ソフィ カル「限局性激痛」展

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 原美術館で開催中の「限局性激痛」展をはじめ、都内で3つのソフィ カルの展示を見てきた。聞くところによると、最近の女性作家の展覧会は、どれも人気があるそうで、前日に行った「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」展のギャラリートークも混んでいた。原美術館は展示室がこじんまりとしているので、心配しながら美術館の玄関をくぐった。

 案の定、館内はショップもカフェも、展示室も混雑しており、楽しみにしていた作品を見ながらのギャラリートークはなく、入口前の開けたところで概要の説明があった。状況からすれば致し方ないが、少々残念。
 今回の展示は、1999年から2000年にかけて原美術館で開催された同名の展覧会の再現展。展示室には時間の経過をたどるように作品が配置され、前半がカウントダウン、後半がカウントアップしながら失恋による作家の心情の変化を表現していた。

 原美術館の後、ペロタン東京とギャラリー小柳に行った。最後に行ったギャラリー小柳の展示が一風変わっていて印象的だった。展示室の壁面には、文字を刺繍した布(フェルト)で前面をふさいだ木製の箱が並んでいた。写真や映像が見当たらず戸惑っていると、他の観客が布をめくるようにしていたので、ギャラリースタッフに聞いてみたら、セルフサービスということだった。

 高価なものなのでドキドキしながら、布をめくってみると、布の後ろにはテキストに対応した写真が貼られており、見比べながらセルフサービスで鑑賞した。普段、美術館では作品に手を触れないので、とても新鮮な鑑賞体験だった。

原美術館 2019年3月28日まで

杉山 博之

卒展、修了展 (名古屋芸大)

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「Inferno」藤原 葵

 今年も近隣の卒展、修了展を見に行った。よく晴れた風の強い日だった。最寄りの駅からシャトルバスで10分ほどで会場に到着。総合案内で簡単な説明を受け、時計回りに展示を見始めた。

 アート&デザインセンターで展示されていたのは、地色の赤と中央部のレモンイエローが印象的な巨大な作品(2.59m x 5.82m)。描かれているのは爆発シーン。見ていると音まで聞こえて来そうな迫力で、よく見ると、写真のように停止した一瞬ではなく、コマ送りの画面を重ね合わせたように前後左右に躍動感のある画面構成になっている。

会場にて「inferno」

会場にて「inferno」

 爆発する芸術を見るのは初めてではないが、それにしても、中央部のレモンイエローの明るさと、前後に弾けるような緑色の帯の躍動感でめまいがしてきそうだ。その後、展示室にいた作家に話を聞いておもしろかったのは作品の移動に関するエピソード。作品サイズが大きいので、移動にはとても気を使うそうで、風のない晴れた日しか移動できないらしい。今日のように風が強いと、作品がヨットの帆布のようになり、室内から出た途端、運び手を柱や壁に打ち付けてしまうそうだ。

 穏やかに晴れた風のない昼下がり、芸大の中庭の芝生の上で、この作品を運ぶ情景を想像すると、凶暴な爆発シーンとのミスマッチにユーモアを感じた。刺激的な展示だった。

名古屋芸術大学卒業・修了展
2019年3月3日まで

杉山 博之

「佐藤玄々展」ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

今回の目的地は碧南市藤井達吉現代美術館でした。参加者17名で、現在開催中の碧南市制70周年記念事業 開館10周年記念「生誕130年 佐藤玄々(朝山)展」(以下「本展」)を鑑賞しました。展覧会の案内は特別主任学芸員の北川智昭さん(以下「北川さん」)。ギャラリートーク形式の解説を聴いた後は自由観覧で、楽しいひと時を過ごすことができました。北川さん、ありがとうございました。以下は、北川さんによるギャラリートークの概要で(注)は私の補足です。

