前編の”国際芸術祭「あいち2025」(愛知県陶磁美術館)”の続きです。
沖潤子の作品は、駅からほど近い、小高い御亭山の上にあります。作品を展示した「無風庵」の周囲には、日清・日露、太平洋戦争の戦没者のための碑や塔があり、作品に使われている白い布、赤い糸、針との関係性は明白です。また、床に置かれた四角い陶土には無数の針が刺され、その光景はまるで針供養のようです。身近な人々や道具を大切にする気持ちが幾重にも重なる、緊張感のある表現になっています。

冨安由真の作品は、来場者が少ない時間帯に見ることをお薦めします。できれば、展示室内で数分間、立ち止まっていると、作品のメッセージを受け取りやすいです。見終わったら、作品のタイトルにある「The Silence」と「Two Suns」の意味を考えてみて下さい。

佐々木類の作品は、廃業した銭湯に展示されています。かつて、銭湯の利用者でにぎやかだった空間に、ガラスに封じ込められた植物の痕跡が、静かにライトに照らされています。
入口の番台の上に古い時計が掛けられています。止まったままの時計の針がタイムマシンで到着した過去の時間を示しているようで、映画の一場面みたいです。いったい、どれほどの時間を旅行したのでしょうか。

杉山博之
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