「北大路魯山人展」

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碧南市藤井達吉現代美術館で開催中の「没後60年 北大路魯山人 古典復興 現代陶芸をひらく」(以下「本展」)に行ってきました。平日の昼近くでしたが美術館の駐車場は、ほぼ満車。美術館の職員さんが誘導してくれたので、何とか駐車できました。

北大路魯山人(以下「魯山人」)だけでなく、中国・朝鮮の陶磁器、尾形乾山、長次郎、石黒宗麿、荒川豊蔵、金重陶陽(かなしげとうよう)、加藤土師萌(はじめ)(以上4名は人間国宝)、加藤唐九郎、川喜田半泥子(はんでいし)の外、現代美術のイサム・ノグチ、八木一夫の作品も展示されています。出品点数も多いので、展示室では「やきもの好き」のオーラを放ちながら熱心に見て回る高齢男性の姿が目立ちました。

◆展覧会の構成 本展は7章で構成。入口は2階でⅠ.中国陶磁、Ⅱ.朝鮮陶磁と唐津・萩、Ⅲ.織部・志野・黄瀬戸など、Ⅳ.色絵・染付などの日本陶磁、Ⅴ.書・漆・画、と続き、Ⅵ.信楽・萩・備前は1階・第3展示室と多目的室に、Ⅶ.現代陶磁は多目的室に展示していました。

◆Ⅰ.はじまりの中国陶磁ー色絵・染付・青磁(注:作品名の前の数字は作品番号) 中国陶磁と魯山人などの作品が比較できるよう工夫した展示なので、楽しく鑑賞できました。書から出発した魯山人らしく6《染付吹墨貴字向付》、16《染付福字皿》、26《染付詩文大花入》など文字を書いた作品は手慣れた感じです。また、白地に黒い魚を描いた石黒宗麿の21《白瓷黒絵双魚文盆》はオシャレな器で、目を惹きました。

◆Ⅱ.朝鮮半島のやきものへー朝鮮陶磁、そして唐津・萩 最初に三島手(朝鮮半島から伝わった技法。半乾きの素地に印を押して、へこんだ部分に化粧土を入れて模様を出す。身近では万古焼の土鍋などに使用)や刷毛目(化粧土を刷毛で塗る技法)の茶碗が並んでいました。唐津焼や萩焼も含めて、中国の華やかな色絵や染付とは違う「侘び、寂び」のやきものが勢ぞろいしています。

◆Ⅲ.桃山陶へのあこがれー織部・志野・黄瀬戸など 荒川豊蔵の120《志野筍絵茶碗「随縁」》だけが第1展示室でスポットライトを浴びており、他は全て第2展示室。第2展示室の入口には、荒川豊蔵が美濃で魯山人とともに古志野筍絵の陶片を発見した時の話を描いた資料《古窯発見端緒之図》が貼ってあります。また図録には、《志野筍絵茶碗「随縁」》について「この時に発見した陶片と徳川美術館所蔵の《志野筍絵茶碗》を範として制作した」という解説がありました。

第2展示室でスポットライトを浴びていたのは、魯山人の96《織部秋草文俎(まないた)鉢》と105《織部間道俎鉢》です。いずれも名古屋・八勝館所蔵で《織部間道俎鉢》は本展のチラシを飾っています。いずれも大振りで「こんな器に料理が盛られて出て来たら、インスタ映えするだろうな」と思いました。

この外に見ものだったのは、長次郎の黒楽茶碗と瀬戸黒の茶碗、魯山人・荒川豊蔵・川喜田半泥子の黒い茶碗が並んでいるコーナーと志野茶碗が並んでいるコーナーの二つです。なかでも黒茶碗は、どれもよく似ているのに、それぞれが微妙に違っているので見飽きません。茶道具のことはよくわかりませんが、確かに長次郎の126《黒楽茶碗》は一味違うと感じました。先入観に引っ張られていることは否めませんが……。

◆Ⅴ.書・漆・画 展示スペースの関係でしょうか、Ⅲの次はⅤでした。魯山人の書156《天上天下唯我独尊》の「天上」には良寛の書のような雰囲気があります。また、「我独」は元の漢字をどのように崩しているのか分かりませんでした。漆の器は豪華でしたね。

