読書ノート 「週刊文春」(2021年4月15日号)ほか

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◆「週刊文春」 名画レントゲン(14) 秋田麻早子 

抽象画の見どころとは? ピエト・モンドリアン「大きな赤の色面、黄、灰色、青色のコンポジション」(1921)

 SOMPO美術館で「モンドリアン展」を開催している(3/23~6/6)関係か、《大きな赤の色面、黄、灰色、青色のコンポジション》を新聞や雑誌で見かけます。中学校の美術の時間で見たことのある有名な作品ですが、「見た」と言うだけの薄っぺらな知識しか持ちあわせていない作品でもありました。

さて、「名画レントゲン」は〈このような抽象画を味わうポイント〉の一つについて〈線・色・サイズなどの要素同士のバランスの取り具合〉と書いています。〈モンドリアンは、画面中で一つの要素が優位にならず、色や大きさが違っても等価的に均衡し、全体として調和する絵画を目指して〉いた、と言うのです。もう一つのポイントについては〈実物を目にする機会があったら、右下角の赤い部分を手で隠してみてください。急に絵が止まったような印象を受けるから不思議です〉と書いています。一度、試してみたいですね。

 さらに〈このような制作態度の背景には、神智学という哲学と宗教を融合した思想への共鳴もあります〉と続きますが、この部分は、知識不足でよくわかりませんでした。

◆「日本経済新聞」(2021.04.03)  生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて

 上記のとおり「神智学」でつまずいたため、少し前の新聞を読み返してみました。紙面2ページを使った、SOMPO美術館「モンドリアン展」のPR記事です。主な内容は、以下の通りでした。

モンドリアン(1872-1944)は当初、ハーグ派の風景画を制作していたのですが、1908年、36歳のときに最初の転機があり、1909年制作の《砂丘Ⅲ》では〈スーラがたどり着いた点描の技法〉を取り入れています。そして、〈同じころには神智学協会の影響も受けた。1875年に米国でヘレナ・P・ブラヴァツキーらによって結成された神智学協会は、「ギリシャ哲学や仏教、バラモン教など幅広い宗教や思想を参照しながら、宇宙や生命の神秘にたどり着こうとした」(豊田市美術館の石田大祐学芸員)〉とのことでした。「神智学」が出てきましたね。〈神智学に沈潜しながら、1911年にピカソやブラックらのキュービスムと出会ったことが第二の転機〉となり、画家テオ・ファン・ドゥースブルグが〈モンドリアンに新しい芸術雑誌を創刊することを提案。こうして1917年に雑誌「デ・ステイル(様式)」が誕生した。モンドリアンは同誌に「絵画における新しい造形」という題名の連載を執筆し(略)相反する諸原理を均衡、調和、統一に導く「コンポジション(構成)」を確立することこそが新しい造形の目的だと説く〉との内容でした。ようやく「週刊文春」の名画レントゲン(14)の記事に繋がり、一安心しました。

 新聞には、モンドリアンの作品のほかに、ヘリット・トーマス・リートフェルトがデザインした豊田市美術館所蔵の「アームチェア」と「ジグザグ・チェア」の写真も載っています。記事には〈デ・ステイルには様々な作家らが参加した。その一人が建築家・ヘリット・トーマス・リートフェルトだ。(略)本展にはリートフェルトがデザインした椅子も展示される。幾何学的なデザインや、椅子の究極の形とも言われる「ジグザグ・チェア」などにモンドリアンの影響が見て取れる〉と書いてありました。「アームチェア」「ジグザグ・チェア」は、2019年に豊田市美術館で見たことがあるので、興味をそそられますね。

