お知らせ

2018年9月3日

2018年協力会イベント情報

現在、募集中のイベントは下記のとおり。

平成30年12月9日(日)17時~
・名古屋市美術館:『アルヴァ・アアルト』展ギャラリートーク

会員の皆様は、近日中に案内をお送りします。ファックスか、お電話でお申込ください。
なお、ホームページからもお申込可能です。
(右側の”Gトーク”申込ボタンから)

秋の旅行、催行決定!

会員みなさまを対象に参加募集しておりました秋の旅行は、
無事催行が決定しました。2018年は九州方面への旅。
九州国立博物館でのオークラコレクション展や
福岡県立美術館でのバレル・コレクション展など
珠玉の展覧会を観覧します。

「ザ ベスト セレクション」 ギャラリートーク

カテゴリ:協力会ギャラリートーク 投稿者:editor


名古屋市美術館で開催中の「ザ ベスト セレクション」(以下「本展」)のギャラリートークに参加しました。台風25号の進路によっては「中止」もあり得ましたが、台風は日本海を進み、当日は快晴。無事、開催されました。晴れ女(晴れ男?)さん、ありがとう。
担当は、保崎裕徳学芸係長(以下「保崎さん」)と角田美奈子学芸員(以下「角田さん」)。参加者は70人。参加人数は多いもののグループ分けはありません。会場がゆったりしており、ポータブルのワイヤレス拡声装置で隅々まで声が届くため、70人全員が一緒に動くこととなりました。壮観でしたね。
以下は、保崎さんによるギャラリートークの概要です。なお、(注)は私の補足。主な作品については作者名・作品名・制作年に加えて作品解説の「見出し」を記載しました。本展では「主要作品」と「知られざる傑作」に詳細で気の利いた解説が添えられています。解説本文は会場で見ていただくこととして、ここでは「見出し」だけを紹介します。

◆本展の概要など
◎名古屋市美術館の収蔵品は開館後30年間で6,278点に
名古屋市美術館は1988(昭和63)年4月22日に開館し、今年、開館30周年を迎えました。ただし、コレクションの収集は1983(昭和58)年から始めています。収集の結果、収蔵品の点数は2017(平成29)年度末の時点で6,278点となりました。収蔵品の点数は1998(平成10)年度末で2,106点、2008(平成20)年度末で4,332点ですから、10年間で2,000点ずつ増やした勘定になります。なお、厳しい財政事情のため2005(平成17)年頃から購入による収集が難しくなりました。最近の収集は、ほぼ寄贈によるものです。
「購入が難しい」と申しましたが、開館30周年を記念して団体・個人から寄付をいただき「夢・プレミアムアートコレクション」として藤田嗣治《ベルギーの婦人》を購入することができました。地下1階の常設展示室で公開していますので、お越しください。

◎「外せない作品」に「なかなか紹介されなかった作品」「知られざる傑作」を交えて展示
本展は開館30周年記念展なので「外せない作品」を展示することは当然ですが「なかなか紹介されなかった作品」「知られざる傑作」も交えて展示しました。
また、オーソドックスに「4つの収集方針」= ①エコール・ド・パリ、②メキシコ・ルネサンス、③郷土の美術、④現代の美術の順に、主に地元作家の作品を展示しています。

◆エコール・ド・パリ
(主な作品)
・マルク・シャガール《二重肖像》1924年
 二度目のパリで手にした穏やか日々、束の間の幸福を永遠に記録した傑作《二重肖像》。
・アメデオ・モディリアーニ《おさげ髪の少女》1918年頃
 おさげ髪の少女のモデルについて(本文より:日本人画家の平賀亀佑の妻、マリー?)
・キスリング《マルセル・シャンタルの肖像》1935年
 見よ、この眼力(めぢから)圧倒的な存在感!画家はモデルの魅力のとりことなった。
・モーリス・ユトリロ《ノルヴァン通り》1910年
あの場所は今?ユトリロが描いたパリ、ノルヴァン通り。
・ハイム・スーチン《農家の娘》1919年頃 → 代替品《鳥のいる静物》
(ギャラリートーク)
エコール・ド・パリは1927年にフランスに渡った地元作家・荻須高徳(おぎす・たかのり)に関係するコレクションです。荻須高徳と同時代のエコール・ド・パリの作家、シャガール、スーチン、モディリアーニ、キスリング、ユトリロなどの作品を展示しました。
キスリング《マルセル・シャンタルの肖像》は2001年に購入。エコール・ド・パリのタブローとしては、これが最後の購入品でした。藤田嗣治《ベルギーの婦人》はそれ以来、十数年ぶりに購入できた作品です。マルク・シャガール《二重肖像》は高すぎて購入できないため、中部電力株式会社が買い上げ、名古屋市に寄贈された作品です。
ハイム・スーチン《鳥のいる静物》は作品リストにはありません。リストには《農家の娘》が掲載されています。ランス美術館に貸し出されていたのですが、台風21号で関西空港が被害を受け、搬入が遅れています。10月下旬から11月初旬には展示できると思います。
アメデオ・モディリアーニ《おさげ髪の少女》は1986年に購入した作品。3億6千万円の価格は当時の日本の公立美術館で最高の購入金額でした。しかし、1989年に大阪市がモディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》を、1990年に愛知県美術館がグスタフ・クリムト《人生は闘いなり(黄金の騎士)》を購入するなど《おさげ髪の少女》を上回る高額な絵画の購入が相次ぎ、《おさげ髪の少女》の記録は抜かれました。(注:角田さんから「《黄金の騎士》は《おさげ髪の少女》より、うんとサイズが大きい(ので比べものにならない)」という声がかかりました)
モーリス・ユトリロ《ノルヴァン通り》は1992年に購入した高額作品です。(注:購入契約にあたり市議会の議決が必要な価格(八千万円)を超える収蔵品は《おさげ髪の少女》と《ノルヴァン通り》の2点のみです。《二重肖像》は高額作品ですが、寄贈なので市議会の議決は不要でした)