◆Ⅳ.名工との対話ー日本陶磁、色絵・染付など 2階の最後は尾形乾山と魯山人の作品です。尾形乾山は色絵も良かったですが、154《染付阿蘭陀写草花文角向付》の藍色が印象的でした。魯山人は、大振りの雲錦(うんきん)鉢が数点出品されており、華やかでした。 この外、川喜田半泥子の144《茶杓 銘「乾山」》もありました。

◆Ⅵ.枯淡の造形・土にかえるー信楽・伊賀・備前 ◎第3展示室 1階の第3展示室は、主に信楽と伊賀。展示室の入口近くには、大きく歪んだ魯山人の170《倣古伊賀水指》があります。伊賀焼の水指といえば、川喜田半泥子《伊賀水指 銘「慾袋」》が有名ですが、残念ながら千葉会場のみの出品でした。荒川豊蔵の106《黄瀬戸破竹花入》は「黄瀬戸」と言いながら、第3展示室にあります。下の方まで亀裂が入っているので、実用には「難あり」の花入れでした。魯山人の173《竹形花入》は、竹の花入れの「そっくりさん」でした。古信楽や加藤唐九郎の作品もあります。

◎多目的室 多目的室は備前。ただし、魯山人の182《伊部(いんべ)大平鉢》だけは第3展示室にあります。魯山人の外には、川喜田半泥子と金重陶窯の作品が出品されています。備前焼は「土の存在感」が前面に出ているやきものです。備前焼が展示されている一角は、他の展示室とは全く違う雰囲気の空間でした。

◆Ⅶ.現代陶芸をひらく イサム・ノグチと八木一夫の作品に加えて、サム・フランシスの墨絵202《魯山人の顔》が並んでいます。《魯山人の顔》は色紙に即興で描いたもののようですが、思わずクスッと笑ってしまいました。イサム・ノグチの作品は「陶磁器」ではなく、現代彫刻ですね。八木一夫のコーナーには現代美術だけではなく、古典に倣った201《花刷毛目茶盌》などの作品もありました。

◆最後に  美術館の帰りに碧南駅前の大正館で「展覧会の解説を読むと、魯山人は周りを振り回す大変な人。それなのに何故、お金持ちのパトロンが彼を援助してくれたんだろう」と話していたところに、旬彩弁当が出てきました。蓋を開けると、そこには織部の角鉢。「織部の器は料理を引き立てる」ことを確認しつつ味わいました。 なお、本展の会期ですが、前期は5月19日(日)まで、後期は5月21日(火)から6月9日(日)までです。          Ron.

展覧会見てある記 「印象派からその先へ」

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名古屋市美術館(以下「市美」)で「印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション」(以下「本展」)が開幕しました。展覧会のチラシには、こんなことが書いてあります。

(略)石膏建材メーカーとして知られる吉野石膏株式会社は、1970年代から本格的に絵画の収集を開始し、2008年には吉野石膏美術振興財団を設立。(略)そうして形成された西洋近代美術のコレクションは、質量ともに日本における歴代のコレクションに勝るとも劣らぬ内容を誇っています。現在、その多くは創業の地、山形県の山形美術館に寄託され、市民に親しまれています。本展ではバルビゾン派から印象派を経て、その先のフォーヴィスムやキュビズム、さらにエコール・ド・パリまで、大きく揺れ動く近代美術の歴史を72点の作品によってご紹介します。とりわけピサロ、モネ、シャガールの三人は、各作家の様式の変遷を把握できるほどに充実しており、見応え十分です。(略)中部地方では初めて。知られざる珠玉の名品を、どうぞこの機会にご堪能ください。

 「でも、大したことないんじゃないの」と、少し馬鹿にして市美に出かけたのですが、結果は良い方に大ハズレ。「へへー、おみそれいたしました」と、なりました。本展を舐めていたことを大いに反省しています。「見応え十分」というだけでなく、コレクターの感性によるのでしょうか、「見ていて気持ちが良い」のです。 「印象派」だけでなく、「その先」の展示も充実しています。また、わかりやすくて簡潔な「子供向け解説」は大人でも十分、読み応えがあります。本展は、見逃せません。

