展覧会見てある記 豊橋市美術博物館「コレクション展」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

巣ごもり中ですが、豊橋市美術博物館に行ってきました。1階の講義室と第2企画展示室では愛好家団体の写真展が、一番奥の特別展示室ではコレクション展が開催されていました。

◎1階・特別展示室2020コレクション展 郷土の美術「白い情景」

 展示室の入口には平川敏夫の《白樹》(1960)が展示されています。画面の下4分の1ほどは真っ暗、下草でしょうか。枯れたように真っ白な樹木が何本も生えていますが、よく見ると樹木の下には若木。「死と生」を対比させているのでしょうか。コレクション展の説明書きには「白をテーマにした日本画を展示」と書いてあります。

最初の展示ケースには、中村正義の《松梅菊(しょうばいきく)》(1959)と《斗士(とうし)》が並び、その右に大森運夫(かずお)の《皓(しろ)き修羅[小下図]》(1984)。《松梅菊》は、淡いモノトーンの静物画、《斗士》は細長く直線的な仏像を描いたもので「自画像のバリエーションとみなすこともできます」との解説がありました。《皓き修羅》は長野県飯田市の浄瑠璃人形を描いたもの、人形の表情が印象的です。次の展示ケースには平川敏夫の四曲一隻の屏風《白松(はくしょう)》(1978)と四曲二双の屏風《雪后閑庭(せつごかんてい)》(右隻1985)(左隻1992)が並んでいます。《雪后閑庭》の白は「アラビアゴムなどの防色材で描いた上から墨を施し、防色材を除去することであらわした地色」とのことです。三つ目の展示ケースには星野眞吾の作品が4点。抽象画や和紙のコラージュ、人拓などバリエーションに富んでいます。

最後の展示ケースは「冬景色のスケッチ」。日本画ではなく、石川新一、浅田蘇泉、平川敏夫、大森運夫のスケッチです。展示室に置いてあった展示解説シートには、浅田蘇泉は「中村正義に次いで中村岳陵の門下生になった」、石川新一は「豊橋高等女学校(現:豊橋東高等学校)の美術教師。高畑郁子は女学校在学中に石川新一から絵を学び、彼を通じて中村正義の画室を訪ねるようになった」などと書いてありました。石川新一のスケッチ《[豊橋百景第87景]大池雪景》は、豊橋市民の憩いの場、女学校の近くの池の景色を描いたものです。

展示解説シートには「昭和26年、正義は絵画塾『中日美術教室』を発足させました。正義のほか、星野・大森・平川・高畑の5名が参加」とも書いてあります。特別展示室2020コレクション展に展示されているのは「全て、中村正義ゆかりの画家の作品」ということになりますね。

◎2階・第Ⅲ期コレクション展・シンボル展示コーナー「海外に渡った現代美術家 ―荒川修作と飯田善國―」

 2階へのスロープを登ると、荒川修作《S.A.方程式》(1962)が展示されています。解説によれば「S.A.方程式は、Syusaku Arakawa方程式のこと。落下によって人間から他のものになる方法を示している」そうです。画面右下から右上に向って直線と矢印、2つの円錐が、画面上部には右から左に向かう矢印と2本の直線が、画面左下には、中に格子のある円が描かれています。解説には「矢印に沿って2つの円錐が進み、左端で爆発して円形の格子に落下しており、我々の視点を別次元に導いているかのようです」と、書いてあります。

荒川修作といえば、受付でもらった「Nagoya art news No.176」に、名古屋市美術館の「名品コレクション展Ⅰ」(2021.1.5~3.14)では同時に、特集として荒川修作の初期平面の仕事を紹介する、と載っていました。

◎2階・第Ⅲ期コレクション展・第4展示室「洋行画家たちの夢」

 2階の第4展示室は、フランスやアメリカに渡った画家たちの作品を展示。最初の作品は黒田清輝《夕陽》(1898)、芦ノ湖の夕暮れを描いたものです。佐分眞、荻須高徳、鬼頭鍋三郎、北川民次など、名古屋市美術館の常設展でお馴染みの作家の作品もあります。藤田嗣治の鉛筆画《ユキのポートレート》も目を惹きました。ユキの本名はリュシー・バドゥー、1920年代のパリで藤田の絶頂期を共にした女性です。そういえば、名古屋市美術館所蔵の《自画像》(1929)にもユキのポートレートが描かれていましたね。

◎1階・休憩コーナー「連続テレビ小説 エール展」

 スロープを降りると、休憩コーナーで「連続テレビ小説 エール展」が12月27日(日)までの会期で開催されていました。出演者の等身大パネルの外、関口音が出演した学芸会「竹取物語」で使われた烏帽子などの小道具も展示されています。

◎最後に

 会期は、特別展示室のコレクション展が来年1月31日(日)まで、第Ⅲ期コレクション展が来年1月11日(日)まで、いずれも入場無料。以上の展示を見て回り「コレクション展は大事」だと再認識しました。

コレクション展といえば、12月7日付け日本経済新聞・文化面「回顧2020 美術」に「横浜美術館で開催中の『トライアローグ』展では同館と愛知県美術館、富山県美術館がタッグを組んだ。それぞれの所蔵品からピカソらの名作を厳選し、20世紀の西洋美術史を通観する企画展を実現したのだ。『今後はコレクションを生かすことが一層求められる。一つのモデルケースになればいい』と同館担当者」と書いてありました。「トライアローグ」展は、2021.4.23~6.27の会期で愛知県美術館に巡回予定のようです。楽しみですね。

Ron.

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