卒展、修了展(東京藝大)(その3)

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燃やせないもの

燃やせないもの


 展示室の入り口から眺めたときは、洗ったシャツがたくさん干してあるように見えた。近寄ると大勢の観客が作品を指さして、ガヤガヤと話をしていた。何を騒いでいるのだろう?と思って近寄ると、床に白っぽい破片と粉が散らばっているのが見えた。

 「?」と思って眺めていると、わずかに揺れるシャツの揺れ方が何やら変なことに気がついた。裾の方が揺れるのではなく、まるでベニヤ板をぶら下げたようにシャツ全体が揺れていた。シワの形も変わらない。さらに「?」と思って、キャプションを読むと、素材は「陶」となっていた。

 ようやく他の観客がざわめいていた理由がわかった。この作品は「だまし絵」になっていて、みごとにひっかかってしまったわけだ。

 その他の会場にも、美麗な絵画や彫刻が多数展示されていたが、紹介したように普段美術館ではお目にかかれなさそうな作品の方が印象に残った。

 愛知県の芸術系学校でも、今月、来月と卒業・修了作品展が行われる。今年は栄の芸術文化センターギャラリーではなく、各学校が展示会場になっているようだ。好奇心を刺激してくれる作品を見つけに、ぶらりと出かけてみてはどうだろう。

杉山博之

卒展、修了展(東京藝大)(その2)

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「park」 長谷川博子

「park」 長谷川博子 卒展、修了展(東京藝大)

 東京藝術大学美術館の中の作品を見終え、中庭に出るとそこにもかなりの雪が残っていた。中庭にも数点の作品が設置されており、とりわけ目を引いたのが透明なビニールのテントの作品だった。
周りにグリーンを主とした布を幟のように張りめぐらし、さながら温室のようだ。入口は開けっ放しだが、中に入ると以外に暖かく、寒さからの避難先として他の鑑賞者にも好評だった。

 テントの中には様々な制作手法による衣装が多数、ぶらさがっていた。手芸を趣味とする人には、相当に興味深い展示なのだろう。あるものは着られそうであり、あるものは着心地の想像もつかないのだが。テントの中から、ぼんやりと中庭を眺めているうちに、気分が落ち着いてきた。

「park」 長谷川博子 卒展、修了展(東京藝大)

 残りの作品を見るためにテントを出て、歩きながらふと思ったのだが、この作品のテントは衣装をかけておくためのクローゼットのような装置ではなく、衣装とセットの空間として、中に入る人を包み込むように提示されていたのだろう。
例えるなら、テント、幟、衣装は、ファミレスのキッズランチのように、彩の楽しいワンプレート全体を楽しむ、そんな見方がちょうどいいのだろう。

 今後、この作家は、いわゆる美術の領域よりも、身近な生活の領域で心地よい作品を展開していくのかもしれない。
そんな予感のする作品だった。

(その3に続く)

杉山博之

卒展、修了展(東京藝大)(その1)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

 例年、この時期の楽しみの一つが各芸大の卒業・修了作品展を見ることだ。普段、美術館の展覧会ではお目にかかれない実験的な作品に出会うことができる。今回は、東京藝術大学の卒業・修了作品展を見て、気になったものを数点紹介させていただく。

 今回は、例年にない大寒波に遭遇し、上野公園はいたるところ雪と泥。公園を横切り藝大に着くまでにジーンズは泥だらけ。たどり着いた正門前にも雪の山。とにかく寒かった。

夢見たものは

 「夢見たものは」 今西茉莉子 卒展、修了展(東京藝大)


 「夢見たものは」 今西茉莉子

 金色に光る直径1mくらいのリングの内側に、ビーズや金属のパーツをつなげたものをすだれのようにつりさげた作品。数種類の金属加工技術が使われているとのこと。黒門前に設置され、屋根から落ちてくるしずくと、すだれのような部分が親和し、キレイだった。後光のようなパーツがついていることから、何かしら高貴な存在を示しているのだろうか。

 屋根はあるけど、展示場所は吹きさらしなので立ち会っていた作家の方も寒さで大変そう。なぜ、室内ではなく、黒門前を展示場所に選んだのか。夢見たものは、かなったのか、ちょっと気になるところ。

(その2に続く)

杉山博之

グリーンランド 中谷芙二子+宇吉郎展

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor


 霧の彫刻で有名な中谷芙二子氏の「GreenLand」を見た。以前にもヨコハマトリエンナーレと豊田市美で体験したが、作品に大量の水を使うためどちらも屋外での展示だった。今回はなんと室内、しかもほぼ密閉空間での展示。例えるなら、白川公園の科学館の南側にある噴水を名古屋市美の地下ロビーに引っ越しさせるようなもの。(ちょっとおおげさ)さて、どうなることやら。

 展示室に入ると、モニタの入った白い小屋、黄色のドラム缶、ふたの開いた木箱、大量の石、ハンマー、手袋などが見えた。床には所々に水たまり。それから登山で使うようなヤッケ。(鑑賞者貸出し用)
ベンチ代わりのドラム缶に腰掛け、しばらく待っていると、ザーッという音と同時に霧が出始め、あっという間に室内は五里霧中。一緒にいた観客のあいだにもざわめきが広がった。

霧が大発生

霧が大発生


 上演時間は約8分間。終了後、数分で霧は晴れ、霧の濃さを思えば、意外に小さな水たまりが床に残っていた。都会のきらびやかなビルの中で、雪山遭難のような、とても興味深い体験をした。

 今回の展示のチラシを読み、雪の研究で有名な中谷宇吉郎氏が中谷芙二子氏の父であること、石川県加賀市に「中谷宇吉郎 雪の科学館」があること、その科学館には常設で「Greenland Glacial Moraine Garden」があることを知った。ぜひ出かけてみたいと思う。

杉山博之

展覧会情報
「グリーンランド 中谷芙二子+宇吉郎展」
会期:2018年3月4日まで
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム

燃やせないもの 夢見たものは 展示室で解説を受ける会員たち プティパレ まずはエントランスホールでの解説 2017_ジャコメッティ_1 富山県立美術館にて BankART_大霊廟Ⅱ プライウッド新地 ヨコトリ_パオラ・ピヴィ_まだ誰も来ない MOTサテライト 目印はこれ!