◆1章:印象派、誕生 ~革新へと向かう絵画~ ◎エントランスホールでモネ《睡蓮》と《サン=ジェルマンの森の中で》が出迎え  市美1階の橋を渡って企画展示室のエントランスホールに入ると、正面の壁に拡大されたモネ《睡蓮》と《サン=ジェルマンの森の中で》が並んでいます。「ピサロ、モネ、シャガールの三人」のうち、先ず、モネが出迎えてくれました。展示は、バルビゾン派からクールベ、マネ、ブーダンと続き、印象派はシスレーから始まります。作品は年代順に並んでいますが、《モレのポプラ並木》の前で思わず足が止まってしまいました。  続くのはモネ。なかでも《サン=ジェルマンの森の中で》は不思議な作品です。見ていると、絵の中に引き込まれそうになります。映画「となりのトトロ」に出てきた“秘密の抜け穴”を思い出しました。《睡蓮》と《テムズ河のチャリング・クロス橋》は、「モネ それからの100年」以来1年ぶりの再会。去年の展覧会を思い出します。

◎特等席はルノワール、ドガ、ゴッホ  1章では、ルノワール《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》とドガ《踊り子たち(ピンクと緑)》が水色の壁、ゴッホ《静物、白い花瓶のバラ》が茶色の板の特等席に展示されていました。ルノワールとドガが特等席なのは納得できますが、ゴッホの静物画が特等席なのは何故でしょうか?重要な作品だとは思うのですが……。

◎パステル画を堪能 コレクターの好みなのか、本展ではパステル画が目立ちました。水色の特等席の2作品だけでなく、メアリー・カサット《マリー=ルイーズ・デュラン=リュエルの肖像》、ピカソ《フォンテーヌブローの風景》がパステル画です。鮮やかな中間色のふわっとした感じがいいですね。癒されます。

◆2章:フォーブから抽象へ ~モダン・アートの諸相~  2章で強烈な印象を受けたのはヴラマンク。《セーヌ河の岸辺》は「どこがセーヌ河?」という感じの赤と緑のコントラストが目に飛び込んでくる作品。しばらく眺めていて「左上の白っぽいところがセーヌ河?」とわかりました。でも、このめちゃくちゃな色使いは癖になりますね。静物画が2点並んで、最後の《村はずれの橋》は正に「万緑叢中紅一点」。ワンポイントの赤が効いています。 マティス《緑と白のストライプのブラウスを着た読書する若い女》はストライプが印象的な作品。「子ども向け解説」を読みながら鑑賞することをお勧めします。

◎2章は、アンリ・ルソーから2階に展示 2階は抽象画が中心。カンディンスキーの作品は「音楽」を感じさせます。また、ルソー《工場のある風景》も、ここで見ると抽象画のような感じがします。

◆3章:エコール・ド・パリ ~前衛と伝統のはざまで~ ◎ユトリロとマリー・ローランサン 3章はユトリロとローランサンから始まります。ヴラマンクと違って、ドキドキせず、安心してみることのできる作品が並びます。この中では、群像を描いたローランサン《五人の奏者》がいいですね。

◎これは「小さなシャガール展」です  本展の最後を飾るのは、吹き抜けの上の広い空間に展示されたシャガールの作品です。数えると、シャガールだけで10点。そのうち3点に「子ども向け解説」が付いていました。シャガールは学芸員さんの「お気に入りの作家」なのでしょうか?それとも、「子どもを引き付ける作家」なのでしょうか?いずれにせよ、吹き抜けの手すり近くから、L字型の壁に並ぶシャガールを眺めるのは壮観です。

◆最後に  名古屋市美術館協力会では4月14日(日)午後5時から、会員向けに「印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション」のギャラリートークを開催します。詳しくは、名古屋市美術館協力会のホームページをご覧くださいね。                             Ron.

