コレクション解析学2009-2010の11月29日(日)の第4回講座に参加。
今回は福田美蘭の《陶器(スルバランによる)》という作品。この講座は名古屋市美術館学芸員による収蔵作品をさまざまな切り口から解説しその作家の全体像を紹介するもので、毎回楽しみにしている。
今回の講師は市美術館の清家学芸員で、興味深い話題満載でした。
17世紀スペイン絵画の巨匠スルバランの略歴に始まり、福田美蘭の絵の購入のきっかけとなった経緯を説明(1992年の「スペイン・リアリズムの美~静物画の世界~」展の時にあわせて開催された森村泰昌・福田美蘭によるスペイン静物画へのオマージュ展に出品された作品だとのこと)。それから福田美蘭の安井賞受賞作品の「グリーンジャイアント」の解説や彼女の作品におけるモザイク処理のエピソードなどおもしろい内容。
その場にいた人たちの笑いを誘ったのが女性二人を描いた彼女の作品。最初は何の絵か見当もつかず、変な絵だと思っていたら、その絵はルーヴル美術館収蔵のダヴィンチの「聖アンナと聖母子」の絵を元に、その中に描かれている幼子イエスの視点から描くとどんな絵になるのかと想像して描いた作品。とてもユニークだ。またボッティチェッリの「春」を西風ゼフュロスの視点からみた絵を描いた作品。振り返っているフローラがなんともかわいらしい。さらに、葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」では右と左を反転させて描いた作品。彫師たちはこの構図を見ていたのだろうと私たちに考えさせる作品。現代美術でありながら過去の時代背景をも取り込んでいる。
あらためて現代作家はあらゆるアプローチを駆使して自分の芸術性を高め表現していくことを理解させられた今回の講座でした。担当者の熱意あふれる解説であっという間の100分。今回は特別に福田美蘭さん提供の図録までいただきました。
市美術館のこの講座、絵のさまざまな見方の知識が増えて楽しいですよ。みなさん、ぜひ参加されることをお勧めします。
谷口 信一