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事務局
2026年
2月19日
名古屋芸術大学卒業・修了制作展 (その3)
村上可威の≪continue≫は、3個の大きな金属のフレームに収められたインスタレーション作品だ。展示室内にはモーターとギヤの回転音が響き、長いパイプはゆっくりと左右に上下し、長方形の透明なパネルはパタパタと揺らぎ、右手奥には、木の幹が宙づりになっている。
一見、無関係な要素の取り合わせに見えるが、手前から「ししおどし」、「暖簾」、「丸太」を表現しているそうだ。

村上は、日本的な「風流」が内包してきた態度や感覚を工業的な構造に置き換え、可視化した。騒々しい駆動音を響かせる「ししおどし」や「暖簾」は、もはや「ししおどし」や「暖簾」ではないだろう。それらは「風流」から切り離され、名前を失い、漂流している新しい「なにか」のように思われる。
作品タイトルの「continue(継続する)」に込められた作家のメッセージを考えてみよう。名付けようのない「あいまい」な状態の継続を提示することで、観客の好奇心を揺さぶっているのだろうか。
杉山 博之
2026年
2月18日
名古屋芸術大学卒業・修了制作展 (その2)
展示室に足を踏み入れると、見渡す限りの作品の物量に驚かされる。そして、すべての作品は、ひとりの作家によるものだとわかると、さらに驚かされる。

展示作品には、油画もあれば版画や粘土による造形もある。中山は、「どれかを見てもらいたいわけではなく、すべてを見てもらいたい」、「自由にやりたいけれど、社会は厳しい」と話してくれた。

芸術家「中山みどり」の創作の全体を見せる本展示のタイトルは≪ぜったい大丈夫≫。作品の物量と熱量に圧倒される展示だった。
杉山 博之
2026年
2月18日
名古屋芸術大学卒業・修了制作展 (その1)
篠田あすかの≪静かな世界≫は、学食のテラスに設置されている。訪問した日は天気が良く、明るい陽の光に作品が光り、とても見栄えがした。ガラス作品を置いた木製の展示台もオリジナルで、上下に作品を配置するなど、おもしろいレイアウトになっている。


篠田の作品は、「見えない世界」の住人を想像して作られている。擬人化された作品には、山や森、宇宙の流れ、星の輝きなどが内包されているそうだ。その話を聞くと、食堂のテラスで陽の光を浴びている作品たちが、あたかも宇宙のエネルギーを補給しているように感じられる。見た目のかわいらしさとは異なり、そのスケールは大きく広がっていた。
杉山 博之
2026年
2月8日
「ラインハード・ポーズ BILDER 1979-2024」展を見る機会があった。「BILDER」とは、絵画、写真を意味するドイツ語だ。本展は作家にとってアジア初の個展であり、1979年から2025年の間に制作された15点の絵画が展示されている。展示は2フロアに分かれ、それぞれで雰囲気の異なる作品が展示されている。
1階の展示室には、明るい色彩の抽象絵画が並ぶ。ジャン=ミシェル・バスキアの描くストリート風の作品に近い印象だ。画面に言葉(英字)が描かれたものも見受けられる。ほとんどの作品は2020年以降の制作だ。作家は1951年生まれなので、現在は70歳を超えているが、制作意欲は旺盛だ。

地下の展示は、作品の雰囲気が一変。≪Licht Jain≫は、画面全体が黒っぽく、激しい筆跡が残る。時代背景を考えると、1989年にはベルリンの壁が崩壊し、ヨーロッパに明るい希望と社会的な混乱が到来した。作品には、当時の独特な空気感が塗りこめられているのだろうか。見ていると、暗闇の中で光(Licht)を求め、苦悩する孤独を感じた。

作家は1990年代半ば以降の数十年間、公のアートシーンから遠ざかっていたそうだ。時間的な隔たりがありながら、エネルギーにあふれる作品を見ることができた。
展覧会名 ラインハード・ポーズ BILDER 1979-2024
会期 2026年1月24日から3月7日
会場 ファーガス・マカフリー東京
杉山 博之
2026年
2月4日
「六本木クロッシング展」は、森美術館が3年ごとに開催している現代美術展だ。今回のテーマは、サブタイトルにもある「時間」。参加するのは、日本で活動している、もしくは日本にルーツを持つアーティスト、全21組。目に見えない「時間」を、どのように表現したのか、気になるものを数点、紹介しよう。
A.A.Murakami ≪水中の月≫
暗い展示室で白く光る作品が神秘的。作品の先端で膨らんだ光のボールは、水(?)を湛えた台の上に落ち、コロコロと転がり、弾ける。光のボールが出てくる様子は生命の誕生を連想させ、弾ける様子は生命の終焉を連想させる。個々の光のボールが存在する「時間」は短いが、間断なく生成される光のボールは、現在から未来へ続く長い「時間」を予感させる。