「人騒がせな名画たち」

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

 かなり評判になっている本なのでもう読まれたひとも多いだろう。筆者は西洋美術史家「木村泰司(きむら たいじ)」氏。「目からウロコ」と表題の前に小さくある。画家は変人が多いから、それほど目からウロコはなかったが、それでも聞いたこともない話はいろいろあり、興味深く読んだ。なかでも、昨年市美であった「ビュールレ・コレクション」展に出ていたルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」のイレーヌ(1872-1963)の話には感動した。深谷副館長の講演では、「イレーヌの両親はこの肖像画が気に入らなかった。イレーヌはユダヤ系銀行家で貴族のダンベール家に生まれ、同じような出自のユダヤ人と結婚した。しかし、離婚してユダヤ教からカトリックに改宗してイタリア人と再婚した。1963年にイレーヌが死んだとき、その死は新聞で大きく報道された」ということだった。時間もなかったのかも知れないが、それ以上詳しいイレーヌの人生についての言及はなかったと思う。しかし、いくら有名な絵でも、なんで絵のモデルが死んだくらいでそんなに話題になったのか、何かモヤモヤしたものが残っていた。それがこの本を読んで腑に落ち、すっきりとした。イレーヌはフランスでは有名な、悲劇のヒロインだったのだ。美しい金持ちの女性の幸せな人生は面白くもないし、決して共感は呼ばない。章題は「小説より奇なモデルの少女の壮絶人生!」。

イレーヌの結婚相手は、ダンヴェール家と同じようなユダヤ系の名家、貴族で銀行家で大金持ち、12歳年上カモンド家のモイーズ・ド・カモンドだった。その当時1890年頃としては、あたり前で良い縁組みだっただろう。イレーヌは一男一女を産み名家に嫁いだ義務を果たした。しかし、一家の厩舎長であった、イタリア人のサンピエリ伯爵と恋に落ちてしまう。夫婦は別居しイレーヌは恋人と生活を始めた。世間体が悪いことから離婚できず、離婚成立までに6年の歳月を要した。イレーヌが晴れて再婚したのは1903年、ふたりの子供はモイーズが育てた。第一次世界大戦が始まると、長男ニッシムはパイロットとして従軍、戦死してしまう。第二次世界大戦では、長女ベアトリスがユダヤ人の夫とふたりの子供と共に、アウシュビッツで虐殺され、イレーヌの肖像絵はナチスに奪われてしまう。イレーヌはカトリックに改宗していて助かった。ベアトリスが相続していたカモンド家の遺産は、全てイレーヌのものとなった。イレーヌは莫大な財産を使いながら、91歳で亡くなるまでの余生を南フランスで過ごした。終戦後手元に戻ったルノワール作の肖像画、イレーヌは過去を思い出したくなかったのか、すぐに手放していた。

このような波瀾万丈の人生を送り、死んだ頃はルノワールのこの肖像画も有名になっていて、彼女の死は大々的に報じる価値があった。「ニッシム・ド・カモンド美術館」がパリ8区モンソー通りにある。1910年頃モイーズ・ド・カモンドが建てて住んでいた邸宅。戦死した息子の名をつけた美術館として、モイーズが蒐集した美術品を展示している。エトワール凱旋門の東北東1 km強のモンソー通り沿い、モンソー公園隣。

佐久閒洋一

ボストンの美術館巡り—ボストン美術館で名古屋市美術館所蔵作品に遭遇—

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 3月23日から一週間ほどのあいだボストンに出かけました。ボストンではこの期間 オペラもクラシックコンサートもなかったのでただひたすら美術館そして名所、旧跡を 訪れる旅となりました。

ボストン美術館

 まずは収蔵点数50万点を誇る美の殿堂ボストン美術館です。ミュージアムショップでmfaというロゴマークを見て最初何なのか分かりませんでしたが、正式名称がMuseum of Fine Arts, Bostonということで納得。愛称がMFAです。最初驚いたのが入場料の高さ。25ドルです。でも冷静に考えれれば企画展が二つ含まれているので妥当な値段です。驚くことにその企画展の両方ともに自分と関係があり、こんなこともあるんだと驚いています。企画展の一つが「フリーダカーロ展」。

 名古屋市美術館にはメキシコ絵画が常設展示してあります。その中でも私のお気に入りがフリーダカーロの「少女と死の仮面」です。それがボストン美術館になんと展示されているではないですか。すぐさまキャプションを見る。Nagoya City Museumと書かれている。まさしくいつも見ているあの作品が飾ってある。名古屋市美術館が評価されたみたいで単純に嬉しい。その絵の前で立ちどまる人達をすこし観察してみた。50代の夫婦、母親と3歳ぐらいの幼児、40代ぐらいの男性二人、若いカップルなど、みな足を止めて話をしている。作品の小ささにも関わらず興味を引くようで皆その絵で立ちどまる人たちが多かったように思う。  