なお、展覧会情報の最後に〈※7月10日~9月20日、豊田市美術館へ巡回〉と表記されていました。

(参考)豊田市美術館 リニューアルオープン「世界を開くのは誰だ」(2019.6.1~6.30)に出品された椅子

豊田市美術館のリニューアルオープン記念展「世界を開くのは誰だ」にも、今回の「モンドリアン展」と同様、椅子が展示されていました。当時のメモを読み返すと、椅子のデザイナーは、ヘリット・トーマス・リートフェルト(以下「リートフェルト」)、マルセル・ブロイヤー、ルートヴィッヒ・ミース・ファン・デル・ローエの三人。いちばん点数が多かったのはリートフェルトの作品で、「アームチェア」2点、「ジグザグ・チェア」「ベルリン・チェア」のほか、監視員さんの許可を得れば座ることができた「635レッド アンド ブルー ラウンジチェア」「280ジグザグ アームレスチェア」の展示もありました。なかでも「635レッド アンド ブルー ラウンジチェア」は、赤(背面)、青(座面)、黄色(肘掛けなどの木口)、黒(その他の面)に塗り分けられた椅子で、モンドリアンの作品みたいな感じでした。モンドリアン展にはぴったりです。

なお、SOMPO美術館「モンドリアン展」の出品リストで確かめたら、アームチェアが3点(うち、「635レッド アンド ブルー ラウンジチェア」は参考出品)ジグザグ・チェア、ベルリン・チェアは各1点でした。

 Ron.

展覧会見てある記 ボイス+パレルモ 豊田市美術館

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コロナ禍で延期されていた「ボイス+パレルモ」(以下「本展」)が、ようやく開催されました。年間パスポートも再開したので、3000円払い、年間パスポートを使って会場に入りました。入口は、1階・展示室8にあります。順番に展示を見ながら3階に行くと、展示室2~4では「コレクション:ドイツと日本の現代美術」(以下、「コレクション展」)を開催していました。コレクション展を見た後、階段を降りて展示室5に入ると本展の展示。本展とコレクション展は一体化していたのです。

1F:展示室8

プロローグ

ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys、以下「ボイス」)とブリンキー・パレルモ(Blinky Palermo、以下「パレルモ」)が写った写真《プリンキーのために》を展示しています。

1 ヨーゼフ・ボイス:拡張する彫刻

最初に映像作品が2点。《シベリア横断鉄道》(1970)と《ユーラシアの杖:82分のフルクソム・オルガヌム》(1968)でした。いずれも、ボイスが登場するパフォーマンスです。《シベリア横断鉄道》では毛皮のコートを着用し、裏返したキャンバスに向って何かしています。《ユーラシアの杖:82分のフルクソム・オルガヌム》ではベストを着用して、部屋の隅の床に脂肪(ワックス)を塗ったり、柱を立てたり、壁に立てかけたりしていました。また、映像の中で使用されたと思われる、フェルトで包まれた木材(断面はL字型)と鉄棒も展示しています。このほか、折りたたんだフェルト、懐中電灯、脂肪を載せたソリや、鉛筆の描きこみのある箱など、「彫刻」の概念には収まらない作品ばかりで面食らいました。豊田市美術館のコレクション《ジョッキー帽》は「帽子のつばを切り取ってジョッキー帽の形に仕立てた」ものだ、ということも知りました。

2 パレルモ:絵画と物体のあわい

パレルモの作品は、キャンバスを二色に塗り分けたものや単純な線画などです。こういった作品は、いわゆるミニマル・アートに分類されるのでしょうか?

3 フェルトと布

フェルト製のスーツ、丸めたフェルトなど、フェルトを使った作品が並んでいます。

4 循環と再生

 銅製の箱が幾つも並んで、銅のテープで繋がっている《小さな発電所》や旅行カバンの中にマギーソースのビンが収まっている《私はウィークエンドなんて知らない》、ガラス製のメスシリンダーに造花の赤いバラを挿した《直接民主主義の為のバラ》などの作品が並んでいます。

1F:展示室6  5 霊媒的:ボイスのアクション

マンモスの化石の前で立っているボイスの写真《芸術=資本》には迫力ありました。また、ショベルや鎌などをケースに納めた《ヴィトリーヌ:耕地の素描》については「物を並べるだけでも作品になるんだな」と、思わず納得してしましました。

