吉本作次さんを囲む会

カテゴリ:作家を囲む会 投稿者:editor

令和6年4月21日、名古屋市美術館協力会は、現在名古屋市美術館にて開催されています展覧会の作家である吉本作次さんを美術館のカフェにお迎えして、作家を囲む会を開催しました。

吉本さんは、彼の作品の中でもしばしば酒盛りの様子が描かれているのですが、大のお酒好きとお聞きしました。そこで、お酒とお料理を用意しますとお誘いしたところ、出席を快諾してくださいました。

吉本さんは酒盛り中もいたくご機嫌で、参加した会員たちとにこやかに食事とお酒を楽しまれ、思い出に残る会となりました。お酒、お強そう。お飲みになってもあまり顔色も変わりません。

吉本さん、ほんとうにありがとうございました。

吉本作次展 絵画の道行き ギャラリートーク

カテゴリ:会員向けギャラリートーク 投稿者:editor

名古屋市美術館では、4月6日より、1980年代以降の日本の現代美術を代表する作家である吉本作次さんの展覧会「絵画の道行き」が開催されています。4月13日土曜日は、この展覧会の協力会会員限定のギャラリートークが、閉館後の美術館にて開催されました。

今回の展示作品数は多く、初期の荒々しい力強さの目立つ作風から、次第に彼独特のかわいらしい人々の登場する作風に変貌していく過程が展覧会を通して見て取れます。

展覧会の担当学芸員の清家さんの解説を聞きながら、会員たちも作品を1つ1つ興味深そうに鑑賞しました。展覧会は6月9日日曜日まで、開催されます。

読書ノート 「コスチュームジュエリー」小瀧千佐子 著

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

―美の変革者たち― シャネル、ディオール、スキャパレッリ 発行日2023.10.15 発行 世界文化社

今回、ご紹介するのは、近所の図書館で借りてきた本です。一般書籍という体裁でしたが、巻末の「おわりに」に「全国5カ所に巡回する展覧会の図録」(ただし、巡回先の記載なし)と書いてありました。著者については「ムラーノガラス(ヴェネチアンガラス)、ヴェネチアンビーズ、コスチュームジュエリー、三つのジャンルの研究者・コレクター。前勤務先のエールフランス航空在籍中からコレクションを開始。1983年には日本ではじめてのムラーノガラスの専門店をオープン、2014年にショップchisa(チサ)をスタート」との紹介があります。

◆「はじめに」 コスチュームジュエリーとは

コスチュームジュエリーという言葉について、著者は「貴金属を用いず合金、銀、ガラスや半貴石などで作られたネックレス、プローチ、イヤリング、ブレスレットをはじめとするファッションジュエリー」と定義。そして「金やダイヤのように素材そのものに市場価値がないことから、流行の終焉と共に消え去る運命にある」のですが「二つの大戦を経てなお生き残ったコスチュームジュエリー」には「デザインしたアーティストたちの先鋭的で独創的な、ゆるぎないスタイル(様式美)があった」「20世紀の誕生から100年を迎える今、アートとして認識されるべきものであろう」と書いています。

◆ポール・ポワレ《夜会用マスク・ブレスレット”深海“》(1919)

本書はp.5に、ポール・ポワレがデザインした夜会用マスク・ブレスレット“深海”の写真を掲載。とてもインパクトのある作品です。制作者は、1928年までポワレと共に働いていた帽子職人のマドレーヌ・パニゾンです。本書は「100年を超えて、悲惨な状態であったポワレのマスク」と書くだけですが、2023.11.26付の日本経済新聞「The STYLE」には、「ベルギーの収集家から届いた時はチュール(薄い網状布)がボロボロ。ビーズを通した糸も今にも切れて、ビーズが落ちそうな状態。似たチュールを探し染めるところから始め、ビーズ一粒一粒、一針一針、2年がかりで修復した」と書いてありました。一見の価値がある作品だと思います。“深海”の画像・動画は、下記の展覧会公式サイトで検索できますが、是非とも実物を見てみたいですね。