ボストン美術館 名古屋市美術館の作品を鑑賞する人々

 もう一つの企画展〈Gender Bending FASHION〉の中でファッションデザイナーの山本耀司さんの作品が展示されていたことです。以前からアメリカで評判がいいことは知っていましたがこんなに評価が高いことに驚きました。皆さんもご存じだと思いますが耀司さんのブランドはワイズという名前です。私的なことで申し訳ありませんが、私は大学卒業後にアパレルメーカーのイッセイミヤケインターナショナルという名の三宅一生さんの服を販売する会社で働いていました。当時の会社の上司が野球好きでワイズとイッセイで野球をしようということになりました。現在あるかどうか分かりませんが、麻布球場という場所で仕事が終わってから照明をつけて野球をしました。私は入社2年目ぐらいだと思いますが、試合に打者で出させてもらいました。そのときに対戦した投手が耀司さんでした。サイドスローの球を投げられたんですが、結果がどうだったか今は全く覚えていません。試合もどっちが勝ったかさえ覚えていません。三宅デザイン事務所のデザイナーたちがチアリーダーさながらの応援を見て爆笑していたのを鮮明に覚えています。当時はアルマーニ等のイタリアファッションの勢いがある時代で耀司さんはまだ世界的にはそれほど知られている存在ではありませんでした。今から40年ほど前の話です。現在は高校で教師をしていますがイッセイやワイズの服はもう着ないと思いますが思い出もあり、いまだに捨てることができずに大切に取ってあります。  

 常設展ではゴーギャンの雑誌などでよく目にする「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」、ルノアールの「ブージバルのダンス」 モネの「日本娘」 セザンヌの「赤いひじ掛けイスのセザンヌ婦人」 を堪能。また哀愁ある印象的な絵のホッパーの「ブルックリンの部屋」など知られた画家の絵を鑑賞する。とにかくアメリカ美術、ヨーロッパ美術、日本や中国の美術、古代エジプトやギリシア、ローマ、エトルリアなどの美術とても一日でみられる規模ではなかった。 

イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館

 つぎにイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館。レンゾ・ピアノが設計した新館から入場する。この美術館、大富豪イザベラが莫大な富に任せて館を建てそこに彼女の趣味で集めた絵画、調度品を生活に根差して展示してある美術館。絵にひとつひとつキャプションがついていない。説明書が各部屋においてあり鑑賞者はそれで誰の作品かを理解することになっている。どこかでみたような作品だなと思うとそれがレンブラントだったりする。 絵の作者を当てる楽しみも出てくる。マザッチオ、ボッティチェッリ、クラナッハ、 デューラー、サージェントが部屋の中にさりげなく飾ってある。ここの中庭は殊に有名でヨーロッパから資材を運んで作ったようだ。メトロポリタン美術館別館のクロイスターズに似ている。ここの有名なテッツィアーノ「エウロペの略奪」は貸し出し中であった。

Harvard Art Museum

 三番目はHarvard Art Museum ここはフォッグ美術館、Busch-Reisinger 美術館、Arthur M.Sackler美術館 を一つにまとめたもの。さすがにハーバード大学すべてに充実している。これが大学への寄贈でなりたっているのがすごい。ゴッホ、ピカソ、モネ、セザンヌ、フラ・アンジェリコ、フィリッポ・リッピ、フランク・ステラ、マーク・ロスコ、白隠など。またこれが撮影OKで写真撮りまくりの世界にはまる。雪の田舎道を描いたモネの絵、魚を描いたモネの絵、花瓶に花があふれんばかりのルノアールの絵、農村の中の中央に白い家を描いたセザンヌの絵、特徴ある女性の絵を描いたロセッティなどあまり見る機会のない絵を鑑賞することができ大満足。

MIT博物館

 最後はMIT博物館。ここはここでまた面白い。ヨットのアメリカズカップで優勝するためにヨットをいかに設計すれば最小の動力でスピードをアップできるかというようなコーナー。そしてベアリング、ねじ、コイル、モーターなどを使った作品など意外と面白かった。またDrawing Designing Thinkingという企画展ではMITの150年に及ぶ歴史を主に建築中心にパネル展示してあり興味深った。

