お知らせ

2019年4月16日

2019年協力会イベント情報

現在、募集中のイベントは下記のとおり。

平成31年4月14日(日)17時~
・名古屋市美術館:『吉野石膏コレクション‐印象派からその先へ』展ギャラリートーク (終了しました)

会員の皆様は、ファックスか、お電話でお申込ください。
なお、ホームページからもお申込可能です。
(右側の”Gトーク”申込ボタンから)

豊田市美術館のリニューアルオープン

カテゴリ:未分類 投稿者:editor

豊田市美術館のホームページ(以下「HP」)を開いたら、6月1日(土)にリニューアルオープンするとのことでした。あと2カ月足らずで再開。待ち遠しいですね。

◆リニューアルオープン記念は、全館コレクション展「世界を開くのは誰だ?」 HPによれば、リニューアルオープン記念の「世界を開くのは誰だ?」は、会期が6月1日(土)から6月30日(日)で、内容は “本展は「世界を開く」をキーワードに、この大きな課題に挑む表現の数々を4つのテーマに分けて紹介します。美術館活動の源であるコレクションの中から、選りすぐりの名品をはじめ、新収蔵品もあわせた約100点を全館にて展示します。”と書かれていました。“約100点を全館にて展示”なので、愛知県美術館で開催中の「アイチアートクロニクル1919-2019」とほぼ同じ規模の「全館コレクション展」ということですね。

◆2年間で見た「全館コレクション展」は、いずれも「ハズレなし」 最近の2年間で4つの「全館コレクション展」を見ました。会期の古いものから順に、三重県立美術館「[開館35周年記念]ベスト・オブ・コレクション-美術館の名品」(会期:2017.4.22~6.18、観覧料:一般700円)、「名古屋市美術館開館30周年記念 ベスト セレクション」(会期:2018.10.6~11.25、観覧料:一般700円)、名古屋市博物館「国芳から芳年へ」(会期:2019.2.23~4.7、観覧料:一般1,300円)、愛知県美術館「アイチアートクロニクル1919-2019」(会期:2019.4.2~6.23、観覧料:一般500円)です。 以上4つの展覧会は、いずれも見ごたえのあるものでした。考えてみれば、数多くの収蔵品から、その作品についてよく知っている学芸員が選び抜いた作品を、様々な工夫を凝らして展示した展覧会なのですから「ハズレなし」は当たり前のことです。観覧料もリーズナブルでした。ただ、「国芳から芳年へ」は全国巡回する(広島県立美術館、福岡市美術館の外、2020年度も巡回の予定)こともあって「特別展の料金」でしたが、1,300円の価値は十分にありました。

HPを見る限りでは「世界を開くのは誰だ?」の詳細な内容はわかりませんが、他の美術館・博物館と同じように「ハズレなし」だと期待しています。なお、豊田市美術館では今後「クリムト展」や「あいちトリエンナーレ2019」などが開催されるので、年間パスポート券(3,000円)を購入するのが「お値打ち」な鑑賞法だと思いますよ。

◆最後に  4月9日(火)に、名古屋市美術館で「世界に誇る吉野石膏コレクション 印象派からその先へ-」(以下「本展」)が開幕しました。考えてみると、本展は名古屋市博物館「国芳から芳年へ」の「吉野石膏コレクション版」のようなものですね。本年2月23日にNHK・Eテレで放送された日曜美術館「日本で出会える! 印象派の傑作たち」では、大宮エリーが訪れた山形美術館で、本展のチラシ・ポスターに使われているルノワール《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》のほか、「全国の美術館からの貸出し依頼№1」のモネ《サン=ジェルマンの森の中で》などが紹介されていたので、「どうかな?」と期待半分で出かけたところ。本展も「ハズレなしの展覧会」でした。おすすめです。見逃せませんよ。          Ron.