1F:展示室7  6 再生するイメージ:ボイスのドローイング

ドローイングが並んでいますが、《あるヒロインのためのバスタブ》は錆びたブロンズ製のバスタブ(ミニチュア)の中に、ハンドルのついた携帯電熱器を入れた作品でした。他にも4冊の本が、作品《「西洋人プロジェクト」(1958)》の一部として展示されています。

2F:展示室1

8 流転するイメージ:パレルモの金属絵画 

 アルミニウムを単色で塗ったり、2色、3色に塗り分けたりする作品が並んでいました。

エピローグ

 「帽意子」「墓異州」「暮椅子」と、漢字を縦書きした黒板が展示されていました。さらに、「帽」にはBo、「意」にはi、「子」にはSuという文字が右に書かれ、「帽」と「子」を繋げてhetと書いています。漢字はどれも「ボイス」を日本風に表記したもの。「帽意子」にはトレード・マークの「帽子」が隠れているということなのでしょうね。ユーモアを感じます。

3F:第2展示室  コレクション:ボイス+パレルモ以前:1950‐60年代のデュッセルドルフ

ボイスがデュッセルドルフ芸術アカデミーの教授に就任したのは1961年。展示室2では、戦後ドイツの前衛的な表現の一大拠点となっていた1950-60年代のデュッセルドルフで活動していた作家の作品を展示しています。ギュンター・ユッカー《変動する白の場》は板に無数の釘を打ち付けて白く塗った作品。昨年公開された映画「ある画家の数奇な運命」のデュッセルドルフ芸術アカデミーには、木の板に釘を打ち付けて作品を制作している学生・ハリーが登場していました。

3F:通路~展示室3  コレクション:ドイツの現代美術

通路に展示されているのは合板を3枚重ねた作品、イミ・クネーベル《蓄光サンドイッチ》No.1~No.3でした。実際に光を放つのではなく「光を放つことを想像しながら鑑賞する作品」とのことです。

展示室3のイミ・クネーベル《DIN規格1 B1-B4》を見て、展示室1にあったパレルモの金属絵画を思い出しました。展示室3の床には、平べったくて白く四角い物体が置かれています。ヴォルフガング・ライプ《ミルクストーン》という作品で、表面は牛乳で覆われています。この牛乳については「毎日取り換えている」という説明がありました。

3F:展示室4 

コレクション:ドイツと日本の現代美術

日本の現代美術では、ボイスが生まれた1921年、パレルモが生まれた1943年、それぞれ同世代の作家を取り上げていました。ボイスと同年代の作家のうち、水谷勇夫(1922-2005)と三上誠(1919-1972)は豊橋市美術博物館のコレクション展「从会の作家たち」でも見ました。パレルモと同年代の作家としては、小清水之漸(1944- )などの作品が展示されています。

コレクション:師弟関係-まなぶ? まねる?

エゴンシーレとクリムト、大澤鉦一郎と宮脇晴といったコレクション展の常連は、このコーナーで展示されています。さて、小堀四郎、宮脇綾子も登場しますが、「師」は誰でしょう?

2F:展示室5  7 蝶番的:パレルモの壁画 

 壁画そのものを展示することは無理なので、壁画のデザイン画と壁画の写真を展示していました。

感想など 

巡回展「ボイス+パレルモ」だけでなく「コレクション:ドイツと日本の現代美術」も連続して鑑賞することができるので、得した気分になりました。7/10~9/20に「モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて」が開催されますから、年間パスポートが復活したのも朗報です。

Ron.

