上田麟太郎 ≪視聴者の部屋≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
今年の情報科学芸術大学院大学(以下、IAMAS)の修了研究発表会/プロジェクト研究発表会の特色として、展示作品のまとまりの良さがある。他の美大、芸大の展示を見ると、「百花繚乱」的な展示が多いが、本研究発表会は優秀なキュレーターが丁寧に準備した展覧会のような心地よさがある。

情報科学芸術大学院大学修了研究発表会/プロジェクト研究発表会にて (その4)

上田麟太郎 ≪視聴者の部屋≫

研究発表会の受付で渡されたリーフレットを見ると、一番近い展示は2階らしい。階段を上り、展示作品「15」のマークの貼られた部屋を見つけた。元々の部屋の用途は「男子仮眠室」らしい。ホワイトキューブの展示室や、アトリエではないあたりが目新しい趣向だ。上がり框で靴を脱ぎ、襖をあけ、仮眠室に静かに入る。

展示会場入口

室内は消灯され、壁面にライブ配信のログ画面が映っている。その他に敷かれたままの布団、使用中のノートパソコン、タブレット、布団の上にはスマホが転がっている。薄暗い室内で、明るく光るモニターがデバイスを使用する人間の存在を暗示している。

作品は映像だけではなく、ログに対応する数名の男性のたわいない会話が聞こえてくる。会話を聞くと、かみ合っているような、ずれているような微妙な調子が続く。

≪視聴者の部屋≫(部分)

作家は、ライブ配信のコミュニケーションと対面のコミュニケーションの相違に興味があるようだ。≪視聴者の部屋≫の登場人物たちは、思い出話や噂話をして、画面の向こうの見えない相手とコミュニケーションをとる。その内容がすれ違っていても、お構いなしだ。

本作は、様々なコミュニケーションとディスコミュニケーションを例示することで、コミュニケーションにおける人間存在の必要性への疑問を提起しているのだろうか。すれ違う会話の様子は、まるで生成AIとの会話に似ている。

杉山

コメントはまだありません »

No comments yet.

RSS feed for comments on this post.

Leave a comment

コメントを投稿するにはログインしてください。

error: Content is protected !!