お知らせ

2025年5月30日

2025年協力会イベント情報

現在、下記のイベントの申し込みを受け付けています。

1.岸田吟香と岸田劉生展ミニツアー 豊田市博物館 令和7615

参加希望の会員の方は、ファックスか電話でお申し込みください。ホームページからの申し込みも可能です。

最新の情報につきましては随時ホームページにアップしますので、ご確認ください。また、くれぐれも体調にはご留意ください。

これまでに制作された協力会オリジナルカレンダーのまとめページを作りました。右側サイドメニューの「オリジナルカレンダー」からご覧ください。

事務局

對中優 ≪Drifting≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
研究発表会の会期中、「IAMAS JUNCTION」というトークプログラムが複数回、実施された。今年の卒業生が自身の制作の説明をしたり、学生時代の思い出を話すのだが、学生時代を振り返り「楽しかった」という学生が多かった。きっと充実した時間を過ごしたからに違いない。

情報科学芸術大学院大学修了研究発表会/プロジェクト研究発表会にて (その2)

對中優 ≪Drifting≫

入口の手前に置かれた注意事項を読み、順番を待つ。モニターの表示が「空室(vacant)」に変わったら、ドアを開ける。右側の壁面の中央付近に椅子を見つけた。ひとまず椅子に座り、何が起こるのか、ドキドキしながら待つ。

展示会場入口

目の前のモニターにアバターが映り、いろいろな身振り、手振りを見せてくれる。しばらくすると、モニターの背後の壁の上から、何かが飛んでくる。時折、光るものも飛んでくる。床に落ちたものを見ると、飛んできたのは紙飛行機だった。

≪Drifting≫(部分)

モニターに映るアバターは時折、手をこちらに差し出す。ジェスチャーで何かを伝えようとしているようだ。また、紙飛行機に使われている色紙の裏側に、記号の書かれたものが混じっている。これも何かの伝言だろうか。

≪Drifting≫(部分)

對中は、壁と紙飛行機などで構成されたインスタレーションで、アバターが象徴するバーチャルな空間と観客が存在するリアルな空間の二重性を提示している。壁の向こうのパフォーマーは沈黙しているが、紙飛行機は伝言用のメモ用紙にも変わりうる。観客は飛んでくる紙飛行機を静かに眺めていればいいのだろうか。もし紙飛行機がコミュニケーションの手段であるならば、観客が紙飛行機を壁の向こうに飛ばし返すことで、双方向のコミュニケーションが成立するだろう。作家は、観客がインスタレーションに介入することを期待しているだろうか。あるいは、ただ静かに座っていることを期待しているだろうか。どちらを期待するかにより、作品が示唆するコミュニケーションの展開は、その様相を大きく変えるのではないか。

杉山

松井美緒 ≪残波 – Echoing waves≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
情報科学芸術大学院大学(以下、IAMAS)の修了研究発表会/プロジェクト研究発表会を見に行こうと知人を誘うと、「遠いから」と断られることが多い。とは言え、名古屋駅からIAMASまでの所要時間は、長久手にある愛知県立芸術大学に行くのと、さほど変わらない。愛知県から岐阜県へ、県境を超えることが「遠い」という思い込みになるのかもしれない。

情報科学芸術大学院大学修了研究発表会/プロジェクト研究発表会にて (その3)

松井美緒 ≪残波 – Echoing waves≫

≪残波 – Echoing waves≫は音の作品だ。音の作品を写真と文章で紹介することには限界がある。可能なら実際に展示会場で体験してもらいたいのだが、既に展示終了のため、記録として簡単に紹介する。

入口のモニターに表示された注意事項を読み、予約表に記名して順番を待つ。モニターの表示が「入室可能です」に変わったら、ドアを開け、真っ暗な室内に入る。右側の壁面の所々に蓄光テープでマークがあるので、部屋の奥まで進み、蓄光テープでマークされた椅子に座り、開演を待つ。

展示会場入口

座った場所の正面あたりの割と近いところから、時々「コーン」という音が聞こえる。日本庭園で見かける、流水と青竹を組み合わせてリズミカルな音を聞かせてくれる「ししおどし」のような音だ。ビルの中の一室で、疑似的に日本庭園の風雅を体験する作品だろうか。