公式サイトのURL:コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより (ctv.co.jp)

◆Chapter 1 美の変革者たち オートクチュールのコスチュームジュエリー

Chapter 1では、「“本物の偽物”を公言してジュエリーの概念を覆したシャネルと、コスチュームジュエリーにアートの要素を取り入れたスキャパレッリ、そしてフェミニンなドレスに合わせて優美な作品を発表したディオールというモード界を代表する三人の初期作品群」をはじめとする作品を掲載しています。ただし、展覧会のタイトルとは違い、スキャパレッリ、シャネル、ディオールという順番に並んでいます。なお、上記・公式サイトでは、以下の作品を掲載しています。

スキャパレッリ:《ネックレス“葉”》(1937)本書p.14(デザイン/制作:ジャン・クレモン)、

《ブローチ》(1951頃)本書p.35(デザイン:サルバドール・ダリ、製作国アメリカ)

シャネル:《ネックレス“花”モチーフ》(1938頃)本書p.39(制作:メゾン・グリポワ)

ディオール:《ネックレス、イヤリング》(1954頃)本書p.64(デザイン:ロジェ・ジャン=ピエール、製作:ミッチェル・メイヤー)

作品の写真のほか、「『戦前』と『戦後』で異なるスキャパレッリの作風」「スキャパレッリとシャネル その作風の違い」などのコラムもあり、スキャパレッリはポール・ポワレに類まれなセンスを見出され、1927年にはパリで自身の小さな店を開くに至ったこと、スキャパレッリとシャネルはライバル関係にあったことなどを知ることができます。

◆Chapter 2 躍進した様式美 ヨーロッパのコスチュームジュエリー

Chapter 2では、パルリエ(宝飾師。宝石やコスチュームジュエリーなどを制作する職人)別に、主な作品を紹介しています。なお、上記・公式サイトでは以下の作品を掲載しています。

リーン・ヴォートラン:《ブローチ“花の精”》(1945頃)本書p.100

コッポラ・エ・トッポ:《チョーカー“花火”》(1968)本書p.112

ロジェ・ジャン=ピエール:《ネックレス》(1960頃)本書p.135、《クリップ》(1960頃)本書p.139

シス:《ネックレス》(1950頃)本書p.144,《ネックレス》(1960頃)本書p.142

メゾン・グリポワ:《ブローチ》(1960年代)本書p.156、《ブローチ》(1989)本書p.159

◆Chapter 3 新世界のマスプロダクション アメリカのコスチュームジュエリー

Chapter 3は、アメリカのコスチュームジュエリーを取り上げています。本書p.164に「ヨーロッパとアメリカのコスチュームジュエリーの比較表」があり、ヨーロッパは「比較的上流階級の少人数に対して手作りによる小ロット」、アメリカは「広く一般大衆向けで機械による大量生産」など、両者は大きく異なっていることがわかります。なお、上記・公式サイトでは、以下の作品を掲載しています。

ミリアム・ハスケル:《ペンダント“エンジェルストランペット”モチーフ》(1930年代)本書p.166

《ネックレス、クリップ“フラワー”モチーフ》(1938)本書p.176

トリファリ:《ブローチ“枝に二羽の鳥”》(1942)本書p.186、

《ペアクリップ“テノールフィッシュとマーメイド”》(1940)本書p.189

ケネス・ジェイ・レーン:《ネックレス“ジャッキー・オナシス スタイル》(1970)本書p.197

トリファリについては「おわりに」本書p.206に、「約40年前にロンドンのフリーマーケットでオレンジ色のガラス製ペンダントに魅了され、裏を返すと「Trifari」という刻印があり、説明を聞いてすぐに購入した」というエピソードが書いてあります。トリファリがコレクションの原点だったのですね。

◆図、年表など

本文、コラム、作品写真の外、コスチュームジュエリー展事務局・編の「デザイナーたちの相関関係」(本書p.86)、「セレブリティとデザイナーの相関関係」(本書p.200)、「用語解説」(本書p.201~203)、「コスチュームジュエリークロニクル」(=年表、本書p.204~205)等もあり理解の助けになりました。

