璃月ゆあ ≪同業者コミュニティの形成と印刷産業発展の可能性について-インタビュー分析による他己紹介をワークショップの契機として-≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
情報科学芸術大学院大学(以下、IAMAS)の修了研究発表会/プロジェクト研究発表会は、ソフトピアジャパン・センタービルで開催されている。このビルは、大垣駅周辺で一番の高層ビルらしく、最上階の展望エリアからは市街の景色を一望できる。この時期、西の方角には雪をかぶった伊吹山もよく見える。

情報科学芸術大学院大学修了研究発表会/プロジェクト研究発表会にて (その1)

璃月ゆあ ≪同業者コミュニティの形成と印刷産業発展の可能性について-インタビュー分析による他己紹介をワークショップの契機として-≫

研究成果をまとめたポスターが、ずらりと並んでいる。他の美大、芸大でも論文の概要展示は見かけるが、IAMASでは修了要件として作品と論文の両方に取り組むため、論文の本数が多いみたいだ。

その中で、衰退する印刷産業に関するアートっぽくない研究論文に目が留まった。市中のニュースでも書店の減少について見聞きすることがある。自分の周りでも、いろいろな資料や書類が電子データ化され、紙の印刷物はずいぶんと減った。そのような状況下、印刷産業が生き残るためにはどうするか、ひとつの会社のみでは解決できない課題にどのように取り組むかを検討した研究論文だ。

展示風景

研究中に始めた実験的な取り組みは、実験に参加した会社間の関係性にゆっくりと、明らかな変化をもたらすという、明るい未来も見え始めている。しかし、本研究では、決して短期的な解決策を求めていない。効果が見えてくるのは、10年先か、20年先か、ひょっとすると30年先かもしれない、そのような長い目で業界を見渡した提言がまとめられている。

ポスター展示の傍らに、「月の声を聴くための言葉」という題名の小冊子が置かれていた。

展示風景

ページを開くと飾りのスリットがあったり、微細な感情の表現のため、ページごとの行間が微妙に変えてあったり、多くの工夫が凝らされている。この小冊子には、ひとつの印刷会社ではカバーできない印刷・製本技術が詰め込まれている。この小冊子を作る時の経験が、本研究の出発点になっているようだ。

展示風景

作家によれば、本研究には「宝物を探す」ような気持ちで、誠実100%で取り組んだそうだ。また、修了にあたり作品は制作していないが、論文自体が作品でもあると感じているそうだ。

アートっぽくない、異色な展示だが、とても有意義な「作品」を見ることができた。

杉山

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