読書ノート  山口  桂(やまぐち かつら)著  「若冲のひみつ」

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今回ご紹介するのは「若冲のひみつ」(以下「本書」)。副題は「奇想の絵師はなぜ海外で人気があるのか」です。著者の山口桂氏はクリスティーズジャパンの代表。出光美術館が2019年にプライス・コレクション190点を収蔵した際、仲介された方です。なお「奇想の絵師」は、辻惟雄著『奇想の系譜』が取り上げた岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曾我蕭白、長澤蘆雪、歌川国芳の六人を指します。

第一章 若冲の魅力

若冲の魅力は皆さまご存知の通りですが、本書では著者の職業に深く関係する、若冲作品の市場価格や作品の真贋判定にも触れており、それが類似書にはない特色となっています。

市場価格については〈2005年に出品された絹本著色の掛軸《双鶴図》の落札価格は4万2000ドル(略)現在の相場は絹本著色の掛軸なら200万ドル、墨絵は8万~10万ドルというところでしょうか〉(本書p.21)と書いています。2005年には500万円ほどだったものが、現在の相場は2億円ほどになっているのですね。

また、作品の真贋については〈確実に本人の筆と言い切れるものはいいとして、誰々の作と伝えられている「伝誰々」、あるいは「誰々の工房の作品」、さらには明らかな偽物が含まれている場合もあり、見極めが難しいことも多い〉(本書p.23)と、見極めの難しさを率直に書いています。

第二章 海外マーケットでの日本美術

商品としての日本美術については、はっきりと〈世界のアートマーケットにおいて、日本美術の占める割合はごく小さなものです〉(本書p.32)と書き、〈海外の著名な日本美術コレクターの多くが日本に来て収集を始めたのは、1970年代の高度成長期でした。(略)同じ流れで、韓国美術も1990年代前半まではパワーがありました。李朝の龍壺が7億円で売れる時代もありましたが、景気後退とともに中国に追い越されていきました。(略)現在は中国のほうがはるかにビジネスの芽がありますから、ビジネスパーソンは日本と韓国を素通りして中国に行ってしまいます〉(本書.33~34)と、日本から韓国、中国へとマーケットの中心が移動したことを書いています。

第三章 海外コレクターと奇想の作品

経営学者のピーター・ドラッカー博士など9人のコレクターを紹介し、主要作品や日本での展覧会開催状況にも触れています。なお、ピーター・ドラッカー博士のコレクションについては〈クリスティーズの仲介により日本の有名企業が購入しました。現在、全作品が千葉市美術館に寄託されています〉(本書p.56)と書いています。第四章で紹介されるプライス・コレクションの里帰り以前にも、里帰りがあったことを知りました。

第四章 プライス・コレクションが日本に里帰りするまで

本書で一番興味深い内容です。中でも読み応えがあったのが、若冲《鳥獣花木図屏風》の評価でした。〈この屏風には落款がなく、若冲の作品だという確たる証拠がありません〉(本書p.86)というのです。この点については、辻惟雄著・ちくまプリマ―新書「伊藤若冲」(p.217)でも触れています。ただ、第四章の内容はとても書き切れません。山口氏がどのようにしてプライス夫妻と知り合い、作品を評価し、美術館と交渉して作品の日本到着まで見届けたのかは、本書を手に取ってお読みください。第五章 私的「東西若冲番付」も同様です。

◎対談――若冲とは何者だったのか 

著者とロバート・キャンベル氏(日本文学研究者 国文学研究資料館長)との対談です。「奇想の絵師はなぜアメリカで人気があるのか」という点については、以下の発言が面白いと思いました。

p.130 キャンベル 二十世紀のアメリカの財産家の人たちが奇想の作品に目を向ける背景とか、理由はどういうふうに見ておられますか?