 アメリカ発祥の地であるボストンは結構見どころも多く名所、旧跡が比較的地区に集まっているので観光しやすい街です。アメリカ最古の公園ボストンコモン、独立宣言が読み上げられた旧州庁舎、植民地時代に独立のための集会場であったファニエル・ホール、独立戦争の英雄たちが眠るグラナリー墓地、高級住宅街のビーコン地区、ハーバード大学等を訪れた。今回はオペラがないのでひたすらボストン市内を歩き回りました。

谷口 信一

展覧会見てある記「名古屋市美術館 名品コレクション展Ⅱ」など

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

名古屋美術館の地下1階常設展示室1・2では「名品コレクション展Ⅱ」が、常設展示室3では「名古屋市庁舎竣工85年 建築意匠と時代精神」が開催されています。最終日は11月25日(日)。概要は以下のとおりです。

◆名品コレクション展Ⅱ 
◎エコール・ド・パリ
目玉は、新収蔵品・藤田嗣治《ベルギーの婦人》1934年制作 です。常設展のパンフレットによれば「1933年11月に日本に帰国した藤田。(略)《ベルギーの婦人》は、この時期の藤田が懇意にしていた、在日ベルギー大使館関係者の妻の肖像と思われる。(略)背後に散りばめられた霊芝、珊瑚、巻子などの吉祥文様との組み合わせが面白い。恐らくモデルの婦人を寿ぐ意味が込められているのだろう」とのことです。また、開館30周年を記念して団体・個人からの寄付金をもとに「夢・プレミアムアートコレクション」として購入した作品です。
看板娘のモディリアーニ《おさげ髪の少女》が「ザ ベスト コレクション」に出張しているため「淋しくなったのではないか」と危ぶんだ「エコール・ド・パリ」のコーナーですが《ベルギーの婦人》の初お目見えに加え、マリー・ローランサン《アポリネールの娘》を始めとする女性像が勢ぞろいしているので華やかな一角となっています。
また、《ベルギーの婦人》の隣には、同じく藤田嗣治《家族の肖像》と寄託作品《那覇》が展示され「藤田コーナー」ができていました。

◎現代の美術
「ザ ベスト コレクション」の「現代の美術」では河原温の「Todayシリーズ」ではなく、あえて「変形キャンバス」の《カム・オン・マイハイス》と《私生児の誕生》を展示していましたが、「名品コレクション展Ⅱ」では「Todayシリーズ」を1966年から1980年まで、毎年1作品ずつ15作品をずらりと並べており、壮観です。
寄託作品のサイモン・パターソン《大熊座》は、一見すると地下鉄路線図ですが、路線が「哲学者」あり、「イタリアの芸術家」あり。駅名も「プラトン」や「レオナルド」があり、英語を訳しながら路線をたどると面白い作品です。難を言えば「急いでいる人にはお勧めできない」ことですね。

◎メキシコ・ルネサンス
 渋い作品ですが、ティナ・モドッティの写真が6点展示されています。
「ザ ベスト コレクション」展示のティナ・モドッティの写真2点とマニュエル・アルバレス・ブラボの写真3点と合わせて鑑賞すると良いのではないでしょうか。

◎現代の美術
浅野弥衛の油絵と銅版画、杉本健吉の《名古屋城再建基金ポスター原画》と《新・水滸傳挿絵原画》の特集です。壁のほとんどが浅野弥衛の作品で埋まるというのは壮観です。
「ザ ベスト コレクション」で様々な作品を展示しているので、常設展では逆に、思い切ったことが出来るということでしょうか。