展覧会見てある記 「印象派からその先へ」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

名古屋市美術館(以下「市美」)で「印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション」(以下「本展」)が開幕しました。展覧会のチラシには、こんなことが書いてあります。

(略)石膏建材メーカーとして知られる吉野石膏株式会社は、1970年代から本格的に絵画の収集を開始し、2008年には吉野石膏美術振興財団を設立。(略)そうして形成された西洋近代美術のコレクションは、質量ともに日本における歴代のコレクションに勝るとも劣らぬ内容を誇っています。現在、その多くは創業の地、山形県の山形美術館に寄託され、市民に親しまれています。本展ではバルビゾン派から印象派を経て、その先のフォーヴィスムやキュビズム、さらにエコール・ド・パリまで、大きく揺れ動く近代美術の歴史を72点の作品によってご紹介します。とりわけピサロ、モネ、シャガールの三人は、各作家の様式の変遷を把握できるほどに充実しており、見応え十分です。(略)中部地方では初めて。知られざる珠玉の名品を、どうぞこの機会にご堪能ください。

 「でも、大したことないんじゃないの」と、少し馬鹿にして市美に出かけたのですが、結果は良い方に大ハズレ。「へへー、おみそれいたしました」と、なりました。本展を舐めていたことを大いに反省しています。「見応え十分」というだけでなく、コレクターの感性によるのでしょうか、「見ていて気持ちが良い」のです。 「印象派」だけでなく、「その先」の展示も充実しています。また、わかりやすくて簡潔な「子供向け解説」は大人でも十分、読み応えがあります。本展は、見逃せません。

◆1章:印象派、誕生 ~革新へと向かう絵画~ ◎エントランスホールでモネ《睡蓮》と《サン=ジェルマンの森の中で》が出迎え  市美1階の橋を渡って企画展示室のエントランスホールに入ると、正面の壁に拡大されたモネ《睡蓮》と《サン=ジェルマンの森の中で》が並んでいます。「ピサロ、モネ、シャガールの三人」のうち、先ず、モネが出迎えてくれました。展示は、バルビゾン派からクールベ、マネ、ブーダンと続き、印象派はシスレーから始まります。作品は年代順に並んでいますが、《モレのポプラ並木》の前で思わず足が止まってしまいました。  続くのはモネ。なかでも《サン=ジェルマンの森の中で》は不思議な作品です。見ていると、絵の中に引き込まれそうになります。映画「となりのトトロ」に出てきた“秘密の抜け穴”を思い出しました。《睡蓮》と《テムズ河のチャリング・クロス橋》は、「モネ それからの100年」以来1年ぶりの再会。去年の展覧会を思い出します。

◎特等席はルノワール、ドガ、ゴッホ  1章では、ルノワール《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》とドガ《踊り子たち(ピンクと緑)》が水色の壁、ゴッホ《静物、白い花瓶のバラ》が茶色の板の特等席に展示されていました。ルノワールとドガが特等席なのは納得できますが、ゴッホの静物画が特等席なのは何故でしょうか?重要な作品だとは思うのですが……。

◎パステル画を堪能 コレクターの好みなのか、本展ではパステル画が目立ちました。水色の特等席の2作品だけでなく、メアリー・カサット《マリー=ルイーズ・デュラン=リュエルの肖像》、ピカソ《フォンテーヌブローの風景》がパステル画です。鮮やかな中間色のふわっとした感じがいいですね。癒されます。

◆2章:フォーブから抽象へ ~モダン・アートの諸相~  2章で強烈な印象を受けたのはヴラマンク。《セーヌ河の岸辺》は「どこがセーヌ河?」という感じの赤と緑のコントラストが目に飛び込んでくる作品。しばらく眺めていて「左上の白っぽいところがセーヌ河?」とわかりました。でも、このめちゃくちゃな色使いは癖になりますね。静物画が2点並んで、最後の《村はずれの橋》は正に「万緑叢中紅一点」。ワンポイントの赤が効いています。 マティス《緑と白のストライプのブラウスを着た読書する若い女》はストライプが印象的な作品。「子ども向け解説」を読みながら鑑賞することをお勧めします。

◎2章は、アンリ・ルソーから2階に展示 2階は抽象画が中心。カンディンスキーの作品は「音楽」を感じさせます。また、ルソー《工場のある風景》も、ここで見ると抽象画のような感じがします。

◆3章:エコール・ド・パリ ~前衛と伝統のはざまで~ ◎ユトリロとマリー・ローランサン 3章はユトリロとローランサンから始まります。ヴラマンクと違って、ドキドキせず、安心してみることのできる作品が並びます。この中では、群像を描いたローランサン《五人の奏者》がいいですね。

◎これは「小さなシャガール展」です  本展の最後を飾るのは、吹き抜けの上の広い空間に展示されたシャガールの作品です。数えると、シャガールだけで10点。そのうち3点に「子ども向け解説」が付いていました。シャガールは学芸員さんの「お気に入りの作家」なのでしょうか?それとも、「子どもを引き付ける作家」なのでしょうか?いずれにせよ、吹き抜けの手すり近くから、L字型の壁に並ぶシャガールを眺めるのは壮観です。

◆最後に  名古屋市美術館協力会では4月14日(日)午後5時から、会員向けに「印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション」のギャラリートークを開催します。詳しくは、名古屋市美術館協力会のホームページをご覧くださいね。                             Ron.

