お知らせ

2025年6月24日

2025年協力会イベント情報

現在、申し込みを受け付けているイベントはありません。

お知らせ

令和7年7月13日午後2時より、名古屋市美術館講堂にて、令和7年度名古屋市美術館協力会総会を開催します。当日は、総会終了後に、深谷さんより最新の南フランス美術館情報を講演いただきます(会員限定、参加申し込み不要)どうぞ、お楽しみに!

最新の情報につきましては随時ホームページにアップしますので、ご確認ください。また、くれぐれも体調にはご留意ください。

これまでに制作された協力会オリジナルカレンダーのまとめページを作りました。右側サイドメニューの「オリジナルカレンダー」からご覧ください。

事務局

共有すること 耕すこと 続けること

カテゴリ:記念講演会 投稿者:members

はじめに

「アートラボあいち」で、「池田佳穂さんによるシャルジャ・ビエンナーレ・キュレータープログラム報告会」が行われました。

国際芸術祭「あいち2025」のフール・アル・カシミ芸術監督がディレクターを務めるシャルジャ・ビエンナーレは、西アジアで最も長い歴史を持ち、最大規模を誇る国際芸術祭です。また、世界各地から若手キュレーターを招聘し、その育成にも力を入れています。

報告会では、国際芸術祭「あいち2025」のラーニングチームの感想や質問を交え、池田氏のこれまでの活動や、シャルジャでのキュレータープログラムの様子が紹介されました。また、会場からの活発な質問もあり、楽しく芸術祭への期待を高める機会になりました。

左から 村上慧(国際芸術祭「あいち2025」ラーニングチーム)、池田佳穂(インディペンデント・キュレータ)

報告会の概要

冒頭では、まず池田氏のこれまでの活動が紹介され、一例として、東南アジアや日本各地でアートのようなものを地域に芽吹かせた事例紹介がありました。それらの事例では、アートになじみのない人々でも参加しやすい、音楽や対話を取り入れた企画に興味を惹かれました。

報告会のスライドから

話が進み、シャルジャ・ビエンナーレでのキュレータープログラムの紹介では、ビエンナーレにかかわる女性が多いこと、参加者は世界各地から来ていること、プログラムの期間中は朝から夜まで、密度の濃い時間を過ごしたことなどが紹介されました。

いろいろと話題が進む中で、これまでの展覧会は、キュレーターが作家や作品を選択し、物質として展示することが主目的になりがちなこと、その一方で「ラーニング」は展覧会の補助的なプログラムとして扱われがちだが、「ラーニング」で作品の周辺を「深堀り」することで展覧会の在り方を拡張できるという指摘は興味深いものでした。

報告会のスライドから

報告会では、今回で16回目となるシャルジャ・ビエンナーレのガイドブックも回覧されました。掲載された作家や作品は、ほとんど目新しいものばかりで新鮮な経験でした。また、参加作家や出展作品の多さ、展示場所の多様さ、スポンサーや協賛の多種多様さにも驚かされました。

シャルジャ・ビエンナーレのガイドブックなど

おわりに

報告会の中で、アートへのアクセスの難易度の指摘がありました。気になる話題なので、最後に少し触れておきます。芸術祭には、車いすの方、聞こえにくい方、見えにくい方も来場します。国際芸術祭「あいち2025」の美術展、パフォーマンス、ラーニングでも、より幅広い方たちが芸術祭を楽しめるよう、スロープや手すり、字幕や音声ガイドなど、アクセスの難易度への配慮が適切にされることを期待します。

杉山 博之

アートツアー アンゼルム・キーファー:ソラリス(京都)

カテゴリ:アートツアー 投稿者:members

名古屋市美術館協力会のアートツアーで、京都・元離宮二条城で開催されている「アンゼルム・キーファー:ソラリス」展(以下、ソラリス展)と、京都国立近代美術館で開催されている「若きポーランド」展(以下、ポーランド展)を訪問しました。以下で簡単に、「ソラリス展」の様子をご紹介します。

会場入口

アンゼルム・キーファーは、名古屋市美術館の名品コレクション展(常設展)でも、毎回、彼の作品が展示されるので、とても親近感のある作家です。特に、今回の「ソラリス展」は、世界遺産である元離宮二条城を会場とし、スケールの大きな作品が野外にも展示されます。また、主催者であるファーガス・マカフリーのスタッフによる本アートツアーのための作品解説もあり、とても楽しみにしていました。

作品解説の様子

作品保護と展示室内の導線を残すため、作品解説は途中から2つのグループに分かれました。会員からは、「作品タイトルを見ると女神の名前が多いが、男神の名前の作品はあるのか」、「重そうな作品だが、どうやって展示したのか」、「作品の表面に張り付けられた材料はなにか」など、活発な質問が出ました。