◆愛知会場限定の展示

上記・公式サイトによれば、愛知会場は愛知県美術館、会期は2024.4.26~6.30とのこと。会場が広いため、愛知会場限定で、コスチュームジュエリー展に関係するシャネル、ディオール、スキャパレッリなどのファッションの展示があるようです。

なお、上記「デザイナーたちの相関関係」は、デザイナーたちの師弟関係、ライバル関係を書いています。この相関関係を頭に入れて展示作品を見るのも、一興ではないでしょうか。面白いのは、シャネルとディオールはライバル関係ですが、ディオールの後を継いだイヴ・サンローランの「パンツ・スーツ」を見ると、「シャネルとの相性が良いのでは」と思えることです。

① 師弟関係(その1)ポール・ポワレ(才能を見抜く)→ スキャパレッリ ←(師事)ジバンシィ

② ライバル関係(その1)スキャパレッリ ←(対極の発想)→ シャネル

③ ライバル関係(その2)シャネル ←(対極の発想)→ ディオール

④ 師弟関係(その2) ディオール(私の後を継ぐのはイヴしかいない)→ イヴ・サンローラン

◆最後に

昨年度は名古屋市美術館「マリーローランサンとモード」でファッションの展示がありましたが、今回は展示される作品の点数が多いので、今から楽しみですね。

Ron.

 

展覧会見てある記「ブルターニュの光と風」豊橋市美術博物館

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

2024.03.07 投稿

大規模改修工事のため2022年6月から休館していた豊橋市美術博物館(以下「美術館」)ですが、3月1日にリニューアルオープンしたので早速行ってきました。リニューアルオープン記念の展覧会は「ブルターニュの光と風」(以下「本展」)。以下は、本展の概要と感想などです。

◆リニューアルで変わったのは?

美術館の玄関を入ると、正面にガラス張りのエレベーターが新設されていました。本棚が無くなり、ミュージアムショップも模様替え。エントランスホールが明るくなりましたね。各展示室の出入り口には自動扉が設置されています。なお、詳細は次のURL〔r60103.pdf (toyohashi.lg.jp) 〕をご覧ください。

◆本展について

カンベール美術館

本展のチラシ〔URL: 1215ブルターニュの光と風A4 (toyohashi-bihaku.jp)〕によれば、本展はフランス北西部・ブルターニュ地方の西端にあるカンベール美術館のコレクションを中心に、ブルターニュの風土や人々を描いた近現代の絵画を紹介しているとのこと。全3章で構成されていました。

ブルターニュ地方の位置

◆第1章 ブルターニュの風景-豊饒な海と大地(展示室1,2)

〇展示室1

目を引いたのは、131.5cm×202.5cmの大画面に描かれたテオドール・ギュダン《ベル=イル沿岸の暴風雨》(1851)です。画面中央の海にヨット、左下の大岩の上に人物、右下の岩陰には海鳥が飛んでいます。何れも点のようで、描かれた風景の雄大さが強調されています。図版は美術館のホームページ(URL: https://toyohashi-bihaku.jp/bihaku03/brittany/)に掲載されていますので、ご覧ください。

外にも、荒々しい海を描いた作品が目を引きました。荒波に揺られる小舟)の上で網を引き揚げる様子を描いた、テオフィル・ディオール《鯖漁》(1881)、嵐に遭遇して難破した親子を描いたアルフレッド・ギュ《さらば!》(1892)は、息子の亡骸に口づけする父の厳粛な姿に引き付けられました。同作家の《コンカルノーの鰯加工場で働く娘たち》(1896頃)は荒海ではないものの、漁港の生き生きとした様子とブルターニュの女性の民族衣装が印象的でした (2作品ともチラシに図版)。

〇展示室2

 展示室1からの連絡通路を歩いて展示室2に入ると、アレクサンドル・セジェ《プルケルムール渓谷、アレー山地》(1883年頃、ホームページに図版)を始め、穏やかな風景を描いた作品が並んでいました。