◆メキシコ・ルネサンス
(主な作品)
・岡本太郎《明日の神話》1968年
 《明日の神話》下絵の寄贈と修復 (本文:日系移民 小栗順三氏のメキシコの自宅)
・フリーダ・カーロ《死の仮面を被った少女》1938年
 人の心を打つ作品と人生 日本でフリーダの絵が見られるのは名古屋市美術館だけ。
・マリア・イスキエルド《旅人の肖像(アンリ・ド・シャティヨンの肖像)》1935年
 シュールとは夢ではない、それはもう一つの確かな表現なのだ。
・ダヴィッド・アルファ・シケイロス《奴隷》1961年
 獄中でほとばしる想像力。 シケイロスの熱いメッセージ
(注:「《奴隷》裏面のシケイロスによる文章(要約)」も掲示されています)
(ギャラリートーク)
岡本太郎《明日の神話》は高さ5.5メートル、長さ30メートルの巨大な壁画で、2008年からJR山手線渋谷駅と渋谷マークシティーの京王・井の頭線渋谷駅を結ぶ連絡通路に展示されています。これは1968年にメキシコ市のホテルに飾る壁画として依頼されたもので、岡本太郎は大阪万博の《太陽の塔》と並行して制作していました。
本展に展示しているものは、その下絵。メキシコ市のホテルのオーナーに岡本太郎を紹介した日系移民の小栗順三氏の自宅に保管されていたものです。1999年に「下絵がある」という情報提供があり、小栗順三氏の奥さんのふじ子氏(順三氏本人は既に死亡)と岡本太郎氏の幼女・岡本敏子氏の連名で名古屋市美術館に寄贈されたものです。個人の住居に保管されていたことから作品には亀裂や絵の具の剥落があり、寄贈を受けた後に修復を施しています。寄贈までの経緯については「アート・ペーパー」49号と50号に山田諭氏が、修復の経緯については「紀要」11号に角田美奈子氏が寄稿しています。
メキシコ・ルネサンスの展示にフリーダ・カーロは欠かせませんが、イスキエルドの作品も紹介したいと思い、展示しました。シケイロスは、作品の裏面に書かれたメッセージも紹介したかったので、特別な展示方法をしています。(注:表・裏の両面を見ることが出来るよう、通路の中央に台を置いて展示しています。作品の裏(メッセージが書かれている面)にはアクリルカバーがあるのに、表(絵が描かれた面)にカバーはありませんでした。なお、本展の展示作品には、全て保護カバーがありません。なので、照明などの映り込みを気にすることなく鑑賞できます)
メキシコでは1910年に革命が始まりました。戦争終結後の1920年当時、メキシコの民衆(メスティーソ)の80パーセントは文字が読めないという状況だったため「メキシコの歴史や将来ビジョンを示す」という目的で壁画運動が始まりました。多くの人がメッセージを受け取ることができるよう、大きな画面に分かりやすい絵画が描かれました。シケイロス、リベラ、オロスコの三人が代表的な作家です。

