お知らせ

2020年4月15日

2020年協力会イベント情報

会員の皆様へ

愛知県で緊急事態宣言が発令されたこともあり、誠に申し訳ありませんが、協力会の活動もしばらく休止させていただき、春のバスツアーは中止とさせていただきます。

ミニツアー、ギャラリートークにつきましても、当面の開催は難しいと考えております。また、例年6月に開催しております総会につきましても延期、もしくは書面によるご審議などを検討しております。

最新の情報につきましては随時ホームページにアップさせていただきますので、そちらをご確認ください。

皆さま方にはご迷惑をおかけしますが、なにとぞご理解のほど、お願いいたします。また、くれぐれも体調にはご留意ください。

“「エール」のまち!豊橋。”の美術博物館

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:members


愛知県の緊急事態宣言が解除され、外出も「都道府県をまたぐ移動でなければO.K.」となったので、連続テレビ小説「エール」の舞台のひとつ、豊橋に行ってまいりました。

目的地は豊橋市美術博物館(以下「美術館」)。道すがら目立つのは“連続テレビ小説「エール」のまち!豊橋。”というポスター。美術館に近づくと「明治35年(1902年)豊橋町立高等女学校発祥の地 平成14年(2002年)愛知県立豊橋東高等学校100周年記念」という石碑。二階堂ふみさん演じる関内音(せきうち・おと)のモデル・内山金子(うちやま・きんこ)の母校ですね。美術博物館のある豊橋公園は「エール」のロケ地でした。

◎2階・常設展示室では中村正義《男と女》(1963)がお出迎え

 開催予定の企画展「芳年 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」は中止。見ることが出来たのは2階・常設展示室の「コレクション展」のみ、でした。企画展は有料ですが、2階のコレクション展は無料。受付カウンターにはアクリル板。係員さんはマスク着用。さすがにフェイスシールドまでは着けていません。私もマスクを着用して1階ロビーに置いてあるアルコール消毒液で手指を洗浄。

階段を上っていくと、中村正義《男と女》(162.0×226.5)が目に飛び込んできます。2011年に名古屋市美術館で開催された「中村正義展」で見た作品です。「昭和57年度 中村あや氏寄贈」と書いてありました。この作品だったかどうか定かではありませんが「中村正義は合成接着剤に蛍光塗料を混ぜて絵を描いた」と、2011年の展覧会・ギャラリートークの際に、当時、学芸係長だった山田さんから聞いた覚えがあります。右隣も中村正義の作品《妓女》(1962)。227.0×162.0の大作。しばらくの間、二つの作品を眺めていました。

◎第2展示室=歴史・芳年と、同時代の浮世絵師たち

 常設展示は「考古・考古資料から探るトヨハシの歴史」「歴史・芳年と、同時代の浮世絵師たち」「美術・木版画 北川民次・棟方志功」「美術・浮世を描く絵師たち~中村正義を中心に」「民俗・キル・ケズル」の5分野。このうち、2番目の「歴史・芳年と、同時代の浮世絵師たち」は文久3年(1863年)、14代将軍徳川家茂が上洛した時の行列を題材にした「東海道名所風景」の100枚続きから、表紙、口上、目録はじめ32点を展示しています。歌川広重と国芳は他界していたので、歌川国貞始め16人の絵師が描いています。

展示作品は月岡芳年のものが一番多くて8枚、次が河鍋暁斎の3枚です。なかでも当時25歳と、16人の中では2番目に若い絵師だった芳年の作品はクローズ・アップと遠景を組み合わせた《由比ヶ浜》《舞阪》、真ん中に煙(《石部》)や柱(《大津三井寺》を入れて画面を左右に分割するなど、工夫を凝らした構図のものが目立ちます。

◎第4展示室=美術・浮世を描く絵師たち~中村正義を中心に

 第4展示室の展示作品中、中村正義の作品は舞妓シリーズ始め6点。初期のデッサン《舞妓》(1958)は写実的な普通のデッサンですが、完成作としてパネル写真で紹介の《舞妓》(別名:白い舞妓 1958)、《舞子》(別名:黒い舞妓 1959)は大胆な表現です。2011年の中村正義展の時は、《女》(別名:赤い舞妓 1957)も一緒に展示。山田さんがギャラリートークで熱く語っていた姿が目に浮かんできました。

