お知らせ

2025年3月4日

2025年協力会イベント情報

現在、下記のイベントの申し込みを受け付けています。

1.珠玉の東京富士美術館コレクション 西洋絵画の400年展 会員向けギャラリートーク 名古屋市美術館 令和7年4月12日 午後5時より

参加希望の会員の方は、ファックスか電話でお申し込みください。ホームページからの申し込みも可能です。

参加の際は、感染症対策にご協力をお願い致します。体調の優れない場合は、参加をご遠慮ください。

最新の情報につきましては随時ホームページにアップしますので、ご確認ください。また、くれぐれも体調にはご留意ください。

これまでに制作された協力会オリジナルカレンダーのまとめページを作りました。右側サイドメニューの「オリジナルカレンダー」からご覧ください。

事務局

パウル・クレー展 ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

 前日の中村正義展に続き、2月23日日曜日には、愛知県美術館にて「パウル・クレー展」のミニツアーが開催されました。会員15名が愛知県美術館12階のアートスペースAに集合し、展覧会の担当学芸員の黒田和士氏の解説を聴きました。

 ベルン近郊の町に生まれたクレーは父親の影響で音楽や詩に親しみがあったこと、その後ミュンヘンに行き絵を学んだこと、社会風刺や政治批判の時代を経てドイツの画家たちと出会っていくことなど、クレーの人生について年代を追って説明頂きました。

 彼が出会って影響を受けた画家たち(カンディンスキー、ロベール・ドローネー、アウグスト・マッケ)らとの交流や、戦争に突入していく時代の流れなども、彼の作品に大きな影響を与えていたこともわかりました。

 作品を鑑賞するだけではわからない、クレーの奥深い美術への情熱や概念を、ほんの少し、理解できたように感じました。

生誕100年 中村正義展ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

 令和7年2月22日、今年何度か目の寒波が訪れる中、生誕100年中村正義展が豊橋市美術博物館にて開幕を迎えました。午前中は、豊橋ではかなり珍しいであろう降雪のせいか、会場は閑散としており、そんな中でも学芸員の丸地加奈子さんの解説が1階の展示室でスタート。大きく5章に分けられた中村正義の作品、そして正義に関わった作家たちの作品について、エピソードなどを交えながら解説してくださいました。

 日展に入選した初期のころから、蒼野社時代、一采社などの時代の活動について、更には自身が病に侵されて変わっていく画風についてなど、時間が限られる中、興味深い解説をしていただきました。

 午後には、作家の長女で中村正義の美術館館長の中村倫子さんと、われらが名古屋市美術館にて中村正義の展覧会を担当して開催してくださった山田諭氏との対談が行われ、午前中とはうって変わって会場には入りきらないほどの聴衆が集まりました。対談では、作家について、更に深く解析、解説していただき、長女倫子さんからは様々なエピソードも紹介されました。