作品を囲んでの解説

作品を囲んでの解説

◆郷土の美術
◎東山動物園猛獣画廊壁画
・太田三郎《東山動物園猛獣画廊壁画 No.1》1948年
・水谷 清《東山動物園猛獣画廊壁画 No.2》1948年
・宮本三郎《東山動物園猛獣画廊壁画 No.3》1948年
(ギャラリートーク)
この3点は1997年に収蔵して以来、一度も展示したことがない作品です。傷みがひどいためこれまで展示を見送ってきました。本展では「貴重な作品だ」というメッセージを伝えるため、やむなく修復されていない状態で展示しています。
第2次世界大戦中、軍から猛獣を処分するよう指示が下され、東山動物園ではヒグマを毒殺、ライオンを絞殺しました。その後、射殺や食料不足、暖房不足などにより猛獣は激減。戦後、動物園を再開した時、動物30頭ほどという状態でした。(注:ゾウ2頭については、有名な「ぞう列車」のお話がありますね)
そのため、1948年中京新聞社が3人の画家に動物の生態を描いたジオラマの制作を依頼。旧カバ舎を「猛獣画廊」としてジオラマを展示することになりました。作品の解説には「猛獣畫廊」開きの式の模様を伝える紙面のコピーも掲げています。
東山動物園猛獣画廊壁画は、美術が社会の役に立った貴重な事例として展示しました。次に展示できるのが何時になるのかは分かりません。

◎郷土の日本画
(主な作品)
・渡辺幾春(わたなべ・いくはる)《若き女》1922年
 浮世絵好きの作者だからこそ描ける、センチメンタルなムード。
・喜多村麦子(きたむら・ばくし)《暮れ行く堀川》1929年
 あの場所は今? 喜多村麦子が描いた堀川。
・横山葩生(よこやま・はせい)《磯》1934年 (注:解説なし)
・大島哲以(おおしま・てつい)《終電車》1967年
 半獣半人たちの奇怪な行動。終電車は何処へ行く。
(ギャラリートーク)
 日本画の部屋は作品保護のために暗くせざるを得ません。暗い中でも作品が見やすくなるよう、照明にこだわりました。白いLEDを何本も使っています。
 大正時代の渡辺幾春、横山葩生は、いずれも帝展入選作です。喜多村麦子の《暮れ行く堀川》には木橋を描いたものと石橋を描いたものがあります。これまでは木橋を描いたものを展示することが多かったのですが、本展では石橋を描いたものを展示しています。昭和初期の制作ですが、大正前期の風景を描いたものです。洋画の部屋に展示している西村千太郎《納屋橋風景》は昭和初期の風景ですから、二つの作品の風景には15年の開きがあります。
 展示ケースには川合玉堂と戦後の前衛的な日本画・中村正義、星野真吾らの作品が同居しています。作品の傾向が全く異なるので、その間をカーテンで仕切りました。
 大島哲以は名古屋市生まれの日本画家です。金属の箔を貼った上から、体は人で頭が鳥の女たちと、体は人で頭が山羊の男たちを描いています。終電車の中なのに、七輪でカエルを焼く女がいて、煙が車内に充満しています。また、上からはアリナミンの瓶から錠剤が、コーラの瓶から液体がこぼれています。花鳥風月ではなく社会風刺を主題にした作品です。
 前衛的な作品の次には、前田青邨、平松礼二、田淵俊夫の作品を展示しました。
(注:中村正義や前田青邨、平松礼二、田淵俊夫の作品には「解説」がありません。「良く知られた作家や作品には、通常の展示と同様に解説はつけない」ということのようですね)

◎郷土の洋画
(主な作品)
・横井礼以(よこい・れいい)《蜜柑を持つK坊》1922年
 着物に前掛け姿のK坊 フランス流のモダン・スタイルで登場。
・西村千太郎《納屋橋風景》1930年
 まるで名古屋の「セーヌ河畔」。ハイカラな名古屋の一面を捉えた《納屋橋風景》。
・市野長之助《バザーの楽器店》1929年
 明治44年、栄にできた ショッピング・モール、「中央バザー」。
・宮脇晴(みやわき・はる)《夜の自画像》1919年
 この時、なんと17歳。名古屋市立工芸学校在学中の宮脇晴。
・遠山清《マノハラ水浴》1927年
 洋画で「仏画」を描く斬新な試み。描いたのは新明小学校の先生。
・富澤有為男(とみざわ・ういお)《姉》1928年
 帝展入選者にして芥川賞作家、富澤有為男の稀有な才能。
(ギャラリートーク)
 洋画の部屋では主に、脚光を浴びていない作家・作品を紹介します。
 宮脇晴は17歳の時の日記に「夜、自画像を描く」と書いているので17歳の時の作品だと思われます。なお、彼は翌年、帝展に初入選しています。
 これまで、郷土の美術では主に「愛美社」「サンサシオン」の作家を紹介しており、横井礼以や彼が創設した緑ケ丘中央洋画研究所で学んだ西村千太郎、市野長之介はあまり取り上げていません。横井礼以《蜜柑を持つK坊》はフォーヴィスム風。西村千太郎《納屋橋風景》は佐伯祐三風で大正モダンの雰囲気があります。《納屋橋風景》で、西村千太郎は「パリのように見せる」ために、あったはずのバルコニーを隠すなどの工夫を施しています。バルコニーの外にはどんな工夫をしているでしょうか。(注:質問に答えて「電線がない」との声がありました)その通りです。外には、市電の線路も隠しています。市野長之助が描いたショッピング・モール「中央バザー」は現在の名古屋三越の北側にありました。
 遠山清は、帝展入選を目指した同人「サンサシオン」加わっていた画家で、《マノハラ水浴》はテンペラで描いた仏画です。「他人と同じことをしていては目立たない」と思って描いたのでしょうか。
 富澤有為男《姉》は水彩画のように見えますが、油絵です。彼は東海中学校卒業時に「文学」を目指しましたが父親は反対。母親が出した妥協案が「絵画」でした。母親の従妹に洋画家の岡田三郎助がいたことから東京美術学校に通うことになったのですが、半年で退学。新愛知(中日新聞の前身の一つ)の記者となりましたが、その後、記者をやめて上京し、「文学」と「絵画」の二足の草鞋を履きます。「サンサシオン」の会員となって展覧会に出品。1929年から1930年までフランスに留学して絵画を学んだものの留学先のパリでは映画が大流行で「絵画は時代遅れ」と思ったため、帰国後は小説を執筆。ただ、第4回芥川賞(注:正式には「芥川龍之介賞」)を受賞した小説「地中海」の主人公は画家で舞台はパリと南フランス。留学経験は小説に生かされたようです。