展示室2の最後の壁に掲げられたリュシアン・レヴィ=デュルメール《パンマールの聖母》は、ブルゴーニュの海岸を背景にした母子像。額縁が立派なので、思わず撮影してしまいました。

第1章は、名前を聞くのも初めての作家ばかりでしたが、いずれもサイズが大きく、描写力もあって見ごたえのある作品が並んでいます。

◆第2章 ブルターニュに集う画家たち-印象派からナビ派へ(展示室4)

第2章にはブルターニュに来て絵を描いた、ポール・ゴーギャン、モーリス・ドニ、ピエール・ボナールなどの作品が並んでいます。なかでも目を引いたのが、タヒチに旅立つゴーギャンとの別れを描いたポール・セルジエ《さようなら、ゴーギャン》(1906、ホームページに図版)とピエール・ボナール《アンドレ・ボナール嬢の肖像 画家の娘》(1890、チラシに図版)です。

◆第3章 新たな眼差し-多様な表現の探求(展示室3)

第3章には、新しい時代の作品が並んでいます。アンドレ・ドーシェ《ラニュロンの松の木》(1917)は、浮世絵のような作品。リュシアン・シモン《じゃがいもの収穫》(1907)は、強い光を浴びた女性の赤いリボンが目に焼き付きました。

◆最後に

冒頭にも書きましたが、リニューアル後の美術館は、内装にはガラスが多用され、近代的な雰囲気が増しています。

ロッカーが「コイン式」から「4つの数字を組み合わせる方式」に替わりました。100円玉が不要になったのは良いのですが、鍵がありません。どのロッカーに荷物を入れたのか忘れ、一瞬、あせりました。ロッカーを使った時は、「ロッカーの番号」と「セットした4つの数字」をメモすることをお忘れなく。

なお、本展は4月7日(日)まで。開催期間が短いので、ご注意ください。

Ron.

「顕神の夢―幻視の表現者」食事会とミニツアー 2024.02.17 PM0:00~03:00 

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

2月17日(土)に名古屋市美術館協力会主催の食事会とミニツアーが開催され、名鉄碧南駅前の大濱旬彩大正館(以下「大正館」)と碧南市藤井達吉現代美術館(以下「美術館」)に行ってきました。美術館で開催中の展覧会は「顕神の夢-幻視の表現者」(以下、「本展」)でした。以下は、そのレポートです。

◆食事会(正午~午後1時)

大正館での食事会は2回目。前回は2018年8月26日、「長谷川利行展」ミニツアーに併せて開催されました。前回の参加者は26名、今回の参加者は11名。参加者は少し減りましたが、コロナ禍により自粛を強いられて来た食事会が再開。ようやく華やかな雰囲気が戻って来たと感じました。

通されたのは、掘り炬燵式の落ち着いたお座敷「仲の間」。ほぼ定刻の正午過ぎに全員が揃い「花弁当」が配られました。正方形のお弁当箱を四つに仕切って、天ぷら、刺身、煮物、フルーツが並び、茶碗蒸し、一人前のミニすき焼き(トマト入り)、ご飯、赤だしがついて1,800円というリーズナブルなお値段。「碧南まで来てよかった」という歓声が上がりました。トマトの入ったすき焼きもおいしかったです。おしゃべりを交えながらの食事会が終わり、参加者が大正館を後にしたのは、午後1時過ぎでした。10分ほど歩くと美術館に到着。ミニツアー開始の午後2時までは時間の余裕があります。ミニツアー前に本展を鑑賞する人、美術館の西にあるレストラン・カフェK庵(九重味淋株式会社内)や隣の「石川八郎治商店」に向かう人、清澤満之記念館(きよざわ・まんし・きねんかん:清澤満之は真宗大学(現大谷大学)初代学長を務めた宗教哲学者。清澤満之が暮らした西方寺(さいほうじ)に併設(金・土・日・祝日開館、観覧料300円))を見学する人に分かれ、ミニツアー開始を待つこととなりました。