山口 一つは、ボストン美術館に蕭白のような奇想の作品が古くからあることです。それと、奇想の絵師たちの絵が、あるときマーケットで非常に安くなって、日本の美術史からも外れてしまったことです。(略)個性的で、しかもリーズナブル。最初の一歩としては非常に入りやすかったのではないか、ということが一つあります。(略)ボストン美術館の蕭白などの作品は、ご存知の通り、アーネスト・フェノロサやウィリアム・ビゲローが持ち帰った19世紀の終わりからありますが、個人の日本美術コレクターが現れるのは、だいたい1960年代の終わり頃からです。(略)有名なアメリカのコレクターは必ず若冲や蕭白、蘆雪を持っている。これはやはり、どこかアメリカ人の目に適ったということだと思うんです。(略)

最後に

 著者も対談相手のキャンベル氏も美術史家や学芸員ではありませんが、それぞれの立場で日本美術に深くかかわっています。美術史家や学芸員とは別の視点から書かれた本なので、新鮮な気持ちで読むことができました。ページ数が少ない割に値段が張りますが(税別920円)、「セカンド・オピニオン」としては役に立つと思います。そういえば今年、愛知県美術館で曾我蕭白の展覧会が開催(10.8~11.21)されますね。楽しみです。

   Ron.

展覧会見てある記 豊橋市美術博物館「2021コレクション展 第1期」

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豊橋市美術博物館のコレクション展(2階 常設展示室 第1期)を見てきました。考古、歴史、美術、民俗の4分野にまたがる展示でしたが、考古(考古資料から探るトヨハシの歴史)を除く3分野について、簡単にレポートします。

◆歴史・床の間動物園Ⅰ(2階 テーマ展示コーナー、第2展示室)


《松に鷹図》

 2階・通路沿いの「テーマ展示コーナー」には、4枚組の杉戸絵が2点。原田圭岳《松に鷹図》(1881)と《鶴図》(1875)、大迫力です。第2展示室には同じ作者の杉戸絵《松に鶴図》(3枚組)もあります。いずれも豊橋市・石巻地区の宮司・佐藤為継が自宅を飾るために描かせたもの、とのことです。今回は、全5点のうち3点を見ることが出来ました。


《鶴図》

床の間動物園Ⅰでは、江戸時代から昭和までに制作された、鳥を描いた掛け軸、屏風、杉戸絵を展示しており、渡辺崋山が25歳のときに描いた写生帖や、崋山の次男・渡辺小崋が描いた墨画や彩色画(いずれも明治時代)もあります。

◆美術・書を愉しむ(2階 第3展示室)

 いずれも昭和・平成に制作された書で、墨の濃淡や造形表現を味わう作品が並んでいました。

◆美術・从(ひとひと)会の作家たち(2階 第4展示室)

 从(ひとひと)会は、中村正義・星野眞吾らが1974年に創立した美術グループです。展示されているのは17点ですが、うち8点が第1回从展「黒い太陽・七人の画家 从展」の出品作品でした。第4回从展出品の田島征二《ぼくたちの踊る踊り》(1977)は、男女4人の顔と鶏の顔が合体し、左足は鶏の脚という不思議な作品です。そのほかの作品も、不穏な空気が漂っていました。

◆民俗・電話+カメラ=?(2階 第5展示室)

 名古屋市美術館「写真の都」物語を見た後なので、乾板式ハンドカメラと写真乾板、フォールディングカメラのフジミナールW,二眼レフのアイレスフレックスY3型などに目が止まりました。


乾板式ハンドカメラ

フジミナールW

アイレスフレックスY3型

◆展覧会情報

 「豊橋市美術博物館 令和3年度スケジュール」によると2階・常設展示室のコレクション展は、第1期が3.13~5.23,第2期が5.29~8.29,第3期が9.4~11.23,第4期が11.30~2022.2.13です。一方、1階・特別展示室「郷土ゆかりの美術」は、第1期が4.3~7.11「Happy Yellow」、第2期が11.30~12.26「星野眞吾と高畑郁子」、第3期が2022.1.4~3.27「Face to Face」です。いずれも、観覧無料。

企画展は、7.17~8.29「三沢厚彦 ANNIMALS IN TOYOHASHI」、10.9~11.23「芳年 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」、11.30~12.26「全国公募 第8回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展~明日の日本画を求めて~」、2022.2.19~3.27「2021年度 美術コレクション展」等です。

◆おまけ・碧南市藤井達吉現代美術館の特別開館事業

「Nagoya art news 2021 4-5」によると、碧南市藤井達吉現代美術館 特別開館事業「いのちの移ろい展」が、4.29~6.20の会期で開催されるようです。「人や自然の間を結ぶ大きな『いのち』の表現を、現代作家10名の作品と所蔵品を通して辿ります」とのことなので、楽しみですね。

Ron.

