧南まで来てよかった」という歓声が上がりました。トマトの入ったすき焼きもおいしかったです。おしゃべりを交えながらの食事会が終わり、参加者が大正館を後にしたのは、午後1時過ぎでした。10分ほど歩くと美術館に到着。ミニツアー開始の午後2時までは時間の余裕があります。ミニツアー前に本展を鑑賞する人、美術館の西にあるレストラン・カフェK庵(九重味淋株式会社内)や隣の「石川八郎治商店」に向かう人、清澤満之記念館(きよざわ・まんし・きねんかん:清澤満之は真宗大学(現大谷大学)初代学長を務めた宗教哲学者。清澤満之が暮らした西方寺(さいほうじ)に併設(金・土・日・祝日開館、観覧料300円))を見学する人に分かれ、ミニツアー開始を待つこととなりました。
(補足)大正館のURLは右のとおり:https://taishokan1914.com/
◆「顕神の夢―幻視の表現者」ミニツアー(午後2時~3時)
ミニツアーの参加者は14名。午後2時少し前でしたが、集合場所の美術館2階ロビーに参加者全員が揃ったので、美術館の大長悠子学芸員(以下「大長さん」)の解説によるミニツアーが始まりました。
◎2階ロビーでの解説
大長さんからは、本展は「見えない世界を敏感に感じ取る芸術家の作品を展示したもので『顕神』は造語。51人の作家の作品を紹介する展覧会で、昨年4月に川崎市岡本太郎美術館から巡回が始まり、本展は5館目。最後の巡回です」と解説がありました。
◎見神者たち(2階展示室1)
「宗教家の作品を展示しているコーナー」とのこと。大本教の教祖・出口なお《お筆先》については「出口なおは文盲でしたが、うしとら(艮)のこんじん(金神)が降りてきて、『うしとらのこんじん』の命ずるまま、20万枚以上の紙に『うしとらのこんじん』などの文字を書いた」との解説があり、出口なおと並ぶ「もう一人の教祖」出口王仁三郎の墨書、観音像、陶器については「出口王仁三郎は芸術は宗教の母と言っていた」との解説がありました。岡本天明《三神像》についての解説は、「30分で出来てしまった作品」で、左は「つくよみ=月の神:三日月が描かれている」、中央は「スサノオ=地球の神:赤子を抱いている」、右は「天照大神=太陽の神:太陽を描いている」というものでした。
◎越境者たち(2階展示室1)
「異次元と行き来する芸術家の作品を展示しているコーナー」とのこと。「宮沢賢治の水彩画は、複製画。岡本太郎の作品は1960年代の芸術=呪術という考えにより描かれたもので、《千手》の画面上部に描かれているのは大きな手。そこからに周りにエネルギーが噴出している」との解説がありました。
O JUN(オージュン)については「非日常の世界を描く作家で、《XMAZ(クリスマス)》は新潟の少女監禁事件被害者の少女が窓から見ていた世界を描いたもの」との解説でした。中園孔二については「海で溺れた夭折の画家。手の中に目(に映った風景?)があるように見える《無題》は、本展チケットのデザインに使われています」との解説がありました。
◎幻視の画家たち(2階展示室1)
「神から与えられたビジョンを描いた作品を展示しているコーナー」とのこと。「村山槐多《尿する僧》は狂気を描いたものですが、自画像とも言われており、尿は生命の象徴でもあります。隣の作品は《バラと少女》、二つの作品が並ぶと、恋人にオシッコをかけているように見える」との解説があり、関根正二《三星》については「オリオン星座の三星で、左が姉、中央が本人、右が恋人。本人が包帯をしているのは、手術跡ともゴッホを意識した姿とも言われている」との解説でした。
萬鉄五郎《雲のある自画像》は良く知られた作品ですが、隣の《目のない自画像》については「目だけでなく口も無い不思議な作品」とのことで、河野通勢《自画像》については、「耳が特徴的で、向かって左にも耳が見えます。河野は神の声が聞こえる、光がみえる、という文も書いています」との解説がありました。
◎幻視の画家たち(2階展示室2)
庄司朝美の作品については「アクリル板の裏から彩色したもの。本人は、何かに描かされているという感覚で描いている」との解説があり、藤山ハン《南島神獣-四つのパーツからなる光景》については「頭に皿と石を載せた幻獣ケンムンを描いた作品。ケンムンは奄美大島の自然の番人ですが、今、ケンムンの棲む処はない」との解説。八島正明《給食当番》については「木綿針で画面を引っ掻きながら描いた作品。彼は、広島記念館で原爆の光線で人の影だけが残された石を見て画家を目指し、《給食当番》は2歳で亡くなった妹を追悼する作品」との解説。真島直子のオブジェ《妖精》については「頭蓋骨の上に脳が載っており、鉛筆画の《妖精》にも頭蓋骨と脳が描かれている」との解説でした。
◎内的光を求めて(2階多目的室)
「何れも、カラフルな作品で,形のない光を描いている」との解説がありました。
◎神・仏・魔を描く(1階展示室3)
最初の展示は、円空の《十一面観音菩薩立像》です。「三宅一樹《スサノオ》は霊木を彫刻したもので、平野杏子《善財南へ行く》は、善財童子という求道者が善知識を訪ね歩く物語を描いた作品。牧島如鳩《魚籃観音像》は、大漁祈願のために小名浜(福島県いわき市)の漁業組合に飾られていた作品。仏像だけではなく、画面上には聖母マリア、画面右にはイスラム風の女性。小名浜の海岸も描かれ、実際の風景と宗教の風景を描いた」との解説がありました。
◎大長さんへのQ&A
Q:本展は、どのように企画されたのですか?
A:足利美術館が中心になり、本展が巡回する5館のスタッフが協議して企画。一般財団法人地域創造の助成を受けているので「公立美術館の所蔵品を活用する」ことを重視。本展では、久留米市美術館の所蔵品・高島野十郎《蝋燭》など、公立美術館の収蔵品を積極的に展示。(補足)図録には[企画・監修 江尻潔(足利美術館次長)、土方明司(川崎市岡本太郎美術館館長)]と記されていました。
Q:来年度は、どのような展覧会を企画されていますか?
A:巡回展の「春陽会誕生100年 それぞれの戦い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ」は、5.25~7.7に予定。「没後百年 富岡鉄斎」は「開催する」ことは確かですが、それ以上は、まだ話せない状況。
◆自由観覧(午後 3時~)
ギャラリートークの終了は午後3時頃で、その後は自由観覧・自由解散となりました。令和2年度から5年度までの間は、コロナ禍で協力会の活動が制限されてきましたが、令和6年度からは、コロナ禍以前の活動ができるようになることを願うばかりです。
Ron.