作石大河 ≪橙 Light from behind≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

名古屋造形大学卒展・修了展にて

作石大河 ≪橙 Light from behind≫

薄暗い展示室の中に、大きな祭壇のような作品が置かれている。天井には、星明りを模した青いライトが小さく光っている。作品の天井部からは、何本も吊り輪がぶら下がり、オレンジ色に光る窓の下側には長いベンチがある。

暗さに目が慣れると、壁沿いの棚に多くの石膏像が並んでいることがわかる。おそらく、普段はデッサンの授業で使用する場所らしい。

展示風景

作品に近づき、窓の中を眺めると、観覧車の看板、黒猫、吊り橋、海、大きな入道雲、傾いた自動車、巨大なビル群などが見える。窓の中の景色は、まるで廃墟のように埃か砂にうずもれている。ベンチの上には、ゲームが始まったばかりのチェス盤と、観覧車の模型の右半分が置かれている。ベンチに座ると、ふかふかでとても柔らかい。このベンチには、どのような人々が座っていたのだろうか。

≪橙 Light from behind≫(部分)

作石によると、≪橙 Light from behind≫は、「新たな出会いと別れを繰り返し、私を実らせる。そんな時間をテーマにした。」作品らしい。とすれば、窓から見える風景の廃墟感やノスタルジックな照明の色調は、もろもろの思い出との距離感の表れか。

よく見ると、作品は列車の客室の一部を再現しているようだ。さて、この列車は、これからどのような人々を乗せ、どこに向かうのか。卒業にあたり、その期待感と不安感がよく表れた作品になっている。

杉山

コメントはまだありません

No comments yet.

RSS feed for comments on this post.

Sorry, the comment form is closed at this time.

error: Content is protected !!