展覧会見てある記 「アートとめぐるはるの旅」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

開催が延び延びになっていた「アートとめぐるなつの旅」が、「アートとめぐるはるの旅」に改名。ようやく開幕しました。名古屋市美術館の地下1階で受付を済ませると、正面に見えるのは宇宙に浮かぶ色とりどりの星。山田光春《星の誕生》でした。壁に書かれた「ことば」を道しるべに、アートとめぐる旅を始めます。

◆たびのはじまり(白い壁)

常設展示室1に入って振り返ると、壁には「たびのはじまり」の文字。地図らしき作品が展示されています。右にはアンゼルム・キーファー《シベリアの女王》。進行方向に向き直ると、目の前には真っ暗な空間。

◆やみをぬけて(白い壁)

くらやみが無限に続いている感じの不思議な作品は、アニッシュ・カプーア《極空No.3》でした。右の壁にある山田光春《夜の生物》や染谷亜里可《Decolor – moon》では、くらやみの中に蛾や月が浮かんでいます。

◆そらのうえ(白い壁)

衝立の横を回り込むと、また衝立です。衝立に掛けられた絵の左には、粘土の塊が置かれています。今村哲《宇宙飛行士最後の夢》という作品で、絵と粘土の塊がセットになっているようです。振り返るとマルク・シャガールのエッチングが4点。バリー・フラナガン《三日月と釣鐘の上を跳ぶ野ウサギ》も展示されています。

◆うみのそこ(赤い壁)

赤い壁の部屋に向かうと竜宮城の絵が見えます。近寄ると作者は山田秋衛、1927年制作の作品でした。その左には海底レストランを描いた、坂本夏子《Octopus Restaurant》。浅野弥衛のエッチング4点もあります。作品名は「海の城」など、全て「海」に関するものでした。

◆だいちをながめて(赤い壁)

反対側の展示ケースには、田渕俊夫《大地悠久、洛陽黄河》と平松礼二《路 ― みち》。上陸したようです。

◆おわりとはじまり(赤い壁~白い壁)

赤い壁の展示室、残る2作品は山田光春《送列》とフリーダ・カーロ《死の仮面を被った少女》。たぶん、これは「おわり」。「はじまり」はコンスタンティン・ブランクーシ《うぶごえ》かな。内藤礼の作品も2点。

◆かぜのなか(白い壁)

目を引くのは、壁一面を占領する李兎煥《風とともに》。右の壁に展示された嶋谷自然《砂丘と海》からは、浜松市・中田島砂丘の潮風が感じられます。外にも2点の作品があります。

◆うみをこえて(緑色の壁)

子どもの絵に惹き寄せられて緑の壁の部屋に入ると、フランスやハンガリー、スペイン、メキシコの風景が並んでいます。アマディオ・モディリアーニ《おさげ髪の少女》も、この部屋にあります。

◆じかんときおく(緑色の壁)

河原温のtodayシリーズ《14.JUL.1986》の前で暫しの間、瞑想。

◆ここはどこ(うす茶色の壁)

うす茶色の部屋に進むと、お城や虎の檻、堀川、登り窯などの絵が並んでいます。「ここはどこ」と問いかけられたので、作品を見ながら答えを探していました。

◆おかえりなさい(灰色の壁)

ロビーを横切って、常設展示室3へ。部屋いっぱいに広がった白い浮遊物が目に入ります。庄司達(さとる)の《Navigation Flight(空間の誘導・飛行 》でした。大きいので、なかなかお目にかかれない作品ですね。

最後の作品はトニー・クラッグ《住処のある静かな場所》。ようやく、我が家に戻ることが出来ました。

◆最後に

展覧会を企画した人たちと会話する気持ちで鑑賞し、展覧会を楽しむことが出来ました。なお、《死の仮面を被った少女》は、Youtube動画(2002年制作の映画「フリーダ」予告編)でも鑑賞できます(51秒頃登場)。

Ron.

