お知らせ

2017年10月15日

イベント情報

平成29年度これからのイベントの情報です

日時   12月17日(日)
名古屋市美術館
シャガール展ギャラリートーク

会員のみなさまは、ファックスまたはブログからお申込ください。

事務局

2018年美術展ベスト25(芸術新潮12月号)

カテゴリ:アート・ホット情報 投稿者:editor

11月25日発売の「芸術新潮」12月号の特集は「これだけは見ておきたい2018年美術展 ベスト25」。

愛知県内の美術館で開催される展覧会としては、「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」(豊田市美術館 2018.4.24~7.16)、「モネ それからの100年」(名古屋市美術館 2018.4.25~7.1)、「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」(名古屋市美術館 2018.7.28~9.24)が紹介されています。

「ブリューゲル展」の記事は「ブリューゲルといえばピーテル1世の《バベルの塔》の来日が記憶に新しいですが、じつは彼亡き後も代々続いた画家一族だって知ってました?ここでは3世代8人の画家を紹介しましょう。」と、始まっています。

「モネ それからの100年」の記事の出だしは「本展はモネの作品と後世の作家の作品を一堂に集め、モネのエッセンスがのちの美術にどう伝わったかに光を当てる。というわけで、ここでは出品作家のひとり福田美蘭さんにモネ作品の見方を教わり、彼の『遺産』に思いをはせます。」です。

 「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」の記事の表題は「騙され盗まれ、波乱万丈? ビュールレ氏の収集ライフとお宝絵画」で、「印象派やポスト印象派をメインに、名画を集めまくったアート・コレクター、E.G.ビュールレ氏の秘蔵の作品が一挙来日!あの作品も、実はこの人が持っていました(時に盗まれもしましたが)。」と、続きます。

 東京と京都だけの展示になりますが、「没後50年 藤田嗣治展」の記事もあります。
Ron.

行ってみました:「北斎 だるせん!」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

 名古屋博物館で開催中の「北斎 だるせん!」(以下「本展」)に行ってきました。北斎が200年前に名古屋で描いた「大だるま」を中心にした展覧会で、「だるせん」は「だるま先生」の略。11月24日付け中日新聞1面「即興 北斎大だるま」という記事は、本展関連イベントの報道です。(11月25日にも続報)
なお、大だるまを描く様子は中日新聞HPの動画ニュースで見ることができます。

◆北斎漫画、大だるま、冨嶽三十六景
 本展は、「Before 名古屋」「北斎、漫画を描く」「北斎、大だるまを描く」「名古屋の仲間たち」「After 名古屋」の五章で構成。みどころは1回目の名古屋訪問(1812)が契機になって出版された「北斎漫画」(第2章)と、2回目の名古屋訪問(1817)時の「大だるま」(第3章)、《冨嶽三十六景 尾州不二見原》(第5章)。
第2章では、「北斎漫画」第1編は名古屋滞在中に北斎(1760-1849)が描いた絵をもとに永楽屋東四郎(名古屋)と角丸屋甚助(江戸)によって出版されたこと、第15編は北斎没後の明治11年(1878)に名古屋の画家・織田杏斎が補筆して出版されたことなど、色々と勉強になりました。第3章では、「大だるま」や北斎が使った大筆が再現され、写真撮影もできます。第5章の《冨嶽三十六景》は、「青色」が印象的でした。また、《尾州不二見原》の解説に「桶がなかったら、何とも間抜けた絵」と書いてあり、北斎の画面構成力を再認識しました。
本展では「江戸時代から、名古屋の富士見原から冨士山が見えるかという論争があった」という説明もあります。論争の決着については展示室でご確認ください。