◆現代の美術
(主な作品)
・河原温《カム・オン・マイハウス》1955年、《私生児の誕生》1955年
 時代の閉塞感が画面を歪める?!戦後の日本社会を鋭く見つめた、若き日の河原温。
・桑山忠明《無題》1965年
 アメリカ現代絵画の第一線で活躍する桑山忠明 大学時代は意外にも日本画専攻。
・荒川修作《35フィート×7フィート6インチ、126ポンド No.2》1967-68年
 10.7m×2.3m、47kg。タイトルの数字が意味するものは?
・赤瀬川原平《復讐の形態学(殺す前に相手をよく見る)》1963年
 旭丘高校美術科出身、前衛画家赤瀬川原平の渾身の力作 130倍に拡大模写した千円札。
・藤本由紀夫《TABLE MUSIC》1987年
 《TABLE MUSIC》の鑑賞方法
 ① この作品には触ることができます。やさしく触れてください。
 ② 巻ききらないよう注意しながら、お好みのネジを巻いてください。
 ③ 新しくできあがる音楽に耳を傾けてください。
(ギャラリートーク)
名古屋市美術館で現代美術の主要作家は郷土出身の河原温、荒川修作と桑山忠明です。また、荒川修作と旭丘高校美術科の同級生・赤瀬川原平の作品も収集しています。赤瀬川原平は尾辻克彦のペンネーム(注:本名は赤瀬川克彦)で執筆した「父が消えた」により芥川賞(注:1980年下半期の第84回芥川賞)を受賞しています。名古屋市美術館が作品を収蔵している作家のうち、何と2名が芥川賞を受賞しています。
河原温は「Todayシリーズ」が有名で、どの美術館も収蔵しています。なので、本展では河原温がニューヨークに渡る前の1955年に描いた「変形キャンバス」の《カム・オン・マイハウス》と《私生児の誕生》を展示しました。「変形キャンバス」の作品は、名古屋市美術館以外では東京国立近代美術館が《孕んだ女》を、大原美術館が《黒人兵》を所蔵しています。《カム・オン・マイハウス》の画面中央に逆さまになった女性が描かれています。よく見ると女性は右腕を伸ばしてビンをつかんでいるのですが、手の平は左手のもの。ビンの中身が上手く注げません。大原美術館所蔵の《黒人兵》と合わせてみると、戦後の社会問題に対して鋭い批判を投げかけていたことが分かります。
 荒川修作の作品は何回も展示しているので今回は解説しません。桑山忠明《無題》は「システミック・ペインティング展」出品作で、クールな抽象画。歴史的価値のある作品です。
藤本由紀夫は名古屋生まれの作家で《TABLE MUSIC》は常設展に2回ほど展示しています。18個のオルゴールを取り付けたテーブルです。(注:オルゴールは金属の円筒に取り付けられたピンが、長さの違う櫛状の金属版(櫛歯)を押し上げて弾くことにより曲の演奏を行う装置です。櫛歯の一本一本が一つの音階に対応しています)18個のオルゴールは、それぞれが一つの音程しか出せないように、他の櫛歯を折り曲げています。運よく18個のオルゴールが全て同調すれば「枯葉:英語”Autamn Leavs”、仏語 “Les Feuilles Mortes”」が演奏されますが、ほとんどの場合は別の曲になります。