 2018年の「ザ・ベスト・セレクション」に出品されていた、緑色に塗られた裸の男女が登場する《終電車》(1967)を描いた大島哲以の作品、《屠殺の部屋》(1966)《優婆羅の街》(1968=羽黒洞木村東介寄贈)もありました。木村東介といえば、長谷川利行の作品をごっそり買い込んだ画商では……

◎疫病 退散 アマビエ 創業江戸 若松園

 帰り道、井上靖の自伝的長編小説「しろばんば」に出てくる老舗「若松園」の前を通ると、店先に「疫病 退散 アマビエ」という貼紙と新聞の切り抜き。「練り切り」の和菓子です。3か月半ぶりに展覧会に出かけてきたので「何かあってはいけない」と思い、二個(税込み584円)買い求めました。家に帰り、仏壇にお供えして食べましたが、おいしかったですよ。

◎最後に

 豊橋市美術博物館の次回展覧会は美術コレクション展「ゆったり、美術館散歩」会期=6月2日(火)~7月12日(日)です。観覧料は大人・大学生400円。豊田市美術館「久門剛士展」は再開ずみ、おかざき世界子ども美術博物館「これって絵画なの?超リアルと面白かたち展」も5月26日(火)~7月12日(日)の会期で再開とのこと。長い巣ごもりでしたが、ようやく外出できるようになりました。

Ron.

巣ごもり読書とネット検索の日々

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:members

◎「当たり前」再考→「非日常」が当たり前に?

愛知県は政府の緊急事態宣言の対象から外れましたが、名古屋市美術館の「ミュシャ展」は「中止」になってしまいました。協力会の会員から読むことを勧められた5月19日付朝日新聞文化・文芸欄の[美術館の「当り前」再考]によると、各地で展覧会の中止が相次いでいるとのことです。「ミュシャ展」だけではなかったのですね。

記事は、京都市京セラ美術館が「一つの展覧会では30分で50人までの入場」とする事前予約制を始める、とも書いています。「人気展は密集する」のが「当たり前」では無くなり「30分で50人が入場」という「非日常」が当たり前になるのでしょうか。

◎名画はインターネットで見る時代?

 上記の記事は「名品の画像を70億画素で見せるグーグルのサービスには、2012年からの東京国立博物館などをはじめ、すでに国内の多数の美術館が参加」とも書いています。

「名古屋市美術館はどうなっているの?」と思い美術館のホームページを見ると、トップページの「トピック」4月16日に「インターネットで楽しむ名古屋市美術館」という項目があります。クリックするとGoogle & Culture(外部リンク)に移動。スマホのGoogleアカウントとパスワードでログインできました。名古屋市美術館の休館が続く間は「オンライン鑑賞」で我慢することにしましょう。

◎厄災退散を願う絵をインターネットでGET

 5月11日付中日新聞・20面の「厄災退散願う絵 西尾の岩瀬文庫 HPで公開」という記事によれば、九州の浜に出現して江戸時代に「コロリ」と呼ばれたコレラの流行を予言し「私の絵姿を家に貼ればコロリにかからない」と告げて海に消えたという「姫魚(ひめうお)」をHP(htttps://iwasebunko.jp/)で公開しているそうです。早速、画像をGET。全国的に話題になっているのは「アマビエ」ですが、このような画像を見ていると巣ごもりの息苦しさが和らいできます。

◎パンデミックを描いた美術

 5月4日付日本経済新聞・文化面「疾病の文化論 ①描かれた恐怖=中野京子」は、19世紀フランスの歴史画家ドローネが描いた衝撃的な「ローマのペスト」について「この時代にはもうペストの大規模な流行は収まっていた。だが当時はそれに代わってコレラが蔓延し、フランスでは首相ペリエ、ドイツでは哲学者ヘーゲルが命を落としており、人々はこの疫病がペスト化するのではないかと心底恐れているのだった。つまり「ローマのペスト」は、遠い過去の疫病と眼前の疫病の恐怖を重ね合わせた作品なのだ」と、解説しています。江戸時代の日本だけでなく、19世紀ヨーロッパでもコレラが蔓延していたのですね。

