アートサイト名古屋城2025 結構のテクトニクス

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

名古屋城の御深井丸(おふけまる)エリアを会場として、「アートサイト名古屋城2025 結構のテクトニクス」が始まりました。本プロジェクトは2023年から始まり、今年で3回目の開催です。これまでは、11月下旬から12月初旬の開催でしたが、今年は会期が少し早まり、2025年10月11日から19日までとなりました。

会場入口

今年の出展作家は川田知志です。彼はフレスコ画の技法を中心に、古今の様々な絵画技法を探求し、スケールの大きな作品を発表してきました。さて、御深井丸(おふけまる)エリアという広大な野外会場を舞台に、どのような作品が展開されるのでしょうか。

展示風景

会場には、様々な方向を向いた大きな暖簾のような作品が何枚も吊り下げられています。これらの作品は、川田がアトリエで描いたフレスコ画を、ストラッポという技法で、画面の表面をごく薄くはぎ取り、寒冷紗に張り付けたものです。元々は固くて板状の壁画が、風に揺れ、はためく様子はとても不思議な景色です。

展示風景

川田によれば、今回の作品は「面」、「線」、「点」で構成されているそうです。寒冷紗の布が「面」、その「面」を支えるポールが「線」、その「線」が地面に接する部分が「点」にあたります。また、会場の方々には、点々と手の平サイズの陶板が敷かれています。

アーティスト・トークの様子(左から、作家の川田知志、本展キュレーターの服部浩之)

ハンドアウトによれば、陶板は名古屋城の本丸御殿の礎石の位置を表すそうです。そして、「線」のポールが本丸御殿の柱にあたり、「面」の寒冷紗が本丸御殿を彩る豪華な障壁画の描かれた壁面になるそうです。鑑賞者は、これらの「面」、「線」、「点」をたどりながら、空想の本丸御殿を自分の頭の中に思い描き、歩き回ることができます。

見た目はとても軽やかで、心地良い作品ですが、そのコンセプトを聞くと、鑑賞者の想像力を試す、とても挑戦的な作品であることを実感します。

展示風景(夕方)

夕方に見に行くと、ライトアップされた天守閣が、御深井丸(おふけまる)エリアからも垣間見え、金シャチの輝く様子が誇らしげでした。

イベント概要
名称:名古屋城秋まつり 秋の特別公開 アートサイト名古屋城2025 結構のテクトニクス
会期:2025年10月11日(土) 〜10月19日(日)
場所:名古屋城 御深井丸(おふけまる)エリア

詳細は以下の情報ページを参照。
https://nagoyajo.art/

杉山博之

Lightseeing Kyoto South

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

京都駅東部・東南部エリアを舞台に、周遊型アートイベントの「Lightseeing Kyoto South」が始まりました。京都で美術展を見に行くとしたら、その会場は岡崎公園の美術館か、東山の博物館が思い浮かびます。また、ギャラリーに立ち寄るにしても、烏丸周辺が思い浮かびます。京都駅から徒歩圏内とはいえ、ほとんど訪れたことがないエリアで新しくアートイベントが始まるということで、見に行くことにしました。

インフォメーション・センター 外観
インフォメーション・センター カウンター

最初に立ち寄ったのは、崇仁市営住宅9棟です。こちらの空き店舗に、インフォメーション・センターと展示室が設けられています。このエリアでは、ichimai kyoto、木村歩、タニガワユメ、TOUMAN、工藤玲の作品を見ることができます。バス停の標識に似た案内板を見れば、部屋番号と作家名がわかります。

106号室では、陶磁器が展示されています。見ただけでは、ちょっと使い方のわからない形の器もあります。ちなみに、これらの作品は販売されていて、普段使いの道具として割と手ごろな価格になっています。以前は喫茶店として営業していた部屋なのでしょうか。窓やカウンター内の設備に、喫茶店としての時間の経過が見て取れます。

展示風景 106号室

107号室では、ネオン管を利用した作品が展示されています。手前の青色の明かりは、キャンプで使うランプみたいです。奥側の赤い光は、電気ストーブみたいです。インフォメーション・センターのネオン・サインもこの作家が制作しました。以前、この部屋はどのようなお店だったのか、気になりましたが、手掛かりは見つかりませんでした。

