読書ノート「2021.2.20 週刊 東洋経済」 特集/アートとお金

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

投稿:2021年2月15日

書店で雑誌のコーナーを見たら「週刊 東洋経済」の表紙に「アートとお金」という大きな文字。現代アート作家・名和晃平の作品や「美術品の投資&鑑賞のつぼ 全部わかる!」という文字も印刷。「投資」はともかく「鑑賞のつぼ」という言葉が気になり、買ってしまいました。特集はp.36~p.73と、かなりの分量です。三部構成で、Part1はアートビジネス編、Part2は美術館編、Part3は教養編。p.36~37の見開きは、今年の1月末に開催されたSBI Art Auction の会場。日本人作家ロッカクアヤコノの作品が、2600万円で落札された瞬間の写真でした。

◆Part1-アートビジネス編

最初の7兆円アート市場の狂騒(p.38~40)は 、2020年10月、オークション会社のサザビーズが香港で開催した現代アートのオークションで、ポーラ美術館(神奈川県箱根町)が人気の現代アート作家ゲルハルト・リヒターの抽象画を約29億3500万円で落札した、という記事から始まります。コロナ禍にもかかわらず「オークションにおけるアートの売買は活発」で「とくに勢いがあるのが現代アート」。日本人の作家では「奈良美智、村上隆、杉本博司といった面々が国際的に高く評価されている」そうです。お金の話ばかりで恐縮ですが、2000~20年のオークション売上高も掲載されており、1位はバスキア。奈良美智は9位、村上隆は15位。51位の杉本博司だと落札作品数1,804点、落札総額6,800万ドル。単純平均で1点約37,700ドル。ちなみに1976年、ニューヨーク近代美術館に作品を持ち込んだ時の評価は500ドル(杉本博司「私の履歴書」13回・2020年)。作品は違うものの、約75倍の評価になった訳です。

美術商の仕事の実態(p.44~45)によれば、現代アートの画廊を通した作品の販売の場合、作家の取り分は5割。1970年代の後半、杉本博司が河原温に画廊を通した時の作家の取り分を尋ねた時、河原温の答えは「君の場合には50パーセント」(杉本博司「私の履歴書」12回・2020年)。50パーセントという取り分は、今でも変わらないのですね。

◆Part2-美術館編

 Part2では「美術展の不都合な真実」(新潮新書)の著者・日本大学の古賀太教授がコロナ禍の美術館の難題(p.58~59)に書いた「今後、日本の美術館はどうすべきか。答えは簡単で、所蔵品を中心とした展示に切り替えていくしかない」という提案と「東京国立近代美術館の『眠り姫:アートと生きること ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで』(2月23日まで開催予定)は、同館をはじめとする国立美術館だけの所蔵品で構成された企画展で見応えがある」という事例紹介が印象的でした。そういえば、横浜美術館で開催中の「トライアローグ」(2月28日まで)も「所蔵品で構成された企画展」ですね。(「トライアローグ」の展示風景は、テレビ愛知が2月13日に放送した「美の巨人たち」に写っていました。愛知県美術館にも巡回の予定です)

◆Part3-教養編

作家・中野京子が選ぶ 見るべき西洋美術10作(p.66~68)、美術史家・山下裕二が選ぶ 日本美術を知る5作(p.69~70)、美術ジャーナリスト・鈴木芳雄が選ぶ 話題の現代アート8作(p.71~73)という、3つの記事を掲載。山下裕二氏の、日本美術を「縄文的」「弥生的」に分類するという着想を面白く読みました。なお、「弥生的」に分類された画家・小村雪岱は、1918年(大正7)から1923年(大正12)まで資生堂意匠部に勤務。資生堂意匠部といえば、2月7日に開催された、名古屋市美術館「写真の都」物語の協力会員向け解説会で竹葉学芸員が「「巴里とセーヌ」という写真集を刊行した」と紹介した、アマチュア写真愛好家で経営者の福原信三が設立した部署です。当時から資生堂は、優秀な人材をそろえていたのですね。

 Ron.

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