◎21世紀でもベストセラー=巣ごもり読書にお勧め

 5月9日付日本経済新聞「活字の海で」は「フランスの作家カミュが疫病の恐ろしさと不条理を描いた小説『ペスト』(新潮文庫)が話題を呼ぶのも「こんな時」だからだろう。今年2月以降、増刷を繰り返し4月末で累計は121万部に上る。電子書籍の販売も好調だ。電子書籍化された2017年3月から19年12月の累計ダウンロード数と比べ、今年1~4月の累計は約13倍と急増した」と書いています。
私は4月11日(土)にNHK・Eテレが4回分を一挙に再放送した「100分de名著」を視聴して、買うことにしました。どの書評も文庫版245ページ「ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです(略)僕の場合には、つまり自分の職務を果たすことだと心得ています」を引用していますが、ラストの「市中から立ち上がる喜悦の叫びに耳を傾けながら、リウーはこの喜悦が常に脅かされていることを思い出していた。(略)ペスト菌は決して死ぬことも消滅することもないものであり(略)いつか、人間に不幸と教訓をもたらすために、ペストが再びその鼠どもを呼びさまし、どこかの幸福な都市に彼らを死なせに差し向ける日が来るであろうということを。」も印象的でした。

◎最後に

 現在、新型コロナウイルスの新規感染者数は減っており学校の再開も間近ですが、第2波、第3波への警戒を怠ることなく「自分の職務を果たすこと」を心がけたいと思います。

Ron.

引きこもりの中で読んだ記事

カテゴリ:アート・ホット情報 投稿者:members

今年2月16日の豊田市美術館「岡崎乾二郎 視覚のカイソウ」展ミニツアーを最後に、ブログ原稿を書いていません。

理由はコロナウイルスの感染拡大。不要不急の外出自粛が要請され、美術館の臨時休館も相次いでいるからです。2か月間、全く展覧会を見ていません。それでも、雑誌や新聞で読んだ記事について書くことは可能かなと思い、久しぶりに投稿しました。

◎食レポに中に「視覚のカイソウ」展の記事が=週刊文春2020.3.12号

 食べもの等をテーマにエッセイを連載している平松洋子さんが「五平餅を豊田で」という記事の中で「『これはどうしても見ないと』と決心して2月23日に豊田市美術館に駆け込んだ」と書いていました。

豊田市を訪れるのは、2013年の「フランシス・ベーコン展」以来のことだったそうです。「期待を上回るすばらしさだった」とのこと。平松さんの訪問が2月16日だったら会えたかもしれないと思ったのですが、顔を知らないので、考えただけ無駄でした。

平松洋子さんにとって「視覚のカイソウ」展も「フランシス・ベーコン展」も、はるばる東京から来るだけの価値のある展覧会だった、ということはハッキリ分かりました。

◎豊田市美術館・久門剛史(ひさかどつよし)展=中日新聞2020.4.4(朝刊・県内版)

 「久門剛史展」は杉山博之さんが協力会ブログにレポートを投稿していますが、新聞にも記事がありました。記事の中では「作品の解説は展示を見終えてから渡される。

久門さんは『解説を読みながら答え合わせをしていく展示が多い中、自由に見るという喜びを感じてもらいたい』と話した」という箇所が印象的でした。ただ、残念ながら、愛知県の緊急事態宣言を受けて4月11日から5月6日まで美術館は臨時休館となったので、しばらくは我慢の日々です。

◎京都市京セラ美術館=「pen」2020.4月号、日本経済新聞2020.4.6(朝刊・文化面)

 「pen」には、リニューアルオープンする京都市京セラ美術館の外観や内部の写真のほか、新館・東山キューブで開催される展覧会「杉本博司 瑠璃の浄土」、京都市京セラ美術館の周辺案内などが掲載されています。

日本経済新聞は主に、本館に隣接の収蔵庫を改装した面積約1000平方メートル、天井までの高さ約5メートルの現代美術展示館「東山キューブ」について書いています。土屋隆英・展覧会プログラムディレクター始め現代美術専門の学芸員が招かれ、杉本博司の個展を手始めに、アンディ・ウォーホル展や椹木野衣(さわらぎ・のい)氏が企画する展覧会を開く予定とのことです。

大いに期待していたのですが、京都市京セラ美術館の展覧会は全て開幕延期となっています。緊急事態宣言の対象区域が全都道府県にまで拡大されたので、少なくとも5月6日までは開幕延期が続くと思われます。

◎最後に

4月15日付けの「2020年 協力会イベント情報」に「協力会の活動休止」のお知らせがありました。美術館が軒並み臨時休館している間の活動休止はやむを得ないと思います。

個人的には、美術館が開館しても各種イベントが開催できる状況になるまでは活動休止が続くと感じています。当面は自分のできる範囲でコロナウイルスの感染拡大防止に努めることとします。

Ron.