「人騒がせな名画たち」

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

 かなり評判になっている本なのでもう読まれたひとも多いだろう。筆者は西洋美術史家「木村泰司(きむら たいじ)」氏。「目からウロコ」と表題の前に小さくある。画家は変人が多いから、それほど目からウロコはなかったが、それでも聞いたこともない話はいろいろあり、興味深く読んだ。なかでも、昨年市美であった「ビュールレ・コレクション」展に出ていたルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」のイレーヌ(1872-1963)の話には感動した。深谷副館長の講演では、「イレーヌの両親はこの肖像画が気に入らなかった。イレーヌはユダヤ系銀行家で貴族のダンベール家に生まれ、同じような出自のユダヤ人と結婚した。しかし、離婚してユダヤ教からカトリックに改宗してイタリア人と再婚した。1963年にイレーヌが死んだとき、その死は新聞で大きく報道された」ということだった。時間もなかったのかも知れないが、それ以上詳しいイレーヌの人生についての言及はなかったと思う。しかし、いくら有名な絵でも、なんで絵のモデルが死んだくらいでそんなに話題になったのか、何かモヤモヤしたものが残っていた。それがこの本を読んで腑に落ち、すっきりとした。イレーヌはフランスでは有名な、悲劇のヒロインだったのだ。美しい金持ちの女性の幸せな人生は面白くもないし、決して共感は呼ばない。章題は「小説より奇なモデルの少女の壮絶人生!」。

イレーヌの結婚相手は、ダンヴェール家と同じようなユダヤ系の名家、貴族で銀行家で大金持ち、12歳年上カモンド家のモイーズ・ド・カモンドだった。その当時1890年頃としては、あたり前で良い縁組みだっただろう。イレーヌは一男一女を産み名家に嫁いだ義務を果たした。しかし、一家の厩舎長であった、イタリア人のサンピエリ伯爵と恋に落ちてしまう。夫婦は別居しイレーヌは恋人と生活を始めた。世間体が悪いことから離婚できず、離婚成立までに6年の歳月を要した。イレーヌが晴れて再婚したのは1903年、ふたりの子供はモイーズが育てた。第一次世界大戦が始まると、長男ニッシムはパイロットとして従軍、戦死してしまう。第二次世界大戦では、長女ベアトリスがユダヤ人の夫とふたりの子供と共に、アウシュビッツで虐殺され、イレーヌの肖像絵はナチスに奪われてしまう。イレーヌはカトリックに改宗していて助かった。ベアトリスが相続していたカモンド家の遺産は、全てイレーヌのものとなった。イレーヌは莫大な財産を使いながら、91歳で亡くなるまでの余生を南フランスで過ごした。終戦後手元に戻ったルノワール作の肖像画、イレーヌは過去を思い出したくなかったのか、すぐに手放していた。

このような波瀾万丈の人生を送り、死んだ頃はルノワールのこの肖像画も有名になっていて、彼女の死は大々的に報じる価値があった。「ニッシム・ド・カモンド美術館」がパリ8区モンソー通りにある。1910年頃モイーズ・ド・カモンドが建てて住んでいた邸宅。戦死した息子の名をつけた美術館として、モイーズが蒐集した美術品を展示している。エトワール凱旋門の東北東1 km強のモンソー通り沿い、モンソー公園隣。

佐久閒洋一

ボストンの美術館巡り—ボストン美術館で名古屋市美術館所蔵作品に遭遇—

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

 3月23日から一週間ほどのあいだボストンに出かけました。ボストンではこの期間 オペラもクラシックコンサートもなかったのでただひたすら美術館そして名所、旧跡を 訪れる旅となりました。

ボストン美術館

 まずは収蔵点数50万点を誇る美の殿堂ボストン美術館です。ミュージアムショップでmfaというロゴマークを見て最初何なのか分かりませんでしたが、正式名称がMuseum of Fine Arts, Bostonということで納得。愛称がMFAです。最初驚いたのが入場料の高さ。25ドルです。でも冷静に考えれれば企画展が二つ含まれているので妥当な値段です。驚くことにその企画展の両方ともに自分と関係があり、こんなこともあるんだと驚いています。企画展の一つが「フリーダカーロ展」。