◆最後に
 参加者からは「こんな作品があるなんて知らなかった」「名古屋市美術館のコレクションの質の良さを再認識した」「こんなに面白いなら、これからも定期的にベスト・セレクション展を開催してもいいのではないか」「東山動物園猛獣画廊壁画は素晴らしい。修復費用を夢・プレミアムアートコレクションで集めてはどうか」などの声が聞かれました。
 「常設展の延長だから」と、あまり期待していなかった人が多かったようですが、予想は大きく外れ「見ごたえのある展覧会」となりました。展示室を歩くと微かに《TABLE MUSIC》の演奏が聞こえるのも、心地良いバックグラウンド・ミュージックです。
 地下1階では「名品コレクションⅡ」が同時開催されています。今回のギャラリートークでは鑑賞できませんでしたが、「名品コレクションⅡ」では「エコール・ド・パリ」の女性像ばかり集めるなど面白い展示があります。「ザ ベスト セレクション」と「名品コレクションⅡ」は「二つでひとつ」。二つ合わせて鑑賞することをお勧めします。
 常設展示室3で開催中の「名古屋市庁舎竣工85年 建築意匠と時代精神」も「一見の価値あり」です。
Ron.

展覧会見てある記「名古屋市美術館 名品コレクション展Ⅱ」など

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

名古屋美術館の地下1階常設展示室1・2では「名品コレクション展Ⅱ」が、常設展示室3では「名古屋市庁舎竣工85年 建築意匠と時代精神」が開催されています。最終日は11月25日(日)。概要は以下のとおりです。

◆名品コレクション展Ⅱ 
◎エコール・ド・パリ
目玉は、新収蔵品・藤田嗣治《ベルギーの婦人》1934年制作 です。常設展のパンフレットによれば「1933年11月に日本に帰国した藤田。(略)《ベルギーの婦人》は、この時期の藤田が懇意にしていた、在日ベルギー大使館関係者の妻の肖像と思われる。(略)背後に散りばめられた霊芝、珊瑚、巻子などの吉祥文様との組み合わせが面白い。恐らくモデルの婦人を寿ぐ意味が込められているのだろう」とのことです。また、開館30周年を記念して団体・個人からの寄付金をもとに「夢・プレミアムアートコレクション」として購入した作品です。
看板娘のモディリアーニ《おさげ髪の少女》が「ザ ベスト コレクション」に出張しているため「淋しくなったのではないか」と危ぶんだ「エコール・ド・パリ」のコーナーですが《ベルギーの婦人》の初お目見えに加え、マリー・ローランサン《アポリネールの娘》を始めとする女性像が勢ぞろいしているので華やかな一角となっています。
また、《ベルギーの婦人》の隣には、同じく藤田嗣治《家族の肖像》と寄託作品《那覇》が展示され「藤田コーナー」ができていました。

◎現代の美術
「ザ ベスト コレクション」の「現代の美術」では河原温の「Todayシリーズ」ではなく、あえて「変形キャンバス」の《カム・オン・マイハイス》と《私生児の誕生》を展示していましたが、「名品コレクション展Ⅱ」では「Todayシリーズ」を1966年から1980年まで、毎年1作品ずつ15作品をずらりと並べており、壮観です。
寄託作品のサイモン・パターソン《大熊座》は、一見すると地下鉄路線図ですが、路線が「哲学者」あり、「イタリアの芸術家」あり。駅名も「プラトン」や「レオナルド」があり、英語を訳しながら路線をたどると面白い作品です。難を言えば「急いでいる人にはお勧めできない」ことですね。

◎メキシコ・ルネサンス
 渋い作品ですが、ティナ・モドッティの写真が6点展示されています。
「ザ ベスト コレクション」展示のティナ・モドッティの写真2点とマニュエル・アルバレス・ブラボの写真3点と合わせて鑑賞すると良いのではないでしょうか。

◎現代の美術
浅野弥衛の油絵と銅版画、杉本健吉の《名古屋城再建基金ポスター原画》と《新・水滸傳挿絵原画》の特集です。壁のほとんどが浅野弥衛の作品で埋まるというのは壮観です。
「ザ ベスト コレクション」で様々な作品を展示しているので、常設展では逆に、思い切ったことが出来るということでしょうか。