「久門剛史 らせんの練習」展を見て

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

久門剛史展(豊田市美術館 6月21日まで)を見てきました。

新型肺炎の影響で、各地の美術館が臨時休館になり、展覧会自体も延期や中止になるなど、出かける機会が減っていたので、久しぶりのレポートです。

 今展は、作家にとって国内初の大規模個展になります。出身は京都、大学では彫刻を専攻しています。「久門剛史?」と、思った方は、あいちトリエンナーレ2016の豊橋会場の展示を思い出してください。大小のフレームに半透明の布を吊り下げた間仕切りと、スポットライトなどで構成された不思議な空間(インスタレーション)を体験したはずです。

 豊田市美術館の展示室には、空間が広い、天井が高い、自然光により明るさが変化するという特性があります。今回の展示作品は、それらの特性をうまく取り込んだ構成になっています。また、「カン、カン、カン」と遮断機の音を再生するサウンド作品では、スピーカーが観客を遮るように、通路の真ん中に設置されていて、まるで本物の踏切のようでした。

前回の「岡崎乾二郎 視覚のカイソウ」展では、とても長い作品名に驚きましたが、今回の作品名はシンプルかつ、直感的になっています。その他に、作品リストの中で「?」と思ったのが、素材の「サウンド」です。コンサートのリーフレットでは、作曲者、曲名、楽器の構成、演奏時間などの記載はありますが、「音」の記載を見かけないように思います。

 今回は、美術館に隣接する茶室「童子苑」にも作品があります。鑑賞できる期間と時間帯が展覧会と異なるので、見落とさないようにご注意ください。

杉山 博之

展覧会見てある記 「ストラスブール美術館展」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

今回の展覧会の名前は「豊橋市美術博物館開館40周年記念 ストラスブール美術館展 印象派からモダンアートへの眺望」(以下「本展」)という長いものです。フランス語表記 の展覧会名 “De I’impressionnisme à l’art moderne dans les collections des musées de Strasbourg” のとおり、本展には印象派からモダンアートまで、ストラスブール美術館の収蔵品から92点が出品されています。

◆第1室(第一企画展示室)

本展は四つの展示室に分かれており、観覧券売り場に一番近いのが第1室(第一企画展示室)で「1章 印象派とポスト印象派」のうち「印象派以前の風景画」「印象派の風景画」の作品を展示しています。なかでも重要な作品は台座付きで展示。この部屋ではカミーユ・ピサロ《小さな工場》、アルフレッド・シスレー《家のある風景》、クロード・モネ《ひなげしの咲く麦畑》の3点が「台座付き」でした。ただ、中日新聞・地方版の「ミュージアムだより」で学芸員が紹介していたのはカミーユ・コロー《オルレアン、窓から眺めたサント=パテルヌの鐘楼》です。レンガの茶色を基調にした風景画で、右下に猫がいました。この外、シャルル=フランソワ・ドービニー《風景》も良いと思いましたが、「ストラスブール美術館展」ですからストラスブールの画家を外してはいけませんね。馴染みのない画家でしたが、ロタール・フォン・ゼーバッハ《ラ・ドゥアンヌからストラスブールへの道、雨の効果》には、題名の通り雨の感じがよく出ていました。同じ画家の《冬の森》は枯葉の赤と白い空の対比が美しく、垂直の木々がアクセントになっています。説明板には「アルザスの印象派」と書いてありました。また、浮世絵を思わせる作品もあります。アンリ・リヴィエールのリトグラフで、《夜の海(「自然の諸相」連作より》、《オーステルリッツ河岸「パリ風景」連作より》の2点です。説明板には「浮世絵のコレクターでもあり『エッフェル塔三十六景』の連作を制作」と書いてありました。