展示風景 107号室

少し歩いて、hatoba caféに向かいます。カフェに併設されたギャラリーでは、展示タイトルを「光リフレクション」とし、小松千倫、外山リョウスケ、山本愛子が、それぞれ光にまつわる作品を見せてくれます。

Hatoba café ギャラリー入口

ギャラリーの奥に、ひときわ大きな青い円形の作品が吊り下げられています。表面の模様は、植物の葉や茎を版にして染色技法で表現されているそうです。作品の大きさとその色合いから、つい目が引き寄せられます。見ていると、作品は空気の流れに乗り、ゆっくりと回転しています。その様子は地球の自転を連想させ、とてもスケールの大きなイメージを観客に投げかけます。

展示風景 山本愛子

本イベント期間中は、近隣の京都市立芸術大学のギャラリーなどで関連イベントも行われます。京都に出かける機会があれば、合わせて訪問してはいかがでしょうか。

なお、本イベントは国内外から京都を訪れる方が秋の京都でアートを楽しめるよう、京都市・京都府が連携し、京都市内のアートイベントを一体的に発信する「京都アート月間(仮称)」の一環として実施されるものです。

チームラボ バイオヴォルテックス 京都

余談ですが、本イベントが開催されるエリアには、「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」(チームラボの屋内施設としては国内最大規模)がオープンしました。また、村上隆の制作スタジオもオープン予定と聞いています。今まで、あまり訪れる機会のなかったエリアですが、これからは要注目のエリアになりそうです。


イベント概要
名称:Lightseeing Kyoto South
会期:令和7年10月4日(土) 〜11月16日(日)
(会期中の金曜日・土曜日・日曜日・祝日の午後1時〜6時 )
場所:京都駅東部・東南部エリア
参加費:無料

詳細は以下の京都市の情報ページを参照。
https://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000344012.html

杉山博之

国際芸術祭「あいち2025」 (芸術文化センター)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

2010年から3年ごとに開催されてきた国際芸術祭「あいち」(旧称:あいちトリエンナーレ)が開幕しました。テーマは「灰と薔薇のあいまに」で、22の国と地域から62組のアーティストが参加します。

会場は愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなかです。また、パフォーミングアーツのプログラムも、多様な社会課題を背景に持つものが多く、美術展とは違った発見があると思います。会期は11月30日までです。

会場ごとに、数点ずつ、目を惹かれたものを紹介します。

会場入口

インドネシア出身のムルヤナは、かぎ針編みの手法で広大な海の世界を表現しています。無数のカラフルなオブジェと真っ白なオブジェが、10Fロビーを埋め尽くし、そのボリュームと形態のおもしろさに目を惹かれます。背景には、地球温暖化や海洋汚染による環境問題への意識があると思われます。

ムルヤナ ≪海流と開化のあいだに≫(部分)

是恒さくらの作品は、巨大なクジラの姿をいろいろな素材で標本展示のように再現しています。作品の青白い色合いが、水の中にいるような錯覚を呼びおこし、少しひんやりとした印象です。

是恒さくら ≪白華のあと、私たちのあしもとに眠る鯨を呼び覚ます≫(部分)

ミルナ・バーミアは、以前レストランであった場所に、2点の作品を展示しています。どちらも食に関連した作品で、ロビーに面した空間に展示された作品の表面には、子供の落書きのような模様も見て取れます。厨房には、パレスチナの歴史を暗示する映像作品が暗闇の中に映し出されています。

ミルナ・バーミア ≪サワー・コード≫(部分)

久保寛子は、地下のフォーラムに、大きな青いブルーシートの作品を展示しています。表現されているのは、4本の手を持ち、トラの顔をした東洋の神様と、壁を残して崩れた建物やいくつも並んだテント、牛やカラスなどです。牛の足元にある白い下向きのU字型は、広島にある平和記念公園の慰霊碑と思われます。作家が広島出身であることを知ると、作品の発するメッセージを、より強く感じます。

久保寛子 ≪青い四つの手を持つ獅子≫

杉山博之

国際芸術祭「あいち2025」 (愛知県陶磁美術館)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

前編の”国際芸術祭「あいち2025」(芸術文化センター)”の続きです。

愛知県陶磁美術館入口

シモーヌ・リーの作品は、陶磁美術館の地下展示室にあります。ぜひ、作品の周りをゆっくりと回ってみて下さい。女性が身に着けた貝殻のスカートの重量感や、彼女の喜怒哀楽を想像しながら眺めてみて下さい。絵画や彫刻で表現される女性像とは、一味違ったリアリティを感じられるのではないでしょうか。