◆名古屋市庁舎竣工85年 建築意匠と時代精神
 名古屋市役所本庁舎は洋風建築の上に中華風の塔を配した「帝冠様式」の建築ですが、常設展のパンフレットによれば「帝冠様式」にも「塔を配したもの」「城郭を配したもの」の二つの様式があったようです。
先ず「塔を配したもの」として〇名古屋市庁舎(現:名古屋市役所本庁舎)、〇神奈川県庁本庁舎、〇東京市庁舎(実施されず)の外観図などが展示されています。
 また「城郭を配したもの」として〇大禮記念京都美術館(現:京都市美術館)、〇軍人会館(現:九段会館)、〇東京帝室博物館(現:東京国立博物館本館)の外観図などが展示されています。今回の展示にはありませんが、愛知県庁本庁舎や昨年度の「異郷のモダニズム展」で紹介された関東軍司令部庁舎(現:中国共産党吉林省委員会本館)は「城郭を配したもの」に分類されるのでしょうね。
解説が常設展のパンフレットしかないのは残念ですが、面白い展示です。
 
◆最後に
今期の常設展「名品コレクション展Ⅱ」は、同時開催の企画展「ザ ベスト コレクション」とのコラボ企画。常設展・企画展の二つを合わせて鑑賞するのがベストだということが分かりました。
Ron.

名古屋ボストン美術館「ハピネス展」ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor


名古屋市美術館協力会主催のミニツアーで、名古屋ボストン美術館で開催中の「ハピネス展」(以下「本展」)に行ってきました。参加者は33名、多かったですね。午前9時45分に1階壁画前に集合。午前10時の開館を待って5階・レクチャールームに移動し、吉田俊英特別顧問の解説を聴講した後は自由観覧となりました。
以下は、解説等の要約筆記です。(「注」は、私の補記)

◆吉田俊英特別顧問の解説要旨
◎自己紹介
名古屋市美術館開館の数年前から開設準備に従事しました。最初、職員は私一人でした。名古屋市美術館開館後も引き続き美術館に勤め、2000年に奈良県立美術館へ異動、2011年には豊田市美術館へ異動し(注:2015年3月まで館長)、現在は名古屋ボストン美術館特別顧問として閉館に向けた様々な仕事をしています。

◎本展のテーマ
本展のテーマは「ハピネス~明日の幸せを求めて」です。「ハピネス=”Happiness”」だけだと「幸せのかたち」がテーマですが、「幸せのかたち」は人さまざまです。
「幸せのかたち」ではなく「幸せを求める姿勢」なら皆に共通のテーマになるので「ハピネス~明日の幸せを求めて=”In Pursuit of Happiness”」というテーマにしました。

◎本展の概要
本展は名古屋ボストン美術館の最終展ということから、米国のボストン美術館からの出品75点に加え、名古屋市博物館から5点、名古屋美術館から1点(馬場駿吉氏寄託)、馬場俊吉氏個人蔵4点の特別出品があります。(注:馬場俊吉氏は名古屋ボストン美術館・館長)
4階展示室入口に記念の絵ハガキ(注:絵はジム・ダイン《ダイナマイト》)を置いていますので、ご希望のかたは一人1枚お持ち帰り下さい。
以下、各章ごとに主な作品などを解説します。

◎第1章 愛から生まれる幸せ~日常の情景から~
 第1では家族や恋人、友人の親しい関係を描いた作品を展示しています。
最初の展示はピラミッドから発掘されたエジプトの役人(執事)とその妻の仲睦まじい石像。王族の肖像ではありません。ボストン美術館はハーバード大学のエジプト発掘に協力したので、このような収蔵品があります。
次に、若い男女の口づけを描いた酒杯の裏にはキューピッドが描かれています。
ミレー《縫物のお稽古》は、彼の最晩年・1874年の作品で未完成と思われます。カサット《授乳》は歌麿《母と子》と並べて展示。浮世絵の影響が見られます。
スコット・ブライア《ナニーとローズ》は画家の夫人とペットを描いたスーパーリアリズムの作品で、本展入場者の関心を惹いています。(注:女性の姿が浮き出て見えます。「なぜ立体的に見えるのだろう」と不思議に思い、目が釘付けになりました)

◎第2章 日本美術に見る幸せ
第2章では自然との共生を表現した日本美術の作品を展示しています。
《江戸四季風俗絵巻》は江戸の四季を描いた絵巻です。通常は絵巻の一部を広げての展示ですが、本展では全部を広げて展示しているので見終わるまでに時間がかかり、絵巻を見る人の行列が出来ています。(注:吉田さんが解説されたとおり行列の人数があまりに多いので、最後尾について順番を待つことは断念しました)
鳥文斎栄之《美人舟遊び》は三枚続きの錦絵。隅田川の向こうに三囲神社(みめぐりじんじゃ)の鳥居が見えます。(注:展示室の解説には「鎌倉の鶴岡八幡宮で、源頼朝を前にして舞う静御前を見立てたもの」と書いてありました)
曾我蕭白《琴棋書画図》(きんきしょがず)は中国の知識人が嗜むべき四つの芸事(琴=音楽、棋=囲碁、書=書道、画=絵画)を描いたもの。ボストン美術館が収集した時は六曲一双の屏風でした。修復にあたり調査したところ、取手の痕跡があるなど、襖絵を屏風に仕立てことがはっきりしたため襖絵に戻しました。修復後、世界初の展示が本展です。なお、この作品には「棋」を描いた部分が収集時から欠けていました。
曾我蕭白の保有点数が世界一多い美術館は、ボストン美術館です。