◆芸術新潮・日経新聞にも北斎の記事
芸術新潮(2017.11月号)の特集は「北斎漫画」を取り上げており、日経新聞(2017.11.18)の文化欄に「北斎の画業・影響 深まる国際研究」という記事がありました。特に、日経新聞の記事では、本展に展示されている北斎《おしをくりはとうつうせんのづ》、《冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二》とスーラ《尖ったオック岬、グランカン》、セザンヌ《サント=ヴィクトワール山》との関係について触れ、「北斎没後160年余り。巨匠の画業への注目は、さらに世界各地へと広がろうとしている。」と、締め繰っています。
本展は、必見です。

◆スタンプ・ラリーも
 本展は名古屋ボストン美術館で開催中の「鈴木春信展」との間でスタンプ・ラリーを実施しており、応募すると抽選で景品がもらえます。市バスで往復できるので、スタンプ・ラリーもお忘れなく。
Ron.

豊田市美術館「ジャコメッティ展」ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

豊田市美術館で開催中の「ジャコメッティ展」(以下「本展」)のミニツアーに参加しました。参加者は19名。1階の講堂前で待ち合わせ、豊田市美術館の千葉学芸員から約30分の解説を聴いた後は自由観覧でした。

千葉学芸員のレクチャー(要旨)
 ジャコメッティは、スイスのイタリア語圏生まれの人。20歳でフランスに出て、フランスで活躍したが、スイス国籍は変えなかった。スイス人が誇りとする芸術家。本展では、南仏のマーグ財団美術館の収蔵品を中心に、日本の美術館の収蔵品も加えて展示している。
ジャコメッティの父親は、スイスを代表する印象派の画家。父親はキャンバスにうまく収まる大きさでリンゴを描くのに、ジャコメッティが見えるとおりに描くと小さくなってしまう。丁度よい大きさで描けないため、画家ではなく彫刻家を目指したという話がある。
ジャコメッティは当初、キュビズムやアフリカ彫刻に影響を受け、シュルレアリスム運動に参加したこともあったが満足できず、1935年頃からモデルを使った彫刻を試みるようになる。だが、困ったことに作品がどんどん小さくなってしまう。本展で展示している《小像(女)》(メナード美術館)は、台座も入れた高さが3.3㎝。小さすぎる作品には「すぐ壊れるため、残せない」という大きな問題があるため、ジャコメッティは、作品の高さを1mに維持しようとする。高さを維持すると、今度は、細く・薄い作品になってしまった。なお、細いけれど、胸・腰にはボリュームがあるという作品もある。
 「見えるものを、見えるままに」が、ジャコメッティのキーワード。ディエゴ(弟)、アネット(妻)、矢内原伊作(やないはら・いさく:1918-1989、友人)の像だと、モデルに似ているものもある。ジャコメッティの作品は「細くて、写実的ではない」と思われているが、リアルなもの、抽象度の高いもの等、様々。
ジャコメッティは彫刻家を選んだが、晩年にはドローイングにも回帰。ドローイングでは、顔に集中して手が入っている。ジャコメッティのドローイングは、リアルなもの、小さなもの、細長いもの等、様々だが、枠取りをして描くという特性がある。ジャコメッティは「枠取りした空間の中に、人物をどう配置する」に関心を持っている。本展では、枠取りしているもの、枠取りのないものを並べて展示しているので、比べてほしい。
展示室1の「14.チェース・マンハッタン銀行のプロジェクト」で展示している作品は、銀行から依頼されたものの実現しなかったプロジェクトで、マーグ財団美術館の庭に展示されている彫刻。油絵具で彩色されたが、風雨に晒されて色が落ち、古代遺跡のような存在感がある。美術館の中庭に置かれている作品なので本展でも自然光の入る展示室1に置いた。
20世紀の彫刻は抽象彫刻が多く、人体を表現する作品は少ない。ジャコメッティの彫刻は、古代彫刻から続く流れに乗ったもの。
本展では展示室のサイズに対応して展示している。そのあたりも楽しんでください。

