展覧会見てある記「名古屋市美術館 名品コレクション展Ⅱ」など

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名古屋美術館の地下1階常設展示室1・2では「名品コレクション展Ⅱ」が、常設展示室3では「名古屋市庁舎竣工85年 建築意匠と時代精神」が開催されています。最終日は11月25日(日)。概要は以下のとおりです。

◆名品コレクション展Ⅱ 
◎エコール・ド・パリ
目玉は、新収蔵品・藤田嗣治《ベルギーの婦人》1934年制作 です。常設展のパンフレットによれば「1933年11月に日本に帰国した藤田。(略)《ベルギーの婦人》は、この時期の藤田が懇意にしていた、在日ベルギー大使館関係者の妻の肖像と思われる。(略)背後に散りばめられた霊芝、珊瑚、巻子などの吉祥文様との組み合わせが面白い。恐らくモデルの婦人を寿ぐ意味が込められているのだろう」とのことです。また、開館30周年を記念して団体・個人からの寄付金をもとに「夢・プレミアムアートコレクション」として購入した作品です。
看板娘のモディリアーニ《おさげ髪の少女》が「ザ ベスト コレクション」に出張しているため「淋しくなったのではないか」と危ぶんだ「エコール・ド・パリ」のコーナーですが《ベルギーの婦人》の初お目見えに加え、マリー・ローランサン《アポリネールの娘》を始めとする女性像が勢ぞろいしているので華やかな一角となっています。
また、《ベルギーの婦人》の隣には、同じく藤田嗣治《家族の肖像》と寄託作品《那覇》が展示され「藤田コーナー」ができていました。

◎現代の美術
「ザ ベスト コレクション」の「現代の美術」では河原温の「Todayシリーズ」ではなく、あえて「変形キャンバス」の《カム・オン・マイハイス》と《私生児の誕生》を展示していましたが、「名品コレクション展Ⅱ」では「Todayシリーズ」を1966年から1980年まで、毎年1作品ずつ15作品をずらりと並べており、壮観です。
寄託作品のサイモン・パターソン《大熊座》は、一見すると地下鉄路線図ですが、路線が「哲学者」あり、「イタリアの芸術家」あり。駅名も「プラトン」や「レオナルド」があり、英語を訳しながら路線をたどると面白い作品です。難を言えば「急いでいる人にはお勧めできない」ことですね。

◎メキシコ・ルネサンス
 渋い作品ですが、ティナ・モドッティの写真が6点展示されています。
「ザ ベスト コレクション」展示のティナ・モドッティの写真2点とマニュエル・アルバレス・ブラボの写真3点と合わせて鑑賞すると良いのではないでしょうか。

◎現代の美術
浅野弥衛の油絵と銅版画、杉本健吉の《名古屋城再建基金ポスター原画》と《新・水滸傳挿絵原画》の特集です。壁のほとんどが浅野弥衛の作品で埋まるというのは壮観です。
「ザ ベスト コレクション」で様々な作品を展示しているので、常設展では逆に、思い切ったことが出来るということでしょうか。

◆名古屋市庁舎竣工85年 建築意匠と時代精神
 名古屋市役所本庁舎は洋風建築の上に中華風の塔を配した「帝冠様式」の建築ですが、常設展のパンフレットによれば「帝冠様式」にも「塔を配したもの」「城郭を配したもの」の二つの様式があったようです。
先ず「塔を配したもの」として〇名古屋市庁舎(現:名古屋市役所本庁舎)、〇神奈川県庁本庁舎、〇東京市庁舎(実施されず)の外観図などが展示されています。
 また「城郭を配したもの」として〇大禮記念京都美術館(現:京都市美術館)、〇軍人会館(現:九段会館)、〇東京帝室博物館(現:東京国立博物館本館)の外観図などが展示されています。今回の展示にはありませんが、愛知県庁本庁舎や昨年度の「異郷のモダニズム展」で紹介された関東軍司令部庁舎(現:中国共産党吉林省委員会本館)は「城郭を配したもの」に分類されるのでしょうね。
解説が常設展のパンフレットしかないのは残念ですが、面白い展示です。
 
◆最後に
今期の常設展「名品コレクション展Ⅱ」は、同時開催の企画展「ザ ベスト コレクション」とのコラボ企画。常設展・企画展の二つを合わせて鑑賞するのがベストだということが分かりました。
Ron.