 名古屋市美術館にはメキシコ絵画が常設展示してあります。その中でも私のお気に入りがフリーダカーロの「少女と死の仮面」です。それがボストン美術館になんと展示されているではないですか。すぐさまキャプションを見る。Nagoya City Museumと書かれている。まさしくいつも見ているあの作品が飾ってある。名古屋市美術館が評価されたみたいで単純に嬉しい。その絵の前で立ちどまる人達をすこし観察してみた。50代の夫婦、母親と3歳ぐらいの幼児、40代ぐらいの男性二人、若いカップルなど、みな足を止めて話をしている。作品の小ささにも関わらず興味を引くようで皆その絵で立ちどまる人たちが多かったように思う。  

ボストン美術館 名古屋市美術館の作品を鑑賞する人々

 もう一つの企画展〈Gender Bending FASHION〉の中でファッションデザイナーの山本耀司さんの作品が展示されていたことです。以前からアメリカで評判がいいことは知っていましたがこんなに評価が高いことに驚きました。皆さんもご存じだと思いますが耀司さんのブランドはワイズという名前です。私的なことで申し訳ありませんが、私は大学卒業後にアパレルメーカーのイッセイミヤケインターナショナルという名の三宅一生さんの服を販売する会社で働いていました。当時の会社の上司が野球好きでワイズとイッセイで野球をしようということになりました。現在あるかどうか分かりませんが、麻布球場という場所で仕事が終わってから照明をつけて野球をしました。私は入社2年目ぐらいだと思いますが、試合に打者で出させてもらいました。そのときに対戦した投手が耀司さんでした。サイドスローの球を投げられたんですが、結果がどうだったか今は全く覚えていません。試合もどっちが勝ったかさえ覚えていません。三宅デザイン事務所のデザイナーたちがチアリーダーさながらの応援を見て爆笑していたのを鮮明に覚えています。当時はアルマーニ等のイタリアファッションの勢いがある時代で耀司さんはまだ世界的にはそれほど知られている存在ではありませんでした。今から40年ほど前の話です。現在は高校で教師をしていますがイッセイやワイズの服はもう着ないと思いますが思い出もあり、いまだに捨てることができずに大切に取ってあります。  

 常設展ではゴーギャンの雑誌などでよく目にする「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」、ルノアールの「ブージバルのダンス」 モネの「日本娘」 セザンヌの「赤いひじ掛けイスのセザンヌ婦人」 を堪能。また哀愁ある印象的な絵のホッパーの「ブルックリンの部屋」など知られた画家の絵を鑑賞する。とにかくアメリカ美術、ヨーロッパ美術、日本や中国の美術、古代エジプトやギリシア、ローマ、エトルリアなどの美術とても一日でみられる規模ではなかった。 

イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館

 つぎにイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館。レンゾ・ピアノが設計した新館から入場する。この美術館、大富豪イザベラが莫大な富に任せて館を建てそこに彼女の趣味で集めた絵画、調度品を生活に根差して展示してある美術館。絵にひとつひとつキャプションがついていない。説明書が各部屋においてあり鑑賞者はそれで誰の作品かを理解することになっている。どこかでみたような作品だなと思うとそれがレンブラントだったりする。 絵の作者を当てる楽しみも出てくる。マザッチオ、ボッティチェッリ、クラナッハ、 デューラー、サージェントが部屋の中にさりげなく飾ってある。ここの中庭は殊に有名でヨーロッパから資材を運んで作ったようだ。メトロポリタン美術館別館のクロイスターズに似ている。ここの有名なテッツィアーノ「エウロペの略奪」は貸し出し中であった。

Harvard Art Museum

 三番目はHarvard Art Museum ここはフォッグ美術館、Busch-Reisinger 美術館、Arthur M.Sackler美術館 を一つにまとめたもの。さすがにハーバード大学すべてに充実している。これが大学への寄贈でなりたっているのがすごい。ゴッホ、ピカソ、モネ、セザンヌ、フラ・アンジェリコ、フィリッポ・リッピ、フランク・ステラ、マーク・ロスコ、白隠など。またこれが撮影OKで写真撮りまくりの世界にはまる。雪の田舎道を描いたモネの絵、魚を描いたモネの絵、花瓶に花があふれんばかりのルノアールの絵、農村の中の中央に白い家を描いたセザンヌの絵、特徴ある女性の絵を描いたロセッティなどあまり見る機会のない絵を鑑賞することができ大満足。