自由観覧
◆観覧順路
 本展は、いつもとは逆に3階の展示室4が入口で、展示室3、展示室2と見てから2階の展示室1に下りて展示室5で終了という順路になっています。16のセクションで構成されていますが、千葉学芸員が解説されたように、作品リスト順ではなく「展示室のサイズに応じた展示」なので作品リストの配置図と見比べながら鑑賞することをお勧めします。

2017_ジャコメッティ_1

2017_ジャコメッティ_1


◆展示室4
 展示室4は三つの部屋に分かれています。
最初の部屋は「7.マーグ家との交流」。本展の展示作品を所蔵するマーグ財団美術館の創設者であるマーグ夫妻の肖像画とともに高さ21cmの《裸婦立像》(富山県美術館)と高さ167cmの《大きな像(女:レオーニ)》が展示されています。2つとも別のセクションに属しますが、ジャコメッティが「細長い彫刻」を始めた転換期の作品であり、マーグ夫妻がジャコメッティの作品の購入を始めた頃の作品でもあることから、ここに展示しているのでしょう。
なお、マーグ夫妻の肖像画はいずれも普通のプロポーション。マーグ夫人の肖像は、千葉学芸員の解説にあった「枠取りした絵」です。また、「顔の部分は、修正のため、何回も絵の具を塗り重ねているので盛り上がっている。」と、同行の参加者に教えてもらいました。
二つ目の部屋は「1.初期、キュビズム・シュルレアリスム」。1911年制作の《葛飾北斎《うばがえとき》模写》(神奈川県立近代美術館)は、10歳頃の作品とは思えない出来。作品リストでは「8.矢内原伊作」のセクションなので、矢内原伊作がジャコメッティから貰ったのでしょうね。
この部屋の作品は、1917年制作の《シモン・ベラールの頭部》を始め「細長い彫刻」とは別物ばかり。《カップル》、《女=スプーン》、《キューブ》など、「細長いスタイル」を確立するまでの作風の変化を楽しめました。
最後の部屋は、「2.小像」と「3.女性立像」。「2.小像」では作品の高さが23.5cmから3.3cmに至るまで、どんどん縮む様子が面白く、「3.女性立像」ではマーグ夫妻の肖像画と同様に、デッサンやエッチング、リトグラフでは普通のプロポーションというのが印象的でした。また、千葉学芸員が解説されたように、女性立像には、「細く・薄い像」と「細いけれど、胸・腰にはボリュームがある像」との2種類あることが確認できました。

◆展示室4から展示室3への連絡通路
展示室3から展示室4に向かう連絡通路には2階の展示室1を見下ろす窓があり、通路の両側には写真が展示されています。写真はジャコメッティが粘土で作品を制作している姿を撮影したもの。制作しているのは、展示室1に展示している「14.チェース・マンハッタン銀行のプロジェクト」の作品。窓から展示室1を見ると、写真と実物との比較ができます。
写真で面白かったのは、粘土が付いてズボンやジャケットが汚れることを全く気にせず、作品の制作に夢中になっているジャコメッティの姿でした。

◆展示室3
展示室4は「4.群像」と「13.ヴェネツィアの女」。「4.群像」では、同行の参加者から「《3人の男のグループ(3人の歩く男たちⅠ)》は、彫刻を一回りするように見ると、3人の男たちが歩きながらすれ違っているように見えて面白いですよ。」と教えてもらいました。また、9体並んだ《ヴェネツィアの女》は、別の参加者から「立って鑑賞するよりも、長椅子に座って鑑賞するほうが良い作品に見える。」との声。

◆展示室2
3階の小部屋・展示室2は「5.書物のための下絵」と「11.スタンパ」。ですが、「4.群像」や「9.パリの街とアトリエ」のセクションに属する作品も展示されています。特に《アトリエⅡ》、《犬、猫、絵画》には、展示室1に展示の《犬》、《猫》が描かれています。ジャコメッティは、どちらの作品も手元に置いていたのですね。
千葉学芸員が解説されたように、この部屋では「枠取りしているもの、枠取りのないものを並べて展示」していました。