(補足)大正館のURLは右のとおり:https://taishokan1914.com/

◆「顕神の夢―幻視の表現者」ミニツアー(午後2時~3時)

ミニツアーの参加者は14名。午後2時少し前でしたが、集合場所の美術館2階ロビーに参加者全員が揃ったので、美術館の大長悠子学芸員(以下「大長さん」)の解説によるミニツアーが始まりました。

◎2階ロビーでの解説

大長さんからは、本展は「見えない世界を敏感に感じ取る芸術家の作品を展示したもので『顕神』は造語。51人の作家の作品を紹介する展覧会で、昨年4月に川崎市岡本太郎美術館から巡回が始まり、本展は5館目。最後の巡回です」と解説がありました。

◎見神者たち(2階展示室1)

「宗教家の作品を展示しているコーナー」とのこと。大本教の教祖・出口なお《お筆先》については「出口なおは文盲でしたが、うしとら(艮)のこんじん(金神)が降りてきて、『うしとらのこんじん』の命ずるまま、20万枚以上の紙に『うしとらのこんじん』などの文字を書いた」との解説があり、出口なおと並ぶ「もう一人の教祖」出口王仁三郎の墨書、観音像、陶器については「出口王仁三郎は芸術は宗教の母と言っていた」との解説がありました。岡本天明《三神像》についての解説は、「30分で出来てしまった作品」で、左は「つくよみ=月の神:三日月が描かれている」、中央は「スサノオ=地球の神:赤子を抱いている」、右は「天照大神=太陽の神:太陽を描いている」というものでした。

◎越境者たち(2階展示室1)

「異次元と行き来する芸術家の作品を展示しているコーナー」とのこと。「宮沢賢治の水彩画は、複製画。岡本太郎の作品は1960年代の芸術=呪術という考えにより描かれたもので、《千手》の画面上部に描かれているのは大きな手。そこからに周りにエネルギーが噴出している」との解説がありました。

O JUN(オージュン)については「非日常の世界を描く作家で、《XMAZ(クリスマス)》は新潟の少女監禁事件被害者の少女が窓から見ていた世界を描いたもの」との解説でした。中園孔二については「海で溺れた夭折の画家。手の中に目(に映った風景?)があるように見える《無題》は、本展チケットのデザインに使われています」との解説がありました。

◎幻視の画家たち(2階展示室1)

「神から与えられたビジョンを描いた作品を展示しているコーナー」とのこと。「村山槐多《尿する僧》は狂気を描いたものですが、自画像とも言われており、尿は生命の象徴でもあります。隣の作品は《バラと少女》、二つの作品が並ぶと、恋人にオシッコをかけているように見える」との解説があり、関根正二《三星》については「オリオン星座の三星で、左が姉、中央が本人、右が恋人。本人が包帯をしているのは、手術跡ともゴッホを意識した姿とも言われている」との解説でした。

萬鉄五郎《雲のある自画像》は良く知られた作品ですが、隣の《目のない自画像》については「目だけでなく口も無い不思議な作品」とのことで、河野通勢《自画像》については、「耳が特徴的で、向かって左にも耳が見えます。河野は神の声が聞こえる、光がみえる、という文も書いています」との解説がありました。

◎幻視の画家たち(2階展示室2)

庄司朝美の作品については「アクリル板の裏から彩色したもの。本人は、何かに描かされているという感覚で描いている」との解説があり、藤山ハン《南島神獣-四つのパーツからなる光景》については「頭に皿と石を載せた幻獣ケンムンを描いた作品。ケンムンは奄美大島の自然の番人ですが、今、ケンムンの棲む処はない」との解説。八島正明《給食当番》については「木綿針で画面を引っ掻きながら描いた作品。彼は、広島記念館で原爆の光線で人の影だけが残された石を見て画家を目指し、《給食当番》は2歳で亡くなった妹を追悼する作品」との解説。真島直子のオブジェ《妖精》については「頭蓋骨の上に脳が載っており、鉛筆画の《妖精》にも頭蓋骨と脳が描かれている」との解説でした。

