「美術って、なに?」に関する新聞記事・TV番組のご紹介

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

2023.10.09 投稿

名古屋市美術館で開催中の「美術って、なに?」(以下「本展」)について、新聞・TVが取り上げました。新聞記事は、9.29付中日新聞「Culture」欄(宮崎正嗣記者執筆)(以下、①)と9.30付日本経済新聞「文化」欄(宮川匡司客員編集委員執筆)(以下、②)。TV番組は10.1放送のNHK・Eテレ「日曜美術館・アートシーン」(以下、③)です。以下、その概要をご紹介します。

◆新聞・TVが取り上げた作品(〇数字は、取り上げた新聞記事・TV番組を表す)

《ポーズの途中に休憩するモデル》(2000)②(文章のみ)、③

②は〈謎の微笑を浮かべたはずのモデルが、休憩中に身を横たえてくつろぐ、しどけない姿を描いた絵は、名作のまとう聖性を解体して、あっと驚かされる〉と書き、③のナレーションでも〈疲れたモデルが休む姿〉と語ります。見慣れたモナ・リザには何か距離を感じますが、名画を抜け出て休むモナ・リザを見ると身近に感じますね。

《見返り美人 鏡面群像図》(2016)①

①は〈福田さんが正面や背後など六つの角度から鏡に映った姿を想像して描いた。当時の着物の柄や帯の結び方、髪形も調べて、角度ごとにデッサンを繰り返した〉と書いています。この記事で、オリジナル(左から3番目)以外の6体を様々に描くために払った努力を知り、作品を見る目が変わりました。

《死の仮面を被った少女(ポーズの途中に休憩するモデル》(2000)①

9/30に開催された協力会ギャラリートーク(以下「9/30トーク」)では「福田美蘭さんの作品は主に絵画、インスタレーションは珍しい」という解説がありました。

《帽子を被った男性から見た草上の二人》(1992)③(ナレーションなし)

9/30トークでは、この作品を含む4点が紹介されました。本展を鑑賞する時のキーワード「美術と向き合う新しい視点」がはっきりとわかる作品ですね。

《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》(1996)③

“Great Wave” という愛称で広く世界中に知られている作品ですが、何か変。③は「実は、裏返しです」と、種明かしをしてくれました。

《石庭》(2017)②(文章のみ)

②は〈禅寺の石庭の石が尖閣列島の島々に成り代わっている作品は、禅寺の枯山水のイメージに、さざ波を立てずにはおかない〉と書いています。確かに「時代をみる」(展示している「章」のタイトル)作品です。

《テュルリー公園の音楽会》(2000)③(ナレーションなし)

番組の最後に、画像だけ登場。本展の作品解説(福田美蘭自身が執筆)には、〈同名のマネの作品に(略)渋谷のスクランブル交差点の風景を重ねてみた〉と書いてあります。

《名所江戸百景 深川洲崎十万坪》(2022)②

②は〈画家は、この絵の猛禽類が狙っている左下の早桶(粗末な棺桶)の存在を教えられて、絵の印象がガラッと変わった。その驚きを作品にした。鷲が人間の死肉を狙う苛烈な画像から、画家が連想したのは、ロシアに侵略されたウクライナでの人々の埋葬の情景だった〉と書いています。「ウクライナでの人々の埋葬の情景」という下りは作品解説に無いないので、画家に取材して書いたのでしょうね。

《ゼレンスキー大統領》(2022)①、②(文章のみ)

 ①は〈ニュース映像がそのまま写し取られたかのよう。冷徹な目で現実を観察し、意味も感情も取り除いたかのように表現した印象派の画家マネを意識した〉と書いています。

《プーチン大統領の肖像》(2023)4点組 ①(文章のみ)、②、③

新聞・TVのいずれも取り上げています。本展では《プーチン大統領の肖像(カリアティード)》14点組も展示。「重要な作品」ということです。9/30トークでは「モディリアーニの肖像画に発想を得たもの」という解説がありました。②は〈感情をあらわにしないプーチンのわずかな表情の変化を注視して、彼はいったい何を考えているのか、と私たちは読み解こうとしている。モディリアーニについて考えるには、この人以外にモデルはいない〉という画家の言葉を書いています。

◆福田美蘭の作品は従来と何が違うのか

福田美蘭の絵画は従来と何が違うのか、ということについて、②は〈近代以降の絵画は、オリジナルな表現への情熱に突き動かされてきた。(略)これに対し福田は、固有の表現をまさぐるように追究する絵画に、30年以上前、自ら疑問符を投げかけた。(略)福田が新たな絵画制作への足掛かりとしたのは、複製図版などを通して多くの人が目にする古今東西の名画や名作、それにメディアが流す報道写真や映像である。その流布するイメージをベースに据え、新たな視点で描き直すことで、我々が見過ごしていたものの見方を、意表を突くように提示する〉と、書いています。

◆最後に

9/30トークに参加した皆さんからは、異口同音に「楽しかった。面白かった」という感想を聞きました。本展について、①は〈名画やニュース映像といった私たちが普段見慣れた「イメージ」を通し、美術と向き合う新しい視点に気づかせてくれる〉と書き、②は、本展から伝わるものについて〈美術作品を身近に感じてもらおうとする強い意志〉〈今を生きる画家の鋭敏な感覚〉と書いています。

9/30トークで本展の作品から「美術と向き合う新しい視点」「美術作品を身近に感じてもらおうとする強い意志」「画家の鋭敏な感覚」を強く感じたので、参加者から「楽しかった。面白かった」という感想が出てきたのだと、改めて思いました。

Ron.

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