時間がたつにつれ、「コーン」の音の他に、遠くを走る自動車の騒音のようなノイズが混ざり始める。だんだん、不快感を覚えるほどにノイズが強くなる。突然、照明が灯り、部屋の中央に仕掛けられた「ししおどし」が、その姿を現す。

≪残波 – Echoing waves≫(部分)

自分が聞いていたのは、竹で作られた本物の「ししおどし」ではなかった。聞いていたのは、配管などに使われる塩化ビニール製の偽物の「ししおどし」だった。

本日以降、「ししおどし」の音が聞こえてきたら、それは本物の竹の音か、竹以外の筒の音か、録音再生の音か、聞き耳を立てることになりそうだ。ただし、それは社会を飛び交う真偽不明の情報と同じく、容易には判別がつくまい。

杉山

上田麟太郎 ≪視聴者の部屋≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
今年の情報科学芸術大学院大学(以下、IAMAS)の修了研究発表会/プロジェクト研究発表会の特色として、展示作品のまとまりの良さがある。他の美大、芸大の展示を見ると、「百花繚乱」的な展示が多いが、本研究発表会は優秀なキュレーターが丁寧に準備した展覧会のような心地よさがある。

情報科学芸術大学院大学修了研究発表会/プロジェクト研究発表会にて (その4)

上田麟太郎 ≪視聴者の部屋≫

研究発表会の受付で渡されたリーフレットを見ると、一番近い展示は2階らしい。階段を上り、展示作品「15」のマークの貼られた部屋を見つけた。元々の部屋の用途は「男子仮眠室」らしい。ホワイトキューブの展示室や、アトリエではないあたりが目新しい趣向だ。上がり框で靴を脱ぎ、襖をあけ、仮眠室に静かに入る。

展示会場入口

室内は消灯され、壁面にライブ配信のログ画面が映っている。その他に敷かれたままの布団、使用中のノートパソコン、タブレット、布団の上にはスマホが転がっている。薄暗い室内で、明るく光るモニターがデバイスを使用する人間の存在を暗示している。

作品は映像だけではなく、ログに対応する数名の男性のたわいない会話が聞こえてくる。会話を聞くと、かみ合っているような、ずれているような微妙な調子が続く。

≪視聴者の部屋≫(部分)

作家は、ライブ配信のコミュニケーションと対面のコミュニケーションの相違に興味があるようだ。≪視聴者の部屋≫の登場人物たちは、思い出話や噂話をして、画面の向こうの見えない相手とコミュニケーションをとる。その内容がすれ違っていても、お構いなしだ。

本作は、様々なコミュニケーションとディスコミュニケーションを例示することで、コミュニケーションにおける人間存在の必要性への疑問を提起しているのだろうか。すれ違う会話の様子は、まるで生成AIとの会話に似ている。

杉山

樋口絢女 ≪百花為誰開≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
愛知県立芸術大学の卒業・修了制作展を見るため、「藤が丘」駅から「リニモ (Linimo)」(愛知高速交通株式会社の磁気浮上式鉄道路線)に乗り、最寄りの「芸大通」駅で降りた。「芸大通」駅から東側の丘陵を眺めると、愛・地球博記念公園の大観覧車が見える。その麓には有名な「ジブリパーク」がある。来月、春休みが始まると、「リニモ」も大混雑するのだろうなと思いながら、芸大への坂道を歩き始めた。

愛知県立芸術大学卒業・修了制作展にて (その1)

樋口絢女 ≪百花為誰開≫

色とりどりの花々が、金色の背景の中に浮かびあがるように描かれている。花々には蝶やとんぼ、バッタが集まり、それらを狙う蜘蛛もひっそりと張られた巣の真ん中で待ち構えている。朝顔が開いているところを見ると、穏やかな早朝の花畑の風景のようだ。

近づくにつれ、画面の所々に、こすれたような跡やモザイクのような模様があることに気がついた。

≪百花為誰開≫

画面の左から右へ、ゆっくりと移動しながら画面を見ると、流れたような跡やモザイクのような模様が、かくれんぼするかのように、あちこちに隠れている。題名を見ると≪百花為誰開≫とある。禅語にちなむ題名のようだが、単に花を題材とした古典的な作品というわけではなさそうだ。

≪百花為誰開≫(部分)