 この展覧会では、その後も毎週豪華なゲストによるトークが開催、予定されています。

太田龍峰会長を偲んで

カテゴリ:協力会事務局 投稿者:editor

去る2月13日、協力会の太田龍峰会長が逝去されました。1週間ほど前に心筋梗塞で倒れられ、そのまま意識を回復することなく旅立ってしまわれました。あまりに突然のことで、ただただ茫然とするばかりです。
 太田さんは名古屋市美術館の副館長を2年間勤められ、その間私は学芸課長としてお仕えしました。最初お会いした時は、少し怖い方かなと思ったのですが、すぐに皆さんおなじみの笑顔を見せられ安堵したのを覚えています。ただ、その後市役所の方に伺ったところでは、若い頃はずいぶん厳しい面もお持ちだったようで、年齢を重ねられる中で穏やかになっていかれたことを知りました。私がお仕えした2年間は、厳しいお叱りを受けることもありませんでしたが、議会対応などで夜遅くまで、何度も本庁にご一緒したことが記憶に残っています。
記憶に残ると言えば、私は健康のためもあり、金山駅から美術館まで歩いて通っていた(現在も)のですが、途中でしばしば太田さんの姿をお見かけすることがありました。美術館まで一緒に話をしながら歩くこともあったのですが、その折、市役所に勤務されていた時は、金山から市役所まで歩いていたとお聞きして、さすがに驚いたことを覚えています。健脚もそうですが、それを続けていられたことに感服しました。
定年退職後に美術館の協力会にお入りになり、令和3年度からは会長として精力的に活動されておられました。このブログをお読みになっていらっしゃる方はよくご存知だと思いますが、美術展の紹介はもちろん、美術に関連する雑誌や新聞の記事の紹介、映画の感想など、本当に幅広く、かつ積極的に美術に触れておられ、またその文章の記述の詳細なことは驚くばかりでした。当館での講演会や解説会などでも、熱心にメモを取られながら聴き入る姿が今も目に焼き付いています。
あれほどお元気で精力的な太田さんが、こんなにあっという間に他界されてしまったことが、未だに信じられません。人の命のはかなさをつくづく思い知らされますが、はかないからこそ、今を大切に生きていかなければならないことを伝えてくださったのだと思います。心からのご冥福をお祈りいたします。 (名古屋市美術館参与・深谷克典)

璃月ゆあ ≪同業者コミュニティの形成と印刷産業発展の可能性について-インタビュー分析による他己紹介をワークショップの契機として-≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
情報科学芸術大学院大学(以下、IAMAS)の修了研究発表会/プロジェクト研究発表会は、ソフトピアジャパン・センタービルで開催されている。このビルは、大垣駅周辺で一番の高層ビルらしく、最上階の展望エリアからは市街の景色を一望できる。この時期、西の方角には雪をかぶった伊吹山もよく見える。

情報科学芸術大学院大学修了研究発表会/プロジェクト研究発表会にて (その1)

璃月ゆあ ≪同業者コミュニティの形成と印刷産業発展の可能性について-インタビュー分析による他己紹介をワークショップの契機として-≫

研究成果をまとめたポスターが、ずらりと並んでいる。他の美大、芸大でも論文の概要展示は見かけるが、IAMASでは修了要件として作品と論文の両方に取り組むため、論文の本数が多いみたいだ。

その中で、衰退する印刷産業に関するアートっぽくない研究論文に目が留まった。市中のニュースでも書店の減少について見聞きすることがある。自分の周りでも、いろいろな資料や書類が電子データ化され、紙の印刷物はずいぶんと減った。そのような状況下、印刷産業が生き残るためにはどうするか、ひとつの会社のみでは解決できない課題にどのように取り組むかを検討した研究論文だ。

展示風景

研究中に始めた実験的な取り組みは、実験に参加した会社間の関係性にゆっくりと、明らかな変化をもたらすという、明るい未来も見え始めている。しかし、本研究では、決して短期的な解決策を求めていない。効果が見えてくるのは、10年先か、20年先か、ひょっとすると30年先かもしれない、そのような長い目で業界を見渡した提言がまとめられている。

ポスター展示の傍らに、「月の声を聴くための言葉」という題名の小冊子が置かれていた。

展示風景

ページを開くと飾りのスリットがあったり、微細な感情の表現のため、ページごとの行間が微妙に変えてあったり、多くの工夫が凝らされている。この小冊子には、ひとつの印刷会社ではカバーできない印刷・製本技術が詰め込まれている。この小冊子を作る時の経験が、本研究の出発点になっているようだ。

展示風景

作家によれば、本研究には「宝物を探す」ような気持ちで、誠実100%で取り組んだそうだ。また、修了にあたり作品は制作していないが、論文自体が作品でもあると感じているそうだ。

アートっぽくない、異色な展示だが、とても有意義な「作品」を見ることができた。

杉山

對中優 ≪Drifting≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
研究発表会の会期中、「IAMAS JUNCTION」というトークプログラムが複数回、実施された。今年の卒業生が自身の制作の説明をしたり、学生時代の思い出を話すのだが、学生時代を振り返り「楽しかった」という学生が多かった。きっと充実した時間を過ごしたからに違いない。

情報科学芸術大学院大学修了研究発表会/プロジェクト研究発表会にて (その2)

