お知らせ

2021年2月9日

2021年協力会イベント情報

会員の皆様へ

新型コロナウイルスの影響で協力会の活動もしばらく休止させていただいていましたが、2021年1月の名古屋市美術館の開館に伴い、少しづつ活動を再開しています。

現在、下記の解説会の参加申し込みを受け付けています。

1.アートとめぐる はるの旅 展 解説会 令和3年4月4日(終了しました)

2.ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ 解説会 令和3年4月18日 

参加希望の会員の方は、ファックスか電話でお申し込みください。ホームページからの申し込みも可能です。参加の際は、必ずマスクを着用いただき、体調の優れない場合は、参加をご遠慮ください。最新の情報につきましては随時ホームページにアップさせていただきますので、そちらをご確認ください。

皆さま方にはご迷惑をおかけしますが、なにとぞご理解のほど、お願いいたします。また、くれぐれも体調にはご留意ください。

アートとめぐる はるの旅

カテゴリ:協力会ギャラリートーク 投稿者:editor

 2020年は、美術館の建物の改修やコロナウイルス拡大の影響などで閉館していた名古屋市美術館ですが、2021年に入って展覧会を再開しています。

 この3月25日から始まった「アートとめぐるはるの旅」展は、当初昨年の夏休みに予定されていた展覧会ですが、今年になって、春の展覧会として開催されています。4月4日はあいにくの雨になってしましましたが、22名の会員が参加して協力会向けの解説会が行われました。

 午後4時に講堂に集合した参加者に、展覧会を企画してくださった森本陽香学芸員が、旅先案内人となって解説してくださいました。

 1つ目の作品は山田光春さんの「星の誕生」。この作品をはじめ、エヴァ・サロやカプーアの不思議な作品は旅の始まりが宇宙からだとイメージしているそうです。

 続いて旅は海の底へ、坂本夏子さんの「Octopus Restaurant」は不気味なレストランの様子を描いていますし、山田秋衛さんの作品は竜宮城を美しく描いています。

 その後も「死」をテーマにした作品を旅したり、風や時間、記憶を旅してまわったりして、最後の作品、庄司達さんの「Navigation Flight」へ。長い旅の後に飛行機に乗り、我が家へ帰る……つもりで作品の向こう側から振り返ってみると、楽しい仕掛けがされています。見にいらっしゃるみなさんは、ぜひ、これを楽しみにいらっしゃってください。

展覧会見てある記 豊橋市美術博物館「2021コレクション展 第1期」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

豊橋市美術博物館のコレクション展(2階 常設展示室 第1期)を見てきました。考古、歴史、美術、民俗の4分野にまたがる展示でしたが、考古(考古資料から探るトヨハシの歴史)を除く3分野について、簡単にレポートします。

◆歴史・床の間動物園Ⅰ(2階 テーマ展示コーナー、第2展示室)


《松に鷹図》

 2階・通路沿いの「テーマ展示コーナー」には、4枚組の杉戸絵が2点。原田圭岳《松に鷹図》(1881)と《鶴図》(1875)、大迫力です。第2展示室には同じ作者の杉戸絵《松に鶴図》(3枚組)もあります。いずれも豊橋市・石巻地区の宮司・佐藤為継が自宅を飾るために描かせたもの、とのことです。今回は、全5点のうち3点を見ることが出来ました。


《鶴図》

床の間動物園Ⅰでは、江戸時代から昭和までに制作された、鳥を描いた掛け軸、屏風、杉戸絵を展示しており、渡辺崋山が25歳のときに描いた写生帖や、崋山の次男・渡辺小崋が描いた墨画や彩色画(いずれも明治時代)もあります。

◆美術・書を愉しむ(2階 第3展示室)

 いずれも昭和・平成に制作された書で、墨の濃淡や造形表現を味わう作品が並んでいました。

◆美術・从(ひとひと)会の作家たち(2階 第4展示室)

 从(ひとひと)会は、中村正義・星野眞吾らが1974年に創立した美術グループです。展示されているのは17点ですが、うち8点が第1回从展「黒い太陽・七人の画家 从展」の出品作品でした。第4回从展出品の田島征二《ぼくたちの踊る踊り》(1977)は、男女4人の顔と鶏の顔が合体し、左足は鶏の脚という不思議な作品です。そのほかの作品も、不穏な空気が漂っていました。

