3月21日(祝)に行われた「点描の画家たち」ミニツアーに参加しました。午後2時、愛知芸術文化センター12階に集合。アートスペースE、Fで中西園子学芸員の解説を聞いた後、10階の愛知県美術館に移動し自由行動です。
中西学芸員の解説によれば、
①日本で点描や新印象派を紹介した展覧会は今回が3回目
②クレラー=ミュラー美術館のオリジナルコンセプトは「点描」、「新印象派」ではなく「分割主義」
③オランダのクレラー=ミュラー美術館の名品が揃う
の3つが本展の特色とのことです。
分割主義と聞くと「プーチン大統領によるウクライナの領土分割」などと連想してしまいますが、その趣旨は「色を純粋色に分割して並置する」ということであり、明るく鮮やかな色彩とするため「絵の具を混ぜるのではなく、カンバスの上に並べて、網膜上で一つの色と認識させる」というもので「補色の組み合わせで色彩の鮮やかさを強める」手法とのことです。
確かに、今回の展覧会名は英文表示で”DIVISIONISM FROM VON GOGH AND SEURAT TO MODDRIAN”=「分割主義 ゴッホ スーラからモンドリアンまで」となっており、「点描」にとどまらず「分割主義」の原理で制作されたゴッホやフォーヴィズム、モンドリアンの作品まで展示しています。
前置きはこのくらいにして、展示作品を紹介しましょう。
先ず、会場に入って正面の壁にはゴッホの「レストランの内部」が展示されています。「ゴッホが点描の画家?」と思いましたが、分割主義というオリジナルコンセプトを考慮すると納得できます。
最初の部屋は「印象派の筆触」をテーマに、国内美術館の所蔵作品を展示しています。モネの「ラ・ロシュブロンドの村」「ジヴェルニの草原」は夕焼け空に光る茜雲が印象的でした。スポットライトの効果でしょうか、絵の裏から光が出てくる感じがします。
二つ目の部屋は「スーラとシニャック」で、スーラの「ポール=アン=ベッサンの日曜日」はパステル調の色彩もよかったですが、堤防に佇む小さな人物までも克明に描写しており、彼の忍耐力に感心しました。メナード美術館所蔵の「サーカスの客寄せ」(展示は3月23日まで)は小さな素描ですが、思わず見入ってしまいました。モーリス・ドニの点描もあります。
三つ目の部屋はクレラー=ミュラー美術館所蔵のゴッホを中心に、国内美術館所蔵のゴーギャンやヴラマンク、ドランの作品も展示し、分割主義の影響の広さを示しています。
四つ目の部屋はベルギーとオランダの作品で、初めて目にする作品ばかりでした。チラシにはテオ・ファン・レイセルベルヘの「7月の朝」やヤン・トーロップの「海」が紹介されていますが、個人的には、レイセルベルヘの「満潮のペール=キリディ」に惹かれます。「銭湯の大きな壁面にタイル画で描いたら迫力があるだろうな」と妄想してしまいました。ヤン・ファイルブリーフの「積み藁のある風景」とヨハン・アールツの「砂丘の農家」はサイズも構図もほぼ同じですが使っている色彩が違うので、その対比が面白く、しばらくの間絵の前に立ち止まり2つの作品を見比べていました。
最後の部屋は、モンドリアンです。赤、青、黄の3原色と白、黒だけで描かれた「赤と黄と青のあるコンポジション」は「点描」とは程遠い作品ですが、「色を純粋色に分割して並置する」という分割主義の方法には従っており、今回の展覧会のオリジナルコンセプトの奥深さに感心しました。なお、作品鑑賞に関係ありませんが、モンドリアンの作品は「額」まで一体となっているので「大きな額の中に、額に入った絵がある」という展示が多く、面白い発見でした。
なお、三連休初日ということで入場者が多く、我々もモギリのところで行列待ちをしました。展示室内は鑑賞に支障を来さないギリギリの人出です。人ごみを避けたいなら、平日の閉館間際に入ると良いでしょう。
Ron.
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