2014年
9月10日
ヤゲオ財団コレクション展 ギャラリートーク
◆ヤゲオ財団とは
さて、保坂氏によれば、本展のきっかけは昨年開催された「フランシス・ベーコン展」の出品交渉だったとか。フランシス・ベーコンの作品を所有しているヤゲオ財団(台湾)CEOピエール・チェン氏(以下、「チェン氏」と省略します)の東京の邸宅を訪問したところピーター・ドイグの「カヌー・湖」が飾られていたのを見てびっくり。聞けばオフィスや台北、香港の自宅にも、とても高額な作品をいくつも飾っていることを知り、本展の企画を練り始めたとのことでした。
チェン氏は、台湾の大手電子部品メーカーであるヤゲオ・コーポレーションを経営する実業家で、ヤゲオ財団はヤゲオ・コーポレーションやチェン氏個人からの寄付金等をもとに設立された非営利組織です。財団が購入した作品はチェン氏の自宅やオフィスを飾っており、購入の基準はただ一つ「チャン氏の好み」です。
◆本展覧会の特色
保坂氏によれば、本展はチェン氏が自分の好みで集めたコレクションによるものであり、「脈絡がないのが特色」とのことです。要は「肩肘張らずに作品を見て楽しんでくださいよ」ということなのでしょう。「1階の展示は、杉本博司の海景シリーズとマーク・ロスコを向い合せにするなど面白い展示だと思ったけど、2階は何?!『ただ、並べました。』という感じで、意図がわからない。」と、知り合いから辛口の評を聞きましたが、「そういう声を承知で展示している」ということですね。
「2階は何?!」というのは、「中国の近現代美術」のコーナーのことのようで、保坂氏も「なぜ、ホワン・ミンチャンの水田の絵を展示しているのか」と、叩かれたようですが「異質かもしれないが、チェン氏はこの作品に対する思いを熱く語っていた」と、付け加えていました。
展示室で見ると、現代美術の展覧会というより「アジア・モンスーン地帯の風景」といったテーマにふさわしい作品ですが、懐かしさを覚える絵で、個人的には悪くないと思えました。
◆気軽に楽しむ
自宅に展示しているだけあって、気軽に楽しめる作品が多いです。最初に展示されているマン・レイの「ジュリエット」は写真ではなく「油絵」で、珍品です。サンユウの「六頭の馬」はマティスの「ダンス」みたいで面白い。チラシ・入場券に使われているゲルハルト・リヒターの「リズ・ケルテルゲの肖像」は、ボケ・ブレが綺麗です。トーマス・シュトゥルートの写真は細部まではっきり写っていてリアルなのですが、じっと見ていると逆に非現実感が増してきます。マーク・タンジーの「サント・ヴィクトワール山」は、水辺は男ばかりですが、水面に映っているのは全て女性で、姿勢も少し違うという不思議な絵です。他にも、楽しめる作品がいくつもあります。
◆ゲーム「コレクターチャレンジ」
会場の最後には「今からあなたに50億円をお渡しします。」というキャッチコピーのゲームがあります。本展から選んだ17点の作品から5点以内を選んで家の模型に展示し、合計金額を50億円に限りなく近づけるようチャレンジするものです。知人がマーク・ロスコとフランシス・ベーコンなど5点を展示したところ、「予算オーバー」になりました。ゲームではマーク・ロスコとフランシス・ベーコンを一緒にしてはいけません。
Ron.