7月8日(土)付日本経済新聞「文化」欄に、東京国立近代美術館で開催中の「ガウディとサグラダ・ファミリア展」(以下「本展」)の記事が載っていました。名古屋市美術館も巡回先(会期は、2023.12.19~2024.3.10)なので、とても気になります。記事の内容だけでなく、ネットで見つけた情報もプラスしてブログを書いてみました。
◆7.8付け日本経済新聞「文化」欄の概要と感想
・「未完の聖堂」といわれてきたサグラダ・ファミリアの完成が近づいてきた
サグラダ・ファミリアについて、記事は〈ガウディ没後100年の2026年に完成する予定だった。新型コロナウイルスの感染拡大で遅れる見通しだが、21年に「マリアの塔」が完成するなど全体像が見えてきている〉と書き、「イエスの塔」を建設中の写真(2023年1月撮影)を掲載しています。外国の建物ですが、完成が待ち遠しいですね。
・本展では「逆さ吊り実験」の模型を展示
記事に掲載された写真は全部で3枚。2枚目の写真が「コロニア・グエル教会の模型と『逆さ吊り実験』の復元模型」というもの。「逆さ吊り実験って、何?」と思ったのですが、記事によれば、ガウディはこの実験でノウハウを蓄積して、サグラダ・ファミリアなどの建設に取り入れた、というのです。
記事によれば、〈上部に両端を留めた何十本ものヒモそれぞれに、屋根や天井に相当する重りをぶら下げる。重りに応じて、ヒモはU字(略)を描く。ひっくり返すと一本一本のヒモが教会の骨格を示す模型になる〉というのです。ヒモが描く曲線は「懸垂線(カテナリー:Catenary)」。名古屋市科学館のホームページ(注1)は「材質が持つ強さを最大限に引き出せるため建築や橋などに使われています」としていますが、記事は〈施工が難しく、ほとんど使用されてこなかった〉〈ガウディは理想的な形が出来上がるまで、ヒモや重りの位置の調整を繰り返し、10年も実験を続けたという〉と書いています。
本展の展示内容を発信するYouTube動画(注2)で「サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型」を見ると、床から伸びた柱が上部で枝分かれして、更に上部でアーチを形成するという、軽やかで美しくスッキリした構造が見えます。「これが、逆さ吊り実験で見つけた構造なのか」と思いながら見ると、感動しますね。
注1:出典のURLは、次のとおり
名古屋市科学館 | 科学館を利用する | 展示ガイド | フロアマップ | 物理現象に見る数学 (city.nagoya.jp)
放物線(parabola)と懸垂線(Catenary)を比較した図もあるので、勉強になりました。
注2:URLは次のとおり。
(10) 【ガウディとサグラダ・ファミリア展】/IN MUSEUM/近代国立美術館 – YouTube
展示室の中を動きながら、次々に展示品を撮影・紹介する動画です。音声は、バックグラウンド・ミュージックのみ。解説が必要な展示品は、展示品の横の「解説板」も撮影しますが、数秒しか映らないので、動画を止めないと解説文を読むのは困難です。
・本展ではサグラダ・ファミリア「降誕の正面」に設置されていた石こう像も展示
記事は、サグラダ・ファミリアの彫刻について、〈最初にスケッチを描き、次に針金や骸骨の模型で検討し、モデルを三面鏡の前に立たせてポーズをとらせる。写真を撮り、型を取って2分の1サイズの粘土像に移して石こうで固める。それを4分の1の粘土像にコピーして検討し、実物大の粘土像、石こう像を作る。実際に設置した時を想定して調整し、最終段階の石像に転換していく。(略)1978年から聖堂の彫刻を手掛ける外尾悦郎による「歌う天使たち」の石こう像は、実際に石像が完成するまで聖堂の「降誕の正面」に設置されていたものだ〉と書いています。
なお、3枚目の写真は「外尾悦郎「サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:歌う天使たち」(作家蔵)でした。
◆NHK・Eテレが本展の関連番組を放送
NHK(本展主催団体)の本展関連番組の放送予定は下記のとおり。URLは(注3)です。
・日曜美術館「“神の建築家” アントニ・ガウディ ~サグラダ・ファミリアへの軌跡~(仮)」
NHK・Eテレ 7.23(日)AM9:00~9:45
・NHKアカデミア 外尾悦郎
NHK・Eテレ 前編:7.26(水)PM10:00~10:30 後編:8.2(水)PM10:00~10:30
注3:「ガウディとサグラダ・ファミリア展」関連番組・イベントの紹介 |NHK_PR|NHKオンライン
このページでは、NHKが2023年5月に撮影した、ドローン撮影を含むサグラダ・ファミリアの動画(5分17秒)も視聴できます。とても綺麗ですよ。
◆上記のほか、下記のブログも面白かったですよ
・工学的思考(左脳)がしびれる!「ガウディとサグラダ・ファミリア展」
工学的思考(左脳)がしびれる!「ガウディとサグラダ・ファミリア展」@東京国立近代美術館、図録もすごい | BUNGA NET
投稿者は理系の人と思われます。なので「逆さ吊り実験」の模型は言うに及ばず、「双曲放物線面:Hyperbolic Paraboloid」「回転放物面:Hyperboloid of Revolution」「コノイド曲面:Conoid Surface」の模型のいずれも撮影・発信。しかも、解説を添えています。
なお、上記の「コノイド曲線模型」は「サグラダ・ファミリア幼稚園屋根」の動画とワンセットになっているようです。幼稚園の屋根は、蒲鉾(半円)を並べたような屋根を変形させたもの。違いは、①屋根は、蒲鉾が並ぶのではなく、サインカーブに沿って滑らかに上下する。②建物のこちら側と反対側で、サインカーブを半周期ずらす。つまり、こちら側が上がる時は、向こう側は下がり、こちら側が下がり始めると、向こう側は上がる、という具合です。
魔訶不思議な曲面ですが、屋根を支えるのは全て直線の棒なので、工事監督が適切な指示をすれば、難工事になることはないと思われます。それにしても、見飽きない模型です。
・直線がつくる曲面
名古屋市科学館 | 科学館を利用する | 展示ガイド | キーワード検索 | 「そ」ではじまるキーワード |キーワード【双曲放物面】 | 直線がつくる曲面 (city.nagoya.jp)
本展で展示している「双曲放物線面」と「回転放物面」の模型と同じものを展示・解説しています。解説があるので、本展の展示物(模型)を理解する際に助かりました。
Ron.