◆民俗・電話+カメラ=?(2階 第5展示室)

 名古屋市美術館「写真の都」物語を見た後なので、乾板式ハンドカメラと写真乾板、フォールディングカメラのフジミナールW,二眼レフのアイレスフレックスY3型などに目が止まりました。


乾板式ハンドカメラ

フジミナールW

アイレスフレックスY3型

◆展覧会情報

 「豊橋市美術博物館 令和3年度スケジュール」によると2階・常設展示室のコレクション展は、第1期が3.13~5.23,第2期が5.29~8.29,第3期が9.4~11.23,第4期が11.30~2022.2.13です。一方、1階・特別展示室「郷土ゆかりの美術」は、第1期が4.3~7.11「Happy Yellow」、第2期が11.30~12.26「星野眞吾と高畑郁子」、第3期が2022.1.4~3.27「Face to Face」です。いずれも、観覧無料。

企画展は、7.17~8.29「三沢厚彦 ANNIMALS IN TOYOHASHI」、10.9~11.23「芳年 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」、11.30~12.26「全国公募 第8回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展~明日の日本画を求めて~」、2022.2.19~3.27「2021年度 美術コレクション展」等です。

◆おまけ・碧南市藤井達吉現代美術館の特別開館事業

「Nagoya art news 2021 4-5」によると、碧南市藤井達吉現代美術館 特別開館事業「いのちの移ろい展」が、4.29~6.20の会期で開催されるようです。「人や自然の間を結ぶ大きな『いのち』の表現を、現代作家10名の作品と所蔵品を通して辿ります」とのことなので、楽しみですね。

Ron.

展覧会見てある記 「アートとめぐるはるの旅」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

開催が延び延びになっていた「アートとめぐるなつの旅」が、「アートとめぐるはるの旅」に改名。ようやく開幕しました。名古屋市美術館の地下1階で受付を済ませると、正面に見えるのは宇宙に浮かぶ色とりどりの星。山田光春《星の誕生》でした。壁に書かれた「ことば」を道しるべに、アートとめぐる旅を始めます。

◆たびのはじまり(白い壁)

常設展示室1に入って振り返ると、壁には「たびのはじまり」の文字。地図らしき作品が展示されています。右にはアンゼルム・キーファー《シベリアの女王》。進行方向に向き直ると、目の前には真っ暗な空間。

◆やみをぬけて(白い壁)

くらやみが無限に続いている感じの不思議な作品は、アニッシュ・カプーア《極空No.3》でした。右の壁にある山田光春《夜の生物》や染谷亜里可《Decolor – moon》では、くらやみの中に蛾や月が浮かんでいます。

◆そらのうえ(白い壁)

衝立の横を回り込むと、また衝立です。衝立に掛けられた絵の左には、粘土の塊が置かれています。今村哲《宇宙飛行士最後の夢》という作品で、絵と粘土の塊がセットになっているようです。振り返るとマルク・シャガールのエッチングが4点。バリー・フラナガン《三日月と釣鐘の上を跳ぶ野ウサギ》も展示されています。

◆うみのそこ(赤い壁)

赤い壁の部屋に向かうと竜宮城の絵が見えます。近寄ると作者は山田秋衛、1927年制作の作品でした。その左には海底レストランを描いた、坂本夏子《Octopus Restaurant》。浅野弥衛のエッチング4点もあります。作品名は「海の城」など、全て「海」に関するものでした。

◆だいちをながめて(赤い壁)

反対側の展示ケースには、田渕俊夫《大地悠久、洛陽黄河》と平松礼二《路 ― みち》。上陸したようです。

◆おわりとはじまり(赤い壁~白い壁)

赤い壁の展示室、残る2作品は山田光春《送列》とフリーダ・カーロ《死の仮面を被った少女》。たぶん、これは「おわり」。「はじまり」はコンスタンティン・ブランクーシ《うぶごえ》かな。内藤礼の作品も2点。

◆かぜのなか(白い壁)