◆第2室(第二企画展示室)

第2室(第二企画展示室)には「1章」のうち「筆触(タッチ)」の作品と「2章 近代絵画におけるモデルのかかわり」の一部を展示しています。台座付きの作品は、ポール・ゴーギャン《ドラクロワのエスキースのある静物》、ポール・シニャック《アンティーヴ、夕暮れ》、ピエール・ボナール《テーブルの上の果物》、ラウル・デュフィ《3つの積み藁のある風景》の4点でした。ウジェーヌ・カリエールの作品が4点も展示されているほか、モーリス・ドニ《内なる光》とシャルル・カモワン《タピスリー刺繍を制作するマティス夫人》にも目が止まりました。カリエールについては説明板に「幼少期をストラスブールで過ごした」と書いてあります。

◆第3室(特別展示室)

第3室(特別展示室)は第2室の、通路を挟んだ反対側にあります。入口でロートレック《ディヴァン・ジャポネのポスター》がお出迎え。マリー・ローランサン《マリー・ドルモアの肖像》も入口近くに展示されていました。この部屋では「2章」の続きと「3章 アヴァン=ギャルド」のうち「キュビスム」の3点を展示しています。台座付きの作品ありません。その理由は「ガラスケース内に展示されている作品が多い」ためでしょうか。ストラスブールの画家を探したところ、リュック・ヒューベリック《後ろを向いてたたずむ女性、開いた窓の前》、ポール・ウェルシュ《赤いベストの女性》、ロベール・エイツ《自画像》がありました。

◆第4室(第三企画展示室)

最後の第4室(第三企画展示室)には「3章 アヴァン=ギャルド」のうち「キュビスム」の残りと「抽象絵画」「シュルレアリスム」の作品を展示しています。台座付きの作品は、モーリス・ド・ヴラマンク《都市の風景》、ヴァシリー・カンディンスキー《冷たい隔たり》、ヴィクトール・ブラウナー《求婚者》の3点です。ヴィクトール・ブラウナーの作品は、他にも6点出品されています。説明板には「ストラスブール美術館では35点以上の作品を所蔵している」と書いてありました。ストラスブールの画家といえばジャン・アルプ。本展の出品は《オーベットのフレスコ画に基づくシルクスクリーン》の1点のみですが説明板には「ドイツ人の父とアルザス人の母(略)ストラスブール美術館には約60点の作品が所蔵されている」と書いてありました。

◆最後に

調べてみると、ストラスブールはフランス北東部アルザス地方の中心都市で、欧州議会の本部が置かれています。アルザス地方は昔からドイツとフランスが争奪戦を繰り広げた地域であり、17世紀にフランス王国の支配下になったものの1871年の普仏戦争後にプロイセンの一部となり第一次大戦後の1919年にフランスが奪還しています。公用語はフランス語ですがアルザス語(ドイツ語の方言)も使われるバイリンガルの地域です。

本展の会期は3月29日(日)まで。開館時間は午前9時~午後5時(入場は午後4時30分まで)です。

Ron.

豊田市美術館「岡崎乾二郎 視覚のカイソウ」ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

今回のミニツアーのお目当ては、豊田市美術館で開催中の「岡崎乾二郎 視覚のカイソウ」(以下「本展」)でした。参加者は9名。いつものミニツアーとは違い、豊田市美術館が企画した千葉学芸員(以下「千葉さん」)のギャラリートーク(以下「トーク」)に参加させてもらいました。トークが始まる時刻になると集合場所の1階ロビーは人で溢れんばかりの状態。参加者は我々も入れて約60名もいました。トークは約1時間続き、終了後は自由観覧・自由解散でした。以下はトークの概要。(注)は私の補足です。

◎1階ロビーと展示室8

◆「視覚のカイソウ」とは?