2017_ジャコメッティ_2

2017_ジャコメッティ_2


◆展示室1
展示室2を出て階段を降りた展示室1は、「10.犬と猫」「14.チェース・マンハッタン銀行のプロジェクト」。この部屋の展示作品は3体の小さな彫刻を除き、全て写真撮影可能。スマホやタブレットで撮影している人が沢山います。本展のメイン。粋な計らいですね。
私の周りからは、「《猫》はジャコメッティの飼い猫、《犬》はジャコメッティの分身」と話す声や、「《歩く男Ⅰ》は細長いけれど、骨格や筋肉は正確に表現しているんだよね。」と話す声が聞こえて来ました。

◆展示室5
最後の部屋は展示室5。「6.モデルを前にした制作」「8.矢内原伊作」「9. パリの街とアトリエ」「12.静物」「15.ジャコメッティと同時代の詩人たち」「16.終わりなきパリ」と、6つのセクションに属する作品を展示。ジャコメッティの弟・ディエゴをモデルにした胸像が3体展示されていますが、うち1体は豊田市美術館の収蔵品。いずれも、「ブールデルに師事した」ことを再認識させる作品です。また、写真しかありませんでしたが《矢内原伊作の胸像》は普通のプロポーションの彫刻。千葉学芸員が解説されたように、「ディエゴ(弟)、アネット(妻)、矢内原伊作(やないはら・いさく=友人)の像だと、モデルに似ているものもある」というか、いずれも実にリアルな作品でした。
余談ですが、写真の矢内原伊作はヘアスタイル、顔の造作、背格好、どれをとってもジャコメッティによく似ていました。

◆最後に
 千葉学芸員に入場者の状況を聞いたところ、「ぼちぼち。鑑賞するには丁度よいですよ。」との回答。その言葉どおり、まずまずの入場者があり賑やかな雰囲気の中で楽しくジャコメッティ展を鑑賞することができました。入場者が多すぎると人に押されて鑑賞どころではありませんが、かといって「貸し切り状態」も寂しいですからね。
 コレクション展は、青木野枝、毛利武士郎、草間弥生など、現代彫刻の特集。千葉学芸員が解説された「20世紀の彫刻は抽象彫刻が多く、人体を表現する作品は少ない。ジャコメッティの彫刻は、古代彫刻から続く流れに乗ったもの。」という言葉を再確認しました。
 会期は、12月24日(日)まで。
Ron.

長沢芦雪展 ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor


今回の参加者は28名。愛知芸術文化センター12階のアートスペースEで約1時間、愛知県美術館の深山(みやま)美術課長の解説を聴き、その後は自由観覧となりました。

◆深山課長の解説(抜粋)
〇展覧会について
 長沢芦雪の展覧会は2013年の「応挙展」終了後から「次は芦雪」と、温めていた企画。
芦雪の展覧会は、2000年(千葉市美術館、和歌山県立博物館)、2011年(MIHO MUSEUM)以来の開催となる。開催当初の入場者は一日1500人程度だったが、SNSで「かわいい」と、人気が出てきて、11月3日には3400人の入場者があった。東京だったら、もっと多くの入場者となり、入場制限をする事態になっていたかも。展示室の作品解説も、「わかりやすい」と評判。

○長沢芦雪は、どんな人
 長沢芦雪は1754年生まれ。1799年に数え46歳で死去。円山応挙の弟子1000人の中でも「一番うまい」とされる人物。先生の真似だけでなく、新たな境地を拓いている。
今回の展覧会では応挙の入門する前の作品を4点展示。《関羽図》を見ると「面白い線を引きたい」という意欲を強く感じる。もともと表現意欲一杯だったが、十代の頃の技術は未熟。応挙の弟子となって表現技術を身に着け、大きく成長したと言える。

