令和4年の大河ドラマは「鎌倉殿の13人」。主人公の北条義時を始め、時政、宗時、政子、実衣など北条氏の面々が登場しますが、なんと名古屋市美術館協力会は、今年の大河ドラマで話題になると思われる北条氏ゆかりの地(現在の伊豆の国市)を「秋のツアー箱根2016」で訪れていました。9月25日(日)のことです。
◆伊豆の国市で見た場所は
当日は箱根の岡田美術館見学後、源頼朝が配流された「蛭ケ小島(ひるがこじま)跡」の横をバスで通り過ぎ、世界文化遺産「韮山の反射炉」の隣にある「蔵屋鳴沢」で昼食。反射炉を見ながらの網焼きバーベキューでした。とてもボリュームがあり、皆、大満足。300円の入場料を払って反射炉見学をした人もいました。
ツアーの最後は、反射炉の目と鼻の先にある、北条政子の父・北条時政が建立した寺院の願成就院(がんじょうじゅいん)。阿弥陀如来坐像を始め、平成25年に国宝指定された運慶作の五体の仏像を安置。我々が本堂に入るのとほぼ同時に住職が登場して「この阿弥陀如来は体格が良くて男らしい仏様で、両掌を前に向ける説教印を結んでいるのが特徴。地震で螺髪、鼻、目が損傷し、玉眼ではなくなった。体内から五輪塔型の木札が見つかり、運慶作であることが確認された。現在の本堂は、50年ほど前に再建された」との解説がありました。(注:願成就院については、呉座勇一「頼朝と義時」(講談社現代新書)p.188に〈文治五(1189)年、北条時政は本拠地である伊豆国北条に願成就院を建立し、奥州征伐の成功を祈願している(『吾妻鏡』)。〉という記述があります)
見学後のバスでは、会員の藤井さんから阿弥陀如来像について「座像は瞑想など修業中や説教中のお姿。一方、立像は人々を救済しようと立ち上がったお姿。両足を揃えたお姿だけでなく、歩き出したように片足が前に出た立像もある」という内容のお話があり、参加者一同が聞き入っていました。
◆その後、調べた事柄
・運慶のこと(Wikipedia による。(注)は、私の補足です)
平重衡による「南都焼討」(1180)で東大寺・興福寺が焼失。東大寺・興福寺の再興に伴う仏像制作は、京仏師と奈良仏師が分担しましたが、主要な仏像は京仏師の分担でした。運慶は奈良仏師のひとりとして興福寺の仏像制作に取り組んでいましたが、その後、鎌倉幕府関係の仕事を引き受け、1186年には願成就院の阿弥陀如来坐像、不動明王像及び二童子像及び毘沙門天像を作り始めました。奈良に戻ってからは、東大寺・興福寺の仏像を制作。有名な東大寺・金剛力士像は1203年に完成。晩年は、源実朝・北条政子・北条義時など、鎌倉幕府要人の仕事を手掛けています。(注:南都焼討といえば、最近、澤田瞳子の「龍華記」を読みました。「龍華記」は南都焼討を巡る小説で、京仏師に反発して伊豆に旅立つ運慶も登場します)
・北条時政のこと(本郷和人「北条氏の時代」文春新書 による。(注)は、私の補足です)
p.17 平安時代後期、北条氏は伊豆国に暮らしていました。伊豆半島の西側、三島から少し南に下ったところに幕末に作られた反射炉が世界遺産になった韮山(にらやま)があります。この韮山の西側に北条と呼ばれる地域がありましたが、ここが北条氏発祥の地になります。(注:現在の地図にも、「中條」「南條」という地名が残っています)現在でも北条政子(1157~1225)の産湯に使ったとされる井戸や時政の墓などのゆかりの史跡があり、北条氏発祥の地であることがよくわかります。(注:北条時政の墓は願成就院の境内に、北条政子産湯之井戸は願成就院の北にあります)
p.22 頼朝が流されたのは、時政の本拠地の近くにある蛭ケ小島と呼ばれる場所です。多くの人が海に浮かぶ「島」をイメージすると思いますが、山間の盆地にある平地です。正確な場所は特定していないのですが、川の中洲であったとも考えられています。頼朝は、この地で十四歳からの二十年を過ごします。
p.81 (略)(注:1205年の)閏七月、時政が主導する、さらに大きな陰謀が「発覚」しました。牧の方と計って、将軍・源実朝をその座から引きずりおろし、平賀朝雅を将軍にしようとしたというものです(牧氏の乱)(略)義時は軍勢を率いて一気に館を囲みます。そして、勢いのまま実朝を連れ出し、自分の保護下に置きました。「玉」を取られた時政はこれでおしまいです。時政は、その日のうちに出家させられ、鎌倉から本拠地の北条に追われました。(略)十年後の1215(健保3)年に復帰することなく78歳の天寿を全うして時政は亡くなりました。ちなみに愛妻の牧の方はいつの間にか京に戻っています。藤原定家の『明月記』には、非常に贅沢をしている人物として描かれていますので、それなりに楽しい後半生だったのでしょう。(略)
◆最後に
当時、願成就院や北条時政が大河ドラマで注目されるようになるとは思ってもみませんでした。今は、穴場的なスポットを、ゆったり見学できたことが「秋のツアー箱根2016」の良い思い出となっています。また、坂東彌十郎「北条時政」・宮沢りえ「牧の方」が、どのような「策略家ぶり」を演じるか、今から楽しみです。
Ron.
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