◆名古屋市庁舎竣工85年 建築意匠と時代精神
 名古屋市役所本庁舎は洋風建築の上に中華風の塔を配した「帝冠様式」の建築ですが、常設展のパンフレットによれば「帝冠様式」にも「塔を配したもの」「城郭を配したもの」の二つの様式があったようです。
先ず「塔を配したもの」として〇名古屋市庁舎(現:名古屋市役所本庁舎)、〇神奈川県庁本庁舎、〇東京市庁舎(実施されず)の外観図などが展示されています。
 また「城郭を配したもの」として〇大禮記念京都美術館(現:京都市美術館)、〇軍人会館(現:九段会館)、〇東京帝室博物館(現:東京国立博物館本館)の外観図などが展示されています。今回の展示にはありませんが、愛知県庁本庁舎や昨年度の「異郷のモダニズム展」で紹介された関東軍司令部庁舎(現:中国共産党吉林省委員会本館)は「城郭を配したもの」に分類されるのでしょうね。
解説が常設展のパンフレットしかないのは残念ですが、面白い展示です。
 
◆最後に
今期の常設展「名品コレクション展Ⅱ」は、同時開催の企画展「ザ ベスト コレクション」とのコラボ企画。常設展・企画展の二つを合わせて鑑賞するのがベストだということが分かりました。
Ron.

至上の印象派展 ビュールレ・コレクション

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

待ちに待った名古屋市美術館開館30周年記念「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」(以下「本展」)が開幕しました。(9月24日まで)本展の入口は2階。最初に目に入るのがコレクションの主、E.G.ビュールレ氏がコレクション8点に囲まれた写真の垂れ幕(以下「入口の写真」)です。うち6点を本展で確認できました。
◆ジャンル別、作家別などに細かく区分された展示
出品作品は64点。「至上の印象派展」という名前のように印象派の作品が中心ですが、17世紀から20世紀までの作品を展示。絵画の流れを理解しやすくするためにジャンル別、作家別等と細かく区分され10章もあります。同じ章の作品だけでなく別の章の作品も気になって見比べたので滞在時間は長くなりました。どの作品も見応えがあるため64点でも満腹です。
◆肖像画では
本展は「第1章 肖像画」で始まります。肖像画は第1章以外に「第3章 19世紀のフランス絵画」「第5章 印象派の人物-ドガとルノワール」「第6章 ポール・セザンヌ」「第7章 フィンセント・ファン・ゴッホ」「第8章 20世紀初頭のフランス絵画」「第9章 モダン・アート」でも展示。西洋美術史の流れと各作家の作風の変遷をつかむことができるように、いくつもの章で展示しているのでしょう。このうち第5章のルノワール《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》は赤壁の特別席に第6章のポール・セザンヌ《赤いチョッキの少年》は緑壁の特別席に展示。
肖像画では《赤いチョッキの少年》とドガ《ピアノの前のカミュ夫人》が入口の写真に写っていました。展示作品の半数以上は肖像画など人物を描いた作品。《アングル夫人の肖像》《扇子を持つセザンヌ夫人の肖像》を始め、どの章の展示も充実しています。
◆風景画では
展示作品の約3分の1が風景画。「第2章 ヨーロッパの都市」では18世紀に描かれたヴェネツィアの「都市景観図」と装飾的なポール・シニャック《ジュデッカ運河、ヴェネツィア、朝》を対比するように展示していたのが印象的です。「第4章 印象派の風景」にマネ《ベルヴュの庭の隅》、モネ《ヴェトイュ近郊のヒナゲシ畑》《ジヴェルニーのモネの庭》が並んでいるのをみて、「こんな感じの作品がコレクションのきっかけになったのかな」と妄想していました。
「第10章 新たなる絵画の地平」には大画面のモネ《睡蓮の池、緑の反映》が展示され、写真撮影する人で大賑わいです。
◆ゴッホでは
 ゴッホ《日没を背に種まく人》は青壁の特別席に展示。太陽の黄色は図版で想像していたよりも落ち着いた色調でした。《二人の農婦》は「落穂拾い」ではなく畑を鍬で耕している姿です。《自画像》も見もの。ゴッホでは《花咲くマロニエの枝》が入口の写真に写っていました。
◆モダン・アートでは
「第9章 モダン・アート」では《室内の情景(テーブル)》ブラック《果物のある静物》ピカソ《花とレモンのある静物》の3点が入口の写真に写っていました。いずれも静物画です。
◆最後に
チラシでは「約半数が日本初公開。日本でまとめて鑑賞できるのは今回が最後の機会」とのこと。見逃せませんね。
8月5日(日)午後5時から協力会会員向けのギャラリートークが開催されます。
                            Ron.

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