展覧会見てある記「コスチュームジュエリー」愛知県美術館

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

現在、愛知県美術館(以下「県美」)で開催中の「コスチュームジュエリー シャネル、ディオール、スキャパレッリ 美の変革者たち 小瀧千佐子コレクションより」(以下「本展」)に行ってきました。アクセサリーの展示が中心なので、女性の来館者が多く、子どもの姿もありました。

 なお、作品リストはスマホでQRコードを読み取る方式です。紙のリストが欲しい方は、事前に本展の公式サイト(URL:コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより (ctv.co.jp) )からダウンロードし、印刷しておくと良いでしょう。

◆第1章 ポール・ポワレとメゾン・グリポワ

★ポール・ポワレの作品

第1章の見どころは、何といっても、ポール・ポワレがデザインした夜会用マスク・ブレスレット《深海》(1919)です。写真ではよくわかりませんが、実物を見ると「マスクのモチーフは蛸だ」とわかります。目の隙間がとても細く「本当に前が見えるだろうか?」と心配になりました。作品のキャプションには「制作:マドレーヌ・パニゾン」と書かれています。

県美では他の会場と違い《深海》だけでなく、ポール・ポワレの《イヴニング・ドレス》(1933₋35年頃)や、デザイン画も併せて出品されています。ドレスやデザイン画も展示されているので、視野が広がった気がしますね。イヴニング・ドレスは、「ハーレムパンツの上から円錐状のスカートを着ている」という感じの奇抜なスタイルです。スカートの裾には輪が入っているので、きれいな円錐形のシルエットになりますが「歩きにくいのでは?」と心配になってしまいます。

なお、本展の出品作品は基本的に「撮影可能」ですが、ドレスやデザイン画は「撮影禁止」。ドレスの図版は、公式サイトでご覧ください。

★メゾン・グリポワの作品

第1章の解説によれば、メゾン・グリポワはポワレのコスチュームジュエリーの制作を担ったジュエリー工房のひとつ。後に、ガブリエル・シャネルやクリスチャン・ディオールのコスチュームジュエリーも制作しています。シャネルのために制作したものの中では、ブローチ“蜂”モチーフ(No.92:No.は作品番号、以下同じ)や“カエル”(No.93)が、ディオールのために制作したものの中では、ネックレス“葉と藤の花”モチーフ(No.131:写真)やイヤリング、ブローチ“すみれ”モチーフ(No.138)が目を引きました。いずれも、色ガラスや針金を使った、細かい細工の美しいものです。なかでも“蜂”や“カエル”は、とても小さくて可愛らしいと感じ、宝石や貴金属を使っていなくても、美しく着飾ることができるのだと思いました。

なお、第1章「ポール・ポワレとメゾン・グリポワ」は、県美独自の章立てです。他の会場では「美の変革者たち オートクチュールのコスチュームジュエリー」の中で《深海》を展示しています。

◆第2章 美の変革者たち

 第2章には本展の副題に書かれた「シャネル、ディオール、スキャパレッリ」が登場するので、先ずは、シャネルからご紹介します。

★シャネルの作品

本展に展示されている《デイ・スーツ》《カクテル・ドレス》は、いずれも1960年頃のものです。ジャクリーヌ・ケネディもアメリカ製のシャネル・スーツを愛用していましたね。ピンク色の花に緑の葉をあしらったネックレス“花”モチーフ(No.60:写真)は、メゾン・グリポワ制作ですが、第1章ではなく第2章に展示。首にかけた状態で展示しているので、身につけた時の感じが分かりやすいと感じました。葉の緑色が良いアクセントになっています。

★スキャパレッリの作品

 ポール・ポワレに才能を見出されたスキャパレッリの《ディナー・スーツ》(1935頃)は茶色のベルベット地で、襟とポケットに金色の飾りをつけた豪華なものです。黒い《イヴニング・ドレス》(1948)のキャプションには「デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ」と書かれています。ひざ下から広がっている女性的なものでした。ジバンシイは、スキャパレッリに師事し、1952年に独立しています。映画「ティファニーで朝食を」でオードリー・ヘプバーンが着ていたブラックドレスは、彼のデザインでしたね。県美では、スキャパレッリだけでなく、ジバンシィのドレスも見ることが出来ました。

ネックレス“葉”(1937:写真)も首にかけた状態でクリップ“葉”モチーフと一緒に展示されていました。キャプションには「デザイン/制作:ジャン・クレモン)」と書かれています。金色の葉がキラキラ光り、とても豪華な雰囲気があります。

スキャパレッリのコーナーには、当時のファッション雑誌も展示されており、ダリの記事も載っていました。「一見の価値あり」です。

★ディオール、イヴ・サンローランの作品

 クリスチャン・ディオールの作品は、黒の《ディナー・ドレス》(1952)とグレーの《イヴニング・ドレス》(1953)。ディナー・ドレスは腰を強く絞っているので、着る時は大変だったでしょうね。イヴニング・ドレスは一昔前のバッスル・スタイルで、お尻にボリュームがあります。復古調のスタイルですが、第二次世界大戦後ということで受け入れられたのでしょうね。ディオールに才能を見出されたイヴ・サンローランの作品は《パンツ・スーツ》(1982)です。男性のファッションであるタキシードを女性向けにアレンジしたもの。時代の空気を先取りしたファッションだと思います。

ディオール向けに制作されたジュエリーで目を引いたのは、ネックレス・イヤリング(No.115:写真はネックレス)。素材はガラスと模造パールですが、とても上品なアクセサリーです。キャプションには「デザイン:ロジェ・ジャン=ピエール、制作:ミッチェル・マイヤー」と書かれていました。

◆第3章 躍進した様式美

第3章ではパルリエ(宝飾師。宝石やコスチュームジュエリーなどを制作する職人)別に作品を展示。目を引いたのは、リーン・ヴォートラン:ブローチ“花の精”(No.206)、コッポラ・エ・トッポ:チョーカー“花火”(No.216:写真)、ロジェ・ジャン=ピエール:ネックレス(252)、リナ・バレッティ:ネックレス(No.296)などです。

◆第4章 新世界のマスプロダクション

第4章は、アメリカのコスチュームジュエリーを展示。目を引いたのは、ミリアム・ハスケル:ペンダント・ネックレス(No.324)、ケネス・ジェイ・レーン:ネックレス“ジャッキー・オナシス スタイル”(No.407)などです。

◆最後に

昨年度は名古屋市美術館「マリーローランサンとモード」でファッションの展示がありましたが、今回は展示されるファッションの点数が多いので、更に楽しむことができます。

Ron.

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