MIT博物館

 最後はMIT博物館。ここはここでまた面白い。ヨットのアメリカズカップで優勝するためにヨットをいかに設計すれば最小の動力でスピードをアップできるかというようなコーナー。そしてベアリング、ねじ、コイル、モーターなどを使った作品など意外と面白かった。またDrawing Designing Thinkingという企画展ではMITの150年に及ぶ歴史を主に建築中心にパネル展示してあり興味深った。

 アメリカ発祥の地であるボストンは結構見どころも多く名所、旧跡が比較的地区に集まっているので観光しやすい街です。アメリカ最古の公園ボストンコモン、独立宣言が読み上げられた旧州庁舎、植民地時代に独立のための集会場であったファニエル・ホール、独立戦争の英雄たちが眠るグラナリー墓地、高級住宅街のビーコン地区、ハーバード大学等を訪れた。今回はオペラがないのでひたすらボストン市内を歩き回りました。

谷口 信一

展覧会見てある記 「アイチアートクロニクル1919-2019展」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

愛知県美術館リニューアル・オープン記念の全館コレクション企画「アイチアートクロニクル1919-2019展」(以下「本展」)を見てきました。通常の企画展と違って、コレクション展(いわゆる常設展)の一部として開催されているため観覧料は一般一人500円(20人以上の団体は一人400円)と割安です。
「コレクション展」とはいうものの、愛知県美術館(以下「県美」)のコレクションだけでなく名古屋市美術館(以下「市美」)や豊田市美術館(以下「豊田市美」)、作家蔵の作品も出品されているので企画展並みの見応えがありますよ。
また、本展(展示室8は本展「9章」の続き)の他、展示室6には「愛知県美術館の名品」というタイトルで、クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》などが並び、展示室7には「愛知のやきもの」というタイトルで木村定三コレクションの中から江戸時代の祥瑞(しょんずい)写皿や織部焼、志野焼、黄瀬戸などが、藤井達吉コレクションの中から藤井達吉・加藤藤九郎《草花文花入》などが並んでいます。
つまり、「観覧料が割安」ということ以外は、通常の企画展と同様の規模の展覧会でした。以下、感想などを書かせていただきます。なお、作品名の後の(  )内の数字は作品番号です。

◆1章 愛知洋画のはじまり 1871~
珍品だと思ったのは河野次郎による題不詳の下絵(1-1)と本画(1-2)です。解説によると西洋画の写しのようですが、名古屋市博物館で開催中(4/7まで)に出品されている「西洋画を模した浮世絵」に通じるものを感じました。この作品、所蔵先に「名古屋市美術館」と表示されていましたが、初めて見る作品です。
島田卓二《湯谷渓谷「淵」》(1-9)を見て、中学生の時に湯谷渓谷で見た水の青さを思い出しました。また、加藤静児《渚》(1-12)はどこの風景を描いたものか分かりませんが、何故か懐かしさを感じました。この絵は、愛知県の風景を描いたのでしょうか。

◆2章 愛美社とサンサシオン
愛美社やサンサシオンは、市美の常設展でもおなじみのものです。見ると市美のコレクションから、鬼頭鍋三郎《手をかざす女》(2-22)始め4点の作品と資料数点の出品があります。県美のコレクションだけでなく市美のコレクションも併せて出品しているので、幅広い内容の展示になっていると感じました。
また、岸田劉生の作品が2点出品されていました。そういえば、令和2年(2020)1月8日(水)から3月1日(日)まで市美で「没後90年記念 岸田劉生展」が開催されますね。

◆3章 シュルレアリスムの名古屋
愛美社やサンサシオンと同様に、シュルレアリスムも市美の常設展でもおなじみのものですが、本展では県美コレクションの尾沢辰夫《鴨》(3-2)が目を引きました。チラシに《鴨》の画像が使われているように、何故か目が離せない作品です。なお、3章は全出品作23点中、18点が市美のコレクションです。市美でもなかなか見ることのできない規模の、郷土ゆかりの作家による「シュルレアリスム展」といえます。市美のファンとしては見逃せない展覧会ですね。

◆4章 非常時・名古屋
鬼頭鍋三郎の作戦記録画(いわゆる戦争画)が多数出品されています。ほかには、メキシコ・ルネサンスに連なる北川民次《砂の工場》(4-8)、安藤幹衛《逃走》(4-9)、伊藤高義《粘土採掘場》(4-10)(いずれも県美コレクション)が印象に残りました。

