展覧会見てある記 愛知県美術館「曽我蕭白展」

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三重県立美術館や名古屋ボストン美術館で強いインパクトを受けた曽我蕭白。その作品が一堂に会するというので、前々から期待していた展覧会です。ただ、混雑が予想されたので敬遠してきましたが、ようやく新型コロナウイルスの新規感染者数が下がり、「今なら大丈夫」とばかり、重い腰を上げました。愛知県美術館で開催中の「曽我蕭白 奇想ここに極まれり」は、作品保護のため展示室は洞窟のなかのように暗く、作品の周辺だけが淡く照らされている様子は幻想的でした。

◆プロローグ 奇想の絵師、蕭白

 無邪気に遊んでいる子どもたちを描いた、カラフルな《群童遊戯図屏風》。子どもたちの動きは可愛らしく、母親と思しき女性も普通ですが、子どもたちの表情は何か変。《雪山童子図》(1764頃)の子どもも、無邪気というより「少し、グロテスク」です。でも「これが、奇想の絵師・蕭白の持ち味で魅力なのだ」と思い、納得することにしました。

◆第一章 水墨の技巧と遊戯

《富士三保松原図屏風》(1758-61頃)は雄大。妖怪を描いた《柳下鬼女図屏風》は、とても気味が悪く、蕭白ならではの作品だと感心しました。中国風の《月夜山水図》はしっかりと描かれています。蕭白でも「グロテスクな人物」が居なければ、違和感はありません。

◆第二章 ほとばしる個性、多様化する表現

重要文化財の「旧永島家襖絵」が7点展示されていたのは壮観でした。また、同じく重要文化財の松坂市・朝田寺《唐獅子図》(1764頃)も、迫力のある作品でした。

◆第三章 絵師としての成功、技術への確信

《松竹梅図襖》は、力強い描写。美人と仙人を描いた《群仙図屏風》はグロテスクさを抑えた作品。これなら、違和感はありません。

◆第四章 晩年、再び京へ

重要文化財《楼閣山水図屛風》や《富嶽清見寺図》などの山水画は、どれも蕭白の本領を発揮した見応えのある作品でした。《雲竜図》は、龍の表情がユーモラス。大胆な筆さばきの作品でした。

◆最後に:「平安人物志」と同時代の絵師

第四章に安永4年(1775)発行の「平安人物志」が展示されています。曽我蕭白は15位ということでした。ちなみに、この時の1位は円山応挙、2位は若冲、3位は池大雅、4位は与謝蕪村。蕭白と同じページの12位「松 月渓 松村文蔵」は、四条派の始祖「呉春」のことです。

蕭白以外の五人は、いずれも澤田瞳子の小説「若冲」に登場しています。たとえフィクションであっても、蕭白と若冲との接点は書きにくかったのでしょうね。

一方で、「奇想の系譜」(辻惟雄著)は「当時の売れっ子である池大雅とは、ふしぎにもうまが合ったらしい」と書き、《富士・三保松原図屏風》(1762頃:「プロローグ」に11/17~11/21展示予定。当日は写真パネルでした)について「大雅の影響がさらに高度な芸術的結実をもたらしている例」と書いています。蕭白と大雅に交流があったことを知り、名古屋市博物館の「大雅と蕪村」(2021.12.4~2022.1.30)が楽しみになりました。

Ron.

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