◆土の上を横切る二本線。これは何? 岸田劉生「道路と土手と塀(切通之写生)」(1915)
「名画レントゲン」は「この絵はただの道を描いただけにも見えますが(略)『この坂の向こうには何があるのだろう?』という想いを抱かせるような印象深さがあります」という文で始まります。続いて、この作品のインパクトの要因を「画面中央に視線が集まる構図。坂道の最も高い部分が画面中央より少し上に設定され、そこに向ってすべての線状のものが求心的に集まっています。どこに目をやっても真ん中に視線が集まる仕掛け。(略)二つ目に(略)上下左右と4つの部分が明確に分かれているため、構成が捉えやすく記憶にもとどまりやすいのです」と解説しています。
この作品、岸田劉生展(2019~2020)では東京展と山口展だけの出品で名古屋展(2020.1.8~3.1)では見ることできませんでしたが、NHK・Eテレ「日曜美術館」の特集「異端児、駆け抜ける!岸田劉生」(2019.9.29)では、現在の代々木からのVTRで「道路の左側の歪み、カーブのボリュームが強調されているのは創作ではなく、道そのものが歪んでいる。少しだけ嘘があるのは坂の頂上。劉生は隣の塀を超えるほど大地を盛り上げたかった。そうまでして大地の迫力を描きたかった」とレポートしています。
「名画レントゲン」と「日曜美術館」のレポート、いずれも坂道の頂点の高まりに注目しているのを面白く読みました。
更に「名画レントゲン」は「画中に描かれている左の塀は山内公爵邸のもので、二本の謎の影は電柱とその支柱であるとわかっています」と書いています。これは、岸田劉生展図録に名古屋市美術館学芸課長の井口智子さんが執筆された作品解説(p.211)をもとにしているのでしょうか。記事の出典については早とちりかもしれませんが、今回、岸田劉生展図録を読み返してみて、その資料的価値の高さを改めて感じました。
Ron.
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