読書ノート「芸術新潮」2021年4月号 2021年美術展特集号

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

ようやく「芸術新潮」の美術展特集号が発売になりました。「これだけは見ておきたい2021年美術展ベスト25」始め6つの特集があり、全104展の情報が載っています。その中から、名古屋周辺で開催される美術展を、特集別・会期順に並べてみました。

◆これだけは見ておきたい2021年美術展ベスト25

○渡辺省亭 ―欧米を魅了した花鳥画― 岡崎市美術博物館 5月9日~ 7月11日

○生誕160年記念 グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生 名古屋市美術館    7月10日~9月5日

○生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画を求めて 豊田市美術館 7月10日~9月20日

○曾我蕭白 奇想ここに極まれり 愛知県美術館 10月8日~ 11月21日

○ゴッホ展――響きあう魂 ヘレーネとフィンセント 名古屋市美術館 2022年2月23日~4月10日

◆新会期決定 帰ってきた2020的Exhibition

○バンクシーって誰?展 名古屋にも巡回予定

注:金山で開催している「バンクシー展 天才か反逆者か」(2月3日~5月11日)とは別の展覧会です

◆2021年、これだけは見ておきたい美術展 番外編1 災害を見つめるアート

名古屋周辺では、該当する美術展の開催はありません

◆2021年、これだけは見ておきたい美術展 番外編2 今年は貴重な海外現代作家展

○ボイス+パレルモ 豊田市美術館 4月3日~6月20日

○ミケル・バルセロ展 三重県立美術館 8月14日~10月24日

○ミニマル/コンセプチュアル:ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術 愛知県美術館 2022年1月22日~3月13日

◆2021年、これだけは見ておきたい美術展 番外編3 イラスト、絵本、マンガ展続々

○サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化60年史  松坂屋美術館 4月24日~6月12日

○没後20年 まるごと馬場のぼる展 描いた つくった 楽しんだ ニャゴ! 刈谷市美術館に巡回予定

◆もっと見たい! 2021年美術展50 気になる展覧会を PICK UP!

○GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?  愛知県美術館        1月15日~4月11日

○ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ  名古屋市美術館 4月10日~6月6日

○ミレーから印象派への流れ 岐阜県博物館  9月5日~11月14日

○フランソワ・ポンポン展 動物を愛した彫刻家 名古屋市美術館  9月18日~6月6日

○生誕120年記念 荻須高徳展 ―私のパリ、パリの私- 稲沢市荻須記念美術館 10月23日~12月19日

○杉浦非水 時代をひらくデザイン 三重県立美術館  11月23日~2022年1月30日

○大雅と蕪村 ―文人画の大成者 名古屋市博物館  12月4日~2022年1月30日

◆補足

「美術の窓」2021年1月号、「日経トレンディ」2021年1月号では以下の展覧会も紹介していましたが、これが全てではありません。名古屋周辺では、今年も数多くの美術展が開催されるようなので、楽しみです。

○海を渡った古伊万里 ~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇~ 愛知県陶磁美術館 4月10日~6月13日

○若冲と京の美術 -京都 細見コレクションの精華- 三重県立美術館     4月10日~5月23日

○特別展 刻(とき)を描く 田渕俊夫 徳川美術館 4月18日~5月30日

○所蔵企画展 田渕俊夫と日本画の世界 美をつなぐ 

メナード美術館  前期 4月18日~5月30日、後期 6月2日~7月11日

○トライアローグ 横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館  20世紀西洋美術コレクション 愛知県美術館 4月23日~6月27日

Ron.

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