◆5章 日本画と前衛
東松照明の写真が多数展示されており、平成23年に市美で開催された「東松照明展」で見た作品もありました。臼井薫の写真4点の外3点が市美のコレクションですが、杉本健吉《名古屋城再建基金ポスター原画》(5-13)は初めて見ました。

◆6章 桜画廊とその周辺
久野真、浅野弥衛、野水信などの作品が展示されています。市美の常設展でもおなじみの作家なので、懐かしさを感じますね。

◆7章 美術館たちの集団行動
1960年代以降、栄中心にハプニングを起こした「ゼロ次元」「あさいまつおとその仲間」「ぷろだくしょん我S(がず)」などの作品・記録を展示しています。県美コレクションの岸本清子《《ナルシスの墓標》のためのドローイング》(7-4)は、インパクトがありました。なお、ぷろだくしょん我S《人形参議院選》(7-9)と写真(7-7)、資料(7-10)は市美のコレクションです。

◆8章 現代美術の名古屋
協力会のカレンダーに作品を提供していただいた久野利博の写真も出品されています。久野利博の写真は、いずれも市美のコレクションでした。また、辰野登恵子の油彩《Untitled 95-1》(8-12)には迫力がありましたね。

◆9章 現代美術の名古屋
出品リストによれば60点もの作品が出品されており、その一部は展示室8に展示されています。作家蔵の作品や豊田市美のコレクションもありました。なかでも、山田純嗣、大崎のぶゆき、田島秀彦、坂本夏子は平成24年に市美で開催された「ポジション2012」の出品作家だったので、懐かしさを感じます。
◎9章のうち展示室8の作品
展示室8には、協力会のカレンダーに作品を提供していただいた渡辺英司の作品《蝶瞰図》(9-51)を始めとする作品が展示されています。そのうち、木村充伯の彫刻《あ、犬がいる!》(9-56)は展示室の壁上方に張り付いており、同じく《祖先は眠る(2匹の猿)》(9-57)は床に転がっていました。ちょっと変わった展示方法なので、印象に残りました。

◆愛知県美術館の名品
本展は「郷土ゆかりの作家の展覧会」ですが、常設展でおなじみのゴーギャン、レジェ、ムンク、マティス、ピカソ、藤田嗣治などの作品は、ちゃんと展示室6にあるのでご安心を。

◆愛知のやきもの
木村定三コレクションは、祥瑞写皿など白地に鮮やかな青藍色の模様を施した江戸時代のやきものが綺麗です。木村定三が数多くの祥瑞写を収集した理由がよくわかりました。

◆最後に
本展は「県美のコレクション展」ですが、市美や豊田市美の作品も出品されているので「市美や豊田市美のコレクション展」としても楽しむことができます。本展の会期は6月23日(日)までと長いので、期間中、何度も来館できますよ。
県美の出口に「大浮世絵展」(歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演)のチラシが置いてありました。五人の中に「国芳」が入っているのが、今風です。県美の会期は、令和2年(2020)4月3日(金)~5月31日(日)。主催に「国際浮世絵学会」も入っているので、期待できそうですね。
Ron.

「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」展 ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

名古屋市博物館(以下「市博」)で開催中の特別展「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」(以下「芳芳展」)の協力会ミニツアーが3月24日(日)に開催されました。当日、午後2時に市博1階の展示説明室に集合した参加者は22名。神谷浩・市博副館長(以下「神谷さん」)の解説を聴いた後、自由観覧となりました。