目を引くのは、壁一面を占領する李兎煥《風とともに》。右の壁に展示された嶋谷自然《砂丘と海》からは、浜松市・中田島砂丘の潮風が感じられます。外にも2点の作品があります。

◆うみをこえて(緑色の壁)

子どもの絵に惹き寄せられて緑の壁の部屋に入ると、フランスやハンガリー、スペイン、メキシコの風景が並んでいます。アマディオ・モディリアーニ《おさげ髪の少女》も、この部屋にあります。

◆じかんときおく(緑色の壁)

河原温のtodayシリーズ《14.JUL.1986》の前で暫しの間、瞑想。

◆ここはどこ(うす茶色の壁)

うす茶色の部屋に進むと、お城や虎の檻、堀川、登り窯などの絵が並んでいます。「ここはどこ」と問いかけられたので、作品を見ながら答えを探していました。

◆おかえりなさい(灰色の壁)

ロビーを横切って、常設展示室3へ。部屋いっぱいに広がった白い浮遊物が目に入ります。庄司達(さとる)の《Navigation Flight(空間の誘導・飛行 》でした。大きいので、なかなかお目にかかれない作品ですね。

最後の作品はトニー・クラッグ《住処のある静かな場所》。ようやく、我が家に戻ることが出来ました。

◆最後に

展覧会を企画した人たちと会話する気持ちで鑑賞し、展覧会を楽しむことが出来ました。なお、《死の仮面を被った少女》は、Youtube動画(2002年制作の映画「フリーダ」予告編)でも鑑賞できます(51秒頃登場)。

Ron.

読書ノート「芸術新潮」2021年4月号 2021年美術展特集号

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

ようやく「芸術新潮」の美術展特集号が発売になりました。「これだけは見ておきたい2021年美術展ベスト25」始め6つの特集があり、全104展の情報が載っています。その中から、名古屋周辺で開催される美術展を、特集別・会期順に並べてみました。

◆これだけは見ておきたい2021年美術展ベスト25

○渡辺省亭 ―欧米を魅了した花鳥画― 岡崎市美術博物館 5月9日~ 7月11日

○生誕160年記念 グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生 名古屋市美術館    7月10日~9月5日

○生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画を求めて 豊田市美術館 7月10日~9月20日

○曾我蕭白 奇想ここに極まれり 愛知県美術館 10月8日~ 11月21日

○ゴッホ展――響きあう魂 ヘレーネとフィンセント 名古屋市美術館 2022年2月23日~4月10日

◆新会期決定 帰ってきた2020的Exhibition

○バンクシーって誰?展 名古屋にも巡回予定

注:金山で開催している「バンクシー展 天才か反逆者か」(2月3日~5月11日)とは別の展覧会です

◆2021年、これだけは見ておきたい美術展 番外編1 災害を見つめるアート

名古屋周辺では、該当する美術展の開催はありません

◆2021年、これだけは見ておきたい美術展 番外編2 今年は貴重な海外現代作家展

○ボイス+パレルモ 豊田市美術館 4月3日~6月20日

○ミケル・バルセロ展 三重県立美術館 8月14日~10月24日

○ミニマル/コンセプチュアル:ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術 愛知県美術館 2022年1月22日~3月13日

◆2021年、これだけは見ておきたい美術展 番外編3 イラスト、絵本、マンガ展続々

○サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化60年史  松坂屋美術館 4月24日~6月12日

○没後20年 まるごと馬場のぼる展 描いた つくった 楽しんだ ニャゴ! 刈谷市美術館に巡回予定

◆もっと見たい! 2021年美術展50 気になる展覧会を PICK UP!

○GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?  愛知県美術館        1月15日~4月11日

○ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ  名古屋市美術館 4月10日~6月6日

○ミレーから印象派への流れ 岐阜県博物館  9月5日~11月14日

○フランソワ・ポンポン展 動物を愛した彫刻家 名古屋市美術館  9月18日~6月6日

○生誕120年記念 荻須高徳展 ―私のパリ、パリの私- 稲沢市荻須記念美術館 10月23日~12月19日

○杉浦非水 時代をひらくデザイン 三重県立美術館  11月23日~2022年1月30日

○大雅と蕪村 ―文人画の大成者 名古屋市博物館  12月4日~2022年1月30日

◆補足

「美術の窓」2021年1月号、「日経トレンディ」2021年1月号では以下の展覧会も紹介していましたが、これが全てではありません。名古屋周辺では、今年も数多くの美術展が開催されるようなので、楽しみです。

○海を渡った古伊万里 ~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇~ 愛知県陶磁美術館 4月10日~6月13日

○若冲と京の美術 -京都 細見コレクションの精華- 三重県立美術館     4月10日~5月23日

○特別展 刻(とき)を描く 田渕俊夫 徳川美術館 4月18日~5月30日

○所蔵企画展 田渕俊夫と日本画の世界 美をつなぐ 

メナード美術館  前期 4月18日~5月30日、後期 6月2日~7月11日

○トライアローグ 横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館  20世紀西洋美術コレクション 愛知県美術館 4月23日~6月27日

Ron.

読書ノート 「フリーダ・カーロのざわめき」 とんぼの本(新潮社)

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

映画「フリーダ・カーロに魅せられて」を見て、もっとフリーダ・カーロ(以下「フリーダ」)のことを知りたいと思い、近所の図書館で借りてきたのがこの本です。内容は、「芸術新潮」2003年9月号特集「フリーダ・カーロのざわめき」を再編集・増補したもので、著者は森村泰昌・藤森照信・芸術新潮編集部。発行所は株式会社新潮社、発行は2007年9月20日、定価は1,500円(税別)でした。

◆フリーダの評価について

冒頭の「フリーダは人生も面白いけど、絵がおもしろい!」と第1章は、森村泰昌が執筆。「フリーダは人生も面白いけど、絵がおもしろい!」には、こんな文があります。(以下、P.○は本のページを示す)

p.6 僕がフリーダ・カーロに扮して原美術館で展覧会をやったのは2001年。(略)今度はちょっとマイナーな人を選んだんですねって言う人もいました。でも、フリーダ・カーロって、メキシコではものすごく有名なんですよ。(略)映画「フリーダ」が公開されてだいぶん話題になりましたが、日本でもきちんとこの画家のことを評価すべきだと、当時は考えていたものです。ただしそれは、フリーダ・カーロの人生が凄かったからではなくて、彼女の絵がおもしろいから。そこが一番重要なところです。(略)常識を突き抜ける。彼女にはそういうところがあるんです。(引用終り)

2003年には「フリーダ・カーロとその時代」展が名古屋市美術館に巡回し、その生涯を描いた映画「フリーダ」も公開されました。しかし当時、フリーダについての知識は皆無。展覧会も映画も評判は聞いたものの、どちらも見ていません。現在は、映画「フリーダ・カーロに魅せられて」が上映されるなど、当時と比べてフリーダの評価は高まっていると思います。「あの時、見ておけばよかった」と悔やまれるばかりです。

◆フリーダの作品について

フリーダの作品については、以下のように書いています。

p.7~8 画集で見るだけではわかりにくいんですが、フリーダ・カーロの絵は、実はあれっと思うくらいサイズが小さい。ずっと体調の悪い人でしたから、大きな絵は物理的に描けなかった。テクニック的なことを言うと、決してうまくはない。ただ、ものすごく丁寧な画家です。 (略)絵の中でいろんな要素が喧嘩したまま混ざり合っている。そうした状態が醸しだす独特の風合いが、彼女の絵の特徴です。(引用終り)

第1章には、こんな文もあります。

p.55~56 フリーダ・カーロは、本当は絵画によって社会的発言をしたくてしょうがない人だった。(略)彼女がディエゴ・リベラに憧れた最大の理由は、「私もあんなんやってみたい」だと思うんですよ。彼は当時のメキシコにおける社会主義革命のリーダーでしたからね。知識人の間ではヒーローです。壁画によって民衆を動かしたディエゴの影響力は絶大だった。でも、幸か不幸かフリーダは体が自由ではなかったから、やりたいと思っても巨大な壁画なんか描けない。アトリエにこもって小さな絵を描くしかなかったんですよ。(引用終り)

 著者が「幸か不幸か」と書いたように、巨大な壁画は諦めてアトリエにこもり、フリーダ自身の気持ちを一心に表現したので、逆に今、彼女の作品が見る者の心に響くのだと思います。