解説してくださった特別主任学芸員の北川智昭さん、ありがとうございます

解説してくださった特別主任学芸員の北川智昭さん、ありがとうございます


◆佐藤玄々について
江戸時代まで、わが国に「彫刻」という言葉はありませんでした。「彫刻」という言葉は西洋から近代彫刻が紹介された後、明治30年代から使われるようになった言葉です。近代日本の彫刻家としては高村光雲(1852-1934)や平櫛田中(ひらくしでんちゅう:1872-1979)が有名ですが、佐藤玄々(1888-1963)は平櫛田中の10歳ほど年下。「彫刻」という言葉が使われるようになってからの作家で、日本美術院・彫塑部の最初のメンバーです。
佐藤玄々は「日本精神を重視する」という日本美術院の方針に忠実にやろうとした人です。「日本精神」といえば神道ですが、神道では神の姿はみえないものであり、「神の像」はありませんでした。(注:北川さんの言葉どおり、神社には「神さま」ではなく、神が宿る「依り代」(よりしろ)=鏡・玉・剣・神木などを祀っていることが多いですね)佐藤玄々は「ご神体」を作ろうとした人で、日本橋三越本店にある個性的な作品《天女(まごころ)像》も「ご神体」です。
佐藤玄々は1922年(大正11)から約2年間、フランスに留学。その後、東京にアトリエを構えて多くの作品を制作しましたが、空襲でアトリエ・作品ともに焼失。戦後は京都・妙心寺の塔頭にアトリエを構えて作品を制作。亡くなったのも京都です。

◆佐藤玄々のデビュー作《永遠の道(問答)》について(Ⅱ.大正期 留学まで)
一本の木から彫り出した佐藤玄々のデビュー作《永遠の道(問答)》は不思議な作品です。座っている釈迦が立ち姿の婆羅門と対面しているというものですが、二人が異常に接近しています。(注:釈迦の右脚と婆羅門の左足との隙間は紙一枚ほどしかありません)二人の人間が理解しあうためには、お互いの間に一定の距離が必要です。しかし、この作品では二人が接近しすぎて「理解しあうために必要な一定の距離」を壊しています。
また、二人は目線を合わせていません。お互いに、どこを見ているかわかりません。「視線を合わせていない」という点では、この現代美術の作品と同じです。(注:北川さんは、展覧会のチラシを見せてくれました)これは、豊橋市美術博物館で2月16日から3月24日まで開催している「美術のみかた自由自在」で展示しているロレッタ・ラックス《アイルランドの少女たち》です。コンピューターグラフィックスで描いた二人の少女の絵ですが、隣り合っているのに視線を合わせず、別々の方向を向いています。これは「近くにいるのに、お互い、遠くの誰かの方を向いている」という現代のコミュニケーションのあり方を表現した作品です。
皆さんは展示ケース越しに見ているのであまり感じないと思いますが、この作品を買った人は感じる所があって「春日大社でお祓いを受けた」そうです。

◆《筍》について(Ⅲ.昭和初期)
本展では《筍》という題名の作品を2点展示しています。「超絶技巧」で有名な安藤碌山の作品にも象牙を彫った本物そっくりの「筍」がありますが、佐藤玄々の作品は超絶技巧を前面に出しておらず、彼の「問題意識」を感じます。2点のうち1点(注:作品番号45)は筍の根元を薄く緑に彩色しているため、自然の筍に宿る生命力を感じます。

◆《牝猫》について(Ⅲ.昭和初期)
この作品、一見するとブロンズに見えますが実は木彫です。佐藤玄々はフランス留学中にルーブル美術館でエジプト彫刻を見ており、この作品はそこで見たエジプト彫刻をもとにしています。この作品で、佐藤玄々は猫の首を後ろに向け、猫に動きを持たせています。

◆《神狗(かみこま)》について(Ⅳ.昭和戦中戦後)
これは熱田神宮所蔵のご神体です。一木造りですが、顔の部分だけは嵌め込みです。隣の大きな《神狗》は試作品で、この小さな《神狗》のほうが完成品です。晩年の佐藤玄々は、小さな作品を作るようになりました。なお、狗犬は「戦いの前に生贄(いけにえ)にされた犬」という話もあります。

◆《麝香猫(じゃこうねこ)》について(Ⅴ.天女(まごころ)像)
木彫ですが、顔の周りの毛にはふわふわ感があります。武者小路実篤はこの《麝香猫》を絶賛していました。