〇応挙との比較
《牡丹孔雀図》は応挙・芦雪ともに描いているが、応挙の孔雀は「動きが止まった一瞬」を描いているのに対し、芦雪は「動いている途中の姿」を切り取っている。《楚蓮香図》でも応挙は小柄で優しい女性を描いているが、芦雪は髪の毛が乱れた色っぽい女性を描くだけでなく、足元に蓮華草を配し「蝶は、花ではなく蓮香の香りに惹かれている」ことを表現。いずれも、先生である応挙の真似にとどまらず、工夫を加えた作品となっている。

〇和歌山県串本町・無量寺の空間を再現
 今回の展覧会では愛知県美術館の広い展示室を活かして、無量寺の空間を再現。
現在の無量寺ではレプリカの襖を使用。本物は無量寺の展示施設あるが、奥行きが足りないので、残念ながら虎も龍も、最後の襖は他の4枚と直角に交差する位置に展示。
展覧会では本物による襖絵の空間を体感してほしい。本尊の前に立つと、部屋の奥から虎と龍が出て来て両側から迫ってくるように感じる

○かわいい生きもの
 かわいいのは子犬だけでなく、子どもたちやスズメ、カエル、ナメクジなども。また、全身は黒色で、首と足先だけが白い子犬の後ろ姿が多くの作品に登場しているので、注目。

◆自由観覧
 お昼時にも関わらず、深山課長から話があったとおり、展示室は大勢の入場者で込み合っていました。とはいえ、鑑賞の妨げになるほどではありません。でも、土・日は朝一番を避けた方が良いかもしれませんね。

○無量寺・方丈の空間再現
 深山美術課長による解説のとおり、無量寺の空間再現は圧巻でした。3室分を再現しているので、《虎図》の裏に「魚を狙う猫」が描かれていることがよくわかります。《唐子遊図襖》ではネズミの姿もしっかり確認できました。
愛知県美術館における「空間再現」は、2013年3月~4月の「開館20周年記念 円山応挙展」における兵庫県美方郡香美町・大乗寺客殿以来。「開館30周年記念」というだけに、力が入っていますね。

〇《月夜山水図》はじめ、満月が4点
 深山課長「芦雪は、塗り残すことにより満月を描写。技術が無いとできない表現」と、解説していましたが、月夜の絵が見事に4つ並んでいました。

○《白象黒牛図屏風》エツコ&ジョー・プライスコレクション
 白象の上にカラス、黒牛の脇に子犬。対比が面白いですね。愛知県美術館で展示されるのは2007年4月~6月の「プライスコレクション 若冲と江戸絵画」以来でしょうか?

○《方寸五百羅漢図》
 一寸角の画面に五百羅漢が描いてあるというのですが、小さすぎて見えません。隣の拡大図を見て、「これだけの人物を、どうやって一寸角の画面に納めたのだろう。」と、感心してしまいました。

◆最後に
 長沢芦雪は茶目っ気たっぷりというか、絵にいろいろな仕掛けを凝らすのが大好きな人だったようです。数え46歳で亡くなったのは、あまりにも惜しい。北斎ぐらい長生きしたらどんな絵を描いたのか、見てみたかったですね。
北斎といえば、「長沢芦雪展」の終了(11/19)と入れ替わりに、「北斎 だるせん!」が名古屋市博物館で始まります。(11/18~12/17)こちらも、楽しみです。
           Ron.