◎内的光を求めて(2階多目的室)

「何れも、カラフルな作品で,形のない光を描いている」との解説がありました。

◎神・仏・魔を描く(1階展示室3)

最初の展示は、円空の《十一面観音菩薩立像》です。「三宅一樹《スサノオ》は霊木を彫刻したもので、平野杏子《善財南へ行く》は、善財童子という求道者が善知識を訪ね歩く物語を描いた作品。牧島如鳩《魚籃観音像》は、大漁祈願のために小名浜(福島県いわき市)の漁業組合に飾られていた作品。仏像だけではなく、画面上には聖母マリア、画面右にはイスラム風の女性。小名浜の海岸も描かれ、実際の風景と宗教の風景を描いた」との解説がありました。

◎大長さんへのQ&A

Q:本展は、どのように企画されたのですか?

A:足利美術館が中心になり、本展が巡回する5館のスタッフが協議して企画。一般財団法人地域創造の助成を受けているので「公立美術館の所蔵品を活用する」ことを重視。本展では、久留米市美術館の所蔵品・高島野十郎《蝋燭》など、公立美術館の収蔵品を積極的に展示。(補足)図録には[企画・監修 江尻潔(足利美術館次長)、土方明司(川崎市岡本太郎美術館館長)]と記されていました。

Q:来年度は、どのような展覧会を企画されていますか?

A:巡回展の「春陽会誕生100年 それぞれの戦い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ」は、5.25~7.7に予定。「没後百年 富岡鉄斎」は「開催する」ことは確かですが、それ以上は、まだ話せない状況。

◆自由観覧(午後 3時~)

ギャラリートークの終了は午後3時頃で、その後は自由観覧・自由解散となりました。令和2年度から5年度までの間は、コロナ禍で協力会の活動が制限されてきましたが、令和6年度からは、コロナ禍以前の活動ができるようになることを願うばかりです。

                            Ron.

展覧会見てある記 豊田市美術館「未完の始まり」ほか  

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

 2024.02.12 投稿

豊田市美術館(以下「豊田市美」)で開催中の「未完の始まり―未来のヴンダーカンマー」(以下「本展」)に行ってきました。当日は「第3期 コレクション展」(以下「コレクション展」)も同時開催していました。

原稿を書こうとしたら、「美術館ナビ」に本展の写真入りレビュー(2024.2.11 ライター・岩田なおみ。URLは次ページ末)が掲載されていることを知りました。なので、図版・解説はそちらに譲り、以下は簡単なレボート・感想とします。

◆本展(1階・展示室8)

 本展の作品リストによれば、「ヴンダーカンマー(驚異の部屋)」は15世紀に始まった「ミュージアム」の原型で、「世界中からあらゆる美しいもの、珍しいものが集められた」部屋とのことです。豊田市美の入口に豊田市博物館のパンフレット(URLは次ページ末)が多数積まれていました。本展は本年4月予定の豊田市博物館の開館を盛り上げるための企画かもしれませんね。

さて、本展に展示されているのは、5人の作家による現代アートの作品です。うち、4人の作品は1階・展示室8に、残る1人の作品は2階・展示室1に展示されています。

展示室の入口に展示室内の作品配置図や出品作家・出品作の紹介を掲載した作品リストが置かれていたので、鑑賞の助けになりました。余裕があれば、お守り代わりに作品リスト(URLは次ページ末)をダウンロードして、予習しておくことをお勧めします。

〇リウ・チュアン(Liu Chuang:メキシコ生まれ)

展示室に入ると、ウサギの剥製を使った作品、さらに進むとシカの剥製を使った作品を展示。先住民の伝統的な手法で刺繍した作品もあります。どれもマイルドで、なじみやすい作品だと思いました。

〇タウス・マハチェヴァ(Taus Makhacheva:旧ソビエト連邦生まれ)

立体作品の《リングロード》、装身具とその解説文書による《セレンデピティの採掘》の外、写真・動画と、多彩な作品を展示しています。2つの動画は、どちらも1時間近い作品だったので、パスしてしまいました。

