国際芸術祭「あいち2025」 (芸術文化センター)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

2010年から3年ごとに開催されてきた国際芸術祭「あいち」(旧称:あいちトリエンナーレ)が開幕しました。テーマは「灰と薔薇のあいまに」で、22の国と地域から62組のアーティストが参加します。

会場は愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなかです。また、パフォーミングアーツのプログラムも、多様な社会課題を背景に持つものが多く、美術展とは違った発見があると思います。会期は11月30日までです。

会場ごとに、数点ずつ、目を惹かれたものを紹介します。

会場入口

インドネシア出身のムルヤナは、かぎ針編みの手法で広大な海の世界を表現しています。無数のカラフルなオブジェと真っ白なオブジェが、10Fロビーを埋め尽くし、そのボリュームと形態のおもしろさに目を惹かれます。背景には、地球温暖化や海洋汚染による環境問題への意識があると思われます。

ムルヤナ ≪海流と開化のあいだに≫(部分)

是恒さくらの作品は、巨大なクジラの姿をいろいろな素材で標本展示のように再現しています。作品の青白い色合いが、水の中にいるような錯覚を呼びおこし、少しひんやりとした印象です。

是恒さくら ≪白華のあと、私たちのあしもとに眠る鯨を呼び覚ます≫(部分)

ミルナ・バーミアは、以前レストランであった場所に、2点の作品を展示しています。どちらも食に関連した作品で、ロビーに面した空間に展示された作品の表面には、子供の落書きのような模様も見て取れます。厨房には、パレスチナの歴史を暗示する映像作品が暗闇の中に映し出されています。

ミルナ・バーミア ≪サワー・コード≫(部分)

久保寛子は、地下のフォーラムに、大きな青いブルーシートの作品を展示しています。表現されているのは、4本の手を持ち、トラの顔をした東洋の神様と、壁を残して崩れた建物やいくつも並んだテント、牛やカラスなどです。牛の足元にある白い下向きのU字型は、広島にある平和記念公園の慰霊碑と思われます。作家が広島出身であることを知ると、作品の発するメッセージを、より強く感じます。

久保寛子 ≪青い四つの手を持つ獅子≫

杉山博之

国際芸術祭「あいち2025」 (愛知県陶磁美術館)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

前編の”国際芸術祭「あいち2025」(芸術文化センター)”の続きです。

愛知県陶磁美術館入口

シモーヌ・リーの作品は、陶磁美術館の地下展示室にあります。ぜひ、作品の周りをゆっくりと回ってみて下さい。女性が身に着けた貝殻のスカートの重量感や、彼女の喜怒哀楽を想像しながら眺めてみて下さい。絵画や彫刻で表現される女性像とは、一味違ったリアリティを感じられるのではないでしょうか。

シモーヌ・リー ≪Untitled≫

西條茜の作品は、哲学的で、かつ身体的な一連のオブジェで構成されています。展示室の床には、砂地を模した絨毯がひかれ、本展期間中、時々、オブジェを押して動かすパフォーマンスが行われます。小さめの作品でも、50kgを超える重量があり、大人でも簡単には動かせませんが、反復される労働と絨毯に残る移動の痕跡が作品タイトルと良く調和しています。

西條茜 ≪シーシュポスの柘榴≫(部分)

ハイブ・アースは、アートとデザイン、建築に取り組むガーナのスタジオです。本展では、土を強く突き固めて建材に用いる「版築」という技法で、階段状のベンチ(凸)を作りました。以下の写真は、ベンチの材料になる土を採取した穴(凹)です。芝生に掘られた四角い穴と、離れた場所に作られたベンチとの関係性が面白かったので紹介します。

ハイブ・アース ≪瀬戸の版築プロジェクト「凹」≫

(瀬戸市のまちなかの展示に続く)

杉山博之

国際芸術祭「あいち2025」 (瀬戸市のまちなか)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

前編の”国際芸術祭「あいち2025」(愛知県陶磁美術館)”の続きです。

沖潤子の作品は、駅からほど近い、小高い御亭山の上にあります。作品を展示した「無風庵」の周囲には、日清・日露、太平洋戦争の戦没者のための碑や塔があり、作品に使われている白い布、赤い糸、針との関係性は明白です。また、床に置かれた四角い陶土には無数の針が刺され、その光景はまるで針供養のようです。身近な人々や道具を大切にする気持ちが幾重にも重なる、緊張感のある表現になっています。

沖潤子 ≪anthology≫(部分)

冨安由真の作品は、来場者が少ない時間帯に見ることをお薦めします。できれば、展示室内で数分間、立ち止まっていると、作品のメッセージを受け取りやすいです。見終わったら、作品のタイトルにある「The Silence」と「Two Suns」の意味を考えてみて下さい。

冨安由真 ≪The Silence(Two Suns)≫(部分)

