布の庭にあそぶ 庄司達展 解説会

カテゴリ:会員向けギャラリートーク 投稿者:editor

5月15日日曜日、4月29日から名古屋市美術館にて開催されている「布の庭にあそぶ 庄司達展」の協力会会員向け解説会が行われました。当日は2時間ほど前に作家自身によるアーティスト・トークも開催され、大勢の観客が訪れており、その余韻残るなかで解説会が始まりました。

今回展示は2階の展示室から始まっています。まずは作品のマケット(模型)が並んでいるところから。今回作品が展示されているものもありますが、マケットのみで実際の作品はまだ制作されていないものもありました。

今回、2階の展示室は移動壁を一枚も出していないそうです。そのような使い方をしてみると、2階展示スペースが非常に明るく、インスタレーション作品向けであると実感されたとのこと。なるほど、かなり前ですが、トリエンナーレでインスタレーション作品が展示されたときも、非常に面白い展示になっていたなと思い出しました。

庄司さんの作品は、体を使って体感するものが多く、作品の中に人が入ることが、作品にとって非常に大切であるとのこと。後に展示室でそれを十分に実感しました。

簡単なレクチャを聞いたあとに展示室をゆっくり堪能。会員は、作品の間を抜けて移動したり、なかには作品のなかで寝転んだりしてこの時間を楽しんでいました。実際に布を触ってみることが出来る作品もあり、触ったり、作品の中に迷い込んだり、それぞれが思い思いの楽しみ方をして過ごしました。

「布の庭にあそぶ 庄司達」 アーティスト・トーク

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

名古屋市美術館で開催中の「布の庭にあそぶ 庄司達」(以下「本展」)関連催事の「アーティスト・トーク」を聞いてきました。開場前には美術館の地下1階まで行列が続き、アーティスト・トークの会場(2階講堂)は満席。会場は熱気で満たされ、集まった人達は最後まで話に聞き入っていました。アーティスト・トーク終了後も名残惜しいのか、立ち話をしているグループをいくつもありました。

◆《白い布による空間》シリーズ制作のきっかけは

 アーティスト・トークは、本展担当学芸員の森本陽香さんの質問に答える形式で庄司さんが進行。2階に展示の《白い布による空間》シリーズについては、以下のような話がありました。

  • 《白い布による空間》シリーズ制作のきっかけは、高校教師の時、高校の生徒が学校の購買で買ったハンカチが、風でふわっと飛んだのを見てドキッとしたこと。
  • 早速、ハンカチを沢山買い占め、準備室でハンカチ遊びを開始。直方体の枠の中にハンカチを様々なやり方で吊り下げるという「実験」を繰り返した。
  • 「実験」を見ていた同僚が「おもしろい、画廊で発表したらどうか」と言うので、人間ぐらいのサイズのフレームで制作することになった。
  • 《白い布による空間》シリーズは、1968年3月から8月までに68-1から68-7までの7点を制作。54年前、29歳の頃だった。予想を超えて反響があり、第一線の作家の仲間入りをすることができた。
  • 《白い布による空間》は、2年目にはやめた。制作期間は、たった1年だった。

 以上の話のなかでは、③の「同僚が庄司さんの背中を押した」というところが大事で、それが無かったら今、《白い布による空間》シリーズを見ることは出来なかったかもしれないですね。

◆《白い布による空間68-1》《白い布による空間68-7》について

《白い布による空間》シリーズのなかで、人が作品の中に入れるのは68-1だけです。その理由は「画廊に展示した時、出入口を確保する必要があった。作品の真ん中を通れるようにしないと、人が出入りできなかったから」というもの。庄司さんは臨機応変に作品を制作できる柔軟な発想の持ち主だと思いました。

森本さんが庄司さんに、《白い布による空間68-7》を気に入っている理由を聞いたときの「ストイックなところが良い。下に行くにしたがって重さがかかって来る。上に行くにしたがって軽くなる。地球と太陽の関係のようでもある。19枚の布が張ってあるだけだが、空気の重さと軽さの変化が作品に潜んでいる」という答えは、芸術家というよりも科学者の言葉のように聞こえて、印象的でした。

◆《Navigation》シリーズについて

1階に展示の《Navigation Arch No.11》について、庄司さんは「《Navigation Arch》を展示すると日本人は作品の中を通り抜けるだけだが、外国人は上を見上げている。この作品では、布の幻想的な形や陰影を伝えたい。上を見上げることもして欲しい」と、作品の鑑賞ポイントを教えてくれました。

