3月5日(土)から、名古屋市美術館で東京藝術大学コレクションによる女性像の展覧会が開催されています。展覧会は2部構成で、第1部が東京藝術大学コレクションと名古屋市美術館所蔵作品11点による「日本の近代美術の女性像」、第2部が「東京美術学校日本画科の卒業制作の女性像」です。
◆第1部では、重要文化財が3点
第1部の見どころは3点の重要文化財でしょう。とはいえ、会期中に展示替えがあるので、現在見ることが出来るのは狩野芳崖《悲母観音》(3月21日まで)だけ。高橋由一《美人(花魁)》と浅井忠《収穫》は3月23日からのお楽しみです。後期に、もう一度見に来ましょう。
《悲母観音》は日本画のためか、照明が暗いので近くでじっくり見なければなりません。仔細に見るとヒゲが描かれ「あれ?」と思いましたが、「母性愛」を表現しているということならば、やはり女性像ですよね。
なお、個人的趣味ですが、百武兼行《ブルガリアの女》に描かれた民族衣装が印象的でした。一枚革と皮ひもで出来ている靴が面白いですね。
◆名古屋市美術館のコレクションが11点
何故か懐かしさを感じる作品が何点もあるのでキャプションに目を凝らすと、作品番号の右肩に小さな*印が付いています。市美のコレクションでした。普段は常設展示室の狭いコーナーに展示されていますが、今回のような広い空間で見て、作品の質の高さを改めて感じました。佐分眞《食後》では、テーブルの果物や右の女性のドレスの色の鮮やかさに目を見張りました。
◆日本画の変遷が体感できる第2部
2階には、1940年までに収蔵された日本画科の卒業制作から厳選された40点が展示されています。どの絵も大きく、色彩が鮮やかなことに目を引かれます。全力を注ぎこんで卒業制作に取り組んだことがうかがわれます。展示室の入口の解説では5期に分けて、卒業制作の変遷を概観していますが、確かに、絵のテーマや描かれた女性の服装が時代とともに変わっていくのが良く分かります。篠田十一郎《あかとんぼ》は、女の子が七五三の記念写真のようで可愛らしく、思わず見入ってしまいました。
昭和になると洋装の女性が描かれるようになりますが、金子孝信《季節の客》では雑誌「VOGUE」がチラッと見え、昭和15年という時代にこんな絵を描いた勇気に驚きます。図録の解説には「中国戦線に派遣され、1942(昭和17)年に戦死。」との記述。「さぞ無念だったろうな。」と、ため息が出ました。
3月13日(日)に協力会のギャラリートークがありますが、所要のため参加できないのが、とても残念です。会期は4月17日(日)まで。 Ron.