深山学芸員による1時間にも及ぶ解説、ありがとうございました。

深山学芸員による1時間にも及ぶ解説、ありがとうございました。

ランス美術館展 ギャラリートーク

カテゴリ:協力会ギャラリートーク 投稿者:editor

名古屋市美術館で開催中の「ランス美術館展」のギャラリートークに参加しました。担当は深谷克典副館長(以下「深谷さん」)と保崎裕徳学芸係長(以下「保崎さん」)、参加者は71人。参加人数が多かったので、1階から始めるグループと2階から始めるグループに分かれて開始。1階の担当は深谷さん、2階の担当は保崎さんでした。

◆「ランス美術館展」が7館も巡回する理由など(深谷さん談)
ランス美術館展は、ランス市と名古屋市の姉妹都市提携(調印式は2017.10.20)を記念する展覧会。ただ、ランス美術館展そのものは、名古屋市が動き出す前から開催準備が進んでおり、名古屋市は割り込む形で参加。巡回の最終・7番目の会場となりました。
なお、姉妹都市提携を考慮し、ランス美術館は名古屋市美術館だけの特別出品として、ドラクロア、コラン、ブーダンの作品を貸出。2階・企画展示室2の展示です。

◆ランス市のこと、ランス美術館のこと(深谷さん談)
ランス市はパリの東、特急で40~50分の距離=日帰り圏の人口20万人弱の都市。歴代フランス王の戴冠式が行われたノートルダム大聖堂(ランス大聖堂)が有名です。
現在のランス美術館は、修道院の建物を改築して1913年に開館したもの。収蔵品は1800年から公開していますが、当初は市庁舎内に展示。建物老朽化のため別の場所に移転し、2018年リニューアルオープンという計画が進んでいましたが、現市長の判断で中止。今は、現建物を改築する計画が2020年着工予定で進んでいます。
ランス美術館は、絵画だけでなく、工芸品のコレクションも豊富。シャンパーニュ地方の中心都市なので、シャンパン会社社長からの寄贈により収蔵品の総点数は5万点超。

◆第1章~第3章のみどころ(深谷さん談)
 1階の展示は、年代順に第1章から第3章まで。
第1章は17世紀からフランス革命前の時代の絵画。マールテン・ブーレマ・デ・ストンメ《レモンのある静物》は、今回唯一のオランダ絵画。単に、レモン、食器、クルミ、貝殻を描いた絵だと思ったら大間違い。ヨーロッパでは意味のない絵画は描けないので、描いているものは五感の象徴。「メメントモリ=世の儚さ」が、絵の主題です。
ランス美術館のコレクションは19世紀以降のものが充実。それは、19世紀以降に寄贈された作品が多く、制作時期も同時代=19世紀以降のものが多いためです。
第2章は、フランス革命期から印象派前の絵画。ダヴィッド(および工房)《マラーの死》のオリジナルはベルギー・ブリュッセルの王立美術館が所蔵。評判が良く、ダヴィッドの工房は3~4枚のコピーを作成。展示されている作品は、そのうちの一つ。マラーはジャコバン党(急進派)に属するフランス革命の指導者。ダヴィッドはマラーの友人で、入浴中にナイフで刺されて暗殺されたマラーの死を悼んで制作したのが、傑作《マラーの死》。惨たらしいはずの殺人現場をキリストのように描くことで、マラーを殉教者・救済者に見せている。画面の上半分を真っ黒に塗ることでマラーの姿が浮き出ており、ドラマチックな効果を与えています。ダヴィッドは「新古典派」に属する画家で革命期に活躍しましたが、ナポレオンの死とともに表舞台を去り、その後、ドラクロワなどのロマン派が台頭。
カミーユ・コロー《川辺の木陰で読む女》は、一見、同じトーンの画面構成ですが、女の髪飾りの赤がアクセントを与えています。これは、コローの絵の特徴。ランス美術館はコローの作品を27点所蔵、ルーブル美術館に次ぐ作品点数です。
エドゥアール・デュブッフ《ルイ・ポメリー夫人》、右手に手袋を持っている理由をランス美術館の学芸員に尋ねたところ、「急な来客と握手をするために手袋を外し、待っている姿」との回答でした。
第3章は、印象派以降の絵画。印象派ではシスレー《カーディフの河岸》、ピサロ《オペラ座通り、テアトル・フランセ広場》を展示。《オペラ座通り》は、ホテルの窓から見た風景を描いた7~8枚の連作の一つ。連作の中では、今回展示作品の出来が一番。影や服装を見ると、描かれた季節や時刻が分かります。因みに、答えは寒い時期の早朝。
ゴーギャン《バラと彫像》、テーブルの上の花瓶を描いただけに見えますが、彫像の頭に花を重ねるなど、絵にした時の効果を狙い画面構成や色彩に工夫を凝らした作品です。