展覧会見てある記 「名古屋ボストン美術館 最終展 ハピネス」

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名古屋ボストン美術館の最終展「ハピネス ~明日の幸せを求めて」が開催されています。最終日は10月8日(祝)。展示は「明日の幸せを求めて」(英語表記は In Pursuit of Happiness)をテーマに5章で構成。馬場駿吉館長のコレクションと名古屋市博物館のコレクションの特別出品の外、3階ロビーにはシヴァ神のコスプレができるコーナーがあります。展示は4階から、概要は以下のとおりです。
◆第1章 愛から生まれる幸せ ~日常の情景から~
切り口は男女の愛、親子の愛、ペットとの愛から生まれる幸せ。ヒンドゥー教で最も人気のあるクリシュナが、いたずらをして恋人ラーダから懲らしめられる場面を描いた絵が面白かったですね。クリシュナの銅像もあります。外には、アダムとエヴァの銅版画、ミレーやルノワール、歌麿等が描いた母と子の姿の外、若い女性とペットの犬を描いた写真みたいな大画面の油絵など、古今東西の「愛から生まれる幸せ」が並びます。
◆第2章 日本美術にみる幸せ
目玉は、理想の高士像を描いた曾我蕭白の襖絵《琴棋書画図きんきしょがず》。解説によれば、展示作品は六曲一双の屏風として収蔵されてしたものを襖に復元したもの。襖を屏風にしたときに「棋」つまり囲碁を描いた襖の一面が失われたようです。外には、四季の遊び、舟遊び、お座敷遊びなど、江戸時代の日本美術が並びます。
◆第3章 ことほぎの美術
 切り口は「おめでたいもの」。見どころは糸で刺繍した豪華な打掛、振袖、袱紗。6点並ぶと壮観です。「壽」の文字や七福神の外、焼成していない鑑賞用の土器や貝殻、トルコ石、銀などを組み合わせたネックレスもあります。
特別展示は名古屋市博物館所蔵の宝船置物、花瓶、鐔、渡辺清《鯉図》(8/26まで、8/28からは白隠慧鶴《布袋図》)。見逃せないですよ。
◆第4章 アメリカ美術に見る幸せ
5階展示室では鞍を着けた豚が出迎えてくれます。第4章前半の「Ⅰ 幸せを彩った芸術 ~アメリカン・フォークアートの世界~」は素朴なアメリカ美術がテーマ。あまり可愛くないジョン・F・フランシス《3人のこども》などに加え、伝統的な手工業に携わる人々を撮影した記録写真も展示されています。
後半の「Ⅱ 東西の出会い ~心の平安を求めて~」は東洋美術と米国人の出会いがテーマ。米国人芸術家が描いた日本画や浮世絵風の油絵の外、踊るシヴァ神の銅像、仏壇のようなチベットの小祠、インドネシアの仏頭など東洋美術の展示があります。
◆第5章 アートの世界に包まれて ~現代における幸せの表現~
 ハートをかたどったジム・ダインの作品が11点も展示され、「小さなジム・ダイン展」になっています。特別展示は、河原温《百万年(過去・未来)》を始めとする馬場駿吉館長のコレクション。
◆最後に
 20年間続いた名古屋ボストン美術館の展覧会もこれが見納め。淋しくなりますね。
                            Ron.