〇田村友一郎リウ・チュアン(日本生まれ)

作品リストには《TIOS》と記載されていますが、樹脂製バンカー・、スマートフォン用ガラスの砂・チタン製ゴルフドライバーというインスタレーション、数多くのスマートフォンで作った照明器具、チタン製の骨、チタン製の骨とスマートフォンのレントゲン写真などの総称です。

「物を並べる」という点は、コレクション展(展示室3)に多数展示されているヨーゼフ・ボイスの作品と共通していると思いました。

〇リウ・チュアン(Liu Chuang:中国生まれ)

出品しているのは《リチウムの湖とポリフォニーの島Ⅱ》という1時間近い映像作品のみ。長いので「パスしようか」と一瞬思いましたが、思い直して鑑賞。映写機4台を使った超ワイド画面は迫力があります。座る場所もあって、疲れません。この動画を見なかったら展覧会の内容の2割を捨て去ることになっていたので、鑑賞してよかったと思います。

動画の始まりは、SF映画のようでした。「リチウムの湖」というのは南米の塩湖のことです。湖の塩水を濃縮してリチウムを採取する動画は初めて見るもの。あまりの規模の大きさに「怖ろしい」とさえ感じました。このほか、東南アジアの少数民族の映像や絵巻物に描かれた中国風の動物のアニメーションもあります。

◆本展(2階・展示室1)

〇ヤン・ヴォー(Danh Vo:ヴェトナム生まれ)

大きな木製の枠に吊り下げた、額入りの植物写真の数々と、レタリング、脚の彫像を展示しています。作品の詳細は「美術館ナビ」のレビューをご覧ください。

◆コレクション展(2階・展示室2~3)

本展に来たら「コレクション展を見ない」という手は、ありません。

展示室2は、山口啓介のエッチング。展示室3で、最初に目に飛び込んできたのはヨーゼフ・ボイスの作品ですが、折りたたみ式のクラシックカメラを板に貼り付けた、アルマン《Click-Clack Flub》、イケムラケイコ《大きいライオンの家》、塩田千春《トラウマ/日常―赤い靴》、奈良美智《Girl on the Boat》、河井寛次郎《象嵌草花扁壺》《碧釉扁壺》、黒田辰秋の漆器2点などが目を引きました。

◆コレクション展(3階・展示室4)

2020年制作の奈良美智《Though the Break in the Rain》が一番印象的でした。白髪一雄、堂本尚郎の作品を見た時は、岡崎市美術博物館「レアリスムの視線」を思い出しました。

◆コレクション展(2階・展示室5)

藤田嗣治《自画像》が印象的でした。岡崎市美術博物館「レアリスムの視線」でも《少女》《ラ・フォンテーヌ頌》を展示していましたね。

◆最後に

 昨年秋の「フランク・ロイド・ライト展」の余韻でしょうか。私が豊田市美に行った時は、若い人たちが多数来館していました。会期は長く、5月6日(月・祝)まであります。

Ron.

参考資料(本展関係のURL)

豊田市美術館

「未完の始まり」ホームページURL: Toyota Municipal Museum of Art 豊田市美術館

作品リスト   URL:wunderkammer-galleryguide-0119-A4.pdf (museum.toyota.aichi.jp)

プレスリリース URL: press-release_wunderkammer231205-5 (city.toyota.aichi.jp)

2023年度 第3期コレクション展 URL: Toyota Municipal Museum of Art 豊田市美術館

作品リスト   URL: HP(\Áê¹È.xlsx (museum.toyota.aichi.jp)

豊田市博物館

ホームページ  URL: どんな博物館? – 豊田市博物館 (city.toyota.aichi.jp)

パンフレット  URL: 01.pdf (city.toyota.aichi.jp)

美術館ナビ

「未完の始まり」レビュー URL: 【レビュー】「未完の始まり―未来のヴンダーカンマー」 豊田市美術館 ~地球規模で情報やモノが行き交う現代の「ミュージアム」のゆくえ – 美術展ナビ (artexhibition.jp) )

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