和田礼治郎 ≪MITTAG≫
斜めに置かれた四角形の作品は、上部が透明で下部は琥珀色。作品を見る目線の高さにより、琥珀色の水平線と窓の外の地平線との重なり方が変わる。ベンチに座ると、市街地のビル群が琥珀色に染まる。聞くところによると、琥珀色の部分は作品に注がれたブランデーの色らしい。作品を見ているだけで酔っ払いそうだ。

窓から差し込む陽光が、室内の床や壁を琥珀色に染める。よく見るとブランデーを入れた四角形の部分を支えている台は、ブドウの木をかたどっている。ブドウからブランデーができる時間、都市が発展していく時間、いろいろな時間のスピードを感じる。もし、窓の外から室内を眺めることができるなら、琥珀色に染まった観客がフワフワと揺らめいて見えるのだろうか。

その他に気になった作品として、北澤潤の≪フラジャイル・ギフト・ファクトリー≫と、ズガ・コーサクとクリ・エイトの≪地下鉄出口 1a≫、≪地下鉄出口 2≫を挙げておこう。北澤は、第二次世界大戦で日本軍が使っていた戦闘機「隼」(ハヤブサ)をモデルにして、原寸大の凧を制作した。ズガ・コーサクとクリ・エイトは、最寄りの地下鉄の駅の出口を段ボールで原寸大に再現した。北澤は、第二次世界大戦から現代までの時間を、ズガ・コーサクとクリ・エイトは、通勤通学などの日常の時間を表現したのだろう。
現代を基準にして、時間の物差しの距離感は様々だが、多様な質感の時間を意識させてくれる展示だった。


展覧会名 六本木クロッシング2025展 時間は過ぎ去る わたしたちは永遠
会期 2025年12月3日から2026年3月29日
会場 森美術館
杉山 博之
2026年
2月2日
アルフレド・ジャーは、南米チリ出身で、ニューヨークを拠点に国際的に活躍しているアーティスト。彼の作品は、写真、映像、大型のインスタレーションが特徴的だ。
彼の作品は、時々の社会情勢を取り込み、様々な悲劇を取り上げ、作品を見る人々に静かに、深く考えることを促す。そこには、単純な善悪で割り切れない、遠い世界の他人ごとでは済まない出来事が、とても詩的な表現で提示されている。

≪あなたと私、そして世界のすべての人たち≫
展覧会のタイトルにもなっている≪あなたと私、そして世界のすべての人たち≫は、ガラスと鏡で構成された3個の立方体だ。作品の周りを歩くと、他の作品や観客が立方体に映りこみ、自分を取り巻く室内の様子や、それぞれの距離感が様々に変化する。奥側の壁面に展示された≪彼らにも考えがある≫と重ねて見ると、異なる価値観を持つ他者の存在を強く意識させられる。

≪エウロパ≫
その他にも、鏡を印象的に使った作品がある。≪エウロパ≫は、炎を写したライトボックスと、その背後に並んだ多数の鏡で構成される。炎の裏側にもイメージが展示されているが、そのイメージは隠され、直接見ることができない。よく見ること、見ようとすることの困難さと、隠されがちな真実の存在の暗喩だろうか。

≪写真はとるのではない。つくるものだ。≫
展示室入口のすぐ横に大判のポスターが積み上げられている。白地に黒い文字で大きくメッセージが印刷されている。英語で「写真はとるのではない。つくるものだ。」と書かれたこのポスターは、一枚ずつ、持ち帰りできる。

ここで、本展で見た作品のことを思い返してほしい。世界の出来事は、お互いに鏡写しになりながら、様々に影響しあっていることを。
展覧会名 アルフレド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての人たち 会期 2026年1月21日から3月29日 会場 東京オペラシティ アートギャラリー
杉山 博之