佐々木類の作品は、廃業した銭湯に展示されています。かつて、銭湯の利用者でにぎやかだった空間に、ガラスに封じ込められた植物の痕跡が、静かにライトに照らされています。

入口の番台の上に古い時計が掛けられています。止まったままの時計の針がタイムマシンで到着した過去の時間を示しているようで、映画の一場面みたいです。いったい、どれほどの時間を旅行したのでしょうか。

佐々木類 ≪忘れじのあわい≫(部分)

杉山博之

ひろしま国際建築祭2025

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
今秋、愛知県では国際芸術祭「あいち2025」が開催され、幅広い現代美術の作品に出合うことができます。また、国際芸術祭「あいち2025」以外にも、各地で多くの芸術祭が開催されます。<ひろしま国際建築祭>は、愛知からだと少し距離がありますが、戦後80年ということもあり、ぜひ訪れたい芸術祭のひとつです。
ひろしま国際建築祭のHPより

<ひろしま国際建築祭>は、今年から新しく始まる芸術祭です。「建築」で未来の街をつくり、こどもの感性を磨き、地域を活性化させ、地域の“名建築”を未来に残すことをミッションとしています。

本年は、「つなぐ「建築」で感じる、私たちの“新しい未来”」をテーマに、歴史、風土、景観、技術、思想など、さまざまな視点から「建築」に触れ、考え、交わる機会をつくり、建築文化を感じる場を目指すそうです。「建築」は私たちの生活をより豊かにしながら、より良い未来をつくるための「知恵」のひとつです。建築祭に参加し、私たちの新しい未来について、考える機会にしてみませんか。

ひろしま国際建築祭2025
会期|2025年10月4日(土)~ 2025年11月30日(日)
開催地|広島県福山市、尾道市+瀬戸内エリアのサテライト会場

詳しくは、以下を参照してください。

ひろしま国際建築祭2025

杉山博之

FUJI TEXTILE WEEK 2025

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
今秋、愛知県では国際芸術祭「あいち2025」が開催され、幅広い現代美術の作品に出合うことができます。また、国際芸術祭「あいち2025」以外にも、各地で多くの芸術祭が開催されます。その中から、愛知から出かけやすそうな芸術祭を、いくつか紹介します。
FUJI TEXTILE WEEKのHPより

FUJI TEXTILE WEEK は、テキスタイルと芸術が融合する国内唯一の布の芸術祭です。本芸術祭では、テキスタイルの新たな可能性を模索するとともに、使われなくなった工場や倉庫、店舗などを展示会場として再利用し、産業の記憶の保存と街のアイデンティティ形成に取り組んでいます。展示会場となる山梨県富士吉田市は、1000年以上続く織物の産地です。その歴史ある地域で2021年よりスタートした新しい芸術祭です。

FUJI TEXTILE WEEK 2025のテーマは「織り⽬に流れるもの」です。布の折り目は、表面の⽬に⾒える糸と、その下にある目に⾒えない糸の両方で出来ています。それは、まるで地表と、その地下を流れる伏流⽔のように思われます。そんな可視化されないものに意識を向けながら、織物の⽂化背景や歴史に思いを巡らせてはいかがでしょうか。

FUJI TEXTILE WEEK
会 期|2025年11⽉22⽇(⼟)〜12⽉14⽇(⽇)

詳しくは、以下を参照してください。

FUJI TEXTILE WEEK

杉山博之

GO FOR KOGEI 2025

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
今秋、愛知県では国際芸術祭「あいち2025」が開催され、幅広い現代美術の作品に出合うことができます。また、国際芸術祭「あいち2025」以外にも、各地で多くの芸術祭が開催されます。その中から、愛知から出かけやすそうな芸術祭を、いくつか紹介します。
GO FOR KOGEIのHPより

今年のGO FOR KOGEI 2025は、「工芸的なるもの」というテーマで開催されます。

染色、陶芸、木工、ガラスなどの作品は、日常使いの道具の延長としても鑑賞でき、抽象絵画のような美術作品よりも、とっつきやすい印象があります。

展示会場は、富山県富山市の岩瀬エリアと、石川県金沢市の東山エリアに分かれており、どちらも昔ながらの街並みを留めたエリアに点在しています。また、参加している作家の中には、地元出身、あるいは地元の工房出身の作家もいて、彼らの作品からは北陸地方の土地柄も感じ取れるのではないでしょうか。

作品展のほか、北陸と言えば、おいしい食材の宝庫ですから、時間に余裕をもって訪問し、例えば海鮮などを楽しんで帰ってくるというのはいかがでしょうか。

GO FOR KOGEI 2025
会期|2025 年9 月13 日(土)〜10 月19 日(日)

詳しくは、以下を参照してください。

GO FOR KOGEI 2025

杉山博之

error: Content is protected !!