作品解説の様子

作品解説では、第二次世界大戦で敗戦国となったドイツと日本の共通性、フランスにあるアンゼルム・キーファーのアトリエの様子、元離宮二条城で展示する意義についても、話題が出ていました。おもしろかったのは、江戸時代のものと思われる「落書き」が残されていたことです。「落書き」した本人は、まさか2025年の「ソラリス展」で、大勢の観客に見られるとは、思ってもいなかったことでしょう。

作品解説の様子

中庭に面した展示室では、麦のような作品の穂先が窓からの光で金色に輝いていました。これらは、もちろん本物の植物ではありません。ここでも、「作品タイトルのモーゲンソー計画とは」、「砂の上にどうやって植えているのか」、「通路のほうに斜めに傾けているのはなぜか」、「砂の上に置かれた蛇や陶器の破片の意図は」、「麦の種類はなにか」など、活発な質問が出ました。

作品解説の様子

前日からの雨も上がり、前庭の≪ラー≫を背景に記念撮影をしました。中庭にも、鉛で作られた多くの作品が並んでいました。

元離宮二条城 台所前庭にて
元離宮二条城 御清所中庭にて
元離宮二条城 御清所中庭にて

アンゼルム・キーファーの作品には、大量の鉛が使用されています。古代から中世にかけて、盛んに研究された錬金術は、卑金属の鉛から貴金属の金を精錬できませんでしたが、現代アートの世界では鉛の作品から、とても貴重な、金にも勝る鑑賞体験をすることができました。

杉山 博之

元離宮二条城でキーファーを見る

カテゴリ:アートツアー 投稿者:editor

5月10日(土曜日)、名古屋市美術館協力会の春のバスツアーに参加しました。午前中は二条城の二の丸御殿台所、御清所で開催されている「アンゼルム・キーファー ソラリス」展を鑑賞。昼食は智積院茶寮で貸し切りの部屋で料理を堪能。午後は京都国立近代美術館で「若きポーランド 色彩と魂の詩1890-1918」展を鑑賞するツアーです。

展示風景 《オクタビオ・パスのために》

名古屋市美術館に収蔵されている作品の中でヴィジュアルにおいて最もインパクトのあるものはキーファーの≪シベリアの王女≫だと個人的には思っているので、二条城でキーファー展があると聞いたときはそんなところで展覧会が開催されるのか正直疑問に思っていました。現代美術と伝統文化である二条城とマッチするはずがないと思っていました。

しかし実際に二条城に入り最初に《オクタビオ・パスのために》を眼にしたときに心の中でなるほどと妙に納得する感情を覚えました。二条城の大屋根のとてつもなく太い梁にも負けない重量感ある力強いキーファーの作品とのコラボ。こころの中で全く違和感がない、お互いが完全に調和し親和性を創り出している。驚きだった。違和感がない。これがまさしく現代美術のひとつの面白さだとおもいます。現代美術においては作品とその題名とそれに対しての作者の思想を読み解く面白さにあると思うのだがこの展示は神話、哲学、戦争などいろいろな方向へと私たちを引き込む力があると強く感じました。

展示風景 中庭にて

そんな展示空間のなかで主催者のファーガス・マカフリーの担当者からの企画、制作、開催までの詳細な解説、《モーゲンソー計画》の作品の砂をどのように部屋の中へ入れ、建物を傷めないように砂をボンドなどで固めて作品を完成させた苦労話など興味深い説明を受けました。また協力会の会員の様々な質問で大いに盛り上がりあっという間の2時間でした。ヨーゼフ・ヴォイスとキーファーとの関係なども話題に。個人的には大分まえにベルリンかミュンヘンか忘れてしまったけれどヴォイスのジャケットの作品を見たなあと思い出したりもしました。

展示室入口

「若きポーランド」展はなじみのない画家の作品ばかりでヨーロッパの美術館でよくみられるレヴェルの作品が多くあるように思いました。フランスの画家たちが浮世絵の影響を受けているのは広く知られていることだがポーランド絵画が浮世絵の影響を受けているということは知りませんでした。歌川広重の《名所雪月花より》《神奈川八景》《名所江戸百景》などの浮世絵を見て改めて浮世絵のよさを発見。また常設展では好きなマティスのリズム感ある《ジャズ》の作品、東松照明の鮮やかなコントラストが際立つ《京まんだら:智積院》、楽直入のアヴァンギャルドな茶碗など見ごたえのある作品を鑑賞することができました。