◎第3章 ことほぎの美術
第3章では幸せを祈る「ラッキー・グッズ」を展示しています。
葛飾北斎《寿字と唐子》は98歳の花井白叟が「壽」の字を書いた上に86歳の北斎が唐子を描いたもので、二人の合作です。
《浅黄繻子地宝船模様掛袱紗》は江戸時代の掛袱紗。掛袱紗は持って行く品物の上に掛けて使ったもので、おめでたい図柄を刺繍しています。《紅綸子地松鶴波亀模様打掛》は結婚式の衣装で、展示室には赤、黒、白の打掛を展示しています。ただし、白の打掛は産着に仕立て直したものです。(注:掛袱紗も打掛も金糸をたっぷり使って刺繍した豪華なものです。幕末・明治の動乱期だったから、このような「お宝」でも売りに出されたのでしょうか)
ヴァージニア・ローデン《水壺》はアメリカ・インディアンの伝統的図柄の土器です。

◎第4章 アメリカ美術に見る幸せ
Ⅰ 幸せを彩った芸術~アメリカン・フォークアートの世界~
第4章は2部構成です。第1部ではアカデミックな芸術が入る前の民衆に密着した芸術を展示しています。
サルヴァトーレ・チェルニリアーロ《メリーゴーラウンドの豚》はメリーゴーラウンドの座席として使われていたもので、豚は幸せの象徴です。
ジョン・F・フランシス《3人の子ども》に描かれた子どもは、ごつい感じがします。

Ⅱ 東西の出会い~心の平安を求めて~
第2部ではボストニアンが収集した東洋美術と収集家が描いた東洋風の作品を展示しています。
西山芳園《白衣観音図》はフェノロサが収集したものです。《山間望月》は収集家のフランシス・ガードナー・カーティスが描いた水墨画で、ジョン・ラファージ《ヒルサイド・スタディ(二本の木)》は歌川広重の影響を受けた油絵です。
《踊るシヴァ像》はアーナンダ・クマロスワミが収集したものです。3階ロビーにシヴァ神の変身セットが置いてあるので、帰りにシヴァ神のポーズで写真撮影することができます。皆さん、いかがですか。
ボストン美術館には、かつて「テンプル・ルーム」という寺院風の展示空間がありました。仏像も、お寺ではローソクの明かりで見ていたということを踏まえ、暗い照明で展示しています。

◎第5章 アートの世界に包まれて~現代における幸せの表現~
第5章では現代美術を展示しています。
ピーター・コフィン《無題》は、作家が子どもの頃に見た広告版をイメージした作品です。彼が見た広告版はカラフルな板を並べた上に、活字で案内を描いたもの。出品作品は、その広告版から文字を取り去ったものです。
第5章にはハートをかたどった、ジム・ダインのポップアートを多数展示しています。ジム・ダインの「ハート」にちなんで、ハート形の紙に名古屋ボストン美術館に対するコメントを書いて通路の壁などに貼るというキャンペーンをしています。9月15日現在で2400枚の「ハート」が集まりました。よろしければ、皆さんもハート形の紙に名古屋ボストン美術館に対するコメントを書いて通路の壁などに貼ってください。

◆自由観覧
吉田さんの解説は午前11時に終了し、各自、自由観覧となりました。
 展示室の入口を覗くと、部屋いっぱいの人が見えます。三連休の中日ですから人が多くて当然ですが、少し心配になりました。と言っても、なんとか作品の鑑賞ができたので安心しました。正午近くになると、昼食のためか人数が少し減り、ゆったりと鑑賞することができるようになりました。
 本展は名古屋ボストン美術館の最終展。「10月8日には閉館を迎えるのか」と、淋しい思いを抱いて美術館を後にしました。
                            Ron.