当日、解説してくださった深谷副館長

当日、解説してくださった深谷副館長


◆自由観覧
深谷さんのトーク後は、15分間の自由観覧。元々が自宅などを飾るための個人コレクションだったためか、ゆったりと鑑賞できる作品が多いと感じました。訪問先の応接間に案内され、壁の絵を眺めているといった感覚でしょうか。
自由観覧後は2階に上がり、もう一つのグループと場所を交替しました。

◆フジタとランスの関係(保崎さん談)
 藤田嗣治の略歴ですが、東京美術学校卒業後、1913年に渡仏。エコール・ド・パリの画家と交流する中、1920年代に自分のスタイルを確立。白い下地に細い線で描いた裸婦によってパリの寵児となる。1929年に日本へ帰国後、南米・米国を旅行し、一時日本に滞在して渡仏。1940年、戦火を避けるように帰国。第2次世界大戦後は、居辛くなった日本を脱出し米国経由でフランスに定住。1955年にフランス国籍を取得。1959年にはランス大聖堂で洗礼を受けカトリックに改宗。洗礼名はレオナール・フランソワ・ルネ。洗礼名の「ルネ」はランスのシャンパン会社GHマム社会長・ルネ・ラルー(以下「ルネ」)に因る。
ルネとフジタの交流は、1956年にパリの画廊で開催されたフジタの個展をルネが見て、感銘を受けたことから始まる。ルネの依頼により、フジタはシャンパン(ロゼ)用のバラの絵を描いた。この時のバラの絵は今も使われている。改宗の半年前、フジタはルネの招きでランス市を訪問。サン・レミ修道院を訪れた時、「改宗せよ」との啓示を受けた。
平和の聖母・礼拝堂(通称、フジタ・チャペル)の建設資金と土地を提供したのもルネ。フジタは、1966年6~8月の3カ月で、礼拝堂内部の壁画を一人で描き切った。

◆第4章のみどころ(保崎さん談)
 ランス美術館のフジタ・コレクションは絵画800点、資料も合わせると2300点。その多くは、戦後、フランスに定住してからの作品。1920年代の作品としては、熊本県立美術館所蔵の《ヴァイオリンを持つ少年》、ひろしま美術館所蔵の《十字架降下》を展示。
 《フジタ、7歳》は戦争画を描いていた時代の作品。《マンゴー》は南米を旅行中、ブラジル・リオで描いた作品で、1920年代と打って変わった土着的・土俗的な作風。《猫》の中央上部に描かれた猫は名古屋市美術館所蔵の《自画像》の猫にそっくり。なお、額縁の左には「1949」という数字が彫られており、縦長用だったものを横に寝かせて使用したと思われる。額縁上部に釣竿を持った少年、下部に虫取り網を持った少年の彫刻がある。
 《十字架降下》は日本画のスタイルで描かれた1927年の作品。改宗後に描いた左右の聖母と対比すると面白い。向かって右の《マドンナ》は、映画「黒いオルフェ」に出演したマルペッサ・ドーンがモデル。周囲の天使も黒人。
フジタ・チャペルの壁画は、下絵のほうが素晴らしい。80歳とは思えない迫力を感じる。また、よく見ると、壁に転写した時に素描の線をなぞった跡が見られる。

◆特別出品の3点(保崎さん談)
 ドラクロアは、ご存じ「ロマン派」の画家。ブーダンはモネの師匠で、印象派に先駆けて移り変わる光と大気を描写した画家。ラファエル・コランは黒田清輝の先生。アカデミスムの画家で、本国では忘れられつつあるが、白馬会の久米桂一郎、岡田三郎助、和田英作の先生でもあり、「西洋画と日本を繋いだ画家」として展示。