樋口によると、本作は古典絵画と現代的表現の技法を融合させて制作しているそうだ。テレビを見ていると、突然、社会的配慮により解像度を落としたモザイク映像に切り替わることがある。スマホの使用中に電波が届かなくなると、画面の更新が遅れ、色が流れた映像になることがある。そのような視覚体験を古典絵画の上で再現するという、樋口の発想には驚いた。

そのような制作の背景を聞くと、題名の≪百花為誰開≫に込めた作家の思いが気になる。「花は誰かのために咲くのではない。ただ無心に咲くのだ。」という意味の題名は、一時的な人気や流行に一喜一憂せず、自分の制作スタイルに自信を持ち、これからもなお一層、果敢に絵画に取り組む気概を込めた作家の独立宣言のように思われる。

成田愛実 ≪超宇宙生命ラボ 宙蟲≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

愛知県立芸術大学卒業・修了制作展にて (その2)

成田愛実 ≪超宇宙生命ラボ 宙蟲≫

近い将来、人類が発見するかもしれない地球外生命体の数々が並んでいる。作家により「宙蟲」(SORAMUSI)と命名された彼らは、過酷な環境に適応し、誰かに発見されるのを待っている(らしい)。

展示風景

バリエーション豊かな彼らは、確かに架空の存在なのだが、展示台の説明を見ると、居住地域や生態などの設定が細かく書かれ、まるで実在しているかのようだ。

例えば、大きな口(?)を開け、こちらを威嚇する生命体は、SF映画の凶悪キャラクターを彷彿とさせる。実在すれば、間違いなく「危険な外来生物」の指定を受けるだろう。

≪ヴェナスキャッチャー≫

細かい突起に覆われた金ピカの生命体は、土星の美しいリングの中をふわふわと浮遊しながら、粘液で獲物を捕獲し、吸収する想定だ。地球の生物でよく似ているものとしては、クラゲがあげられるだろうか。

≪リングリークス≫

それにしても、それぞれの生命体の設定、水族館か動物園のような展示方法、展示全体をラボ(研究所)とするアイディアなど、完成度の高さは群を抜いている。とてもよく考えられた展示だった。

杉山

金井花織 ≪無題≫、≪救命艇≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

愛知県立芸術大学卒業・修了制作展にて (その3)

金井花織 ≪無題≫、≪救命艇≫

画面いっぱいに、赤色、緑色、青色の多数の多角形が飛び散っている。青色の地色は、上側で薄く、下側で濃く塗られている。濃淡の境目に船のような形を見つけた。もしかすると、そのあたりが水平線なのだろう。画面は、左右にとても長く、左側の出入り口の半分ほどを隠している。おそらく、今年の愛知県芸の卒業・修了制作展に出品された油画の中で一番の大きさではないか。

≪無題≫

本作は、どのような場面を描いたものだろうか。飛び散る多角形は、何をイメージしたものだろうか。

≪無題≫(部分)

金井のステートメントによると、「私は絵画を通して光を表現しています」とある。もし、夕焼けの海で光の粒子が見えるとすると、押し寄せてくる太陽の赤色と海面の青色の光の粒子は、このように見えるのだろうか。描かれた光は、周囲を明るく照らす光というより、「寂しさ」、「不安」、「神秘さ」の混ざり合った、ほの暗い光のように思われた。

≪無題≫(部分)

≪無題≫の横に掛けられた≪救命艇≫には、四角形の大きな帆を広げた船と、貝殻と小石の散らばる砂浜と海が描かれている。船は海の上空にプカリと飛行船のように浮かんでいる。この船は着水しようとしているのか、飛び去ろうとしているのか、このまま留まろうとしているのか。以前、心理テストで使うアートカードの中に、よく似た絵柄を見たような気がする。

≪救命艇≫

金井の故郷は港町らしく、海と船はとても身近な存在だ。また、制作に使用するキャンバスの生地は、帆船の帆布として利用するものでもあり、海と船のモチーフは金井にとって相性が良い。子供の頃、水平線の方向にまっすぐ進むとオーストラリアに着くと考えていた金井にとって、≪救命艇≫で描いた船は、大空を目指し、出発したばかりの自分の姿を映したものではないか、そのように思われた。

杉山

error: Content is protected !!