レクチャ風景

レクチャ風景

◆展示説明室における解説(14:00~15:20)の抜粋
神谷さんの解説は、とても楽しくて時間の経過を忘れるほどでした。限られた紙面に収まりきらないので、申し訳ございませんが解説の抜粋を書かせていただきます。
◎芳芳展の概要
特別展「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」という展覧会名は長いので、関係者の間では「芳芳展」と呼んでいます。芳芳展を開催する目的の第一は、市博の浮世絵コレクションを使って「幕末・明治に浮世絵がどういう変化を見せたか」を知ってもらうことです。一方、歌川国芳(以下「国芳」)は一番作品数が多い浮世絵師です。浮世絵師は歌麿、写楽、北斎、広重だけではない「国芳がいる」ということを知ってもらうのが第二の目的です。
芳芳展は5章構成です。「1章 ヒーローに挑む」は武者絵。国芳が最も得意としたものです。「2章 怪奇に挑む」は、怖い絵。幕末には、歌舞伎・講談・浮世絵などで怖いものが流行った時代です。なかでも血みどろ絵は、三島由紀夫が大好きだった作品です。「3章 人物に挑む」は美人画。歌麿とは違う国芳の美人画を楽しんでください。「4勝話題に挑む」は時事ネタ。浮世絵は、いつの時代でも人気者や時事ネタを描いてきました。「終章 「芳」ファミリー」はその他の作品です。
なお、芳芳展は全作品、撮影O.K.です。
◎1章 ヒーローに挑む
108人の豪傑を描いた《通俗水滸伝》は人気を博した国芳の代表作です。国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之一人 花和尚魯知深初名魯達》は、木の幹を鉄棒でたたき切るほどの怪力の持ち主・花和尚を描いた作品で、入れ墨もすごいですね。武者絵は、もともと武者に扮した役者を描いた「役者絵」でした。役者絵ですから「役者本人を描かざるを得ない」という制約があります。それに対し、国芳は原典からイマジネーションを膨らませて自由に描きました。
国芳《大江山酒呑童子》は、勝川春亭《源頼光酒呑童子退治》のアイデアを借用していますが、単に借りるだけではなく「プラスアルファ」があります。この作品で国芳は、鬼に半ば変身した酒呑童子を描いているので、動画のように見えます。
魅力的な武者絵にするためには、①「どの場面を描いたか」に加えて、②「どのように描いたか」が大事です。この二つを備えた武者絵を描いた最初は、国芳の先輩・葛飾北斎です。曲亭馬琴とコンビを組んで数多くの「読本(よみほん)」を世に出しました。一方、国芳は読本ではなく一枚刷りの浮世絵にアイデアを盛り込みました。
国芳《八犬伝之内芳流閣》は三枚続のワイド画面です。役者絵の三枚続は、三枚セットだけでなく、贔屓の役者を描いた一枚だけを買っても大丈夫なように、登場人物を均等に描いています。しかし、この《八犬伝之内芳流閣》は三枚セットで鑑賞することを前提に描くことで「視覚の驚き」を出しています。
国芳の弟子・月岡芳年(以下「芳年」)の《東名所墨田川梅若之古事》(終章に展示)は、更に完成度を求めた三枚続です。梅若丸伝説の一場面で、人買いと力尽きた梅若丸、墨田川に映る朧月が緊張感のある構図で描かれています。
◎2章 怪奇に挑む
血みどろ絵は歌舞伎の一場面を描いたもので、鶴屋南北「東海道四谷怪談」からスタートしました。残虐シーンが強烈であるほど、前後のシーンが際立つのです。
落合芳幾(以下「芳幾」)と芳年の合作《英名二十八衆句》は2章の見どころですが、可哀そうな評価を受けている作品です。それは、芳幾・芳年とも「血を好む残虐な人間」だと誤解する人が多いからです。確かに《英名二十八衆句》の絵は芳幾・芳年ですが、《英名二十八衆句》は絵だけでなく俳句と一流文化人の文章がワンセットになった作品です。幕末は残虐趣味が世に満ち満ちていた時代で、絵師と文化人のグループで知恵を持ち寄り、時代受けする作品を世に出したということなのです。
絵の技法としては「正面摺(しょうめんずり)」といって、絵の正面からバレンで擦るようにして光沢のある模様が浮かび上がらせる手法や赤い絵の具に膠を混ぜて「てかり」を出す手法などが使われています。
◎3章 人物に挑む
3章は、主に美人画です。鈴木晴信は男・女を同じ顔で描きました。歌麿の大首絵は、クローズ・アップで描くことにより表情や気持ちを表現しました。また、渓斎英泉(けいさいえいせん)が描く遊女は猫背で足は甲高、下顎が突き出ているという「くせのある」ものです。これに対し、国芳の美人画は「近所の普通のお姉さん」を描いたものです。国芳《江戸じまん名物くらべ こま込めのなす》は、歌麿の作品からモチーフを持ってきた作品ですが、歌麿の色っぽさ・艶っぽさを抜いた普通の人の仕草を描いています。