 展示室に移動する前の短い時間、1階のロビーで千葉さんがトーク。その概要は、「視覚のカイソウ」というサブタイトルの「カイソウ」には「回想」「階層」といった意味があり、「回想」は過去を想起しながら作品を制作するという思考をあらわす。また、「階層」は1階から3階まで各階層を使って展示するという豊田市美術館の展示の方法をあらわす。本展に《論理のカイソウ》というタイトルの作品が出品されていることもタイトルのヒントになった。本展は回顧展(注: 1979年から2019年まで、40年間の活動を回顧)なので「新作から過去の作品までを行き来しながら見る」ということにも関連する、というものでした。

◆レリーフ=《あかさかみつけ》の連作について

 1階・展示室8に入って最初に見たのは《あかさかみつけ》というタイトルのついたレリーフの連作(注:素材はプラスチック製の段ボール。カッターで簡単に切れるので工作しやすい)でした。千葉さんのトークは、《あかさかみつけ》は1981年制作。1987~1989年にもシリーズを制作している。《あかさかみつけ》のシリーズは全て同じ型を使用しているが、絵具の色彩・質感は少しずつ違う。前の作品を想起しながら次の作品を見る。また、一見しただけでは、レリーフの形状はつかめない。そして、見る方向によって少しずつ形が違って見える。「記憶とは何か」を考えることができる作品。色彩は軽やかで、きれい。マンションや団地の部屋はどれも同じ形だが、少しずつ違う。それぞれに固有の空間・場所がある。いくつも並べることで、それが際立つ、というものでした。

◆ドローイングについて

 レリーフと向かい合う壁面には《T.A.O.I.N.S.H.R.D.L. / COME HERE AT ONCE》とタイトルが付いた、20枚組のドローイングが展示されています。千葉さんのトークは、このドローイングは「描画ロボット=Drawing Machine」を使って描いている。タブレットに原画を描くと、支持体(注:筆などを取り付けて絵を描く部分?)が動いて原画を再現するが、描くたびに微妙にずれる。再現した絵は自分が描いている訳ではないため変な感覚に捕らわれる。つまり、原画を描いたのは自分なのに支持体に絵を描かされているような気になる。自分と描画ロボットの間で、主体が交錯する、というものでした。

 千葉さんのトークから、おぼろげながら伝わってきたのは、岡崎乾二郎という作家は「同じだけれど、少しずつ違うということに強い関心を持っている」ということです。生物学者の福岡伸一がよく使う「動的平衡」という概念は「変化しながら同じ状態を保っている」ことですが、岡崎乾二郎は動的平衡のなかの「ゆらぎ」に強く惹かれ、「ゆらぎ」を表現するために制作活動を続けているのかな、と思いました。

◆《あかさかみつけ》のオリジナル

 展示室8を直進し、左折した所の左側の壁に「おおもと」、つまり、1981年制作の《あかさかみつけ》が展示されていました。千葉さんのトークは、この《あかさかみつけ》を制作する前、岡崎乾二郎は《かたがみのかたち》(注:1979年制作、3階・展示室2に展示)を作った。洋服は「立体」だが、その「型紙」は「平面」。《かたがみのかたち》は、立体と平面、抽象と具象の間の作品。一方、《あかさかみつけ》は「型紙」を組み合わせた立体作品。岡崎乾二郎はフレスコ画に関心を持っていたので、《あかさかみつけ》ではフレスコ画の再現を目指しており、絵具が漆喰の壁に浸透しているざらざら感を出そうとしている。最初のタイトルは《たてもののきもち》。「小さいけれども、建物」というタイトル。《あかさかみつけ》のほか《おかちまち》《かっぱばし》《うぐいすだに》と、駅の名前をひらがなで表記したのは、具体的な形は無いがイメージを想起させるから。タイトルを「漢字」ではなく「ひらがな」にすることで、イメージを広げようとしている。岡崎乾二郎の作品はタイトルだけでも、色々なイメージを想起させる、というものでした。

◆ペインティングについて

 《あかさかみつけ》が展示されていたところから更に進んで左折すると、右側の壁にはレリーフが、左側の壁にはペインティングが展示されています。ペインティングのサイズは、小さなものから大きなものまで様々です。千葉さんのトークは、小さなペインティングは「ゼロ・サムネイル=Zero Thumbnail」。小さな作品のシリーズ(注:豊田市美術館のレストラン「ミュゼ(味遊是)」では「ZERO THUMBNAIL/ゼロ・サムネイル 」という名前の会期限定デザートを販売していました)。パネル式のペインティングは最近の、二枚組のペインティングは昔の作品。岡崎乾二郎のペインティングは「抽象画」ではあるが、画家はそれぞれの形を、彼の思い出を想起して描いているので、「写実」ではないが、具体的なイメージを持たせて描いている。彼は、絵具も自分で調合している。薄塗り用やドロッとしているもの、ざらついたものなど、さまざまな絵具を使い分けている、というものでした。

