展覧会見てある記 コレクション展:絶対現在 ほか 豊田市美術館

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

豊田市美術館では「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」にあわせて、河原温「Todayシリーズ」を中心とした「コレクション展:絶対現在」を始めとする「コレクション展」も開催中。以下は、そのレポートです。

1F:展示室8「コレクション展:絶対現在」

展示室に入った正面にあるのは、ボリス・ミハイロフ《イエスタデイズ・サンドイッチ12》(1965-81)。二つのカラースライドを重ね合わせた作品のようです。「重ね合わせ」という行為で「時間」を表現しているのでしょうか。その向かいにある3点の作品は、下道基行《Torii》(2006-12)。かつて、日本人が住んでいた異国の地に建てられた「鳥居」を撮影したシリーズです。公園のベンチに再利用されている鳥居や海岸の草むらの中にポツンと立っている鳥居、墓地にある場違いな鳥居が写っていました。鳥居が立てられた時から現在までに過ぎ去った時間を感じることができます。ローマン・オルパカ《オルパカ1965/1-∞》は、数字を書き込んだ痕跡を示す作品。《ディテイル2601104-2626001》をよく見ると、2601104から2626001までの数字がぎっしりと書き込まれていました。

「コレクション展:絶対現在」の中心である河原温「Todayシリーズ」は、壁4面にわたって《MAY 1.1971》から《MAY 31.1971》まで31点が勢ぞろいするという、普段はできない大掛かりな展示です。見応えがありました。

杉本博司《カントン・パレス・オハイオ》(1980)は、劇場シリーズの一つ。2020.7.15付日本経済新聞「私の履歴書」に、ニューヨーク・イーストビレッジの映画館で撮影した時の話が書いてありました。《初めの七日間》(1990-2003)は、海景シリーズの7点。一番左の作品は霧に覆われていますが、一番右の作品は空と海がくっきりと分かれ、波もはっきり見えます。2020.7.19付「私の履歴書」には〈先祖が見ていた海は、今私が見ている海と、おそらく大きくは変わっていないのではないのかと思った〉と、書かれています。古代の海と現在の海のつながりを表現しているのですね。

李禹煥の《線より》(1977)と《線より》(1981)は、どちらも青い縦線が何本も描かれた作品。一つだけでも、時間の経過を表現していますが、二つを並べると時の隔たりも感じることができます。

ミケランジェロ・ピストレット《窃視者(M.ピストレットとV.ピサーニ》(1962,72)を離れたところから見たら、高松次郎《赤ん坊の影No.122》(1965)が写り込み「鏡の効果はすごい」と感心しました。

1F:展示室6・展示室7

普段は、主に小堀四郎の作品を展示している展示室6ですが、今回はクリムト、エゴンシーレ、ココシュカ及びアンソールの作品に加えて浅野弥衛、北川民次の作品も展示されています。展示室7は、いつもどおり宮脇晴(はる)、宮脇綾子の作品でした。

2F:展示室5

入口近くに、藤田嗣治の作品が3点並んでいます。真ん中は《美しいスペイン女》(1949)。いつ見ても、うっとりします。両脇は、第二次世界大戦中に描かれた《キャンボシャ平原》(1943)と《自画像》(1943)。《自画像》は「おかっぱ」ではなく、時局を反映して丸刈り。映画「FOUJITA」(2015)にも、複製が登場していました。

河原温の「Todayシリーズ」も2点。《June 30.1978》と《Oct 21.1981》がありました。

展示室の中央は工芸品。青色が鮮やかな河合寛次郎の陶器《碧釉扁壺》(1964)と鮑貝が美しい黒田辰秋の漆器《乾漆螺鈿捻稜水指》(1965)と《螺鈿牡丹紋筐》(1941-45頃)。いずれも印象的でした。ステンレス製の抽象彫刻=毛利武士郎《Mr.阿からのメッセージ 第3信》(1966)は、図面も展示しています。

展示ケースの中には、多数の日本画が展示されています。中でもミミズクと極細の月を描いた、前田青邨《二日月》(1946)の描線はきれいでした。ただ、二日目なら、月の右側がうっすらと見えるはずなのですが、この作品は月の左側が細く見えています。なぜなのでしょう。構図の関係ですか???

Ron.

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