展示風景

最後に名古屋市美術館の学芸員の竹葉さんに鑑賞の手引きとなる数多くの資料準備、またバスの車内でのキーファー展の解説、現在のアメリカ、ヨーロッパなどの美術館の動向、キュレーターたちの動き、日本の美術館の今後の方向性等、幅広い興味ある貴重な話をしていただきました。他にもいろいろな細かな心遣いなどしていただくなど大変お世話になりました。本当にありがとうございました。感謝申し上げます。

谷口 信一

パウル・クレー展 ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

 前日の中村正義展に続き、2月23日日曜日には、愛知県美術館にて「パウル・クレー展」のミニツアーが開催されました。会員15名が愛知県美術館12階のアートスペースAに集合し、展覧会の担当学芸員の黒田和士氏の解説を聴きました。

 ベルン近郊の町に生まれたクレーは父親の影響で音楽や詩に親しみがあったこと、その後ミュンヘンに行き絵を学んだこと、社会風刺や政治批判の時代を経てドイツの画家たちと出会っていくことなど、クレーの人生について年代を追って説明頂きました。

 彼が出会って影響を受けた画家たち(カンディンスキー、ロベール・ドローネー、アウグスト・マッケ)らとの交流や、戦争に突入していく時代の流れなども、彼の作品に大きな影響を与えていたこともわかりました。

 作品を鑑賞するだけではわからない、クレーの奥深い美術への情熱や概念を、ほんの少し、理解できたように感じました。

生誕100年 中村正義展ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

 令和7年2月22日、今年何度か目の寒波が訪れる中、生誕100年中村正義展が豊橋市美術博物館にて開幕を迎えました。午前中は、豊橋ではかなり珍しいであろう降雪のせいか、会場は閑散としており、そんな中でも学芸員の丸地加奈子さんの解説が1階の展示室でスタート。大きく5章に分けられた中村正義の作品、そして正義に関わった作家たちの作品について、エピソードなどを交えながら解説してくださいました。

 日展に入選した初期のころから、蒼野社時代、一采社などの時代の活動について、更には自身が病に侵されて変わっていく画風についてなど、時間が限られる中、興味深い解説をしていただきました。

 午後には、作家の長女で中村正義の美術館館長の中村倫子さんと、われらが名古屋市美術館にて中村正義の展覧会を担当して開催してくださった山田諭氏との対談が行われ、午前中とはうって変わって会場には入りきらないほどの聴衆が集まりました。対談では、作家について、更に深く解析、解説していただき、長女倫子さんからは様々なエピソードも紹介されました。

 この展覧会では、その後も毎週豪華なゲストによるトークが開催、予定されています。

太田龍峰会長を偲んで

カテゴリ:協力会事務局 投稿者:editor

去る2月13日、協力会の太田龍峰会長が逝去されました。1週間ほど前に心筋梗塞で倒れられ、そのまま意識を回復することなく旅立ってしまわれました。あまりに突然のことで、ただただ茫然とするばかりです。
 太田さんは名古屋市美術館の副館長を2年間勤められ、その間私は学芸課長としてお仕えしました。最初お会いした時は、少し怖い方かなと思ったのですが、すぐに皆さんおなじみの笑顔を見せられ安堵したのを覚えています。ただ、その後市役所の方に伺ったところでは、若い頃はずいぶん厳しい面もお持ちだったようで、年齢を重ねられる中で穏やかになっていかれたことを知りました。私がお仕えした2年間は、厳しいお叱りを受けることもありませんでしたが、議会対応などで夜遅くまで、何度も本庁にご一緒したことが記憶に残っています。
記憶に残ると言えば、私は健康のためもあり、金山駅から美術館まで歩いて通っていた(現在も)のですが、途中でしばしば太田さんの姿をお見かけすることがありました。美術館まで一緒に話をしながら歩くこともあったのですが、その折、市役所に勤務されていた時は、金山から市役所まで歩いていたとお聞きして、さすがに驚いたことを覚えています。健脚もそうですが、それを続けていられたことに感服しました。
定年退職後に美術館の協力会にお入りになり、令和3年度からは会長として精力的に活動されておられました。このブログをお読みになっていらっしゃる方はよくご存知だと思いますが、美術展の紹介はもちろん、美術に関連する雑誌や新聞の記事の紹介、映画の感想など、本当に幅広く、かつ積極的に美術に触れておられ、またその文章の記述の詳細なことは驚くばかりでした。当館での講演会や解説会などでも、熱心にメモを取られながら聴き入る姿が今も目に焼き付いています。
あれほどお元気で精力的な太田さんが、こんなにあっという間に他界されてしまったことが、未だに信じられません。人の命のはかなさをつくづく思い知らされますが、はかないからこそ、今を大切に生きていかなければならないことを伝えてくださったのだと思います。心からのご冥福をお祈りいたします。 (名古屋市美術館参与・深谷克典)

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