對中優 ≪Drifting≫

入口の手前に置かれた注意事項を読み、順番を待つ。モニターの表示が「空室(vacant)」に変わったら、ドアを開ける。右側の壁面の中央付近に椅子を見つけた。ひとまず椅子に座り、何が起こるのか、ドキドキしながら待つ。

展示会場入口

目の前のモニターにアバターが映り、いろいろな身振り、手振りを見せてくれる。しばらくすると、モニターの背後の壁の上から、何かが飛んでくる。時折、光るものも飛んでくる。床に落ちたものを見ると、飛んできたのは紙飛行機だった。

≪Drifting≫(部分)

モニターに映るアバターは時折、手をこちらに差し出す。ジェスチャーで何かを伝えようとしているようだ。また、紙飛行機に使われている色紙の裏側に、記号の書かれたものが混じっている。これも何かの伝言だろうか。

≪Drifting≫(部分)

對中は、壁と紙飛行機などで構成されたインスタレーションで、アバターが象徴するバーチャルな空間と観客が存在するリアルな空間の二重性を提示している。壁の向こうのパフォーマーは沈黙しているが、紙飛行機は伝言用のメモ用紙にも変わりうる。観客は飛んでくる紙飛行機を静かに眺めていればいいのだろうか。もし紙飛行機がコミュニケーションの手段であるならば、観客が紙飛行機を壁の向こうに飛ばし返すことで、双方向のコミュニケーションが成立するだろう。作家は、観客がインスタレーションに介入することを期待しているだろうか。あるいは、ただ静かに座っていることを期待しているだろうか。どちらを期待するかにより、作品が示唆するコミュニケーションの展開は、その様相を大きく変えるのではないか。

杉山

松井美緒 ≪残波 – Echoing waves≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
情報科学芸術大学院大学(以下、IAMAS)の修了研究発表会/プロジェクト研究発表会を見に行こうと知人を誘うと、「遠いから」と断られることが多い。とは言え、名古屋駅からIAMASまでの所要時間は、長久手にある愛知県立芸術大学に行くのと、さほど変わらない。愛知県から岐阜県へ、県境を超えることが「遠い」という思い込みになるのかもしれない。

情報科学芸術大学院大学修了研究発表会/プロジェクト研究発表会にて (その3)

松井美緒 ≪残波 – Echoing waves≫

≪残波 – Echoing waves≫は音の作品だ。音の作品を写真と文章で紹介することには限界がある。可能なら実際に展示会場で体験してもらいたいのだが、既に展示終了のため、記録として簡単に紹介する。

入口のモニターに表示された注意事項を読み、予約表に記名して順番を待つ。モニターの表示が「入室可能です」に変わったら、ドアを開け、真っ暗な室内に入る。右側の壁面の所々に蓄光テープでマークがあるので、部屋の奥まで進み、蓄光テープでマークされた椅子に座り、開演を待つ。

展示会場入口

座った場所の正面あたりの割と近いところから、時々「コーン」という音が聞こえる。日本庭園で見かける、流水と青竹を組み合わせてリズミカルな音を聞かせてくれる「ししおどし」のような音だ。ビルの中の一室で、疑似的に日本庭園の風雅を体験する作品だろうか。

時間がたつにつれ、「コーン」の音の他に、遠くを走る自動車の騒音のようなノイズが混ざり始める。だんだん、不快感を覚えるほどにノイズが強くなる。突然、照明が灯り、部屋の中央に仕掛けられた「ししおどし」が、その姿を現す。

≪残波 – Echoing waves≫(部分)

自分が聞いていたのは、竹で作られた本物の「ししおどし」ではなかった。聞いていたのは、配管などに使われる塩化ビニール製の偽物の「ししおどし」だった。

本日以降、「ししおどし」の音が聞こえてきたら、それは本物の竹の音か、竹以外の筒の音か、録音再生の音か、聞き耳を立てることになりそうだ。ただし、それは社会を飛び交う真偽不明の情報と同じく、容易には判別がつくまい。

杉山

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