シモーヌ・リー ≪Untitled≫

西條茜の作品は、哲学的で、かつ身体的な一連のオブジェで構成されています。展示室の床には、砂地を模した絨毯がひかれ、本展期間中、時々、オブジェを押して動かすパフォーマンスが行われます。小さめの作品でも、50kgを超える重量があり、大人でも簡単には動かせませんが、反復される労働と絨毯に残る移動の痕跡が作品タイトルと良く調和しています。

西條茜 ≪シーシュポスの柘榴≫(部分)

ハイブ・アースは、アートとデザイン、建築に取り組むガーナのスタジオです。本展では、土を強く突き固めて建材に用いる「版築」という技法で、階段状のベンチ(凸)を作りました。以下の写真は、ベンチの材料になる土を採取した穴(凹)です。芝生に掘られた四角い穴と、離れた場所に作られたベンチとの関係性が面白かったので紹介します。

ハイブ・アース ≪瀬戸の版築プロジェクト「凹」≫

(瀬戸市のまちなかの展示に続く)

杉山博之

国際芸術祭「あいち2025」 (瀬戸市のまちなか)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

前編の”国際芸術祭「あいち2025」(愛知県陶磁美術館)”の続きです。

沖潤子の作品は、駅からほど近い、小高い御亭山の上にあります。作品を展示した「無風庵」の周囲には、日清・日露、太平洋戦争の戦没者のための碑や塔があり、作品に使われている白い布、赤い糸、針との関係性は明白です。また、床に置かれた四角い陶土には無数の針が刺され、その光景はまるで針供養のようです。身近な人々や道具を大切にする気持ちが幾重にも重なる、緊張感のある表現になっています。

沖潤子 ≪anthology≫(部分)

冨安由真の作品は、来場者が少ない時間帯に見ることをお薦めします。できれば、展示室内で数分間、立ち止まっていると、作品のメッセージを受け取りやすいです。見終わったら、作品のタイトルにある「The Silence」と「Two Suns」の意味を考えてみて下さい。

冨安由真 ≪The Silence(Two Suns)≫(部分)

佐々木類の作品は、廃業した銭湯に展示されています。かつて、銭湯の利用者でにぎやかだった空間に、ガラスに封じ込められた植物の痕跡が、静かにライトに照らされています。

入口の番台の上に古い時計が掛けられています。止まったままの時計の針がタイムマシンで到着した過去の時間を示しているようで、映画の一場面みたいです。いったい、どれほどの時間を旅行したのでしょうか。

佐々木類 ≪忘れじのあわい≫(部分)

杉山博之

ひろしま国際建築祭2025

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members
今秋、愛知県では国際芸術祭「あいち2025」が開催され、幅広い現代美術の作品に出合うことができます。また、国際芸術祭「あいち2025」以外にも、各地で多くの芸術祭が開催されます。<ひろしま国際建築祭>は、愛知からだと少し距離がありますが、戦後80年ということもあり、ぜひ訪れたい芸術祭のひとつです。
ひろしま国際建築祭のHPより

<ひろしま国際建築祭>は、今年から新しく始まる芸術祭です。「建築」で未来の街をつくり、こどもの感性を磨き、地域を活性化させ、地域の“名建築”を未来に残すことをミッションとしています。

本年は、「つなぐ「建築」で感じる、私たちの“新しい未来”」をテーマに、歴史、風土、景観、技術、思想など、さまざまな視点から「建築」に触れ、考え、交わる機会をつくり、建築文化を感じる場を目指すそうです。「建築」は私たちの生活をより豊かにしながら、より良い未来をつくるための「知恵」のひとつです。建築祭に参加し、私たちの新しい未来について、考える機会にしてみませんか。

ひろしま国際建築祭2025
会期|2025年10月4日(土)~ 2025年11月30日(日)
開催地|広島県福山市、尾道市+瀬戸内エリアのサテライト会場

詳しくは、以下を参照してください。

ひろしま国際建築祭2025

杉山博之

error: Content is protected !!