◆《聖大黒天》《大黒天像》について(Ⅴ.天女(まごころ)像)
サイズは小さいですが、とても手の込んだ豪華絢爛な作品です。彫刻・彩色は佐藤玄々の手によるものですが、截金(きりがね=金箔を細長く切って模様を作る技術)は他の職人に任せたのではないかと思います。

◆《天女(まごころ)像》について(Ⅴ.天女(まごころ)像)
日本橋三越本店の《天女(まごころ)像》の注文を受けたとき、佐藤玄々は10メートルを超えるようなサイズのものは意図していませんでしたが、制作を進めるうちに巨大なサイズになってしまいました。《天女(まごころ)像》は、大きすぎて東京から運搬することはできないので本展では3D映像で見ていただきますが、お手元のチラシのように、3月6日(水)から12日(火)まで日本橋三越本店 本館1階に「佐藤玄々展」が巡回しますので、よろしければ《天女(まごころ)像》の実物と併せてご覧ください。
佐藤玄々は「天才」とよばれた彫刻家です。主要な作品が空襲で焼失したこともあって忘れられた存在でしたが、最近、再び評価されるようになってきました。

◆最後に
ギャラリートークの最後、北川さんに「次の展覧会のテーマは何ですか」と尋ねたところ、「4月27日から6月9日まで北大路魯山人展を開催します。名古屋・八事の八勝館さんのご協力もあります」とのご返事でした。次回の展覧会も楽しみですね。
また、北川さんからいただいた佐藤玄々展のチラシをみて「日本橋三越本店の《天女(まごころ)像》を見たい」と言った参加者が何人もいました。
北川さんから紹介のあった豊橋市美術博物館「美術のみかた自由自在」のチラシを見たところ、「美術のみかた自由自在」には「平成30年度独立行政法人国立美術館巡回展 国立国際美術館コレクション」という副題がついており、国立国際美術館のコレクションのうち、セザンヌ、ピカソを始めゲルハルト・リヒター、奈良美智など45作家、55点を紹介する展覧会のようです。「みること」をテーマに「イメージと物質」「表層と深層」「可視と不可視」という3つの切り口で構成しています。こちらも「今度、見にいてみようかな」という参加者が何人もいました。
                            Ron.

「ピアニスト」を鑑賞して

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

 メゾンエルメスで、向井山朋子氏の「ピアニスト」を鑑賞した。向井山氏のピアノはあいちトリエンナーレ2013の「East Shadow」(愛知県芸術劇場小ホール)以来。

会場に入るとピアノの森(大小様々なピアノで構成されたインスタレーション)があり、宙を舞っているピアノもあった。
 ピアノで構成されたインスタレーションという点では、あいちトリエンナーレ2013の岡崎会場の「Falling」と似ている。しかし、今回の会場の壁面はガラスブロックなので、様々な街中の明かりが差し込み、ピアノの表面に反射する様子は眺めていて、飽きがこない。


(会場の様子)

 開演時間になり、向井山氏が黒色のドレスで登場。演奏に使われるピアノは1台だけだが、しばらく聞いていると、その他のピアノからも音が聞こえてくるような気がする。分身の魔法(演出)かな?途中で演奏するピアノを変えながら、約一時間半ほどのパフォーマンスだった。観客は150名ほど。開演が午後8時と遅めだったので、仕事帰りのキャリアピープルで、ギャラリーフロアはほぼ満員だった。


(エルメスホームページから転載)

 この展覧会の開館時間は変則的で、上記の表のように、開館時間を前日より1時間ずつ遅らせながら、1日に4時間だけ開館する。初日(2月5日)は午前11時から、翌日(2月6日)は正午から、最終日(2月28日)は、午前10時から開館。この展覧会の会期は24日間。昼から夕方、夕方から夜、夜から朝へと変化する開館時間は、この展覧会が時間の経過を強く意識して構成されていることをうかがわせる。ちなみに、2月15日の終演予定は午前0時。

パフォーマンスが終わり、特別な時間が充満していた会場を後にする。午前0時に魔法が解けるなんて童話のシンデレラのようだと思うが、地下鉄の時間を気にしながら時計を見ている自分に気がついて、魔法はとうに解けているのだと、苦笑いした。

「ピアニスト」向井山朋子展
銀座メゾンエルメス
2019年2月28日まで

杉山 博之