吉田一真 ≪道を横断する≫

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
京都の岡崎公園で展覧会を見た後、京都駅近くに移転した京都市立芸術大学の作品展に立ち寄った。驚いたことに、この大学では卒業予定者だけでなく、全学生が作品展示を行うようだ。終了時間に追われながら、多くの展示を見た中で印象に残った作品を紹介する。

京都市立芸術大学作品展にて(その1)

吉田一真 ≪道を横断する≫

展示会場の方向から「ガラガラ」と大きな音が聞こえてくる。近所で工事中かと思うほどの音量だ。その音を道案内にして、建物の間を奥へ奥へと進む。

作品は、人間が入れる大きさの黒い回し車(超大型のハムスターホイール)。響き渡っていたのは、作家がハムスターのように回し車を回転させる音だ。

≪道を横断する≫

回し車の横のモニターをみると、地図アプリのストリートビューが映し出されている。その中央あたりに赤色と灰色に塗られたホイールがあり、作家がランニングをすると画面のホイールも回転し、地図がスクロールされてゆく。表示されているエリアは、琵琶湖の東側あたり。テレビゲームの勇者のパーティーが行進するように、ホイールは滋賀県の中を進んでいく。時折、作家がランニングを中断し、回し車の奥のパソコンに向かい、何か作業をしている姿が気になった。なにかしら作品の調整だろうか。

≪道を横断する≫(部分)

作家に教えてもらい、モニターの下側のQRコードをスマホで読み込んだ。すると、スマホの画面にも地図アプリが表示され、その場所の風景にちなんで詠まれた俳句が添えられていた。とても風流な仕掛けになっている。

昔、東北を巡り、有名な「おくのほそ道」を残した俳人は、紙に筆で俳句をしたため、徒歩で移動した。一方、現代の俳人は、パソコンで俳句をしたため、デジタル地図で移動する。それぞれの「横断」の対比が、とてもユーモラスに表現されている。

杉山

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