読書ノート 「フリーダ・カーロのざわめき」 とんぼの本(新潮社)

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

映画「フリーダ・カーロに魅せられて」を見て、もっとフリーダ・カーロ(以下「フリーダ」)のことを知りたいと思い、近所の図書館で借りてきたのがこの本です。内容は、「芸術新潮」2003年9月号特集「フリーダ・カーロのざわめき」を再編集・増補したもので、著者は森村泰昌・藤森照信・芸術新潮編集部。発行所は株式会社新潮社、発行は2007年9月20日、定価は1,500円(税別)でした。

◆フリーダの評価について

冒頭の「フリーダは人生も面白いけど、絵がおもしろい!」と第1章は、森村泰昌が執筆。「フリーダは人生も面白いけど、絵がおもしろい!」には、こんな文があります。(以下、P.○は本のページを示す)

p.6 僕がフリーダ・カーロに扮して原美術館で展覧会をやったのは2001年。(略)今度はちょっとマイナーな人を選んだんですねって言う人もいました。でも、フリーダ・カーロって、メキシコではものすごく有名なんですよ。(略)映画「フリーダ」が公開されてだいぶん話題になりましたが、日本でもきちんとこの画家のことを評価すべきだと、当時は考えていたものです。ただしそれは、フリーダ・カーロの人生が凄かったからではなくて、彼女の絵がおもしろいから。そこが一番重要なところです。(略)常識を突き抜ける。彼女にはそういうところがあるんです。(引用終り)

2003年には「フリーダ・カーロとその時代」展が名古屋市美術館に巡回し、その生涯を描いた映画「フリーダ」も公開されました。しかし当時、フリーダについての知識は皆無。展覧会も映画も評判は聞いたものの、どちらも見ていません。現在は、映画「フリーダ・カーロに魅せられて」が上映されるなど、当時と比べてフリーダの評価は高まっていると思います。「あの時、見ておけばよかった」と悔やまれるばかりです。

◆フリーダの作品について

フリーダの作品については、以下のように書いています。

p.7~8 画集で見るだけではわかりにくいんですが、フリーダ・カーロの絵は、実はあれっと思うくらいサイズが小さい。ずっと体調の悪い人でしたから、大きな絵は物理的に描けなかった。テクニック的なことを言うと、決してうまくはない。ただ、ものすごく丁寧な画家です。 (略)絵の中でいろんな要素が喧嘩したまま混ざり合っている。そうした状態が醸しだす独特の風合いが、彼女の絵の特徴です。(引用終り)

第1章には、こんな文もあります。

p.55~56 フリーダ・カーロは、本当は絵画によって社会的発言をしたくてしょうがない人だった。(略)彼女がディエゴ・リベラに憧れた最大の理由は、「私もあんなんやってみたい」だと思うんですよ。彼は当時のメキシコにおける社会主義革命のリーダーでしたからね。知識人の間ではヒーローです。壁画によって民衆を動かしたディエゴの影響力は絶大だった。でも、幸か不幸かフリーダは体が自由ではなかったから、やりたいと思っても巨大な壁画なんか描けない。アトリエにこもって小さな絵を描くしかなかったんですよ。(引用終り)

 著者が「幸か不幸か」と書いたように、巨大な壁画は諦めてアトリエにこもり、フリーダ自身の気持ちを一心に表現したので、逆に今、彼女の作品が見る者の心に響くのだと思います。

◆フリーダ歴代恋人列伝(執筆は、芸術新潮編集部)

映画「フリーダ・カーロに魅せられて」では「ディエゴ・リベラの不倫が発覚し、フリーダは酒と恋人に助けを求めた」とナレーションがありましたが、この本のp.98~103では、初恋の人からディエゴまで5人の恋人を紹介しています。なかでもディエゴについては「愛し合っているからこそ傷つけあってボロボロになる。それでも離れられない。そんな二人だった。だからこそ、一度は別れながら、2度目の結婚をしたのだ」と書いています。まさに「愛憎がごっちゃになった、でも運命的なパートナー」(p.49)だったのです。

◆名古屋市美術館の所蔵品も紹介

この本には多数の図版が掲載され、その中には名古屋市美術館が所蔵する《死の仮面を被った少女》(1938)と《オブジェによる自画像》(フリーダが1946年当時恋仲だった画家バルトーリに送った品々を名古屋市美術館で再構成したもの)もあります。「名古屋市美術館はメキシコに強い」と再認識しました。

◆最後に

蔵書にしようと思いAmazonで検索したら、全て中古本でした。2007年発行なので仕方ないですね。でも、近所の図書館に行けば借りることができると思います。

Ron. 投稿:2021年3月8日

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