《Navigation Flight No.6》については「建築のトラスのように、三角形の構造をつくって、ロープに刺した木材で布を支えている。使っているのは、甘撚りのロープ。普通のロープでは木材が刺さらないので、作品を制作できない。ロープは直接に壁の金具へ固定せず、金具を通して下に垂らしてから固定している。ロープに木材を刺すとロープの撚りが強くなるので、垂れ下がった部分で撚りを戻す。この作業は正に神業で、苦労した」と、作品の構造や作品設置の苦労話を聞かせてくださいました。苦労話と言えば《Navigation Level》では「あらかじめ設計図を作り、その通りに木材を設置しようとしたのだが、うまく行かない。布の状態を見て、試行錯誤で最適な位置を探りながら、木材を突き立てて設置した」という建築家のような話も聞けました。

◆最後に

 《Navigation Flight》シリーズについては、『アートペーパー第116号』(名古屋市美術館ホームページに掲載)に、森本さんが寄稿した特集記事があります。ご一読をお勧めします。

Ron

展覧会見てある記 愛知県美術館「ミロ展 日本を夢みて」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

新聞、雑誌の記事に引かれ、愛知県美術館で開催中の「ミロ展 日本を夢みて」(英文表記は “Joan Miró and Japan”、以下「本展」)に足を伸ばしました。以下、簡単なレポートをお届けします。

◆第1章 日本好きのミロ

アンリク・クリストフル・リカルの肖像

 展覧会名が示すように最初の展示は日本の作品、「ちりめん絵」です。素材は和紙ですが、しわを寄せているので、着物などに使う縮緬のように見える浮世絵でした。ミロの作品は《アンリク・クリストフル・リカルの肖像》(1917年冬-初春)。隈取をしたような男性の肖像画です。背景に浮世絵をコラージュしており、撮影・投稿OK。男性が着ているのは、紐の結び目を紐のループに引っ掛けて止める方式(チャイナボタン)の、中国風の服でした。ただし、襟は立て襟(チャイナカラー)ではなく、折り襟。隣にはコラージュした絵と同じ図柄で色違いの「ちりめん絵」を展示。「作者不詳」という説明が付いているので、コラージュした絵も高価なものではなかったのでしょう。

◆第2章 画家ミロの歩み

 軟体動物のような作品のオンパレードです。一宮市三岸節子記念美術館で開催された「貝殻旅行」で見た、三岸好太郎の《乳首》や《オーケストラ》(いずれも1933年)も同じような雰囲気がありました。三岸好太郎の年譜には〈1932年12月 フランス前衛絵画の動向を紹介した「巴里・東京新興美術展」(東京府美術館)を見て大きな刺激を受ける〉と書いてあります。本展では「巴里東京新興美術展覧会目録」(名古屋市美術館保管)を展示。展覧会に出品された《焼けた森の中の人物たちによる構成》(1931年3月)も見ることができます。この作品は『週刊文春』4月14日号「文春美術館」でも取り上げていました。

◆第3章 描くことと書くこと


ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子

 撮影・投稿OKの作品が2点ありました。《絵画(カタツムリ、女、花、星)》(1934年)と《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》(1945年5月26日)です。第二次世界大戦でドイツがソ連軍に対する降伏文書に調印したのは1945年5月8日(モスクワ時間は午前0時を過ぎていたので5月9日)。後者は、欧州における第二次世界大戦が終結した直後に完成。戦争の影響を受けているのでしょうか。

◆第4章 日本を夢みて

 大津絵や埴輪の展示が印象的でした。ミロは日本の素朴なものに引かれていた、と分かりました。

◆第5章 二度の来日

 1966年のミロ展と、大阪万国博覧会の前年に来日した時の関連資料や作品を展示しています。面白かったのは《祝毎日》(1966年10月4日)。「書道」の作品で「ミロ Miró」とカタカナでも署名しています。

◆第6章 ミロのなかの日本

絵画

 《絵画》(1966年11月4日)《絵画》(1973年頃)など、現代書道のような作品が並んでいます。

◆補章 ミロのアトリエから

 最初に目に飛び込んだのは、アトリエの写真。前掛や刷毛、たわし、こけし等の資料を展示しています。

◆最後に

 ミロが日本を愛していたことが分かる展示品にほっこりしました。また、福岡市美術館を始め日本の美術館からの出品が多く「ミロが日本に愛されている」ということも強く感じました。

協力会から「6月4日に本展のミニツアーを開催」という通知が届きました。レクチャーを聴いた後に自由観覧・解散とのことです。ミニツアーでは、もう少し深く鑑賞できそうなので、期待しています。

Ron.

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