◎2階・展示室1

◆パーティクルボード製の立体作品

 2階に移動して、一番大きな展示室1に入ると、パーティクルボード(木材の小片と接着剤を混ぜ、熱を加えて成形した板)を組み合わせた立体作品が2点鎮座していました。千葉さんのトークは、重さはあるけれど、浮遊している感じの作品。二つのパーツが一か所で支え合い、自立している。多くの彫刻は台座で支えられているが、この作品は台座から自由になっている。本展では鉄板に固定しているが、それは大理石の床を保護するためであって、台座ではない。二つのうち大きな方の作品は、2002年に開催されたヴェネツィア・ビエンナーレの建築部門で展示された。無駄なものを削ぎ落した作品、というものでした。

◆セラミックの作品

 展示室1には粘土細工のような作品もあります。千葉さんのトークは、常滑のINAX(注:現LIXIL)と共同して、1998年から2000年にかけて制作した作品。粘土に顔料を入れて練ったものを素材にして制作した。大地が盛り上がっていくような感じがある。割れないように、時間をかけて中まで乾燥させた後、焼成して完成させたもの。焼成によって縮むことも計算に入れて制作。乾燥が不十分で、焼成中に作品が爆発したこともあった。中まで粘土が詰まっているので、とても重い、というものでした。

◎3階・展示室2

 この展示室には《かたがみのかたち》等、切り抜いた布や型紙が散りばめられた作品が展示されています。千葉さんのトークは、《かたがみのかたち》はドイツのスタイルブックに掲載されていた型紙を切り抜いて制作。《まだ早いが遅くなる》は、布を組み合わせて絵のように見える。山水画を参照して制作。素材が違っても、やれることはたくさんある。岡崎乾二郎が《かたがみのかたち》を制作した1979年頃は、鉄や石を素材にした大きな物体の作品を制作するという風潮が主流だったが、彼はそれとは違う手仕事的な作品を制作、というものでした。

◎展示室3

◆タイルの作品

 展示室3には、様々な色とサイズの四角いタイルを組み合わせた巨大な作品《Martian canals / streets》を貼った壁が立っています。千葉さんのトークは、岡崎乾二郎はハンザ池袋の壁面装飾も手掛けている。《Martian canals / streets》は成形してから釉薬を塗って一つ一つ焼成したタイルを貼り付けた作品。普通、タイルは焼成してから必要な大きさにカットするが、この作品ではカットしたものに釉薬を塗って焼成しているので、タイルの縁が白くなっている。タイルの形や大きさは様々で、色のバリエーションは60色もある。同じ釉薬を塗っても酸化炎と還元炎では発色が違う。この作品は岡崎が指示して職人が焼成し、組み立てた、というものでした。

◆ポンチ絵

 南側の壁面には色鉛筆で描いた作品が展示されています。千葉さんは、《ポンチ絵》といって、設計用紙(注:「丘設計事務所」と印刷されていました)を2枚重ね、切り抜きながら制作したもの、と解説していました。

◎展示室4

 ペインティングの展示です。千葉さんのトークは、2枚組の作品の間にゼロ・サムネイルの作品を展示。ゼロ・サムネイルは、2枚組の作品を凝縮したようなものになっている。2枚組の作品は左右が対応し、関連性を持たせている。左右の作品は「全く同じ」ではなく、少しずつズレながら関係を保っている。また、作品とタイトルとは、関係していないようで、関係している、というものです。以上で、トークは全て終了しました。

◎最後に

 本展は軽やかで綺麗な作品が並んでいたものの難解なところがあり、取っ付きにくかったのですが、千葉さんのトークを聴いて親しみが持てるようになりました。参加者が多くて「話が聞こえるかな?」と危ぶんでいたのですが、千葉さんの声は良く通り、明瞭で中身も詰まっていたので、気が付いたら1時間以上経っていました。

千葉さん、楽しいトーク、ありがとうございました。

Ron.