本年2月19日(土)付・日本経済新聞の「読書」欄に、山下裕二著「商業美術家の逆襲」の書評が載っていました。表題を入れて12字×17行の短い記事なので、取り上げた作家はグラフィックデザイナーの田中一光のみです。
私が田中一光のポスターに出会ったのは、2014.05.11(日)の協力会「春のツアー」が最初です。大阪市の国立国際美術館で開催の「アンドレアス・グルツキー展」鑑賞後に見た「コレクション展」の一角に展示されていました。そこに展示されていたのは美術館所蔵のポスター。時間が無いので急いで通り過ぎたのですが、一つのポスターの前で足が止まってしまいました。ポスターの左上に書かれているのは「Nihon Buyo」。他の文字も全て英数字でした。「不思議なポスターだな」と思いましたが、残り時間がわずかだったため、「田中一光」という作家名を確かめただけ。急いで、ツアーのバスに戻りました。
次の出会いは、2017.09.23(土)の協力会「秋のツアー」。移転新築後の富山県美術館「コレクション展」でした。「デザイン・コレクション ― ポスターと20世紀の椅子」のコーナーで、田中一光「Nihon Buyo」1981との再会を果たしたのです。二つの美術館で収蔵しているということから、「重要な作家」だということは分かりましたが、そこで途切れてしまいました。
三度目の出会いが、日本経済新聞の書評が取り上げた「商業美術家の逆襲」です。これまでの出会いでは、ポスター以外には作家名・作品名・制作年という限られた情報しか得られませんでしたが、今回は作家の経歴・位置付けなど様々な情報に接することができました。
日本経済新聞の記事を読んだ後、国立国際美術館のホームページにアクセスし、同館が田中一光の作品を多数所蔵し、2016.04.05~06.19には「田中一光ポスター展」を開催していることを知りました。また、「田中一光ポスター展」のホームページでは「Nihon Buyo」のほか、「商業美術家の逆襲」に掲載の「JAPAN」、尾形光琳《紅白梅図屏風》を思わせる作品など、全7点のポスターを見ることができます。更に知りたい方は、「所蔵作品検索」で独立行政法人国立美術館の4美術館の所蔵作品が検索できますので、お試しください。
蛇足ながら、以下に日本経済新聞の記事を引用しました。
Ron.
◆ 2022.02.19 日本経済新聞 書評(新書・文庫)『商業美術家の逆襲』 山下裕二 著
著者はグラフィックデザイナーの田中一光を「20世紀の琳派」とみる。ポスター「JAPAN」は俵屋宗達が「平家納経」に描いたとされる鹿の絵を引用してデザインした。この引用と変換こそが琳派の精神だという。著者は日本美術を継承し、新たな表現を切り開いてきたのはこうした商業作家だと指摘。浮世絵から漫画まで、商業作品を糸口に明治以降の美術史を捉え直す。(NHK出版新書・1210円)
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