◆自由観覧
 《十字架降下》を見て、深谷さんが《マラーの死》について語った「マラーをキリストのように描いている」ということの意味が分かりました。フジタの描くキリスト、表情・ポーズ・胸の傷の位置、どれも《マラーの死》のマラーを思い起こさせますね。
《父なる神》は両手両足を広げた、歌舞伎の「見得」のポーズ。私の隣の参加者は、これを見て「《風神雷神図》みたい。」と、話していました。
フジタは、壁画を一人で描き切った後に体調を崩し、1968年1月にスイス・チューリッヒで逝去されました。80歳という高齢の身で、過労死ラインの重労働を成し遂げた後での死去。最後の仕事に命を注ぎ込んだのだと思うと、作品を見る目が変わりました。
最後、コラン《思春期》を見てポーラ美術館の黒田清輝《野辺》を思い出しました。

◆マラーになりきる
 グッズ売り場向かいの奥まったスペースに「なりきりマラー」のコーナーがありました。《マラーの死》に出て来るナイフや羽根ペン、帽子などの小道具があり、マラーに扮して《マラーの死》の再現写真が撮影できるコーナーです。ギャラリートーク参加者も「マラーになりきる」挑戦をしていました。果たして、出来栄えやいかに。

会員ジョニーさんの協力で

会員ジョニーさんの協力で


◆最後に
 フランス・ブラジル・イタリア合作、1959年公開の映画「黒いオルフェ」は見たことがありませんでしたが、Youtubeの動画(10:32)を見て粗筋がつかめました。映画の主題歌「カーニバルの朝」はボサノヴァの名曲で、様々な演奏家・歌手がカバーしています。
Ron.

映画『ゴッホ~最期の手紙~』

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

 先日、未公開映画の特別上映会がありました。映画の題名は『ゴッホ ~最期の手紙~』(原題:LOVING VINCENT)。英国・ポーランド共同制作・96分のカラー作品で、一旦実写撮影した映画をゴッホ・タッチの油絵アニメーションに再構成したアート・サスペンスです。
ストーリーは、ゴッホの死から一年後、郵便配達人の息子アルマンが「ゴッホの最期の手紙」を届ける旅の先々で様々な人からゴッホについての話を聞き、ゴッホの死の真相に迫るというもの。
重く切ない話ばかり続くので居ても立ってもいられないはずなのですが、「謎解き」の面白さと、ゴッホの油絵に描かれた人物がゴッホの絵の中を動き回るという衝撃で、映画の中にぐいぐい引き込まれます。最後に少しだけ、「救い」もありました。
映画のURLはwww.gogh-movie.jp。「ゴッホ 最期の手紙 映画」と入力しても検索できます。11月3日からイオンシネマ名古屋茶屋(港区)で公開。
お勧めです。
なお、エンドロールで、登場人物と、映像の元になった作品が紹介されますので、最後まで席を立たないでくださいね。

追伸
Youtubeの「イッセー尾形とゴッホのおとぼけコラボ!? 動く油絵 特別篇/ 映画『ゴッホ~最期の手紙~』特別映像」は、クスっと笑える動画でした。
また、https://www.youtube.com/watch?v=0CQKHWvK8Ro 始め、複数のメイキング映像(英語版)がありました。
Ron.

2017_ジャコメッティ_1 富山県立美術館にて BankART_大霊廟Ⅱ プライウッド新地 ヨコトリ_パオラ・ピヴィ_まだ誰も来ない MOTサテライト 目印はこれ! 河村るみさんをお迎えして 急遽解説してくださった角田学芸員 アルテピナコテーク さいたまトリエンナーレ 交流会にて 240の棺/Arigatou Sayounara