国芳《満月の月》では画面右の子どもが左足を上げています。足を上げる必要は無いのですが、子どもが足を上げた一瞬を描いたことで、スナップ写真のような、現実感にあふれる作品になっています。芳年《見立多以尽(みたてたいづくし) 洋行がしたい》では、女性が横文字の本や着物の下に赤地に黒の弁慶格子(ギンガムチェック)のシャツを着ています。これは当時流行した風俗を描いたものです。また、芳年《風俗三十二相 暗さう 明治年間細君の風俗》は色っぽく、江戸時代とは随分違ってきます。浮世絵は、その時代の世相・風俗を描いたものです。写真家・アラーキー(荒木 経惟=あらき のぶよし)は現代の浮世絵師といえるでしょう。
◎4章 話題に挑む
国芳は幕府の御禁制を逃れるために様々な仕掛けをしています。《亀喜妙々》は亀の顔が役者、甲羅が役者の紋という趣向で、「役者絵」の御禁制逃れをしています。《里すゞめねぐらの仮宿》は遊女屋の宣伝ですが、御禁制逃れのため、人物をすべて雀にしています。人物の顔よりも表情が豊かなのが面白いですね。
「一ツ家伝説」を描いた作品もあります。「一ツ家伝説」には二系統あり、一つは浅茅が原の一軒家に住む老婆の話です。この老婆は宿を借りた旅人に石を落として殺し、金を奪っていました。ある時、少年が宿を借りたので、いつものように石を落として殺したところ死んでいたのは実の娘。少年は浅草の観音様の化身で、老婆は悪行を悔いたという物語です。もう一つは、奥州安達ケ原に住む老婆の話です。こちらは、老婆が胎児の生き血を手に入れるため、宿を求めてきた身ごもった娘を殺害したところ、殺された娘は老婆の生き別れた実の娘だったという話です。
浅茅が原の「一ツ家伝説」は、国芳が奉納した絵馬を弟子の歌川芳盛が浮世絵にしています。また、絵馬が生人形のネタになったので、それを国芳が浮世絵にしたというものです。芳年は殺害場面を描かない「一ツ家伝説」《月百姿 弧家月》を描いています。
奥州安達ケ原の「一ツ家伝説」は芳年《奥州安達がはらひとつ家の図》。逆さ吊りになっている妊婦の下で老婆が包丁を研いでいる作品です。
◎終章 「芳」ファミリー
歌川芳藤《端午の節句》は「おもちゃ絵」で、切り抜いて端午の節句飾りを作るものです。展示室には組み立てた節句飾りも展示しています。芳幾《東京日々新聞 百十一号》は力士が火消しをしたという記事を錦絵にした新聞です。浮世絵はワイドショウのようなもので、ニュースを「見てきたように」描いています。
芳年《延命院日当話》は大奥のスキャンダルを描いた、浮世絵師、彫師、摺師の技術が最高の時の作品です。芳年の美人画は四条派の影響を受けており、芳年の弟子筋には水野年方、鏑木清方、伊東深水など、近代日本画の主流の人物が名を連ねています。
◎会場のキャプション等について
芳芳展ではキャプション(作品の説明)をよみやすくてわかりやすくするように、そして、「作品に何が描かれているか」だけでなく「なぜ、この作品を出品したのか」を書くよう努めました。
国芳の作品は遊び心満載です。お腹はいっぱいになりませんが、胸はいっぱいになると思います。
◆自由観覧(15:20~17:00)
当日は日曜日で人出が多く、少しずつしか進めませんでした。しかし、ノロノロと歩いて鑑賞したため、1時間40分かけて作品をじっくりと鑑賞することができました。結果オーライ、大満足です。
解説のなかで神谷さんは「ヨーロッパでは国芳と芳年は一続きのものと捉えている。明治のものを低くみるのはまずい。芳年は最後の浮世絵師で最初の近代日本画家」と話していましたが、芳年の出品は全く、神谷さんの言葉どおりのものでした。
見逃せない展覧会です。会期は4月7日(日)まで。

解説してくださった神谷副館長、ありがとうございました

解説してくださった神谷副館長、ありがとうございました

Ron.

会場にて「inferno」 解説してくださった特別主任学芸員の北川智昭さん、ありがとうございます 2018ArtLabTokyoここにもアートラボ 石切り場 前室にて 音のアーキテクチャ トンネルでピクニック 佐川美術館 ギャラリートークの様子 展示会場で話をきく会員たち 泉屋博古館にて まずは講堂でレクチャを聴く会員たち 会長の乾杯の音頭に合わせて、いただきます! 「回生の苗床」 光内惟奈 燃やせないもの