豊田市美術館で、「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」を見た。
展示されているのは、以下の女性作家14名による約120点の現代美術の作品群。赤穴桂子、芥川(間所)紗織、榎本和子、江見絹子、草間彌生、白髪富士子、多田美波、田中敦子、田中田鶴子、田部光子、福島秀子、宮脇愛子、毛利眞美、山崎つる子。

展示室にて
最初の展示室は、「始まりと終わりの部屋」と名付けられ、作家ごとに1点ずつ、全部で14点の作品が展示されている。作品リストを見ると、この部屋の作品を見た後に大きな展示室を見るように促されている。最初に、それぞれの作家の作品を一覧し、展示全体の雰囲気をつかむという配慮なのだろう。

芥川(間所)紗織
芥川(間所)紗織の「女シリーズ」、「神話・民話シリーズ」が展示されている。彼女の作品は、染色技法で制作され、絵画とは違う色の滲み具合や平坦さ、モチーフとなる人物のとらえ方に特徴がある。

白髪富士子
不規則な曲線で左右に分割された、長くて白い木製の板が、斜めに置かれている。見ていると、のこぎりを使うときの彼女の息遣いが目に浮かぶ。また、木製の作品の後ろ側の絵画を見ると、画面の所々に割られたガラスが接着され、レリーフのように盛り上がっている。はたして、これらの作品は彫刻なのか、絵画なのか、不思議な印象だ。

田部光子
半球状の突起が円形にならび、その周囲を尖った花弁の模様が取り巻いている。よく見ると、小さな半球は半分に割ったピンポン玉で、花弁はアイロンの焦げ跡のようだ。彼女は、前衛美術集団〈九州派〉の主要なメンバーのひとりであり、フェミニズム的な問題意識を表現してきた作家。大量のアイロンの焦げ跡や、卵の殻のようなピンポン玉は、日々繰り返される女性の家事を暗示しているかのようだ。

山崎つる子
メタリックな銀色に光る立体作品は、作品の前を横切る観客の姿を映し込み、また、床に置かれた照明に照らされ、様々に表面の模様が変化する。その隣には、赤、青、黄のカラフルさで目を引く絵画作品が置かれている。どちらも彼女の作品だが、作品の示す方向性には、明確な差異が見て取れる。

本展では時代ごとや作家ごとの章立てをしていない。また、展示壁にも視線を遮らない工夫が見て取れ、大きな展示空間を見通し良く使っている。おかげで、展示室がすっきりと鑑賞しやすい空間になっていた。

本展は、中嶋泉著『アンチ・アクション─日本戦後絵画と女性画家』(ブリュッケ、2019 年、第42 回サントリー学芸賞受賞)で提示された問題意識から出発している。
コレクション展
開館30周年記念コレクション展「VISION 星と星図 第2期 星図Ⅱ:独りと、集団と」が開催されている。展覧会を見ると、たびたび思うことがある。それは、「サイズの大きな作品を適切な状態で鑑賞するには、それに見合う大きな展示室が必要」ということだ。本コレクション展に出品されている村岡三郎の作品のように大きな作品を展示できる美術館は貴重。ぜひ実物を見てほしい。

迎英里子の新作インスタレーションも展示されている。今回は、パソコンやスマホなどに使われるメモリーにちなむ作品だ。スマホの内部構造の写真に比べ、ずいぶんとアナログな印象だが、きちんと機能するとのこと。

杉山博之


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