◆フリーダ歴代恋人列伝(執筆は、芸術新潮編集部)

映画「フリーダ・カーロに魅せられて」では「ディエゴ・リベラの不倫が発覚し、フリーダは酒と恋人に助けを求めた」とナレーションがありましたが、この本のp.98~103では、初恋の人からディエゴまで5人の恋人を紹介しています。なかでもディエゴについては「愛し合っているからこそ傷つけあってボロボロになる。それでも離れられない。そんな二人だった。だからこそ、一度は別れながら、2度目の結婚をしたのだ」と書いています。まさに「愛憎がごっちゃになった、でも運命的なパートナー」(p.49)だったのです。

◆名古屋市美術館の所蔵品も紹介

この本には多数の図版が掲載され、その中には名古屋市美術館が所蔵する《死の仮面を被った少女》(1938)と《オブジェによる自画像》(フリーダが1946年当時恋仲だった画家バルトーリに送った品々を名古屋市美術館で再構成したもの)もあります。「名古屋市美術館はメキシコに強い」と再認識しました。

◆最後に

蔵書にしようと思いAmazonで検索したら、全て中古本でした。2007年発行なので仕方ないですね。でも、近所の図書館に行けば借りることができると思います。

Ron. 投稿:2021年3月8日

映画『フリーダ・カーロに魅せられて』

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

現在、ミッドランドシネマ2で、大画面で美術を体験するドキュメンタリー「アート・オン・スクリーン」の一作「フリーダ・カーロに魅せられて」が上映されています。原題は ”FRIDA KAHLO”、「アート・オン・スクリーン」は英語表記で ”EXHIBITIN ON SCREEN”。文字通り、フリーダ・カーロ(以下「フリーダ」)の生涯をたどりながら、彼女の代表作や写真などを紹介する「展覧会」でした。

最初の油絵は、交通事故の療養中に描いた《ベルベットドレスの自画像》(1926)

フリーダが誕生したのは1907年7月6日。父はドイツから移住した写真家で、母はスペイン人とインディオの混血です。彼女の生活を一変させたのは1925年9月17日に遭遇した交通事故。乗っていたバスが路面電車と衝突し、大怪我をします。その療養中、彼女は独学で絵の才能を開花。恋人のために、ベッドの天蓋に鏡を取り付けて描いたのが《ベルベットドレスの自画像》(1926)です。映画では「ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》と重ねている」との解説がありました。この時から、彼女が描く眉は左右が繋がっていましたね。

ディエゴ・リベラと結婚、デトロイトで流産《ヘンリー・フォード病院》(1932)を描く

交通事故の後、フリーダは画家のディエゴ・リベラ(以下「ディエゴ」)と知り合い、1929年に結婚します。1930年、ディエゴは壁画を制作するためにサンフランシスコへ渡り、この頃描かれたのが《フリーダとディエゴ・リベラ》(1931)です。この絵で彼女が着ているのはメキシコの民族衣装「テワナ」です。彼女はサンフランシスコでメキシコ文明に回帰し、メキシコ南部オアハカ州テワンテペクの女性の民族衣装「テワナ」を身に着けるようになりました。また、映画では「フリーダの母親が二人のことを、象と鳩の結婚と言った」と紹介しています。

1932年、ディエゴはフォードの工場に壁画を描くためデトロイトに行きますが、この時、フリーダは妊娠2か月で流産してしまいます。この流産を描いたのが《ヘンリー・フォード病院》(1932)です。背景はフォードの工場。血に染まったベッドに横たわる裸婦は涙を流し、その体からは血管のような6本の赤い糸が出て、胎児や骨盤、子宮の解剖図、ランの花、カタツムリ、機械と結ばれています。この作品について映画は「彼女は、大衆の芸術であるメキシコの奉納画・レタブロの様式を参考にして描いた」と解説していました。レタブロは神様にお願いする文章と絵を組み合わせたもので、フリーダはレタブロをたくさん収集していたそうです。