石切り場(丸山富之)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

 「モネ それからの100年」展の会期中、松本陽子氏を囲んでお話を聞く会(以下、囲む会)が催された。囲む会は名古屋市美術館協力会の会員向けの催しで、会食しながら、出展作家の方からあれこれとお話を聞くことができ、とても好評だ。
 松本陽子氏の囲む会には、hino galleryのスタッフも参加していて、ギャラリーの夏以降の展示予定や最寄駅からの行き方を聞く機会があった。そんな経緯があって、今回、ギャラリーを訪問してみた。

石切り場 前室にて

石切り場 前室にて


 石切り場(丸山富之、hino gallery)を見た。彫刻だった。前室には石材の重量感と表面のザラザラ感が強く意識される作品が置かれていた。後室には上部に突起の付いた、大きな文鎮のような作品が並んでいた。突起の中は深くえぐられ、のぞきこむと石材の裏側(内側)までつながっているようだ。
石切り場 後室にて

石切り場 後室にて


 スタッフと話をしているうちに、えぐられた突起が石に開けられた口に見えてきた。見てのとおり、作品の形態には生物を連想させる要素はないが、スポーツ中継で見る水泳の息継ぎを連想した。
 隣にいるスタッフは、石の産地や制作のこだわり、重量のある作品ならではの展示の苦労話を優しく教えてくれるのだが、水面に浮きあがり、勢いよく突起から空気を吸い込むイメージが作品に重なる。

 お昼近くになり、冷房のおかげで汗も引き、ギャラリーを退去した。駅に向かいながら、ぼんやりと息継ぎする彫刻のイメージが暗示するものについて考えた。答えは意外と身近にありそうだ。

展覧会は9月29日まで。

http://www.hinogallery.com/2018/1901/

杉山 博之

東京アラカルト

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

 展覧会名に興味を惹かれて「東京アラカルト」展を見てきた。出品作家すべてが初見ということで、予備情報なし、わくわくしながら会場へ。お昼過ぎだったので、途中のスーパーマーケットの総菜コーナーをのぞいてみると、おいしそうなお弁当が20%引。時間をずらすとお買い得なんだなー。

 会場のリーフレットによれば、この展覧会はバッカーズ・ファンデーションとNPO法人アーツイニシアティブトウキョウによリ開催されたレジデンスプログラムの集大成。ちょうど、ギャラリートークが始まるようなので、聞いてみることにした。

 10名くらいで始まったトークは内容盛りだくさん。なんといっても20名の作家による100点近い作品のほぼすべてに解説をしてくれる。テーマごとの展示を優先したようで、同一の作家でも異なるフロアーに展示されている場合があり、作家ごとの作風の広がりがつかみにくい。
 印象的だったのは、カラフルなくぎを大量に打ちつけた作品、灰色のコイルで編んだ大きな靴下のような作品、真っ赤な背景に様々な生物を描いた作品など。

 トークの最後で、今後の活動について、レジデンスプログラムは終了し、別の形で活動を継続すると締めくくられた。本当に熱心で、盛りだくさんのトークだった。

おまけ
 協力会のT氏に教えてもらったお得なランチに行って見た。トレシャスビルの11階。見た目もきれいで美味だった。

杉山 博之

おまけ1

おまけ1


おまけ2

おまけ2

音のアーキテクチャ展

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor
音のアーキテクチャ トンネルでピクニック

音のアーキテクチャ トンネルでピクニック


 「音のアーキテクチャ展」を体験してきた。
あいちトリエンナーレのボランティアで知り合った人たちと最近の展覧会について話していたら、ミケランジェロ展(国立西洋美術館)、ルーブル展(国立新美術館)、ゴードン・マッタ=クラーク展(東京国立近代美術館)に混じって話題に出たので気になっていた。

 開館直後に入館したが、海外からの観客で混み合っている。(チケット売り場で聞いた話では、時々、不思議なファッションのお客様もいらっしゃるとか。不思議なって、どんな?)

 建物に入ると地下の会場の方から軽快な音楽が聞こえてくる。音と映像の展示なので、館内はほぼ真っ暗。スタッフの誘導とライトの案内でメインギャラリーに入る。目が慣れると、階段状のベンチと床にも大勢の人影が。
 直後、メインスクリーン(正面の壁面と床面)に映像が映し出されたのだが、まるで、キラキラのダンスパレードの真ん中にパラシュート降下したみたい。高速で展開する音と光のトンネルを走り続けるような映像が続き、すぐに頭がグラグラしてくる。 
 
 のんびり鑑賞するには不向きだが、確かに印象的な展示だった。ジェットコースターが苦手でない方はぜひどうぞ。

杉山 博之

音のアーキテクチャ 音と光の土砂降り

音のアーキテクチャ 音と光の土砂降り

2018年10月14日まで
ミッドタウン・ガーデン
21_21デザインサイト

音のアーキテクチャ トンネルでピクニック 佐川美術館 ギャラリートークの様子 展示会場で話をきく会員たち 泉屋博古館にて まずは講堂でレクチャを聴く会員たち 会長の乾杯の音頭に合わせて、いただきます! 「回生の苗床」 光内惟奈 燃やせないもの 夢見たものは 展示室で解説を受ける会員たち プティパレ まずはエントランスホールでの解説