展覧会見てある記「瀬戸染付 -軌跡そして美と技-」瀬戸市美術館

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

2024.10.08 投稿

瀬戸市美術館(以下「瀬戸市美」)で開催中の「磁祖加藤民吉没後200年事業 国際芸術祭「あいち」地域展開事業連携企画 瀬戸市市制95周年記念 瀬戸市美術館特別企画展 瀬戸染付 - 軌跡そして美と技 -」(以下「本展」)を見てきました。以下は、その概要と感想などです。

◆本展の構成

本展は、青色の顔料で絵付けした「染付」の生産が瀬戸で始まってから、昭和中期に至るまでの作品を三つの時代に分けて展示。皇居の宮殿を飾る「大盆栽」用の「盆鉢」の特別展示も開催しています。

本展は、加藤民吉の作とされる《染付山水図大花瓶》を1階ロビーに展示。通常の順路とは違い、1階・第2展示室から第1章が始まり、第2章と第3章の一部は1階・第1展示室に展示。第3章の残りは2階・第4展示室から第3展示室にかけて展示。特別展示の第4章は第3展示室を使用しています。

◆第1章 瀬戸染付の始まり-初期瀬戸染付(1階・第2展示室)

本展の解説によれば、瀬戸で染付の生産が始まったのは1801年。磁祖とされる加藤民吉が九州で磁器製造の技術を習得したのが1804年から1807年。最初の展示品《染付山水図水指》は享和年間(1801~04)制作です。解説は「素地の白さや呉須の青色は、技術的な改善の余地がある」としています。それが、文化年間(1804~18)制作の《染付山水人物図桐葉型皿》では、素地の白さ呉須の青色のいずれも鮮やかです。文政9年(1826)頃に制作の《染付竹図水指》では、更に技術的な進展が見られます。

この外に目を惹かれたのは《染付馬図水指》です。磁器以外に、陶器の染付があることを知りました。

◆第2章 瀬戸染付の発展-川本治兵衛・川本半助を中心に(1階・第1展示室)

第2章は、江戸時代後期から幕末にかけて制作された作品を展示。目を惹かれたのは《染付雲鶴文火入(一対)》で、鶴を青、雲を金色で描いています。「火入」について、解説は「煙草盆の中に組み入れる道具で、煙草に火をつける火種を入れておく器」としています。茶道における火入の使い方を調べると、次のとおりでした(URL: 水の茶の湯の徒然 火入の灰型 (fc2.com))。

鮮やかな瑠璃色の手桶《瑠璃釉貼花彫牡丹獅子文手桶》は、獅子と牡丹が浮き彫りのように盛り上がっています。技術の高さを感じました。

銅版転写で模様を描いた《銅版染付丸窓絵大植木鉢》の解説は「同じ模様を施すことが出来ることが銅版転写の利点であるが、当時の銅版転写は手描きと比べて、決して効率のよいものではなかったと言われている」というものでした。調べると、銅版に彫った模様を紙に印刷し、その紙を素地に貼り付けて転写したようです(URL: やきものの技法・印版・銅版絵付け・銅版転写【うまか陶】 (umakato.jp))。

《磁胎蒔絵鶴図蓋付碗》は、染付の蓋付碗に蒔絵を施した作品です。解説は「やきものと分かった時に、驚きとそれに対する話題を誘う器である」と書いていました。

◆第3章 瀬戸染付の飛躍-国内外で際立つその美と技

〇1階・第1展示室

第3章は、明治から昭和中期までの作品を展示しています。1階・第1展示室の作品では、青磁と染付の技法を融合させた《青磁染付窓絵草花図花瓶》が目を惹きました。展示は、更に2階へ続きます。

〇2階・第4展示室

第4展示室入口近くに展示の《染付桜花文台鉢》は、鉢の内・外すべてに桜花文が散らされた清楚な作品でした。余白の割合が大きいので素地の白と模様の青が引き立て合って、鮮やかに見えます。

その次の《釉下彩唐草虫文花瓶》には「釉下彩で蝶やバッタのなどの昆虫が描かれている。(略)後に流行するアール・ヌーヴォーの作品に影響を与えた可能性のある図柄」という解説が付いています。なお、釉下彩については、次の解説があります(URL:釉下彩作品 – E ミュージアム大阪 (emosaka.com))。

第2章には蒔絵を施した作品がありましたが、第3章には染付を七宝で装飾した作品がありました。《磁胎七宝花唐草文花瓶》です。解説は「明治時代初期に盛んに生産されたが、明治10年代(1877~86)後半にはほとんどその姿を消した」「海外からの里帰り品である」と書いていました。

「高浮彫」と言えば宮川香山が有名ですが、本展でも高浮彫を展示しています。《染付高浮彫花鳳凰図花瓶》です。

〇2階・第3展示室

写真の《釉下彩花鳥図花瓶(一対)》は、青だけでなくピンク、黄色、茶色も使われた華やかな作品です。これも「海外からの里帰り品」です。

◆第4章 特別展示 皇室の盆器(2階・第3展示室)

第4章は、季節ごとに宮殿の大空間を飾る「大盆栽」に使用された「盆器」7点を展示しています。盆栽に使う鉢は「盆栽鉢」ですが、宮内庁では、それを「盆器」と呼ぶそうです。

鮮やかな瑠璃色の《瑠璃釉貼花彫葵文水盤》が展示室の中央に展示されています。「高浮彫」も施されています。隣で鑑賞していた来場者が、「よく見ると、釉薬を掛け残した白い点がある。でも、大型なのでこれくらいのキズは問題にならない。この部屋で見るべきものは《瑠璃釉貼花粟穂雀文六角大植木鉢(一対)》の右側の鉢。何のキズもない完璧な作品ですよ」と教えて下さいました。

展示室には、宮内庁の盆栽を管理している「宮内庁大道(おおみち)庭園」の写真が掲載されていました。管理用なので、いずれも地味な盆器ですが、 宮内庁のホームページを見ると、皇居に盆栽を飾る時は季節にふさわしい盆器に植え替えて展示しているようです。

以下、URLを2つご紹介します。

① URL: 新年春飾り作成 – 宮内庁 (kunaicho.go.jp)

② URL: 宮殿を飾る盆栽(春飾り) – 宮内庁 (kunaicho.go.jp)

◆最後に

本展公式サイトのURLは、下記のとおりです。

URL: 公益財団法人 瀬戸市文化振興財団 (seto-cul.jp)

なお、当日は時間が無くて寄れませんでしたが、本展の帰りには「瀬戸蔵ミュージアム」(URL: 瀬戸蔵ミュージアム | 瀬戸市 (city.seto.aichi.jp))もご覧になることをお勧めします。陶磁器の製造工程や瀬戸焼の歴史の展示などがあります。

Ron.

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