松井美緒 ≪残波 – Echoing waves≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
情報科学芸術大学院大学(以下、IAMAS)の修了研究発表会/プロジェクト研究発表会を見に行こうと知人を誘うと、「遠いから」と断られることが多い。とは言え、名古屋駅からIAMASまでの所要時間は、長久手にある愛知県立芸術大学に行くのと、さほど変わらない。愛知県から岐阜県へ、県境を超えることが「遠い」という思い込みになるのかもしれない。

情報科学芸術大学院大学修了研究発表会/プロジェクト研究発表会にて (その3)

松井美緒 ≪残波 – Echoing waves≫

≪残波 – Echoing waves≫は音の作品だ。音の作品を写真と文章で紹介することには限界がある。可能なら実際に展示会場で体験してもらいたいのだが、既に展示終了のため、記録として簡単に紹介する。

入口のモニターに表示された注意事項を読み、予約表に記名して順番を待つ。モニターの表示が「入室可能です」に変わったら、ドアを開け、真っ暗な室内に入る。右側の壁面の所々に蓄光テープでマークがあるので、部屋の奥まで進み、蓄光テープでマークされた椅子に座り、開演を待つ。

展示会場入口

座った場所の正面あたりの割と近いところから、時々「コーン」という音が聞こえる。日本庭園で見かける、流水と青竹を組み合わせてリズミカルな音を聞かせてくれる「ししおどし」のような音だ。ビルの中の一室で、疑似的に日本庭園の風雅を体験する作品だろうか。

時間がたつにつれ、「コーン」の音の他に、遠くを走る自動車の騒音のようなノイズが混ざり始める。だんだん、不快感を覚えるほどにノイズが強くなる。突然、照明が灯り、部屋の中央に仕掛けられた「ししおどし」が、その姿を現す。

≪残波 – Echoing waves≫(部分)

自分が聞いていたのは、竹で作られた本物の「ししおどし」ではなかった。聞いていたのは、配管などに使われる塩化ビニール製の偽物の「ししおどし」だった。

本日以降、「ししおどし」の音が聞こえてきたら、それは本物の竹の音か、竹以外の筒の音か、録音再生の音か、聞き耳を立てることになりそうだ。ただし、それは社会を飛び交う真偽不明の情報と同じく、容易には判別がつくまい。

杉山

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