展覧会見てある記 豊橋市美術博物館「ゆったり、美術館散歩」

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豊橋市美術博物館(以下「美術館」)の訪問は二週間ぶり。今回の目的は、コレクション展「ゆったり、美術館散歩」(以下「本展」)。コロナ禍の影響により、企画展「山水に遊ぶ」を本展に変更して開催されました。受付で「豊橋市にお住まいですか?」と聞かれ「いいえ」と答えると「観覧料は400円です」。「豊橋市民なら?」と聞くと「70歳以上の方でしたら、200円です」と答えてくれました。

◎1階・第1展示室「日常にあるやすらぎ」で中村正義《空華》(1951)に再開

 本展は、私たちの身辺や日常を主題とする作品を集めた第1展示室「日常にあるやすらぎ」の外「日本の風景を旅する」「世界をめぐる・世界で見出す」「手のなかにある旅―和歌・東海道・地図―」の4つで構成されています。第1展示室の入口には高柳淳彦《半蔵御門の朝》(1934)。画面手前に、おかっぱ頭の女の子を乗せた手押し車を押す、下駄ばきで和服姿の女性。桜田濠(半蔵濠?)の奥には半蔵門。近くには英国大使館もある都会のど真ん中ですが、半蔵門周辺は当時から緑豊かな場所だったのですね。廣本季與夫《緑陰・世田谷農婦》(1949)は木陰で雑誌を読む野良着の女性と、藁束のうえで昼寝する女の子を描いた作品。「終戦直後の世田谷は田舎だった」と再認識しました。中村正義《空華》(1951)には「第7回日展無鑑査出品」との解説。2011年に名古屋市美術館(以下「市美」)で開催された「日本画壇の風雲児 中村正義 新たなる全貌」のチラシやポスターに使われた作品で、9年ぶりの出会いでした。三岸節子《室内》(1943)はマティス風のおしゃれな作品で、鬼頭鍋三郎の作品も《午後》(1935)が展示されていました。

◎第2展示室「日本の風景を旅する」

 入口には岸田劉生風の《田舎の道》(1919)。「作者の横堀角次郎は草土社の同人」という解説を読んで納得。田植え直後の水田を描いた鈴木睦美《吉良の里・初夏》(1985)は梅雨時の季節感たっぷりです。中村正義《斜陽》(1946)は第2回日展に初入選した作品。田原の町はずれを描いた細井文次郎《汐川》(1929)ですが、川に浮かんでいるのはいずれも帆掛け船。「当時は帆船が主流だった」と実感しました。

◎特別展示室「手のなかにある旅―和歌・東海道・地図―」

 特別展示室には和歌の写本や東海道の絵地図、屏風、地球図などが展示されています。歌川広重の《吉田》(1833頃)や《二川》(1833頃)等の浮世絵もあります。

◎第3展示室「世界をめぐる・世界で見出す」

 入口にはデュフィ風の坂口紀良《コートダジュールのテラス》(1997)。赤や黄色などの原色が目に飛びこみ、南欧リゾート地の日差しを感じます。「人」という文字で埋め尽くされた、松井守男《もう一つの自然》(1986)は面白い表現だと思いました。

スペイン・アンダルシア地方を描いた三岸節子《グアディスの家》(1988)は、赤と白が印象的な作品。今年、市美の常設展で見た《雷がくる》(1979)を思い出しました。市美関連といえば荒川修作《図式のX線》(1969)や桑山忠明《無題》(1968)も展示されています。

◎2階の常設展も

 以前、ブログで紹介した2階の常設展は、第2常設展示室「芳年と、同時代の浮世絵師たち―東海道名所風景―」も含め全て、会期は本展と同様に7月12日まで。こちらは入場無料なので「ゆったり、美術館散歩」とあわせて鑑賞することをお勧めします。見逃す手はないですよ。

◎最後に

 東海地方は梅雨入り、外出が億劫になる季節になりました。美術館のコレクションをゆったりと鑑賞するのは、精神衛生にも良いことだと思います。豊橋市美術博物館では長らく休業していた「ネオ こすたりか ミュージアムカフェ」も再開し、大勢の人がソフトクリームやコーヒー、昼食などを楽しんでいました。

Ron.

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