ディエゴがフリーダの妹と不倫、《ちょっとした刺し傷》(1935)を描く

二人がメキシコに帰国後、女癖の悪いディエゴはフリーダの実の妹と不倫してしまいます。これに怒ったフリーダは、ディエゴと別居。全身をめった刺しにされ、血まみれでベッドに横たわる裸婦と、その横でナイフを手に持って立つ男を描いた《ちょっとした刺し傷》(1935)は、この時の心の傷を描いています。新聞で報道された殺人事件をもとに制作した作品で、犯人の「ほんのちょっと刺しただけです」という証言が題名の由来とのこと。映画は「ディエゴと別居したフリーダは、酒と恋人に助けを求めた。1937年にはソ連を追放されたトロツキーを匿い、一時的に恋人関係になった」と解説しています。

シュルレアリスムとの関係

1938年4月、メキシコを訪れたシュルレアリストのアンドレ・ブルトンはフリーダの絵に魅了されます。映画では、バスタブの中に両足の指や火山の火口からそびえる摩天楼、裸婦などが描かれた《水がくれたもの》(1938)が映され、「私はシュルレアリストではない」という、フリーダの言葉が紹介されました。シュルレアリスムは夢や幻覚を描いていますが、フリーダが描いたものは夢ではなくて「記憶」。彼女の作品には、描いたものの組み合わせによって、奇妙な状況が生まれています。しかし、彼女は現実とかけ離れたものではなく、「現実」を描いています。映画ではフリーダの作品を「幻想的写実画」と表現していました。

海外での個展成功、ディエゴとの離婚、そして再婚

1938年、ニューヨークで開催されたフリーダの個展は成功。翌年、パリでも個展を開催し、カンデインスキー、ピカソ、タンギーなどが来場。ルーブル美術館も彼女の作品を買い上げました。この頃のフリーダを撮影したカラー写真が「フリーダ・カーロに魅せられて」のチラシに使われています。撮影したのはニコラス・ムライ(Nickolas Muray)。二人は一緒に暮らしていましたが、フリーダがメキシコで生活するために二人は別れます。一方、フリーダとディエゴとの関係も最悪になり、1939年11月6日に二人は離婚。メキシコで開催された「シュルレアリスム展」に出品された《二人のフリーダ》(1939)は向って右にディエゴが愛したテワナを着たフリーダ、左に愛を失ったヨーロッパ風の衣装のフリーダを描いています。「背景の空はエル・グレコの絵に似ている」と映画は解説していました。《断髪の自画像》(1940)は、ディエゴから好まれた長い髪を切り、中性的な、自立した姿を描いた作品です。

映画では「私は人生で二つの事故に会いました。一つは交通事故、もう一つはディエゴとの結婚。なかでも最悪なのは、結婚」という言葉を紹介しています。ディエゴとの離婚以来、フリーダの病状は悪化。その治療には心の支えが要ることから、1940年12月、二人は再婚します。

晩年のフリーダ

ひび割れた背骨の《折れた柱》(1944)は、痛みに立ち向かう自分の気持ちを描いた作品で、背骨はイオニア式の柱。映画は「ベッドに寝たまま描いていた」と解説していました。《宇宙の愛の抱擁、大地(メキシコ)、自分、セニョール・ショロトル》(1949)の主題はディエゴへの愛。赤ん坊のようなディエゴを抱くフリーダ、それを更に大地の女神が抱き、女神の手の中では死の使いとされるショロトル犬も寝ている、という絵です。

1950年は、大半を病院で過ごし、痛み止めにモルヒネを投与します。1953年4月にはメキシコ国内で初の個展を開催。ベッドから動けない状態でしたが、ギャラリーにはベッドで寝たまま出席。1953年8月には壊死した右足を切断。彼女は1954年7月13日に逝去しますが、死の8日前に完成させたのが、スイカを描いた《人生万歳:Viva la vida》(1954)。生命力を感じさせる作品です。

最後に

映画では、上記で紹介した以外にも多数の作品が紹介されます。また、ニコラス・ムライだけでなく、フリーダの父親が撮影した写真や友人のアルバレス・ブラボが撮影した写真も出てきます。料金は2000円で割引は一切ありませんが、大画面でトークを聴きながらフリーダの作品を鑑賞できるので、一見の価値はあると思いますよ。

Ron.