2024.01.20(土) 17:00~18:30
名古屋市美術館(以下「市美」)で開催中の「ガウディとサグラダ・ファミリア展」(以下「本展」)の協力会向けギャラリートークに参加しました。参加者は49名。講師は、久保田舞美学芸員(以下「久保田さん」)。当日は来館者が多く、ギャラリートーク開始時は展示室に来館者が残っていたため、美術館2階講堂で久保田さんの解説を聴いた後、自由観覧・自由解散となりました。以下は、久保田さんの解説の要点と自由観覧の感想です。
◆久保田さんの解説の要点(17:00~17:35)
〇ガウディの生涯
アントニ・ガウディは1852年、スペインのカタルーニャ地方に生まれ、1926年に死去。1882年からサグラダ・ファミリア聖堂の建設に携わった。なお、アントニ・ガウディはカタルーニャ語で、スペイン語だとアントニオ・ガウディとなる。
〇世界遺産に登録されたガウディ建築
世界遺産には、バルセロナを中心に、グエル公園、カサ・ミラなど7つの建築物が登録されている。
〇本展の概要
本展の展示は2階から始まる。「1 ガウディとその時代」「2 ガウディの創造の源泉」が2階。「3 サグラダ・ファミリアの軌跡」「4 ガウディの遺伝子」が1階。
〇本展の見どころ
本展の見どころは、次の三つ
① アイデアの源泉
② サグラダ・ファミリア聖堂の建設のプロセス
③ サグラダ・ファミリア聖堂の豊かな世界
〇アイデアの源泉
ガウディは「独創的」と言われるが、「歴史」「自然」「幾何学」がアイデアの源泉となっている。
〇サグラダ・ファミリア聖堂の建設のプロセス
・サグラダ・ファミリア聖堂建設の前史
サグラダ・ファミリア聖堂の建設は、1866年に宗教書の出版と書店を経営するブカベーリャが、「聖ヨセフ信心会」を設立したことが発端。当時広がっていた社会不安は信仰心が薄れているためでは、と考えたブカベーリャは、聖家族(サグラダ・ファミリ)の家長・聖ヨセフに救いを求める「聖ヨセフ信心会」の本堂として「サグラダ・ファミリア聖堂」の建設を提案した。
・ガウディは二代目
サグラダ・ファミリア聖堂・初代の建築家はビリャール。ネオ・ゴシック様式のささやかな規模の聖堂を計画。しかし、意見の対立からビリャールは建築家を降り、ガウディが二代目の建築家に就任した。
・ガウディが構想したサグラダ・ファミリア聖堂
ガウディがサグラダ・ファミリア聖堂の建設に取り掛かった時、巨額の献金を得て、彼はバルセロナのシンボルとなる大きな聖堂を構想した。それは、建物の平面図は十字型で、東・西と南の三つの正面(ファサード)にイエスの物語を彫刻で描くというもの。東は「降誕の正面」でイエス誕生の物語を、西は「受難の正面」でイエス磔刑の物語を、南は「栄光の正面」でイエス復活の物語を描くという構想だった。
・サグラダ・ファミリア聖堂の建設計画
2026年にサグラダ・ファミリア聖堂の完成を目指していたが、新型コロナウイルスの感染拡大で建設工事が遅れ、計画を変更。現在は、聖堂のシンボルである「イエスの塔」の2026年完成を目指している。
〇本展の展示内容
1 ガウディとその時代
・ガウディ・ノート
若い頃に使っていたノート。建築論を書いていたことがわかる。
・クメーリャ革手袋店ショーケース、パリ万国博覧会のためのスケッチ
アウゼビ・グエル(ガウディのパトロン)がガウディを見出すきっかけとなったショーケース
2 ガウディの創造の源泉
・破砕タイル
曲面をタイルで覆うための工夫として、破砕タイルを使用した。
・コローニア・グエル教会堂、逆さ吊り実験
模型の下の床面が鏡になっているので、床からアーチが立ち上がっているように見える。
・ニューヨーク大ホテル計画案模型
回転放物線面(パラボラ形の塔)の建物だが、実現しなかった。
3 サグラダ・ファミリアの軌跡
・サグラダ・ファミリア聖堂のオリジナル模型
本展には、サグラダ・ファミリア聖堂のオリジナル模型も展示。スペイン内戦で破壊されたものを補修して使っている。茶色のところがオリジナルの部分で白いところが補修箇所。
・サグラダ・ファミリア聖堂の塑像断片
これも、スペイン内戦で破壊された塑像の断片。
・サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型
枝分かれする柱を見ると、森の中にいるような空気感がある。
・サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:歌う天使たち
外尾悦郎が制作。石像が設置されるまでの10年間、サグラダ・ファミリア聖堂に置かれていた石膏像。
最後 サグラダ・ファミリアの4K映像
2023今年5月にNHKが撮影したドローン撮影を含むサグラダ・ファミリアの動画(5分17秒)を上映。
◆自由鑑賞(17:35~18:30頃)
2 ガウディの創造の源泉
・ガウディが描いた図面
ガウディが卒業制作の大学講堂・断面図やガウディが製図したモンセラー修道院聖堂(設計はビリャール)を見た参加者は、誰もが「こんなに細い線をどうやって描いたの!?」とびっくり。久保田さんに聞いたところ「下書きは鉛筆のようで、図面はインクで描いたと思われますが、筆記具は不明」との回答でした。ギャラリートークに参加した皆さんは誰も、ガウディの製図の腕前を称賛していました。
・サグラダ・ファミリア仮設学校屋根:錐状面模型とVideo
興味をもって見たのは、「直線を平行移動させて作る曲面」によって作られたサグラダ・ファミリア仮設学校(サグラダ・ファミリアの建設現場で働く人々の子どもや地域の子どもが学ぶ学校)の屋根の構造模型とVideoです。安価な薄いレンガを積み重ねる工法で制作した曲面の屋根と壁で支える構造の建物で、低い建設コストでありながら広い空間の教室を実現しているのが素晴らしいと思いました。(下の写真は、本展展示のサグラダ・ファミリア聖堂全体模型の中にある、サグラダ・ファミリア仮設学校)
3 サグラダ・ファミリアの軌跡
・降誕の正面:歌う天使たち
ほぼ等身大の石膏像を間近に見るという、素晴らしい体験をしました。
◆最後に
ギャラリートークでは、小さな声ですが、参加者と意見交換することができたので、楽しく鑑賞することができました。
久保田さん、ありがとうございました。
Ron