展覧会みてある記「長谷川利行展 ―藝術に生き、雑踏に死すー」

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「暑い日なら空いているだろう」と思い、先週の猛暑日に碧南市藤井達吉現代市美術館で開催中(9/9まで)の「長谷川利行展」(以下「本展」)を鑑賞。外気温が40度近くでも展示室内はひんやり。羽織るものを持ってこなかったことを後悔しました。
◆大盤振る舞いの展覧会
順路は2階の展示室から。作品リストの点数は144点ですが、うち6点は本展に出品されず、15点は後期展示(8/14~)なので前期の展示作品は122点。写真パネルや歌集「長谷川木葦(きよし)集」などもあるので、作品・資料が1階、2階の展示室4室にぎっしりと展示されています。しかし、入場料は900円と大盤振る舞い。お得感いっぱい、大サービスの展覧会です。英語の展覧会名は ”HASEKAWA Toshiyuki Retrospective”。「はせがわ りこう」ではないのですね。
◆Ⅰ 上京-1929 日暮里:震災復興の中を歩く
展示は年代順に3章で構成。第1章は《自画像》や二科展に初入選した《田端変電所》から始まっています。肖像画ではチラシに載っていた《靉光像》のほか《針金の上の少女》に目が留まりました。《夏の遊園地》《汽罐車庫》は大画面で迫力があります。TV番組の「開運!なんでも鑑定団」に出された《カフェ・パウリスタ》や神谷バーを描いた《酒売場》も目を惹きます。
 どれもフォーヴィスムの作家のような荒いタッチの描き方で、人により「好き・嫌い」がはっきりと分かれる作品です。「感想ノート」を開くと熱狂的な書き込みが目立ち、「好き」な人にとってはたまらない展覧会だと感じました。
◆Ⅱ 1930-1935 山谷・浅草:街がアトリエになる
 《岸田国士像》の解説に「4~5日かけて制作。小遣いをねだる。」と書いてあり「身近には居てほしくない」人に思えます。半面、写真パネルの解説を読むと麻生三郎などの後輩作家からは慕われていたようです。また、「へたも絵のうち」を読むと熊谷守一は長谷川利行の振舞いに呆れながらも、好意を持って接していたようです。
《酒祭・花島喜世子》は髪の毛が4本の角のように横に突き出たユニークな女性像。《水泳場》の解説には「隅田公園の屋外プールを田中陽の元で30分ぐらいかけて制作」と書いてあり、他人の家を転々としながら描いたことや早描きの作家だったことが分かりました。
なお、中日新聞に掲載されていた展覧会会場の写真には《女》《鉄道の見える風景》が写っていましたね。
◆Ⅲ 1936- 死 新宿・三河島:美はどん底から生じる
 第3章の解説には2年間に14回も長谷川利行展を開催した天城画廊の天城俊明(本名:高崎正男)のことが書いてありました。確かに1936年(昭和11)から1937年(昭和12)に制作された作品が「これでもか」というほど展示されています。「無理やり」だったかもしれませんが、天城俊明がいなかったらこれほど多数の作品は制作されなかったと思われます。この章の《白い背景の人物》は新たに発掘された作品。《ハーゲンベックの少女》は現代アートみたいです。千住火力発電所のお化け煙突絵を描いた《荒川風景》には「死」を感じました。
また、愛知県美術館・木村定三コレクションから《霊岸島の倉庫》《伊豆大島》《ノアノアの少女》《パンジー》などが出品されています。長谷川利行は「木村定三好み」の作家の一人だったのですね。
 《裸婦》(洲之内コレクション)など、ガラス板の裏から描いたガラス絵も多数展示されています。どれも小さなサイズですが、きれいな作品です。
◆おまけ=大正館で昼食
 昼食は名鉄・碧南駅前の「大濱旬彩 大正館」。大正3年創業、100年以上続く老舗ですが建物は平成28年完成の新店舗。カウンター席やテーブル席もありますが、大広間を区切った部屋に案内されました。食卓はテーブルと座卓の中間の高さで、椅子も机に合わせた低いもの。「畳にテーブル」の違和感がなく、椅子なので座りやすくて快適です。天井が高く、ゆったりできました。お味にも満足です。
◆最後に
協力会から「鑑賞ミニツアーおよび『大正館』お食事会の実施について」というお知らせが届いています。
お食事会は、8月26日正午から 旬彩御膳「碧」(2,000円・当日支払)
ミニツアーは、8月26日午後2時 碧南市藤井達吉現代美術館1階ロビー集合 です。
是非、ご参加ください。
                            Ron.

至上の印象派展 ビュールレ・コレクション

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

待ちに待った名古屋市美術館開館30周年記念「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」(以下「本展」)が開幕しました。(9月24日まで)本展の入口は2階。最初に目に入るのがコレクションの主、E.G.ビュールレ氏がコレクション8点に囲まれた写真の垂れ幕(以下「入口の写真」)です。うち6点を本展で確認できました。
◆ジャンル別、作家別などに細かく区分された展示
出品作品は64点。「至上の印象派展」という名前のように印象派の作品が中心ですが、17世紀から20世紀までの作品を展示。絵画の流れを理解しやすくするためにジャンル別、作家別等と細かく区分され10章もあります。同じ章の作品だけでなく別の章の作品も気になって見比べたので滞在時間は長くなりました。どの作品も見応えがあるため64点でも満腹です。
◆肖像画では
本展は「第1章 肖像画」で始まります。肖像画は第1章以外に「第3章 19世紀のフランス絵画」「第5章 印象派の人物-ドガとルノワール」「第6章 ポール・セザンヌ」「第7章 フィンセント・ファン・ゴッホ」「第8章 20世紀初頭のフランス絵画」「第9章 モダン・アート」でも展示。西洋美術史の流れと各作家の作風の変遷をつかむことができるように、いくつもの章で展示しているのでしょう。このうち第5章のルノワール《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》は赤壁の特別席に第6章のポール・セザンヌ《赤いチョッキの少年》は緑壁の特別席に展示。
肖像画では《赤いチョッキの少年》とドガ《ピアノの前のカミュ夫人》が入口の写真に写っていました。展示作品の半数以上は肖像画など人物を描いた作品。《アングル夫人の肖像》《扇子を持つセザンヌ夫人の肖像》を始め、どの章の展示も充実しています。
◆風景画では
展示作品の約3分の1が風景画。「第2章 ヨーロッパの都市」では18世紀に描かれたヴェネツィアの「都市景観図」と装飾的なポール・シニャック《ジュデッカ運河、ヴェネツィア、朝》を対比するように展示していたのが印象的です。「第4章 印象派の風景」にマネ《ベルヴュの庭の隅》、モネ《ヴェトイュ近郊のヒナゲシ畑》《ジヴェルニーのモネの庭》が並んでいるのをみて、「こんな感じの作品がコレクションのきっかけになったのかな」と妄想していました。
「第10章 新たなる絵画の地平」には大画面のモネ《睡蓮の池、緑の反映》が展示され、写真撮影する人で大賑わいです。
◆ゴッホでは
 ゴッホ《日没を背に種まく人》は青壁の特別席に展示。太陽の黄色は図版で想像していたよりも落ち着いた色調でした。《二人の農婦》は「落穂拾い」ではなく畑を鍬で耕している姿です。《自画像》も見もの。ゴッホでは《花咲くマロニエの枝》が入口の写真に写っていました。
◆モダン・アートでは
「第9章 モダン・アート」では《室内の情景(テーブル)》ブラック《果物のある静物》ピカソ《花とレモンのある静物》の3点が入口の写真に写っていました。いずれも静物画です。
◆最後に
チラシでは「約半数が日本初公開。日本でまとめて鑑賞できるのは今回が最後の機会」とのこと。見逃せませんね。
8月5日(日)午後5時から協力会会員向けのギャラリートークが開催されます。
                            Ron.

音のアーキテクチャ トンネルでピクニック 佐川美術館 ギャラリートークの様子 展示会場で話をきく会員たち 泉屋博古館にて まずは講堂でレクチャを聴く会員たち 会長の乾杯の音頭に合わせて、いただきます! 「回生の苗床」 光内惟奈 燃やせないもの 夢見たものは 展示室で解説を受ける会員たち プティパレ まずはエントランスホールでの解説